生保各社、MVAを利用した外貨建保険のタイムラグマージンを見直しへ。

2月1日付の日本経済新聞・朝刊に、MVAを利用した外貨建保険についての記事がありました。

記事によりますと、

< 生命保険各社が外貨建保険の解約時に発生する手数料を見直す。業界トップの三井住友海上プライマリー生命保険が4月の契約分から廃止し、日本生命保険などは料率を下げる。金利の変動リスクに備える保険会社が設定してきたが、契約者に負担を求める不透明さを金融庁が問題視していた。苦情が目立つ外貨建保険の販売を適正化する動きが広がってきた。>

【管理人の感想】
今回の日経を記事を読んだだけでは、金融庁がMVAを利用した外貨建保険のタイムラグマージンを問題視していたという誤った情報を受け取ってしまいます。

しかし、事実は全く異なります。今回生保各社がタイムラグマージンの見直しを行う主な理由は、昨年8月27日付で適用された「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正によるものです。

改正は以下の(新設)の2か所です。

〇Ⅱ-4-2-2 保険契約の募集上の留意点
(2)法第294条、第300条の2関係(情報提供義務)

③準金融商品取引法第37条の3関係

イ.契約締結前交付書面に関し、「契約概要」と「注意喚起情報」について、書面を作成し、交付しているか。

なお、契約締結前交付書面の主な項目は以下のとおりとする。

(MVA(Market Value Adjustment)(注)を利用した商品)
l.市場金利に応じた運用資産の書かう変動を解約返戻金に反映させる保険であることの説明。

m.保険契約の締結から一定の期間内に解約された場合、解約返戻金が市場金利に応じて計算されるため、損失が生じることとなる恐れがあること。

n.解約返戻金額の計算基礎率を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、運用資産の売却にかかる取引費用等に備えるために係数を定める場合、その係数が及ぼす影響(解約時の保険料積立金に対して控除される割合の例示等)(新設)

o.諸費用に関する事項(運用期間中の費用等)

〇Ⅳ 保険商品審査上の留意点

Ⅳ-5-3 契約者価額
(1)解約返戻金については、支出した事業費及び投資上の損失、保険設計上の仕組み等に照らし、合理的かつ妥当に設定し、保険契約者にとって不当に不利益なものになっていないか。

(2)MVAを利用した商品について、解約返戻金額の計算基礎率を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、運用資産の売却に係る取引費用等に備えるために係数を定める場合、その係数については、解約に伴い発生する費用との整合性やリスク管理の高度化等に照らして、合理的かつ妥当な水準に設定し、保険契約者にとって不当に不利益になものとなっていないか。(新設)

今回、日経が報じているのは商品審査上の留意点の改正によるものです。

では、なぜ監督指針改正に至ったのか?日経が報じているような不透明さがあったのではないか?と思うかもしれませんが、それは違います。2021年9月10日の保険モニタリングレポート(PDF)において、次のようにその経過が記述されていました。

※P50より転載

< ⑦ 商品性(タイムラグマージン)
外貨建保険において、市場金利に応じた運用資産の価格変動を解約返戻金額に反映する MVA を導入している商品が多く存在している。MVA の計算に当たっては、解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間(最大2週間程度)に生じる金利変動等に備えるための係数(いわゆる「タイムラグマージン」)を設定して解約返戻金額を減じて計算していることが多く、その水準の合理性・妥当性と、顧客説明の充実について保険業界と対話を行った。

その結果、係数の水準については、リスク管理の高度化や解約に伴って見込まれる取引費用との整合性等に照らして、合理的かつ妥当な水準とする必要があるとの共通認識に至った。また、顧客説明については、募集資料において複雑な数式を用いて記載されていることから、解約返戻金額からの控除割合の例示を記載することが顧客にとって分かりやすいであろうという共通認識が得られた。

こうした対話を踏まえ、2021年8月に、顧客本位の業務運営の観点から、係数を設定する場合における保険商品審査上・募集上の留意点等を明示する監督指針の改正を行った。>

このことからみても、金融庁がタイムラグマージンについて不透明さが…などと問題視していなかったことが分かります。

また、これとは別に過去3回分の「保険商品審査事例集」にも、タイムラグマージンの見直しについての事例が登場していましたので取り上げます。

1.「令和2年2月 保険商品審査事例集」(PDF)P4~5
2.生命保険商品(算出方法書)
(1)監督指針Ⅳ-5-3(契約者価額)
<MVAにおける調整項の水準について>
MVA(市場価格調整)の適用にあたり、過去の指標金利の推移などを参考に解約時と資産売却時のズレ(タイムラグ)から発生する損失は限定的と判断し、タイムラグマージンを 0.00%と設定した。

(コメント)
一般的に、MVAの適用にあたり、解約時と保険会社の資産売却時とのタイムラグから発生する保険会社の損失をカバーするため、調整項(タイムラグマージン)を設定することが行われているが、その水準は、解約に伴う費用相当額として合理的かつ説明可能な範囲に設定する必要がある。本商品は、当該調整項の数値を必要以上に保守的に設定することは、中途解約をする契約者に過度の負担を強いることになることに留意し、過去の指標金利の推移を踏まえた上で、タイムラグマージンを 0.00%としたものであり、顧客本位の業務運営の観点から望ましいものと考えられる。

2.「令和2年6月 保険商品審査事例集」(PDF)P5~6
(2)指針Ⅳ-5-3(契約者価額)
<経済環境等の変化を踏まえたタイムラグマージンの適切な設定>
既存商品の支払事由等を変更する特約を創設するにあたり、タイムラグマージンの水準について、他の商品も含め直近開発商品の水準に改定すべく、可能な範囲で速やかに変更認可申請することとなった。

(コメント)
一般的に、MVAの適用にあたり、タイムラグマージン(※)の設定が行われているが、その水準は、解約に伴う費用相当額として合理的かつ説明可能な範囲に設定する必要がある。このタイムラグマージンの数値を必要以上に保守的に設定することは、中途解約をする契約者に過度の負担を強いることになることから、商品創設時との経済環境等の相違を踏まえ、現行販売している商品についてもその水準を直近開発商品の水準に見直すことは、顧客本位の業務運営の観点から望ましいものと考えられる。

審査においては、現在の経済環境等を踏まえ、直近に開発した商品のタイムラグマージンの水準の妥当性についても確認した。

(※)統一的な定義はないが、一般的に、保険会社が解約に関する利率を設定する時期と保険契約者が解約を決断する時期とのタイムラグ、又は契約者の解約申出時と保険会社の運用資産売却時とのタイムラグから発生する保険会社の費用(損失)に備えるためのマージンとして説明されている。

3.「令和4年1月 保険商品審査事例集」(PDF)P1~2
1.生命保険商品(約款・事業方法書)
(1)法第5条第1項第3号イ(契約者等保護)、指針Ⅳ-5-3(2)(タイムラグマージン)
<タイムラグマージンの適切な設定、検証・評価による可変化の対応>
解約時等に市場価格調整(MVA)が適用される商品に関し、解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、解約に伴う運用資産の売却に係る取引費用等に備えるための係数(以下「タイムラグマージン」という。)の水準適正化にあたり、その水準の適切性について検証・評価を行うとともに、タイムラグマージンの水準設定に関しては一定の範囲(幅)で定める値として基礎書類に規定することとした。

(コメント)
タイムラグマージンに関し、リスク管理の高度化や資本調達コスト・取引費用等の見直しは継続して取り組むべき課題であるとの認識から、当社はタイムラグマージンの水準の適切性について継続的な検証・評価を行うこととし、それが過分な状況にあると判断した場合には適切な水準まで速やかに引き下げることを想定して、タイムラグマージンについては一定の範囲で定める値として約款および算出方法書に記載することとした。(実際に使用する値は事前に金融庁に届け出る。)タイムラグマージンについて、金利変動、取引費用等のマーケット水準に比して過分な水準となっていないか、年度ごとに検証・評価を実施し、適時適切な水準に見直しを行っていくことは、タイムラグマージンの趣旨や顧客保護の観点から、適当な対応と考えられる。

解約時等に市場価格調整(MVA)が適用される商品に関し、解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、解約に伴う運用資産の売却に係る取引費用等に備えるための係数(以下「タイムラグマージン」という。)の水準適正化にあたり、その水準の適切性について検証・評価を行うとともに、タイムラグマージンの水準設定に関しては一定の範囲(幅)で定める値として基礎書類に規定することとした。

あわせて、解約時の運用対象資産の時価に基づいた額で解約返戻金額を調整するといった市場価格調整の趣旨を踏まえれば、契約時にタイムラグマージンを固定(ロックイン)するのではなく、解約時点におけるタイムラグマージンを適用して解約返戻金を支払うことには一定の合理性があると考えられる。したがって、契約者への説明上、当社のタイムラグマージンが可変のものであることや、その考え方について説明するとともに、パンフレットや契約のしおり、保険設計書等において、解約返戻金額の例示は、顧客本位な分かりやすい情報提供を行う観点から、上記「一定の範囲(0.00%~0.10%)」の上限である 0.10%(顧客にとって最も不利なケース)を使ったものを表示することとした。また、直近の数値については当社ホームページで契約者に適時開示し、契約者が自ら解約返戻金額を試算するための情報を提供するなど、顧客本位の対応を行うこととしており、適当と考えられる。

以上です。

韮の花にやってきたホシホウジャク(昨年9月撮影)。

手術給付金の支払を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和3年7~9月の裁定概要集(PDF)に、手術給付金の支払を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
約款の重要事項を説明しなかったこと等を理由に、手術給付金の支払もしくは既払込保険料の返還を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
下肢閉塞性動脈硬化症により入院し手術したため、平成22年8月に契約した医療保険にもとづき給付金を請求したところ、約款における支払事由に該当しないとして、手術給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金を支払うか、既払込保険料を返してほしい。

(1)保険会社は、約款の重要事項を一切説明しておらず、説明義務違反がある。

(2)保険会社から、「古くて安い商品」に入っていたからこのような結果が生じたと説明されたが、自分は契約時に他の種類の保険があったことは知らず、団体保険の性質上、保険会社から提案された本契約に加入する以外に選択肢はなかった。

(3)本手術は、公的医療制度で認められた手術であるにもかかわらず、手術給付金の対象とならないことは、保険会社の社会的使命がどこにあるのか、その姿勢を問わざるを得ない。

(4)保険会社が重要事項説明の代用としている「契約のしおり」には、手術によっては手術給付金の対象とならない場合がある旨の記載があるが、そもそも、募集人と直接保険に関する質疑応答を行う機会を与えられなかった。

…この事案は既に裁定が終了しています。

下肢閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化による血管の狭窄や閉塞により主に足先への血流が悪くなってしまう病気です。状態が悪化すると潰瘍や壊死を引き起こして切断することになり、最悪の場合は命を落とします。

また、下肢閉塞性動脈硬化症は他の動脈硬化による疾患(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞)を発症しやすいことが知られています。糖尿病の合併症による下肢閉塞性動脈硬化症はさらに危険と言われています。

申立人は薬物療法や運動療法ではなく手術を受けたので、状態が悪化していたことがうかがえます。ただ、その手術が約款に定める手術の定義に該当しなかったようです。

これはあくまで推測ですが、申立人が受けたのは血管バイパス手術ではなく、バルーンやステントによる血管内治療だったのかもしれません。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年7~9月裁定概要集・P31~32より転載)。

【事案2020-288】手術給付金支払請求
・令和3年8月20日 裁定終了

<事案の概要>
約款の重要事項を説明しなかったこと等を理由に、手術給付金の支払もしくは既払込保険料の返還を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
下肢閉塞性動脈硬化症により入院し手術したため、平成22年8月に契約した医療保険にもとづき給付金を請求したところ、約款における支払事由に該当しないとして、手術給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金を支払うか、既払込保険料を返してほしい。

(1)保険会社は、約款の重要事項を一切説明しておらず、説明義務違反がある。

(2)保険会社から、「古くて安い商品」に入っていたからこのような結果が生じたと説明されたが、自分は契約時に他の種類の保険があったことは知らず、団体保険の性質上、保険会社から提案された本契約に加入する以外に選択肢はなかった。

(3)本手術は、公的医療制度で認められた手術であるにもかかわらず、手術給付金の対象とならないことは、保険会社の社会的使命がどこにあるのか、その姿勢を問わざるを得ない。

(4)保険会社が重要事項説明の代用としている「契約のしおり」には、手術によっては手術給付金の対象とならない場合がある旨の記載があるが、そもそも、募集人と直接保険に関する質疑応答を行う機会を与えられなかった。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)募集時に約款の記載事項すべてを説明することはできないため、約款を交付し、契約者自身で内容を確認するように依頼している。手術給付金の支払い対象となる手術の詳細については、特に契約者から申し出がない限り、個別の説明は行っていない。

(2)申立人が主張するような説明は行っておらず、手術給付金が支払えないことに関連して、最近では保障範囲が広くなっている商品が出ていることを述べた。

(3)本契約の約款における手術給付金の支払事由に該当しなければ、公的医療の対象であっても手術給付金の支払い対象外となる。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況を把握するため、申立人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
乗機手続きの結果、約款の重要事項についての説明不足は認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見いだせないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続きを終了した。

以上です。

↑開花を始めた庭先のクロッカス(今月撮影)。

保険会社向けの総合的な監督指針の一部改正が波紋?-日経報道。

12月29日付の日本経済新聞・朝刊に、28日をもって適用された、保険会社向けの総合的な監督指針の一部改正*に関する記事がありました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

12/28・金融庁報道発表資料 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について

記事によりますと、

< 金融庁は生命保険の販売時に年金や健康保険といった公的保険制度について顧客に適切に情報提供するよう生命保険会社に求める。28日に生保の営業手法に関する監督指針を改正した。生保各社へのモニタリングも強化し、問題があれば是正を求める。顧客の不安心理をあおって加入させる「過剰契約」を防ぐ狙いだが、「本来は国が説明すべきだ」との声も根強く波紋を呼んでいる。>

とのことです。

【管理人の感想】
金融庁に寄せられたパブリックコメントは34件あり、

「コメント1:これ保険会社向けの監督指針に入れる必要があるのでしょうか?そもそも国の制度を国民に伝えるのは政府や所轄官庁の仕事じゃないですか?

保険会社等はあくまで補完サービスでしかないので筋違いのように思います」

「コメント2:意向確認など、保険募集人やサービスの提供側に公的保険に関する情報提供義務がある変更になっているがそもそも情報の非対称性がある金融商品やサービスにおいて情報提供を義務付けたとしても確実に情報提供を行ったという裏付けにもならず、丁寧に行った説明も簡単に行った説明もどちらも「公的保険に関する情報提供を行った」となるため提供側がやればいいという問題ではないと思う。

公的保険を加味して消費者にとって合理的な金融商品を選んでもらうためならば提供側の努力義務はもちろんだが、義務教育や高等教育を通じて消費者側にも一定のマネーリテラシーの習得をしてもらわなければいつまでもその情報非対称性が解消されず「言われたから」とか「知らなかった」といった不利益を消費者が被ることになる。

したがってこれらの変更は納得がいくが消費者側にも一定の教育機会を設けなければただ形骸化した制度や変更になり、ただただ真面目に情報提供を行っているサービス提供者や募集人の手間が増えるだけだろうと思う。」

「コメント3:公的保険制度についての情報提供を適切に行うとあるが、これは保険会社や募集人が行うものなのだろうか?

国の公的保障制度は教育現場で国家が国民に周知すべきことではないでしょうか?

もちろん、保険販売の現場では公的保障制度を理解していない募集人が、自らの成約ありきで保険商品の説明に終始することもあるかもしれません。

ただ良識あり保険営業の仕事にプライドを持っている募集人の多くは、公的保障制度の案内をしつつ不足分を保険で賄うか、それとも自助努力で賄うかという提案をしています。

つまりもし今回の改正がなされても、単に書類上での説明を完了したとすることにしても、実態としては変わることは考えにくく実効性は限りになく少ないと考えます。」

「コメント21:(総論)各保険会社によって商品種類や募集チャネル等は様々であり、また、複数の公的保険制度がある中、対応にあたっては一定の準備期間を要する。よって、運用開始日から一律の対応が求められるものではなく、保険種類や募集チャネル等を踏まえて順次対応していくことが求められるもの、という理解でよいか。

今般の監督指針改正では、公的保険制度を補完する保険商品を販売する保険会社として、創意工夫のもと、顧客本位の業務運営を更に進める趣旨で、公的年金をはじめとする公的保険制度にかかる募集人教育や顧客向けの情報提供に関する着眼点を明確化するもの、という理解でよいか。

今般の監督指針改正により対応が求められる公的保険制度については、募集を行う保険商品の種類に応じて、特に関係の強い公的保険制度に関する情報提供が求められているものであり、情報の内容や量については、各保険会社が、提供する商品種類・内容等、自社の事業の特性や募集チャネルを踏まえて、創意工夫を発揮しながら判断して対応すればよい、との理解でよいか。」

「コメント33:乗合代理店の経営者です。

今回の改正案は民間保険会社が公的保障制度の補完を担うという趣旨に則れば、大変意義のあることだと思いました。

改正後は、恐らくはプリンシプルベースで個社ごとに創意工夫をすることになるかと思います。例えば代理店ごとでFD宣言に盛り込みことや、意向把握義務の一環として項目を追加することなどが考えられますが、死亡保障であれば遺族年金の補完であり、積立型の保険であれば老齢年金の補完であり、障害年金であれば医療保険が補完する商品であることから、保険会社の意向確認書にて新たにチェックボックスを作成いただくことで保険代理店としてはある程度の浸透が図れるのではないかと思うのですがいかがでしょうか。」

など様々でした。パブリックコメントを読む限りでは、今回の監督指針の改正が波紋を呼んでいるとまでは言えないと思っています。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2021年12月29日朝刊-

【生保販売、新指針が波紋】
金融庁は生命保険の販売時に年金や健康保険といった公的保険制度について顧客に適切に情報提供するよう生命保険会社に求める。28日に生保の営業手法に関する監督指針を改正した。生保各社へのモニタリングも強化し、問題があれば是正を求める。顧客の不安心理をあおって加入させる「過剰契約」を防ぐ狙いだが、「本来は国が説明すべきだ」との声も根強く波紋を呼んでいる。

金融庁は保険会社向けの監督指針に新たに「公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行う」といった規定を盛り込んだ。顧客が自身の将来のリスクや民間保険の必要性を適切に理解した上で加入の要否を判断できるようにするためだ。これまで指針に公的保障の説明を求める規定はなかった。

更に指針は、民間保険を「公的保険を補完する」と位置付けた。保険の募集人自身が公的保障の仕組みを十分に理解しておくことが必要だとし、保険会社に「適切な理解を確保するための十分な教育」も求めた。

少子高齢化が進み、公的年金の受給開始年齢が引き上げられるのに伴い、定年退職後の生活資金に不安を感じる人は多い。このため生保業界は貯蓄性の保険や医療保険といった民間保険の販売を充実させている。

生保営業では、契約しやすい特定の相手から多数の契約を獲得することが問題視されている。大樹生命保険では元営業社員が一家族に対し19年間で累計46件の契約を結んだケースが発覚。かんぽ生命保険で明るみになった不正販売でも高齢者が狙われた。

金融庁は特に「あおり営業」に疑念の目を向ける。「将来は年金がどうなるかわからない」と不安をあおる一方、がんになった場合に負担を軽減できる公的な高額療養費制度があることを説明しなかったり、限られた情報しか提供しなかったりしたといった営業手法だ。

今後は、保険会社や募集人は公的保障の仕組みを正確に理解した上で、顧客のライフプラン、公的年金の受取試算額、必要となる保険の中身を丁寧に説明することが求められる。金融庁は実態把握に向けたモニタリングも強化し、説明が不十分な場合は是正を促す方針だ。

指針改正に友のない、生命保険協会も自主ガイドラインを改定し、募集人への教育や研修を充実させるなどの体制整備を進める方向だ。

ただ、業界内には「公的保険の仕組みは本来国や自治体が周知すべきではないか」、「我々に説明させるのは筋が通らない」といった声もすくぶる。金融庁は2022年に厚生労働省と連携して公的保険制度について説明するポータルサイトを作る。厚労省は個人の年金を「見える化」するため22年度から公的年金の受取試算額をインターネット上で簡単に閲覧できるようにする。

不安をあおって過剰な契約を結ばせるのは顧客本位の業務運営とは言い方が、不安の根底にある公的年金制度への根強い不信感にも同時目を向ける必要がある。

以上です。

↑道端の韮にやってきたキタテハ・夏型(昨年9月撮影)。

 

重大事由による契約解除を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた令和3年7~9月の裁定概要集(PDF)に、重大事由による契約解除を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
重大事由による契約解除を不服として、契約解除の取消しと先進医療給付金の支払を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和元年11月に白内障により、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を受けたため、令和元年5月に契約した医療保険の先進医療特約にもとづき先進医療給付金を請求したところ、告知義務違反および他社契約含め5社に重複して加入していることから重大事由に該当するとして契約が解除された。しかし、以下の理由により、契約解除を取り消して、給付金を支払ってほしい。

(1)5社の先進医療特約は、代理店の同じ募集人からほぼ同時に加入したものであり、重大事由に該当するというのであれば、契約時に募集人がその旨を伝えるべきである。

(2)5社に分散して加入した理由は、保険料と保障内容を分散させるためである。

…この事案は既に裁定打ち切りとなっています。

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、2020年3月末をもって先進医療から除外され選定療養(レンズ代が患者の自己負担になります)となっており、現在は先進医療特約の保障外です。

生命保険の医療保障は治療費の自己負担を軽減するためのものです。5社にわたってほぼ同時期に加入し、先進医療も付加するとは…保険本来の役割から逸脱していると思います。

また、募集人はなぜそのような契約を獲得したのか理解に苦しみます。所属している代理店もなぜ指摘しなかったのか?

今回の重大事由による契約解除の判断は妥当だと思います。

<事案の内容>
以下、裁定事案の内容です(令和3年7~9月裁定概要集・P44~45より転載)。

[事案2020-296]契約解除取消請求
・令和3年9月16日 裁定打切り

<事案の概要>
重大事由による契約解除を不服として、契約解除の取消しと先進医療給付金の支払を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和元年11月に白内障により、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を受けたため、令和元年5月に契約した医療保険の先進医療特約にもとづき先進医療給付金を請求したところ、告知義務違反および他社契約含め5社に重複して加入していることから重大事由に該当するとして契約が解除された。しかし、以下の理由により、契約解除を取り消して、給付金を支払ってほしい。

(1)5社の先進医療特約は、代理店の同じ募集人からほぼ同時に加入したものであり、重大事由に該当するというのであれば、契約時に募集人がその旨を伝えるべきである。

(2)5社に分散して加入した理由は、保険料と保障内容を分散させるためである。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人は、当社以外の4社から先進医療給付金を受け取っており。治療費の実学の約4倍の給付を受けている。これは先進医療保障を目的とする経済的負担軽減の範囲を超えるものであるほか、投機的行為と言え、先進医療保障制度の目的に反する。

(2)同時契約時に重大事由の該当について指摘すべきという申立人の意見は否定しないが、解除権行使を妨げるものではない。

(3)先進医療給付金は、重大事由発生以後に支払事由が発生した場合は支払わない旨が約款に記載されている。契約日の時点で先進医療の付保が5件に及んでおり、この時点で重大事由が生じたため、給付金は支払えない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況等を把握するため、申立人及び募集人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続の結果、本件を判断するためには、契約者の実際の収入及び生活状況、支払保険料の合計額、他社契約全ての給付金の支払履歴及び給付金の妥当性、各契約の加入の経緯ならびに保険契約の有無及び支払限度額等を総合的に勘案して判断しなければならず、これらの事情を明らかにするためには、第三者に対する文書送付食卓または文書提出命令あるいは尋問等の手続きが必要となるところ、当審査会はこのような手続きを有していないため、裁定手続を打ち切ることとした。

以上です。

道端の韮で吸蜜中のツマグロヒョウモン・♂(昨年8月撮影)。

入院給付金等の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和3年7~9月の裁定概要集(PDF)に、入院給付金等の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
保険期間満了を理由に、入院給付金等が支払われなかったことを不服として、給付金の支払を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
平成30年12月に前立腺の生検のために入院し、その後前立腺悪性腫瘍のため、平成31年3月から4月まで入院して手術を受けたことから、平成18年12月に契約した終身保険の入院特約等にもとづき入院給付金等を請求したところ、特約の保険期間満了後の入院・手術であることなどを理由として、給付金等が支払われなかった。しかし、以下の理由により、入院給付金等を支払ってほしい。

(1)約款では、生検で得られない場合にはほかの診断確定も認めることがあると記載されている。

また、生検による診断結果日ががんの発症日になるとの説明は受けていない。

(2)自分の場合は、生検によるがんの診断確定より90日前に、前立腺がんが発症していると考えるべきである。

(3)保険期間満了前に前立腺がんに罹患しているのであるから、以降の入院、手術等の全てについて、保険会社は給付金を支払うべきである。

…この事案は既に裁定が終了しています。

<保険会社の主張>によると、主契約の保険料払込期間までに、特約保険料の払い込みがなかったことで三大疾病保障定期保険特約は保険期間満了となり、その他の特約も約款にもとづいて終了となったようです。

特約の保障がすべて終了となった後に前立腺がんに罹患したのですから、残念ながら支払うことはできませんね。

【裁定事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年7~9月裁定概要集・P29~30より転載)。

[事案2020-258]入院給付金等支払請求
・令和3年7月7日 裁定終了

<事案の概要>
保険期間満了を理由に、入院給付金等が支払われなかったことを不服として、給付金の支払を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
平成30年12月に前立腺の生検のために入院し、その後前立腺悪性腫瘍のため、平成31年3月から4月まで入院して手術を受けたことから、平成18年12月に契約した終身保険の入院特約等にもとづき入院給付金等を請求したところ、特約の保険期間満了後の入院・手術であることなどを理由として、給付金等が支払われなかった。しかし、以下の理由により、入院給付金等を支払ってほしい。

(1)約款では、生検で得られない場合にはほかの診断確定も認めることがあると記載されている。

また、生検による診断結果日ががんの発症日になるとの説明は受けていない。

(2)自分の場合は、生検によるがんの診断確定より90日前に、前立腺がんが発症していると考えるべきである。

(3)保険期間満了前に前立腺がんに罹患しているのであるから、以降の入院、手術等の全てについて、保険会社は給付金を支払うべきである。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)主契約の保険料払込期間(平成30年11月)までに特約保険料の払込みがなかったことから、3大疾病保障定期保険特約は同日をもって保険期間満了で終了し、その他の特約についても本契約の約款上、同日に終了した。

(2)申立人の入院および手術は、いずれも「特約の保険期間中」の入院および手術には該当しないため、給付金の支払事由には該当しない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、本契約の保険期間満了時の状況等を把握するため、申立人ならびに担当者および上席者に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続の結果、入院給付金等の支払いは認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

道端の韮の花粉を食べるアシグロツユムシ・♂(昨年8月撮影)。

オリックス生命の第2四半期業績。

11月26日、オリックス生命保険はHPにて、第2四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

11/26・プレスリリース 2021年度第2四半期(上半期)決算報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は堅調に増加

個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比でいずれも増加していました。

また、医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比で増加していました。

今期も保有契約は堅調に増加したことが伺えます。

2.新契約は大幅減
個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期比67.5%、50.5%、67.1%と二桁の減少でした。

また、医療保障・生前吸保障等の新契約年換算保険料は前年同期比56.8%と二桁の減少でした。

新契約はかなり苦戦したことが伺えます。

【主要業績の内容】
以下、オリックス生命の主要業績の内容です(上記プレスリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約 ( )内は前年度実績
1)件数

・個人保険…484万1000件 (468万3000件)

・個人年金保険…10万件 (11万2000件)

2)契約高
・個人保険…14兆1231億円 (13兆8325億円)

・個人年金保険…3616億円 (4396億円)

・団体保険…6804億円 (6191億円)

〇新契約
1)件数

・個人保険…17万件 前年同期比67.5%

2)契約高
・個人保険…5182億円 前年同期比50.5%

〇年換算保険料
1)保有契約 ( )内は前年度実績

・個人保険…3255億円 (3092億円)

・個人年金保険…445億円 (480億円)

・個人保険+個人年金保険…3700億円 (3572億円)

うち医療保障・生前給付保障等…2092億円 (1991億円)

2)新契約
・個人保険…144億円 前年同期比67.1%

うち医療保障・生前給付保障等…92億円 前年同期比56.8%

〇保険料等収入、保険金等支払金、当期純利益 ( )内は前年度実績。▲はマイナス
・保険料等収入…2191億円 前年同期比83.2%

・保険金等支払金…1191億円 前年同期比121.6%

・当期純利益…▲12億円 (▲65億円)

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度実績及び数値。▲はマイナス
・基礎利益…7億円 (▲116億円)

・ソルベンシー・マージン比率…1497.3% (1588%)

以上です。

↑車にひかれたショウリョウバッタの死骸を食べるヤマトオサムシ(8月撮影)。

 

アフラックの第2四半期業績。

11月24日、アフラック生命保険はHPにて2021年度第2四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

11/24・ニュースリリース 2021年度第2四半期(上半期)報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約の減少止まらず

個人保険全体の保有契約件数、がん保険及び医療保険の保有契約件数は、いずれも前年同期末比で減少していました。

また、個人保険全体及び医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比で減少していました。

今期も保有契約の減少が止まっていません。

2.新契約に回復傾向
個人保険全体の新契約件数は前年頭期比106.8%と久々に増加していました。

がん保険の新契約件数は前年同期比92.9%と減少していましたが、医療保険の新契約件数は前年同期比141.2%と二桁の増加でした。

個人保険全体の新契約年換算保険料は前年同期比117.2%、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比118.3%とこちらも久々の増加となっていました。

2019年夏に発覚したかんぽ生命の不正契約問題以降、新契約・保有契約の減少が続いてきた同社ですが新契約ではようやく回復傾向が出てきましたね。

【主要業績の内容】
以下、アフラックの主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約件数
・個人保険…2358万4000件 (2401万4000件)

・個人年金32万5000件 (32万8000件)

・個人保険+個人年金保険…23910万件 (2434万3000件)

うちがん保険…1515万8000件 (1545万8000件)

うち医療保険…581万2000件 (589万件)

〇新契約件数
・個人保険…40万6000件 前年同期比106.8%

うちがん保険…24万1000件 前年同期比92.9%

うち医療保険…13万5000件 前年同期比141.4%

〇年換算保険料
1)保有契約 ( )内は前年度実績

・個人保険…1兆2825億円 (1兆3090億円)

・個人年金保険…889億円 (880億円)

・個人保険+個人年金保険…1兆3714億円 (1兆3970億円)

うち医療保障・生前給付保障等…1兆379億円 (1兆569億円)

2)新契約
・個人保険…240億円 前年同期比117.2%

・個人保険+個人年金保険…240億円 前年同期比117.2%

うち医療保障・生前給付保障等…218億円 前年同期比118.3%

〇経常利益、基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・経常利益…1358億円 前年同期比118.9%

・基礎利益…1891億円 前年同期比111.6%

・ソルベンシー・マージン比率…970.1% (954.1%)

以上です。

↑8月に撮影したオニヤンマ・♀。

 

ソニー生命の第2四半期業績。

11月12日、ソニー生命保険はHPにて、2021年度第2四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

11/12・ニュースリリース 2021年度第2四半期(上半期)業績のご報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は堅調に増加

個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比101.4%、104.4%、103.3%といずれも増加していました。

また、個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比151.9%、154.1%、182.6%といずれも二桁増でした。

医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比101.1%とこちらも増加していました。

今期も保有契約が堅調に増加したことがうかがえます。

2.新契約は二桁増
個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期比132.2%、157.2%、173.2%といずれも二桁増でした。

また、個人年金保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期比206%、201.9%、207.4%といずれも倍増でした。

医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比141.2%とこちらも二桁増でした。

業績の大幅増加の主な要因は、4月に100%連結子会社だったソニーライフ・ウィズ生命保険を吸収合併したことを反映したためです。

【主要業績の内容】
以下、ソニー生命の主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約
1)件数

・個人保険…785万件 前年同期末比101.4%

・個人年金保険…75万4000件 前年同期末比151.9%

・個人保険+個人年金保険…860万5000件 前年同期末比104.5%

2)契約高
・個人保険…51兆1319億円 前年同期末比104.4%

・個人年金保険…4兆5807億円 前年同期末比154.1%

・個人保険+個人年金保険…55兆7127億円 前年同期末比107.2%

・団体保険…1兆5859億円 前年同期末比93.6%

・団体年金…57億円 前年同期末比84.8%

〇新契約
1)件数

・個人保険…21万6000件 前年同期比132.2%

・個人年金保険…10万件 前年同期比206%

・個人保険+個人年金保険…31万7000件 前年同期比149.2%

2)契約高
・個人保険…2兆6450億円 前年同期比157.2%

・個人年金保険…6775億円 201.9%

・個人保険+個人年金保険…3兆3226億円 前年同期比164.6%

・団体保険…38億円 前年同期比136.9%

〇年換算保険料
1)保有契約

・個人保険…8794億円 前年同期末比103.3%

・個人年金保険…1401億円 前年同期末比182.6%

・個人保険+個人年金保険…1兆195億円 前年同期末比109.9%

うち医療保障・生前給付保障等…2111億円 前年同期末比104.3%

2)新契約
・個人保険…367億円 前年同期比173.2%

・個人年金保険…155億円 前年同期比207.4%

・個人保険+個人年金保険…523億円 前年同期比182.1%

うち医療保障・生前給付保障等…66億円 前年同期比141.2%

〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、中間利益 ( )内は前年度実績。▲はマイナス
・保険料等収入…6888億円 前年同期比120.2%

・保険金等支払金…3062億円 前年同期比139%

・経常利益…167億円 前年同期比51.2%

・中間純利益…▲42億円 (224億円)

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…682億円 前年同期比99.2%

・ソルベンシー・マージン比率…2313% (2352%)

以上です。

↑7月に撮影したカブトムシ。

 

金融庁、適正な保険募集管理体勢等のさらなる強化を図るよう、監督指針の改正案を発表。

10月15日、金融庁はHPにて、保険会社向けの総合的な監督指針の改正案を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 10/15・報道発表資料 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について

    【管理人の感想】
    今回の監督指針の改正案について、金融庁は次のように述べています。

    < 金融庁では、「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)を別紙のとおり取りまとめましたので、公表します。

    保険会社や保険募集人等が保険募集を行う際には、顧客の意向を把握し、意向に沿った保険契約の提案を行うことが重要です。

    今般、この点について、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑み、保険募集人等が公的保険制度について適切に理解をし、そのうえで、顧客に対して、公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことによって、顧客が自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を理解したうえでその意向に沿って保険契約の締結がなされることが図られているかという点などを監督上の着眼点として明確化するものです。

    なお、厚生労働省において、個々人の年金の「見える化」のための取組みとして、公的年金の受取見込み額を簡易に試算できるWebページについて令和4年度の運用開始予定に向けて準備中です。この監督指針改正案の趣旨を踏まえ、当庁としては同省との連携にも取り組んでいくことを予定しており、こうしたツールを活用することも考えられます。>

    保障額の設定において、公的保険制度を踏まえるのは当たり前のことです。金融庁はそれなぜ監督指針に盛り込んできたのでしょうか?ひょっとしたら、これまでの募集管理態勢の監督指針では不十分だったと判断したのかもしれません。

    【改正案の概要】
    以下、監督指針の改正案の概要です(金融庁報道資料「別紙1(PDF)」より抜粋転載)。※下線部が改正箇所です。

    Ⅱ監督上の評価項目

    Ⅱ-4-2-1 適正な保険募集管理態勢の確立

    (1)~(3)(略)

    (4)特定保険募集人等(特定保険募集人及び損害保険会社の保険募集を専ら行う従業員をいう。Ⅱ-4-2-1(4)において同じ)の教育・管理・指導
    保険会社においては、保険募集に関する法令等の順守、保険契約に関する知識、内部事務管理体制の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則に定めて、特定保険募集人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導を行っているか。

    ①特定保険募集人等の教育について
    特定商品の特性に応じて、顧客が十分に理解できるよう、多様化した保険商品に関する十分な知識や保険契約に関する知識の付与及び適切な保険募集活動のための十分な教育を行っているか。

    また、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑みて、公的保険制度に関する適切な理解を確保するための十分な教育を行っているか。

    ②・③(略)

    Ⅱ-4-2-2 保険契約の募集上の留意点

    (1)・(2)(略)

    (3)法第294条の2関係(意向の把握・確認義務)
    保険会社または保険募集人は、法第294条の2の規定に基づき、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際して、顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行っているか。

    ①意向把握・確認の方法
    意向把握・確認の方法については、顧客が、自らのライフプランや公的保険制度を踏まえ、自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を適切に理解しつつ、その意向に保険契約の内容が対応しているかどうかを判断したうえで保険契約を締結するよう図っているか。そのために、公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行うなど、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、保険会社又は保険募集人の創意工夫による方法で行っているか。

    以上です。

↑カブトムシの激闘(7月撮影)。

 

特定治療通院給付金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和3年4~6月の裁定概要集(PDF)に、特定治療通院給付金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
約款所定の化学療法を受けたとして、特定治療通院給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
骨髄異形成症候群の治療のために化学療法を受けたことから、平成17年3月に契約したがん保険に付加された特約にもとづき、特定治療通院給付金を請求したところ、自分の受けた治療は、約款上の化学療法に該当しないとして支払われなかった。しかし、以下の理由により、特定治療通院給付金を支払ってほしい。

(1)平成26年1月ごろから現在まで、「ネスプ」という薬剤の投与(注射)を受ける目的で、1週間に1回程度病院に通院しており、同薬剤は約款上の化学療法に当たる。

(2)保険会社に問い合わせたところ、「ネスプ」の投与を目的とする通院が特定治療通院給付金の支払要件に当たるとの回答を得た。

…この事案は既に裁定が終了しています。

なぜ給付金の支払対象とならなかったのか?それはネスプが「腎性貧血の治療」と「骨髄異形成症候群による貧血」の治療に使われる薬だからです。これでは約款の支払事由に該当しません。

保険会社の支払査定は妥当ですね。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年4~6月裁定概要集・P40より転載)。

<事案の概要>
約款所定の化学療法を受けたとして、特定治療通院給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
骨髄異形成症候群の治療のために化学療法を受けたことから、平成17年3月に契約したがん保険に付加された特約にもとづき、特定治療通院給付金を請求したところ、自分の受けた治療は、約款上の化学療法に該当しないとして支払われなかった。しかし、以下の理由により、特定治療通院給付金を支払ってほしい。

(1)平成26年1月ごろから現在まで、「ネスプ」という薬剤の投与(注射)を受ける目的で、1週間に1回程度病院に通院しており、同薬剤は約款上の化学療法に当たる。

(2)保険会社に問い合わせたところ、「ネスプ」の投与を目的とする通院が特定治療通院給付金の支払要件に当たるとの回答を得た。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)約款上「化学療法」とは、がんの破壊や発育増殖の抑制を目的とした治療法をいうが、申立人の受けた「ネスプ」投与はこれに該当しない。

(2)申立人からの問い合わせに対して、「ネスプ」の投与を目的とする通院が特定治療通院給付金の支払対象になると回答したことはない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された主張書面および証拠の検討に加え、和解を相当とする事情の有無を確認するため、申立人に対して事情聴取を行った。また、独自に外部の専門医の意見を求め、医学的判断の参考にした。

2.裁定結果
上記手続きの結果、約款所定の化学療法を受けたことを認めることはできず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続きを終了した。

以上です。

6月に撮影したキリギリス・♂。