生命保険の平準払い商品の予定利率が上がらないわけとは?日経報道。

3月14日の日本経済新聞朝刊に、生命保険の平準払い商品の予定利率と標準利率についての記事がありました。

記事によりますと、

< 生命保険会社が保険料を分割で払う商品の予定利率(契約者に約束する利回り)を容易に上げられないでいる。日本生命保険は当面利率を据え置く方針のほか、第一生命保険は予定利率と別の種類の商品にシフトしている。一般的に保険商品の予定利率は市場金利と連動して決めるはずだが、なぜ上げられないのか。

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 制約となっているのが、標準利率だ。標準利率は保険金の支払いに備えて用意する責任準備金の積立に用いる利率。予定利率は各社の判断にゆだねられるが、標準利率より高くし過ぎると多くの責任準備金を計上しなければならず、会社側の負担が増す。>

とのことです。

今回の記事は、契約者が保険料を「月払い」「半年払い」「年払い」といった方式(「平準払い」と言います)で支払う保険商品の、保険料の計算基礎率のひとつである「予定利率」が引き上げられない理由について書いたものです。

予定利率が引き上げられない理由は記事中で明らかにされているように、将来の保険金の支払いに備えて積み立てておくことが義務付けられているお金(「標準責任準備金」と言います)の計算基礎率のひとつである「予定利率(標準利率と表現されています)」が、過去最低の0.25%のままだからです。

標準利率は法律を背景にした計算基礎率であり、一に安全、二に安全(つまり保守的)で設定されています。予定利率も保守的であることが求められていますが、保険商品が売れること・安全面・標準責任準備金の計上が可能な水準-を考慮して決定されます。

そのため、標準利率と予定利率は必ずしも一致しません。例えば、標準利率が0.25%であっても予定利率は0.65%という具合です。

【記事の内容】

以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2024年3月14日朝刊-

【生保の利上げに壁】

 生命保険会社が保険料を分割で払う商品の予定利率(契約者に約束する利回り)を容易に上げられないでいる。日本生命保険は当面利率を据え置く方針のほか、第一生命保険は予定利率と別の種類の商品にシフトしている。一般的に保険商品の予定利率は市場金利と連動して決めるはずだが、なぜ上げられないのか。

 貯蓄性の保険には保険料を一括で納める一時払い商品と月払いなど分割で納める平準払い商品の2種類がある。平準払い商品は保険料の総額では一時払い商品より高くなるが、まとまった資金がなくても加入でき、生命保険料控除を払込期間中は毎年受けられる。

 大手を含めて各社が機動的に利率を引き上げている一時払い商品とは対照的に、平準払い商品の利率引き上げの動きが鈍い。日本生命は個人年金保険の予定利率を0.6%からしばらく据え置く方針だ。「引き上げるかどうか検討する時期にも来ていない」(首脳)。円建一時払終身保険では1月にそれまでの0.6%から1%に引き上げている。

 制約となっているのが、標準利率だ。標準利率は保険金の支払いに備えて用意する責任準備金の積立に用いる利率。予定利率は各社の判断にゆだねられるが、標準利率より高くし過ぎると多くの責任準備金を計上しなければならず、会社側の負担が増す。

 標準利率は金融庁が告示で決める。平準払い商品では10年国債の応募者利回りの過去3年平均と過去10年平均のいずれか低い方、一時払い商品では10年国債の流通利回りの過去3ヵ月平均と過去1年平均のいずれか低い方を基準に設定する。

 平準払い商品に適用する標準利率は17年4月以降0.25%が続いている。市場金利から将来の金利を予測する手法を用いて試算すると、標準利率が引き上げられるのは30年4月になる見通しだ。一時払終身保険の標準利率は24年1月に0.75%に引き上げられている。

 30年4月の推定標準利率0.75%も2%近い市場金利とは大きく乖離する。ある中堅生保幹部は「日銀が人為的に低く抑えつけてきた金利を標準利率の計算に用いるのは実態に合っていない」と不満を口にする。

 一部では予定利率に見切りをつける動きも出ている。第一生命保険は23年12月から、グループの資産運用会社が独自に開発した指数に連動して受取額が変わる円建平準払いの個人年金保険を販売している。従来の予定利率型の個人年金保険は3月で販売を停止する※。

※管理人補足:昨年12月に投入された第一生命の個人年金保険の計算基礎率に、予定利率を用いていないかのような文章ですが、管理人が確認した限りこれは誤りです。独自に開発した指数が用いられるのは、年金原資(基本年金原資+指数連動年金原資)のうちの指数連動年金原資のみです。

 一般的に指数連動型の場合は予定利率型に比べて会社側の運用リスクを抑えられる。第一生命幹部は「今後の金利上昇を見据えて、利率を固定するのは契約者にとっても好ましくない」と主張する。指数がどう連動するかなど予定利率型に比べて商品性が分かりづらいといった課題もある。

 一方では負担を覚悟で予定利率の引き上げに動く生保もある。富国生命は4月から個人年金保険の予定利率を9年ぶりに現行の0.65%から最大1.35%に引き上げる。責任準備金の負担は百数十億円程度増える見込みだが、主力の保障性商品の販売強化に向けた顧客接点獲得の起爆剤にしたい考えだ。

 金融庁の担当者は「過去に逆ザヤを引き起こした教訓もあり、健全性確保の観点から標準利率の計算方法を変える予定は現時点でない」と述べる。金利上昇でも0.25%から動かない標準利率を前提に、各社は今後の商品揮発戦略を練る必要がある。

以上です。

↑ミチタネツケバナにやってきたスジグロシロチョウ(3月撮影)。

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