新型コロナウイルス感染症に伴う、入院給付金支払額は約9860億円。支払事由の95%以上は「みなし入院」。

5月9日の日本経済新聞朝刊に、新型コロナウイルス感染症に伴う入院給付金の支払額などに関する記事がありました。

記事によると

< 日本生命保険など生命保険各社は8日から、新型コロナウイルスの感染者が自宅で療養する「みなし入院」でも入院給付金を支払う特例を廃止した。新型コロナの法律上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行したことに伴う措置だ。各社が2023年3月末までに支払った新型コロナによる入院給付金は1兆円弱にのぼる。

 …

 実際に入院した場合には引き続き給付金を受け取れる。新型コロナへの感染を理由に死亡した場合に保険金を割増で受け取れる特約※も、多くの会社では8日から対象外となった。

 生命保険協会によると各社が23年3月までに支払った新型コロナによる入院給付金は約9860億円でそのうち95%以上がみなし入院となっている。支払のピークは既に過ぎているが、各社の23年3月期の業績に影響を与えたとみられる。>

※災害死亡給付特約等のことを指しています。

とのことです。

【管理人の感想】
新聞報道や生命保険各社のニュースリリースなどですでにご承知のことと存じますが、5月8日を以て、感染症法における新型コロナウイルス感染症の位置づけが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に変更されました。

これに伴い、昨年9月から、対象を絞り込んで運用されてきた、入院給付金の特別取り扱いなどが終了しました。また、同時に災害死亡保険金等の支払対象からも、新型コロナウイルス感染症は除外されました。

しかし、新型コロナウイルス感染症の治療薬が薬価面で高額であること等、季節性インフルエンザと同じ病になったわけではないと指摘する意見があります。

油断することなく日常生活を送りたいものです。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

【生保、コロナ給付1兆円弱。 3月時点 「みなし入院」特例は廃止】
 日本生命保険など生命保険各社は8日から、新型コロナウイルスの感染者が自宅で療養する「みなし入院」でも入院給付金を支払う特例を廃止した。新型コロナの法律上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行したことに伴う措置だ。各社が2023年3月末までに支払った新型コロナによる入院給付金は1兆円弱にのぼる。

 7日までは、①65歳以上②入院を必要とする③新型コロナウイルス感染症の治療薬を投与する必要がある③妊婦-のいずれかに該当する場合にみなし入院の支払対象となっていた。8日以降に新型コロナウイルス感染症と診断された場合には支払いの対象外となる。

 実際に入院した場合には引き続き給付金を受け取れる。新型コロナへの感染を理由に死亡した場合に保険金を割増で受け取れる特約も、多くの会社では8日から対象外となった。

 生命保険協会によると各社が23年3月までに支払った新型コロナによる入院給付金は約9860億円でそのうち95%以上がみなし入院となっている。支払のピークは既に過ぎているが、各社の23年3月期の業績に影響を与えたとみられる。

以上です。

↑道端の馬酔木にやってきた越冬明けの天狗蝶(3月撮影)。

入院・手術給付金等の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和4年10~12月の裁定概要集(PDF)に、入院・手術給付金等の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によると、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 給付金請求をしたところ、医療機関への確認に同意するよう求められたこと等を不服として、入院・手術給付金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 子宮筋腫により入院し手術を受けたことから、令和元年5月に契約した組立型保険にもとづき入院給付金等を請求したところ、調査会社による調査を実施するための同意書の提出を求められた。しかし、以下等の理由により、同意書を提出することなく、入院・手術給付金および遅延損害金並びに精神的苦痛に対する慰謝料を支払ってほしい。

(1)子宮筋腫で経過観察中であったが、医師から子宮筋腫についての特別の危険性を指摘されたことや何らかの処置を受けたことはないから、告知は不要である。

(2)仮に告知が必要であったとしても、告知にあたって募集人からは「特別な治療を行っていないのであれば問題ない」と不告知教唆または告知妨害を受けている。

【管理人の感想】
この事案は既に和解が成立しています。

申立人の子宮筋腫は、告知すべき病気のひとつとして告知書に記載されていて、それを告知しなかった以上、告知義務違反となるのは当然でしょう。

募集人も申立人から聞いていたのですから、病気の状態や経過観察に至る経緯などをできるだけ詳細に告知するようアドバイスすべきだったと思います。

保険会社は、保険金や給付金の請求時に必要があれば事実確認を行い、その際、契約者・被保険者・保険金や給付金の受取人に対して同意を求めます。もし、正当な理由なく事実確認を妨げたり、同意を拒めば、事実確認が終わるまで保険会社は保険金や給付金を支払いません。

事実確認等についてはご契約のしおりに以下のように明記※されています。

※N・F生命保険会社の終身医療保険のケース。

〇事実の確認

・当社の担当者または当社が委託した担当者が、ご契約のお申込内容やご請求内容などについて確認させていただく場合があります。また、治療の経過・内容、事故状況などについて、医療機関等に確認する場合があります。

・その場合、お支払いや保険料払込の免除ができるか否かの判断および内容の決定までに、確認先の事情により異なりますが、1ヵ月程度お時間をいただくことがあります。

・確認の実施にあたりましては、当社から改めて通知させていただきます。


〇お支払いまでにかかる期間

・給付金等の支払金は、請求に必要な不備のない書類が当社に着いた日の翌日からその日を含めて5営業日以内にお支払います。

・ただし、事実の確認等が必要なときは、請求に必要な不備のない書類が当社に着いた日の翌日からその日を含めて60日以内にお支払います。

・また、事実の確認等を行うための特別な照会や調査が必要なときは、請求に必要な不備のない書類が当社に着いた日の翌日からその日を含めて180日以内にお支払いします。

※事実の確認等に際し、保険契約者・被保険者・給付金の受取人が正当な理由なくその確認等を妨げ、又は確認等に応じなかったときは、当社はこれにより確認等が遅延した期間の遅滞の責任を負わず、事実の確認が終わるまで給付金をお支払いしません。

※保険料払込の免除についても、給付金等のお支払いに準じたお取り扱いとなります。

さて、今回の事案は入院・手術給付金等が支払われた上で、告知義務違反が認められ女性疾病特約が解除されています。

この取り扱いは

給付金の支払事由や保険料払込の免除事由が、解除の原因となった事実によらない場合には、給付金をお支払いし、または保険料のお払込みを免除します。

という規定に基づくものです。しかし今回の事案は、給付金の支払事由が解除の原因となった事実のはずです。そのようなケースでは、契約解除で給付金等は支払われず、既に支払った場合は返還を求めます。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和4年10~12月裁定概要集・P38~39より転載)。

[事案2020-331]入院・手術給付金等支払請求
・令和4年12月8日 和解成立

<事案の概要>
 給付金請求をしたところ、医療機関への確認に同意するよう求められたこと等を不服として、入院・手術給付金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 子宮筋腫により入院し手術を受けたことから、令和元年5月に契約した組立型保険にもとづき入院給付金等を請求したところ、調査会社による調査を実施するための同意書の提出を求められた。しかし、以下等の理由により、同意書を提出することなく、入院・手術給付金および遅延損害金並びに精神的苦痛に対する慰謝料を支払ってほしい。

(1)子宮筋腫で経過観察中であったが、医師から子宮筋腫についての特別の危険性を指摘されたことや何らかの処置を受けたことはないから、告知は不要である。

(2)仮に告知が必要であったとしても、告知にあたって募集人からは「特別な治療を行っていないのであれば問題ない」と不告知教唆または告知妨害を受けている。

<保険会社の主張>
 以下等の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)医療機関への確認について申立人の同意が得られないため、告知義務違反への該当有無及び支払事由の発生有無を判断するための確認ができない。

(2)申立人によれば、告知日より前に婦人科検診を受診し、子宮筋腫の指摘を受け、3年ほど定期検診を受けるように言われたとのことであり、これを前提とした場合、告知義務違反があったことになる。

(3)申立人によれば、平成30年2月に市の無料検診を受診し、小さい筋腫があると指摘を受けて、その後半年に1回検査を受けていたとのことであり、これを前提とした場合、責任開始期前に発症したと判断され、約款上の支払対象に該当しない可能性がある。

(4)募集人が告知妨害または不告知教唆を行った事実は認められない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、告知時の状況等を把握するため、申立人および募集人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
 上記手続中、申立人からカルテ等の医的資料が提出された結果、入院・手術給付金等は支払われたが、告知義務違反があったとして女性疾病特約が解除された。

 裁定審査会では、申立人に告知義務違反が認められる一方、募集人による告知妨害または不告知教唆は認められないものの、以下の理由により、和解により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、手続を終了した。

(1)募集人は、告知にあたって、申立人から子宮筋腫があることを聞いていたことを認めているが、同疾病が、告知が必要な病気として告知書に記載されていたことを踏まえると、募集人としては、申立人に対してもう少し丁寧な対応が望まれたと考える。

以上です。

↑3月下旬に撮影した枝垂桜。

生保各社、新型コロナウイルス感染症に伴う、入院給付金・保険金の特別取扱終了を決定。5月8日から「みなし入院」は支払い対象外。

新型コロナウイルス感染症を5月8日を以て、季節性インフルエンザと同じ、「5類感染症」に感染症法上の位置付けを変更する政府方針が示されたことに伴い、4月12日以降、生命保険各社は新型コロナウイルス感染症に伴う、入院給付金や保険金の特別取扱の終了を発表*しました。

*弊社が取り扱っている保険会社のひとつ、ソニー生命保険は4月13日にHP上で以下のように発表しました。

(新型コロナウイルス感染症) 保険金・給付金請求の特別取扱の終了について(PDF)

2020年に入院給付金や保険金の特例措置が各社共通で実施されてから約3年…感染症法上の位置付け変更を以て通常の取扱いになります。そのため、「みなし入院」は給付金の支払い対象外となります。

また、この位置付け変更に伴い、災害死亡保険金等の支払い対象から「新型コロナウイルス感染症を原因とする死亡」は除外されます。

なお、詳細はご自身が加入されている生命保険会社のHPで必ずご確認ください。

入院給付金等の支払いにおける特例措置は、新型コロナウイルス感染症に罹患した契約者・被保険者を経済的に支えることに大きく寄与したものと考えていますが、一方で、逆選択や入院一時金等の金額を著しく高額に設定して契約申し込みを行うーなどの問題が明らかになりました。

そのため、弊社が取り扱っている大手国内生保では自発的申し込みを事実上断る措置を出したほどです。

これから先、新型感染症のパンデミックが生じたら、再び入院給付金等の特別取扱が実施される可能性はあるでしょう。その際、生保各社は新型コロナウイルス感染症のときに生じた逆選択等のバッドリスク混入、あるいは混入の恐れをどう防ぐかが問われることにもなるかと思います。

↑成虫越冬から目覚め、吸水中のキタテハ・秋型(2月撮影)。