がんにかかる3つのお金。

10月9日の日本経済新聞朝刊に、がん治療における経済的負担に関する記事がありました。

記事によりますと、

< …

厚労省の医療給付実態調査(19年度)を見ると、がん1件当たりの診療日は、入院が約77万円で入院外(外来など)は約6万3000円となっている。これは全国健康保険協会(協会けんぽ)の数字だが、健保組合や国民健康保険でも入院は70~80万円、入院外が6万円台で、大きな差はない。部位別では、胃がんは入院が約69万円で入院外が4万円、肺がんは同約77万円と約12万円。女性が多い乳がんは同約59万円と約6万円だ。血液のがんである白血病などは金額が上がる。

全日本病院協会の調査では、入院費用肺がんで約94万円で肺がんが約86万円。乳がんは約78万円となっている(20年度、急性期)。重症度別のデータもあり、胃がんなどではステージ0からステージ1、2と進行すれば金額が増える。早期発見できれば、費用は少なく済むことがわかる。

これらの金額は「いずれも保険適用前なので実際の窓口負担は1~3割になる」とファイナンシャルプランナー(FP)の氏家祥美氏は話す。がんの種類にもよるが、100万円未満で済むことが多いので、3割負担の現役世代なら計算上は30万円程度あれば足りる。しかも「高額療養費制度を利用できれば、さらに負担を圧縮できる」(氏家氏)。年齢や収入にもよるが、10万円未満に収まることもありそうだ。

ただ、治療にかかるお金は病院に払う医療費にとどまらない。乳がんの経験者であるFPの黒田尚子氏は、がんにかかるお金は(1)病院に支払う医療費(2)病院に支払うその他のお金(3)病院以外に支払うお金-の合計だと説明する。(2)は差額ベッド代や食事だ、先進医療や診断書作成費用などで保険適用外だ。(3)は通院のための交通費や宿泊費、医療用のかつらや健康食品の代金などが当てはまる。こちらも保険の適用はない。「病院に支払う医療費が高額だと思っている人は多いが、がん経験者では保険適用外の費用が高かったと話とが目立つ」(黒田氏)

病院に払う医療費が10万円程度で収まっても保険適用外の費用が加わる。病院以外に払うお金は平均で年間約55万円かかったという患者アンケートもある。黒田氏は3つのお金を合わせて「最初にがんが見つかった時の目安は年間100万円。その後に再発・転移をしたり、末期状態で緩和ケア病棟に入ったりすれば、同額か、それ以上の金額がそれぞれかかる」と説明する。>

とのことです。

【管理人の感想】
治療費の負担を軽減する手段は、高額療養費制度だけではありません。がんと診断確定されたときに限度額適用認定証を取得し、それを医療機関の窓口に提示すれば、3割負担で治療費の支払は済みます。

ただ、そうした方法で負担を軽減しても「足りない」と経済的負担に悩んでいる方の話をお客様から聞きました。その方は職場の同僚で、働きながらがん治療を行っていたそうです。

保険営業の立場から申せば、生命保険というリスクヘッジの手段を積極的に活用していただいたいものです。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2021年10月9日朝刊-

【がんの費用、傾向を知る】
東京都に住む会社員のAさん(50)は2年前に胃がんと診断された。早期発見だったので内視鏡治療でがんを切除、医療費の支払いは2万円程度で済んだ。最近の定期検査で再発が見つかり、医師からは今後のリスクを考え、開腹手術を勧められている。抗がん剤の治療も必要で、仕事への影響や医療費の増加に不安を感じているという。

9月はがん征圧月間、10月はピンクリボン運動で知られる乳がん月間と、毎年この時期はがんの啓発キャンペーンが続く。背景には患者の多さがある。国立がん研究センターの統計では、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性が65%で女性が50%。男女ともに2人に1人はがんになる計算だ。厚生労働省の2020年の人口統計によれば、悪性新生物(がん)は死亡総数の28%を占め、2位以下を大きく引き離す。1981年から死因の1位はずっとがんが続いている。

がんは一般に年齢が上がると患者が増える。近年、患者数や死亡数が増加しているのは人口の高齢化によるものとされる。種類別では大腸がんが最も多く、胃がん、肺がんが続く。部位によって違いはあるものの、現在では5年生存率が6割を超え、「がん=死」のイメージは以前より低下している。半面、医療の進歩などで治療は長期化、高額化しているといわれる。今後の家計を考えるなら、負担がどの程度なのか頭に入れておく必要がありそうだ。

厚労省の医療給付実態調査(19年度)を見ると、がん1件当たりの診療日は、入院が約77万円で入院外(外来など)は約6万3000円となっている。これは全国健康保険協会(協会けんぽ)の数字だが、健保組合や国民健康保険でも入院は70~80万円、入院外が6万円台で、大きな差はない。部位別では、胃がんは入院が約69万円で入院外が4万円、肺がんは同約77万円と約12万円。女性が多い乳がんは同約59万円と約6万円だ。血液のがんである白血病などは金額が上がる。

全日本病院協会の調査では、入院費用肺がんで約94万円で肺がんが約86万円。乳がんは約78万円となっている(20年度、急性期)。重症度別のデータもあり、胃がんなどではステージ0からステージ1、2と進行すれば金額が増える。早期発見できれば、費用は少なく済むことがわかる。

これらの金額は「いずれも保険適用前なので実際の窓口負担は1~3割になる」とファイナンシャルプランナー(FP)の氏家祥美氏は話す。がんの種類にもよるが、100万円未満で済むことが多いので、3割負担の現役世代なら計算上は30万円程度あれば足りる。しかも「高額療養費制度を利用できれば、さらに負担を圧縮できる」(氏家氏)。年齢や収入にもよるが、10万円未満に収まることもありそうだ。

ただ、治療にかかるお金は病院に払う医療費にとどまらない。乳がんの経験者であるFPの黒田尚子氏は、がんにかかるお金は(1)病院に支払う医療費(2)病院に支払うその他のお金(3)病院以外に支払うお金-の合計だと説明する。(2)は差額ベッド代や食事だ、先進医療や診断書作成費用などで保険適用外だ。(3)は通院のための交通費や宿泊費、医療用のかつらや健康食品の代金などが当てはまる。こちらも保険の適用はない。「病院に支払う医療費が高額だと思っている人は多いが、がん経験者では保険適用外の費用が高かったと話とが目立つ」(黒田氏)

病院に払う医療費が10万円程度で収まっても保険適用外の費用が加わる。病院以外に払うお金は平均で年間約55万円かかったという患者アンケートもある。黒田氏は3つのお金を合わせて「最初にがんが見つかった時の目安は年間100万円。その後に再発・転移をしたり、末期状態で緩和ケア病棟に入ったりすれば、同額か、それ以上の金額がそれぞれかかる」と説明する。

こうした負担を患者は同工面しているのか。国立がん研究センターが実施した「患者体験調査」(18年)によれば、病院で医療を受けるための金銭的負担が原因で約27%が、日常生活での節約や貯金の取り崩し、家族の竜郎像、借金などの対応をしたと答えている。おおい準に「貯金を取り崩した」(20%)、「日常生活における食費、医療費を削った」(8%)、「親戚や他人から金銭的援助を受けた」(3.6%)となっている(複数回答)。

治療費はやはり預貯金で備えるのが基本になる。ただ、がんは治療が長引けば出費が膨らむだけでなく、仕事に影響が出て収入が減る懸念もある。元看護士でがん患者専門に相談業務をするFPの黒田ちはる氏は「治療は公的制度の活用を根底に、就労などによる収入や貯蓄などの自助努力で賄いたい。まずは自分が利用できる制度を知ることが大切」と話す。

経済的に困りそうなら、がん保険など民間の保険に入るのも一案だ。若くて十分な備えがない人や一家の大黒柱で家族を多く抱える人などが該当しそうだ。「傷病手当金がないなど会社員に比べ、公的な支援が薄い自営業者やフリーランスで働く人も保険の必要性が高い」(黒田ちはる氏)。

重要なのは定期的に検診を受けるなど日ごろから健康管理を心がけることだ。仮にがんになっても早期で見つかり、適切な治療を受ければ再発リスクは低下する可能性がある。結果として体や家計にかかる負担は小さくなりそうだ。

以上です。

↑7月に撮影したノコギリクワガタ。

金融庁、適正な保険募集管理体勢等のさらなる強化を図るよう、監督指針の改正案を発表。

10月15日、金融庁はHPにて、保険会社向けの総合的な監督指針の改正案を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 10/15・報道発表資料 「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について

    【管理人の感想】
    今回の監督指針の改正案について、金融庁は次のように述べています。

    < 金融庁では、「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)を別紙のとおり取りまとめましたので、公表します。

    保険会社や保険募集人等が保険募集を行う際には、顧客の意向を把握し、意向に沿った保険契約の提案を行うことが重要です。

    今般、この点について、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑み、保険募集人等が公的保険制度について適切に理解をし、そのうえで、顧客に対して、公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことによって、顧客が自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を理解したうえでその意向に沿って保険契約の締結がなされることが図られているかという点などを監督上の着眼点として明確化するものです。

    なお、厚生労働省において、個々人の年金の「見える化」のための取組みとして、公的年金の受取見込み額を簡易に試算できるWebページについて令和4年度の運用開始予定に向けて準備中です。この監督指針改正案の趣旨を踏まえ、当庁としては同省との連携にも取り組んでいくことを予定しており、こうしたツールを活用することも考えられます。>

    保障額の設定において、公的保険制度を踏まえるのは当たり前のことです。金融庁はそれなぜ監督指針に盛り込んできたのでしょうか?ひょっとしたら、これまでの募集管理態勢の監督指針では不十分だったと判断したのかもしれません。

    【改正案の概要】
    以下、監督指針の改正案の概要です(金融庁報道資料「別紙1(PDF)」より抜粋転載)。※下線部が改正箇所です。

    Ⅱ監督上の評価項目

    Ⅱ-4-2-1 適正な保険募集管理態勢の確立

    (1)~(3)(略)

    (4)特定保険募集人等(特定保険募集人及び損害保険会社の保険募集を専ら行う従業員をいう。Ⅱ-4-2-1(4)において同じ)の教育・管理・指導
    保険会社においては、保険募集に関する法令等の順守、保険契約に関する知識、内部事務管理体制の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則に定めて、特定保険募集人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導を行っているか。

    ①特定保険募集人等の教育について
    特定商品の特性に応じて、顧客が十分に理解できるよう、多様化した保険商品に関する十分な知識や保険契約に関する知識の付与及び適切な保険募集活動のための十分な教育を行っているか。

    また、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑みて、公的保険制度に関する適切な理解を確保するための十分な教育を行っているか。

    ②・③(略)

    Ⅱ-4-2-2 保険契約の募集上の留意点

    (1)・(2)(略)

    (3)法第294条の2関係(意向の把握・確認義務)
    保険会社または保険募集人は、法第294条の2の規定に基づき、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際して、顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行っているか。

    ①意向把握・確認の方法
    意向把握・確認の方法については、顧客が、自らのライフプランや公的保険制度を踏まえ、自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を適切に理解しつつ、その意向に保険契約の内容が対応しているかどうかを判断したうえで保険契約を締結するよう図っているか。そのために、公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行うなど、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、保険会社又は保険募集人の創意工夫による方法で行っているか。

    以上です。

↑カブトムシの激闘(7月撮影)。

 

特定治療通院給付金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和3年4~6月の裁定概要集(PDF)に、特定治療通院給付金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
約款所定の化学療法を受けたとして、特定治療通院給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
骨髄異形成症候群の治療のために化学療法を受けたことから、平成17年3月に契約したがん保険に付加された特約にもとづき、特定治療通院給付金を請求したところ、自分の受けた治療は、約款上の化学療法に該当しないとして支払われなかった。しかし、以下の理由により、特定治療通院給付金を支払ってほしい。

(1)平成26年1月ごろから現在まで、「ネスプ」という薬剤の投与(注射)を受ける目的で、1週間に1回程度病院に通院しており、同薬剤は約款上の化学療法に当たる。

(2)保険会社に問い合わせたところ、「ネスプ」の投与を目的とする通院が特定治療通院給付金の支払要件に当たるとの回答を得た。

…この事案は既に裁定が終了しています。

なぜ給付金の支払対象とならなかったのか?それはネスプが「腎性貧血の治療」と「骨髄異形成症候群による貧血」の治療に使われる薬だからです。これでは約款の支払事由に該当しません。

保険会社の支払査定は妥当ですね。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年4~6月裁定概要集・P40より転載)。

<事案の概要>
約款所定の化学療法を受けたとして、特定治療通院給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
骨髄異形成症候群の治療のために化学療法を受けたことから、平成17年3月に契約したがん保険に付加された特約にもとづき、特定治療通院給付金を請求したところ、自分の受けた治療は、約款上の化学療法に該当しないとして支払われなかった。しかし、以下の理由により、特定治療通院給付金を支払ってほしい。

(1)平成26年1月ごろから現在まで、「ネスプ」という薬剤の投与(注射)を受ける目的で、1週間に1回程度病院に通院しており、同薬剤は約款上の化学療法に当たる。

(2)保険会社に問い合わせたところ、「ネスプ」の投与を目的とする通院が特定治療通院給付金の支払要件に当たるとの回答を得た。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)約款上「化学療法」とは、がんの破壊や発育増殖の抑制を目的とした治療法をいうが、申立人の受けた「ネスプ」投与はこれに該当しない。

(2)申立人からの問い合わせに対して、「ネスプ」の投与を目的とする通院が特定治療通院給付金の支払対象になると回答したことはない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された主張書面および証拠の検討に加え、和解を相当とする事情の有無を確認するため、申立人に対して事情聴取を行った。また、独自に外部の専門医の意見を求め、医学的判断の参考にした。

2.裁定結果
上記手続きの結果、約款所定の化学療法を受けたことを認めることはできず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続きを終了した。

以上です。

6月に撮影したキリギリス・♂。