生保の「就業不能保険」への関心が高まってるそうです。-日経報道。新型コロナウイルス感染症がきっかけ?

11月12日の日本経済新聞朝刊に、生命保険会社が取り扱っている「就業不能保険」に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルス禍をきっかけに、働けなくなるリスクに備えたいと考える人が増えている。長期の入院や療養をすれば収入が大きく減ってしまう。預貯金などで準備するのが基本だが、生命保険会社の「就業不能保険」も不足資金を補う選択肢のひとつだ。>

とのことです。

…今回記事が取り上げているのは、東京海上日動あんしん生命、チューリッヒ生命、SBI生命、アフラック生命の保険商品と保障概要です。

生命保険における就業不能保険の歴史はまだ浅く、当初は死亡保険(収入保障保険など)の特則として付加する保障でしたが、ここ数年の間に、単品で就業不能状態(国民年金法が定める障害等級1級・2級に該当する場合など)に該当した場合に、月払い給付金を支払う保険商品が登場してきました。

最近は、商品改定を行い、保険会社所定の疾病に罹患し、所定の状態が継続した場合にも月払い給付金を支払う商品が登場しており、選択肢が広くなっています。

ただし、月払い給付金等の支払いには、免責期間が設けられているので、働けなくなったら即座に給付されるわけではありません。

免責期間が設けられているのは、被保険者集団に悪質なリスク(モラルリスク)が入り込むのを防ぐためです。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年11月12日朝刊-

【働けないリスク、保険で対応】
新型コロナウイルス禍をきっかけに、働けなくなるリスクに備えたいと考える人が増えている。長期の入院や療養をすれば収入が大きく減ってしまう。預貯金などで準備するのが基本だが、生命保険会社の「就業不能保険」も不足資金を補う選択肢のひとつだ。

「家計相談に来る人から、就業不能保険に入った方がいいか質問を受けるケースが増えた」とファイナンシャルプランナー(FP)の氏家祥美氏は話す。就業不能保険は昨年以降、発売や改定が相次いだ。東京海上日動あんしん生命保険、チューリッヒ生命保険、アフラック生命保険などだ。テレビCMなどを見て尋ねる人も多い。

現役世代では死亡より病気やけがで働けなくなるリスクの方が高いとされる。収入がなくなったり減少したりするのは一緒だが、働けなくなる方が家計のバランスが崩れる可能性が高い。生活費はあまり変わらないのに治療費などがかさむからだ。夫が働けなくなれば妻も看病などで就労が制限され「亡くなるより家族が困ってしまう場合がある」(氏家氏)。

公的な支援では健康保険の傷病手当金や年金制度の障害年金がある。ただ傷病手当金の支給額は給与の3分の2、通算で1年6ヵ月に限られる。しかも対象は健保に入る会社員などで国民健康保険の自営業者らには原則としてない。障害年金も受給のハードルが高い。就業不能保険はこれらの制度を補う目的で2010年に始まった。年収などを基に給付金額を決め、働けなくなったら受け取る。

生命保険文化センターの調査では世帯加入率が約18%(特約含む)で医療やがんを下回る。認知度はまだ低く、勘違いも多い。

ありがちな勘違いは「働けなくなれば給付金をすぐにもらえる」だ。実際には60日や180日などの支払い対象外(免責)期間があり、入院や療養で日数を満たさないと支払われない。

給付を受けるには各社が決めた条件も満たさなければならない。国民年金法が定める障害等級1級・2級など重い障害状態を求める会社もある。たとえば病気やケガで短期間入院をし、その後も不調が続いて働けずに自宅にいても、医師からの在宅療養の支持がなければ多くは給付金は出ない。医師の診断書などが欠かせない。FPの黒田尚子氏は「一般に給付のハードルは高い。がんや脳卒中などは治療が長期化する場合もあり、比較的給付は受けやすい」と話す。

最近の商品では免責期間が短縮され、給付が早めになっている。今年3月に発売された「アフラックの休職保険」は、病気やケガで休職(就労困難状態)が31日以上継続した場合、給付金が支給される。会社員らが対象で性急には医師の診断書、勤務先の給食証明書が必要になる。チューリッヒ生命の「くらすプラスZ」は、同一の月の入院・在宅療養の合計が10日以上で通常の半分の「短期収入サポート月額給付金」が出る。両社は新型コロナによる就業不能でも給付金を支払った。

職場に復帰したら給付打ち切りが多かったが、復職後も長く給付金が出るパターンが増えている。すぐには以前のように働けないことが多いからだ。あんしん生命の「あんしん就業不能保障保険」は、がんや急性心筋梗塞といった5疾病で所定の入院・在宅療養が60日以上続くなどの条件に該当すれば給付金が出る。復職しても給付は保険期間満了まで継続し、保険料の支払いも免除になる。

精神疾患を対象とする商品も目立つ。全国健康保険協会(協会けんぽ)では傷病手当金全体の3分の1を「精神および行動の障害」が占めるなど、就業不能になる事例が多い。SBI生命保険の「働く人のたより」は、精神疾患に対し通算18回まで給付金を支給する。精神疾患が給付全体の23%に上り疾病の中で最も多いという。

就業不能保険は各社の違いが大きく保険料にも差がある。検討する際は世帯の収支や貯蓄などの確認、商品内容の理解が欠かせない。公的保証の薄い自営業者の方が必要性は高いかもしれない。

会社員では勤務先で団体長期所得補償保険(GLTD)に加入している場合がある。働けなくなった時に保険金が出る仕組みだ。住宅ローンの契約者ではがんなどの疾病になると返済が免除になる団体信用生命保険(団信)に入っている人もいる。「ローンの支払いがなくなれば家計に余裕ができ、就業不能保険の必要性は低下する」(黒田氏)。すでに加入している保険や商品も事前にチェックする必要がありそうだ。

以上です。

↑水辺の青竹で翅を開いたミヤマカワトンボ・♂(5月撮影)。

死亡保険金等(養老保険)の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和4年4~6月の裁定概要集(PDF)に、死亡保険金等(養老保険)の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
告知義務違反により契約が解除されたことを不服として、解除の取消しと死亡保険金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
被保険者が大動脈解離により入院し、出血性ショックで死亡したため、平成31年3月に契約した養老保険の医療特約にもとづき、死亡保険金および疾病入院保険金を請求したところ、告知義務違反により契約が解除となった。しかし、以下の理由により、解除を取り消して、死亡保険金および疾病入院保険金を支払ってほしい。

(1)告知書の内容からは、5年以上前の大動脈解離の事実記載の必要性はないと考えるのが一般的である。

(2)大動脈解離は持病に類するものではなく、再発も予想されにくい病気である。

…この事案は既に裁定が終了しています。

結論を申しますと、契約解除は当然です。

大動脈解離は医的査定結果が厳しい病のひとつです。加入時に告知していれば、謝絶(引受不可)となっていたでしょう。

大動脈解離とは、大動脈の血管に傷が生じたことで、内膜・中膜・外膜という3つの血管層の内の、内膜(ないまく)と中膜(ちゅうまく)の間に血液が流れ込んで内膜と中膜との間が裂けてしまう病気です。

故・石原裕次郎さんやドリフターズのメンバー・加藤茶さんが発症しました。

上行大動脈や弓部大動脈、下行大動脈、腹部大動脈といった場所によって、胸部の激痛など症状が多様といわれています。

上行大動脈に解離が生じたものを「スタンフォードA型」、下行大動脈に解離が生じたものを「スタンフォードB型」と言います。スタンフォードA型は緊急手術を要するものがほとんどで、一般的に予後不良と言われています。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和4年4~6月裁定概要集・P46より転載)。

[事案2021-211]死亡保険金等支払請求
・令和4年5月17日 裁定終了

<事案の概要>
告知義務違反により契約が解除されたことを不服として、解除の取消しと死亡保険金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
被保険者が大動脈解離により入院し、出血性ショックで死亡したため、平成31年3月に契約した養老保険の医療特約にもとづき、死亡保険金および疾病入院保険金を請求したところ、告知義務違反により契約が解除となった。しかし、以下の理由により、解除を取り消して、死亡保険金および疾病入院保険金を支払ってほしい。

(1)告知書の内容からは、5年以上前の大動脈解離の事実記載の必要性はないと考えるのが一般的である。

(2)大動脈解離は持病に類するものではなく、再発も予想されにくい病気である。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)被保険者は、平成26年11月に大動脈解離により入院し、以後定期的に通院治療をしている。

(2)死亡保険金の支払事由が、解除の原因となった事実にもとづくため、死亡保険金を支払うことはできない。

(3)疾病入院保険金については、発病が特約の保険期間外のため支払うことはできない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、本件にかかる経緯等と和解を相当とする事情の有無を確認するため、申立人および申立人子に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続きの結果、契約解除の取消しおよび死亡保険金等の支払いは認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑5月に撮影したアオハダトンボ・♀。

新型コロナウイルス感染症に対する公費と自助(民間生命保険)について。

0月15日の日本経済新聞朝刊に、新型コロナウイルス感染症における公費と自助(民間生命保険)に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルスは「第7波」が落ち着き、小康状態が続いている。だが、冬に向けて再び感染者が増えるとも想定される。完全な感染終息を期待せず、日常生活への影響を抑える「withコロナ」へと社会にも変化が出てきた。コロナに感染したときの医療費などの自己負担や給付について改めて確認してみた。

ただ、そもそも新型コロナに感染した場合の医療費には公的な支援が手厚く、自己負担は限られるといえる。

一般的なケースで見てみよう。まず発熱などの症状があり、新型コロナへの感染の疑いがあれば、かかりつけ医などの医療機関を受診する。この際の初診料などは健康保険の対象で、自己負担は原則として3割になる。個々で医師が感染の有無を調べる「PCR検査」や「抗原検査」の必要があると判断したとする。これらの検査費用は健康保険と公費での負担になり、自己負担はゼロになる。

さらに検査結果が陽性となった場合、保健所などがコロナの療養機関として認める期間は医療費は全額、健康保険と公費負担で賄うため自己負担はゼロだ。入院したり、病院の代わりにホテルなどの宿泊施設で療養したりする場合も、基本的な食費や滞在費は公費負担になる。

治療で自己負担となるのは、肺のコンピューター断層撮影装置(CT)検査といった感染の有無を調べる以外の検査など。それも健康保険の対象なら自己負担は3割で済む。1ヵ月当たりの医療費が膨らんだ場合は高額療養費制度により自己負担の上限額が8万円程度(一般的な収入の場合)に抑えられる。なお、入院や宿泊施設での療養期間中の衣類や歯ブラシなどの日用品や洗濯などの費用は自己負担となる。これは通常の入院と同じだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
民間生命保険の対応は、すでに39の生命保険会社が発表しているように、「みなし入院」における入院給付金や入院一時金の支払い対象を妊産婦など、重症化リスクが高い人たちに限る変更を行っています。

2020年に金融庁からの要請が出されたことに伴い、生命保険各社は特例として入院給付金の支払事由の解釈を弾力的に運用し、入院給付金や入院一時金の支払いについて、宿泊施設や自宅で療養を余儀なくされた人も対象としてきました。

しかし新型コロナウイルスの変異に伴い、重症患者よりも軽症や無症状の患者の割合が多くなりました。

軽症患者や無症状の患者は、

「医師の治療が必要であり、かつ自宅等での治療が困難なため、病院または診療所に入り、常に医師の管理下において治療に専念する」

という入院の定義に該当する状態にはないといえますから、特例の対象から外して当然かと思います。

また、新型コロナウイルス感染症への保障に特化した保険商品が相次いで販売停止となり、引き受けていた少額短期保険会社が業務改善命令を受けました。

これについては、統計が固まっていない新型感染症を単体で保険契約として引き受けた時点で、見通しが甘すぎたとしか言いようがありません。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年10月15日朝刊-

【コロナ感染「費用」を確認】
新型コロナウイルスは「第7波」が落ち着き、小康状態が続いている。だが、冬に向けて再び感染者が増えるとも想定される。完全な感染終息を期待せず、日常生活への影響を抑える「withコロナ」へと社会にも変化が出てきた。コロナに感染したときの医療費などの自己負担や給付について改めて確認してみた。

神奈川県内に住む会社員男性(50)は最近、自身が加入する生命保険会社に問い合わせの電話をかけた。新型コロナ感染者への医療保険の支払条件を厳しくすると報道で知ったためだ。保険会社の回答は「今後は自宅療養なら給付の対象がになる」というもので、落胆したという。

このほど変わったのは「入院給付金」の支払い条件だ。生命保険協会に加盟する生保42社のうち、39社が新型コロナの感染者に支払う入院給付金の対象を大幅に絞った。9月25日までに感染が判明した場合は軽症で自宅療養でも給付金を受け取れる。9月26日以降に感染が分かった場合は新基準が適用される。

本来、入院給付金の支払いは「病院に入り、常に医師の管理下で治療に専念すること」が条件。だが新型コロナウイルスに感染すると、比較的軽症で自宅などで療養する場合でも「みなし入院」として入院給付金の対象になっていた。感染拡大当初に医療機関の病床圧迫を避けるための金融庁の要請を踏まえての「特例」だった。9月26日以降は(1)65歳以上の高齢者(2)入院が必要な人(3)新型コロナウイルス感染症の治療薬を投与する必要がある(4)妊婦-を条件に変えた。

新型コロナウイルス感染症に対応する保険の見直しは相次いでいる。大手損害保険も医療保険などの加入者には、みなし入院に対して保険金を払っていたが、生保と同様に9月下旬から支払い対象を絞った。

ネット経由などで販売が拡大した「コロナ専用保険」では販売停止が相次いでいる。医師に陽性と診断されたら保険金が出る分かりやすさで支持を集めたが、第7波での陽性者数が想定を上回り、保険金の支払い件数が増加。収支のバランスが崩れたことが主因とみられている。

損が保険ジャパンは8月にスマホ決済「Pay Pay(ペイペイ)」を通じて販売していた保険「コロナお見舞金」の販売を停止した。今年に入り新契約の保険料を引き上げたり保険金の減額をしたりしたが、収支悪化に歯止めがかからなかった。なお、すでに契約済みの保険は満期まで契約時の内容で補償されるという。

入院給付金の制度変更は対象外となる契約者からみれば心理的な影響は小さくないだろう。商品によっては陽性と診断されれば数万円から数十万円を受け取れるためだ。ただ、そもそも新型コロナに感染した場合の医療費には公的な支援が手厚く、自己負担は限られるといえる。

一般的なケースで見てみよう。まず発熱などの症状があり、新型コロナへの感染の疑いがあれば、かかりつけ医などの医療機関を受診する。この際の初診料などは健康保険の対象で、自己負担は原則として3割になる。個々で医師が感染の有無を調べる「PCR検査」や「抗原検査」の必要があると判断したとする。これらの検査費用は健康保険と公費での負担になり、自己負担はゼロになる。

さらに検査結果が陽性となった場合、保健所などがコロナの療養機関として認める期間は医療費は全額、健康保険と公費負担で賄うため自己負担はゼロだ。入院したり、病院の代わりにホテルなどの宿泊施設で療養したりする場合も、基本的な食費や滞在費は公費負担になる。

治療で自己負担となるのは、肺のコンピューター断層撮影装置(CT)検査といった感染の有無を調べる以外の検査など。それも健康保険の対象なら自己負担は3割で済む。1ヵ月当たりの医療費が膨らんだ場合は高額療養費制度により自己負担の上限額が8万円程度(一般的な収入の場合)に抑えられる。なお、入院や宿泊施設での療養期間中の衣類や歯ブラシなどの日用品や洗濯などの費用は自己負担となる。これは通常の入院と同じだ。

新型コロナで仕事を休んだ場合の補償も確認しておきたい。まず、会社員などが業務によって感染したことが明らかな場合は、労働者災害補償保険(労災保険)の対象になる。療養のために仕事を休み、賃金が支払われなかった場合は、休業4日目から給与の8割程度の給付を受けられる。飲食店で接客業務をしていて、客に集団感染があった場合などは認められる可能性が高い。

労災の対象にならない場合、健康保険に加入する会社員は、傷病手当金を受け取れる。賃金が支払われない場合は休業4日目から、給与の約3分の2をもらえる。ファイナンシャルプランナーの内藤真弓氏は「企業によっては独自の給付を用意してる例もある。勤務先の内容を確認しておきたい」と話す。

国民健康保険には、通常傷病手当金はないが、新型コロナの感染の場合は傷病手当金を受け取れる場合がある。パートやアルバイトなど短時間労働でも給与をもらい、勤務先の健康保険に加入していない場合は、多くの自治体の国民健康保険で傷病手当金の支給対象になる。ただし、フリーランスや自営業者の場合は支給される自治体が少ない。その場合は、民間の所得補償保険への加入で備えることも一案になる。

以上です。

↑、5月に撮影したイチモンジチョウ・♂。