治療費の補填として活用できなかったがん保険の給付金。

今回は、がん治療費の補填として活用することが叶わなかったがん保険の給付金についてです。

今から2年前の話です。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う、全国に発出された緊急事態宣言が解除されて間もない、2020年(令和2年)6月中旬の日曜日、埼玉県西部にお住まいのお客様から電話が入りました。

何事か?と電話に出ると、「実家の父が癌と診断されたので、父が加入しているがん保険の請求手続きを教えてほしい」ということでした。もちろん即座に承諾し、翌週にお客様宅に伺いました。

そこで実家のお父様の病状について話を聞くことにもなったのですが、それは

肺に腫瘍が見つかった。ただ、心臓に近い場所であることに加え、長年の喫煙による肺の基礎疾患(COPD)を抱えていたため、肺の機能が急速に低下してしまった。

そのため、手術、放射線治療、抗がん剤治療といった標準治療はおろか、病理組織検査すら肉体的負担が大きすぎるため実施不可能である。酸素飽和度を維持するために、酸素マスクが不可欠の状態。

CT検査の結果、肺がんであることは疑いようがないとの診断を受けている。

というものでした。

また、加入していたがん保険は30年以上前の新がん保険を、90年代初めにスーパーがん保険へと変更したものでした。ご本人は大の保険嫌いだったため、その後の保障強化の手続き案内を一切開封しなかったそうです。

ご本人の状態が、診断給付金や入院給付金の支払事由に該当するか否か、不安がありましたが、ご連絡をくださったお客様が代理人として請求手続きを行いました。

それから間もなく、ご本人が逝去されたとのご連絡をいただきました。後日、ご実家に伺い線香をあげさせていただきました。

そこで、請求手続きの結果を教えていただきました。手術給付金以外の給付金がもれなく支払われたとのことでした。

ご本人の治療費補填という、本来の役割を果たすことは叶わなかったのですが、ご遺族を少しでも慰めることはできたのではないかと思います。

↑5月に撮影したニホンカワトンボ・♂。

8月における生保の入院給付金支払い件数が100万件を超える。新型コロナウイルス感染症第7波の影響大。

9月29日の日本経済新聞朝刊に、8月における生命保険各社の入院給付金に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルスの感染第7波を受け、生命保険会社が請求者に支払う入院給付金額が再び急増している。生保協会によると、今年8月の支払い件数は102万件と初めて100万件を突破。支払額も1000億円に迫る規模だった。足元で新規の感染は落ち着きを見せるが、感染から請求までに1~2ヵ月程度の時間差がある。第7波の影響は当然続きそうだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
感染者数が増加すれば「みなし入院」の件数も増えるのですから、支払い件数と金額が増えるのは当然でしょうね。

ただ、生保各社からすれば、モラルリスクの疑いがある不良契約が増えているので、その対策が重要でしょう。

先日、記事にしましたが複数の生命保険会社が、モラルリスクが疑われる不良契約を排除、あるいは高額の給付金額を設定し、みなし入院による入院一時金で得しようとする(射幸心をあおる)契約を防ぐ対策を実施する通達を出しています。

また、みなし入院に伴う、入院給付金や入院一時金の支払い対象については、既に見直されました。生命保険にご加入の方には、加入している生命保険会社から文書が送付されていることと存じます。

生命保険会社からの郵送物を必ず確認してください。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年9月29日朝刊-

【入院給付金、支払い最高】
新型コロナウイルスの感染第7波を受け、生命保険会社が請求者に支払う入院給付金額が再び急増している。生保協会によると、今年8月の支払い件数は102万件と初めて100万件を突破。支払額も1000億円に迫る規模だった。足元で新規の感染は落ち着きを見せるが、感染から請求までに1~2ヵ月程度の時間差がある。第7波の影響は当然続きそうだ。

病気やけがに備える医療保険では入院したり、手術を受けたりした場合に給付金を受け取れる。加盟42社の支払い状況を生保協が集計したところ、8月の支払件数は102万件を超えた。これまでの最高だった6月(72万件)より約4割多い計算だ。支払額も951億円と過去最多を2ヵ月ぶりに更新した。

本来なら入院しなければ給付金を受け取ることはできないが、感染者で病床があふれる事態を防ごうと各社は金融庁の要請も踏まえて約款の解釈を変更。自宅やホテルで療養する「みなし入院」の感染者にも給付金を支払う措置を2020年4月から続けてきた。今年8月末までの支払額は累計で4246億円となり、みなし入院への支払いは94%を占める。

7月に始まった感染第7波は今月に入って終息したが、給付金の請求が本格化するのはこれからだ。26日には医療保険を取り扱う全39社がみなし入院への対応を見直し、給付金の支払い対象を65歳以上の高齢者や妊婦など重症化の恐れが高い感染者に絞る運用へと切り替えた。

それでも感染から請求までに1~2ヵ月程度の時間差があることを踏まえれば、9月以降も高い水準の支払が続く公算が大きい。日本生命保険が請求への対応や支払いにあたる人員を10月から平時の2.5倍以上にあたる400人程度に増やすなど、各社は対応を急いでいる。

以上です。

↑5月に撮影したアオハダトンボ・♀。

三大疾病一時金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和4年4~6月の裁定概要集(PDF)に、三大疾病一時金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
告知義務違反を理由に契約が解除され、三大疾病一時金が支払われなかったことを不服として、一時金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和3年6月に皮膚表皮内がんに罹患したことから、令和3年2月に契約した引受緩和型医療保険にもとづき三大疾病一時金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、一時金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、三大疾病一時金を支払ってほしい。

(1)告知時、皮膚の病気により病院で紫外線療法を受けていたことは事実であるが、医師からは、「皮膚の細胞が新しく生まれ変われるサイクルが少しおかしい状態であるが、大した皮膚病ではない」と告げられ、菌状息肉症や皮膚リンパ腫であるとは告げられていない。

(2)右頬扁平皮膚がんの既往歴があるため、引受緩和型の本契約に加入したが、皮膚リンパ腫に罹患していることを知っていれば、嘘をついてまで本契約に申し込みはしなかった。

(3)令和3年2月から9月の間は保険料を払っており、この間は契約が存在するため、三大疾病一時金を給付すべきである。

…この事案は既に裁定が終了しています。

<保険会社の主張>によると、申立人は契約前に菌状息肉腫と診断されています。これでは申立人の主張は認められませんね。

また、一時金請求事由である、皮膚表皮内がんについては<保険会社の主張>によると、「日光角化症」とされています。日光角化症は前癌病変で転移することはありません。

この段階で治療をすれば命にかかわることないものの、放置してしまうと悪性度の高い有棘細胞癌に進展してしまうそうです。

おそらく、前癌病変(腫瘍細胞が表皮内にとどまっている状態)であったことから、約款に定める「悪性新生物」の定義に該当しなかったのでしょう。

【裁定事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和4年4~6月裁定概要集P42~43より転載)。

[事案201-244]三大疾病一時金支払請求
・令和4年6月9日 裁定終了

<事案の概要>
告知義務違反を理由に契約が解除され、三大疾病一時金が支払われなかったことを不服として、一時金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和3年6月に皮膚表皮内がんに罹患したことから、令和3年2月に契約した引受緩和型医療保険にもとづき三大疾病一時金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、一時金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、三大疾病一時金を支払ってほしい。

(1)告知時、皮膚の病気により病院で紫外線療法を受けていたことは事実であるが、医師からは、「皮膚の細胞が新しく生まれ変われるサイクルが少しおかしい状態であるが、大した皮膚病ではない」と告げられ、菌状息肉症や皮膚リンパ腫であるとは告げられていない。

(2)右頬扁平皮膚がんの既往歴があるため、引受緩和型の本契約に加入したが、皮膚リンパ腫に罹患していることを知っていれば、嘘をついてまで本契約に申し込みはしなかった。

(3)令和3年2月から9月の間は保険料を払っており、この間は契約が存在するため、三大疾病一時金を給付すべきである。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人が罹患した皮膚表皮内がんは日光角化症であり、約款に定めるがんに該当せず、三大疾病一時金の支払事由を充足しない。

(2)申立人は、本契約の申込前に菌状息肉症と診断され、医師から皮膚リンパ腫の一種であると説明を受けている。菌状息肉症は、本約款上の癌に該当するが、三大疾病一時金の支払事由である、「責任開始日の年前の応当日の翌日以後責任開始時前にがんと医師によって診断確定されたことのない」を充足しない。

(3)申立人は、告知時に、菌状息肉症に罹患して医師の診察を受けていたが、告知書において、「過去5年以内に、悪性新生物又は上皮内新生物で、医師による診療(問診・診察・検査・治療・投薬)を受けたことがありますか?」の問いに対し「いいえ」と回答しており、その告知は事実に反する。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、告知時の状況等を把握するため、申立人および募集人に対し事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続きの結果、申立人の告知義務違反は認められ、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑5月に撮影したニホンカワトンボ・♂。

医療保険の日額等の上限見直しなどの通達が出されました。

39社の生命保険会社が、新型コロナウイルス感染症における、みなし入院の入院給付金等の支払い対象を見直すことを発表して間もないのですが、モラルリスクが疑われるケースが増加したことを踏まえ、医療保険の給付金上限を引き下げるなどの措置を通知する保険会社が出てきました。

保険会社名や保険商品名などの具体的なことは明かせませんが、勤務先と代理店委託契約を締結している生命保険会社のうち、外資系生保と国内大手生命保険会社から、

①医療保険の給付金日額や一時金の、同一被保険者の通算限度額を引き下げる(外資系生保)。

②医療保険の一時金、入院継続時の一時金の上限・下限を引き下げる(国内大手生保)。

③募集資料の配布や保険商品の提案といった募集行為を行っていない人から、保険商品指定や保険会社指定で医療保障に対する自発的な加入申し込みがあった場合は、保険会社の方針として断る(国内大手生保)。

といった旨の通達が出されました。

こうした通達の背景には、保険会社からみると「加入後から給付金請求までの期間が短いものが多い」など募集人による一時選択では、排除困難なモラルリスクの疑いがある契約締結なされているであろうことが伺えるからです。

以上です。

↑春の林道で縄張りを見張るツマグロヒョウモン・♂(5月撮影)。

アフラック、がん保険の新商品を投入。

8月22日、アフラック生命保険はがん保険の新商品を投入*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 8/5・ニュースリリース <「生きる」を創るがん保険 WINGS>の発売について(PDF)

    【管理人の感想】
    ニュースリリースを読む限り、新商品は

    現行商品(Days1ALL-in)の保障のうち2つを改定し、2つの新特約を設けたもの。

    となっています。2つの新特約は現行商品に付加することが可能となっているようですので、現行商品に契約中の方も、新商品に準じた保障内容に変更することは可能のようです。

    一方で、21世紀がん保険以降行ってきた、既契約者専用の保障内容強化の特約ですが、今回は言及されていません。保障内容が改定された部分で、既契約者と新商品加入者との間に差がつくことはやむなしとしたのでしょうかね。

    【公式コメントの内容】
    以下、アフラックの公式コメントの内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

    【<「生きる」を創るがん保険 WINGS>の発売について】

    アフラック生命保険株式会社(代表取締役社長:古出 眞敏)は、最新のがん治療保障とがんの悩みや不安の解消をサポートするサービスを組み合わせた新商品<「生きる」を創るがん保険 WINGS>を8月22日に発売します。

    人生100年時代ともいわれる超高齢化社会において、がんと診断される人が増加している一方で、医療の進歩により生存率は向上しており、がん患者は長く続く治療や治療後の生活の中で、多種多様な問題や悩み、不安に直面しています。

    こうした中、当社は、がんとの共生という社会的課題の解決に向けて、患者とそのご家族を中心として、医療者、職場など様々なステークホルダーが連携・協業するためのプラットフォーム「キャンサーエコシステム」の構築に取り組んでいます。

    このたび、当社はその取り組みの一環として<「生きるを創る」がん保険 WINGS>を発売します。本商品は、がんと診断される前の精密費用検査やがんゲノムプロファイリング検査費用に加え、患者申出療養として実施された療養など、最新治療の保障に加えて早期発見・早期治療を支援する保障も提供します。

    さらに、2023年1月(予定)から新たに「アフラックの寄り添うがん相談サポート*」を設置し、がん患者とそのご家族の相談窓口となることで、一人ひとりの異なる悩みに寄り添い、適切なサービスをご紹介します。

    当社は「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という思いのもと、1974年の創業以来、がん保険を通して多くのお客様に安心をお届けするとともに、がん保険のパイオニアとして、最も長くがんと向き合い、最も多くのがんと闘う方々を応援してきました。当社は「生きる」を創るリーディングカンパニーへの飛躍に向け、がんにまつわる様々な社会的課題の解決に取り組むと同時に、企業価値のさらなる向上と持続的な成長を目指してまいります。

    ◇<「生きる」を創るがん保険 WINGS>の商品特長

    ■特徴1.最新治療の保障に加え、がんの早期発見・早期治療をサポートする保障の提供
    ①ポイント
    <「生きる」を創るがん保険 WINGS>では、<生きるためのがん保険 Days1 ALL-in>に、「がん特定治療保障特約」「がん要精検後精密検査保障特約」の新設特約を付加可能とし、「がん治療保障特約」「がん先進医療特約」の改定を行うことで、より充実した保障を提供することが可能となりました。

    ②新設・改定特約の保障内容
    a.がん治療保障特約【2022】(改定)
    保険期間「終身」を新たに加え、手術・放射線治療に対する支払限度を無制限に改定します。

    b.がん特定治療保障特約(新設)
    保険適用外の診療やがんゲノムプロファイリング検査を保障します。

    c.がん先進医療・患者申出療養特約(改定)
    「先進医療」に加え、「患者申出療養」の経済的負担も保障します。

    d.がん要精検後精密検査保障特約(新設)
    所定のがんの検診で「要精密検査」の判定を受けた後、精密検査を受けた場合に給付金を支払います。

    ■特徴2.がんに関する様々な問題、悩みの解消をサポートするサービスの提供
    ・ポイント
    豊富な経験と公的な専門資格を有した「アフラックのよりそうがん相談サポーター」が相談窓口となり、がん患者やご家族の悩みを傾聴し、状況に応じた各種サービスを案内することで、悩み・不安の解消をサポートします。

    これに伴い、すでに「ダックのがん治療相談サービス」で提供しているサービスは、「アフラックのよりそうがん相談サポート」から案内するサービスの一部になります。

    ■特徴3.より多くの方にご加入いただけるがん保険の実現
    ①ポイント
    がんに罹患されたことがある方は、これまでは、がん経験者向け専用商品でご加入可能な場合を除き、がん保険にご加入いただけませんでした。また、がんの疑いのある方も、がん保険のご加入が難しい場合がありました。

    ②特定疾病不担保の導入
    所定のがんにおける症状悪化のリスクが低い状態、もしくはそれらのがんの疑いの状態においては、該当のがん・上皮内新生物を不担保とすることにより、標準体保険料での引受を可能とします*。

    *告知内容等によっては特別保険料率での引受となる場合があります。

    ③対象となる疾病
    〇前立腺の悪性新生物・上皮内新生物

    〇甲状腺の悪性新生物・上皮内新生物

    〇子宮頚部の悪性新生物・上皮内新生物(異形成を含む)

    以上です。

↑翅を開いたアオハダトンボ・♂(5月撮影)。