アフラックが医療保険の新商品を発表。

8月21日、アフラック生命保険はHPにて、医療保険の新商品を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
8/21・ニュースリリース <手ごろに備える医療保険 EVERシンプル>の発売について(PDF)

【管理人の感想】
今回発表された新商品は、現行商品の給付金支払を改めたものです。現行商品は

入院、入院中手術、外来手術、放射線治療に該当した場合、支払事由に応じた一時金を支払う。

という保障内容ですが、新商品は

入院・手術・放射線治療・外来治療のいずれかに該当した場合、「月額給付」で支払う。

という保障内容に変更されます。

また、新商品は三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)に罹患した場合の備えとして、新設された「三大疾病無制限治療特約」を付加することができます。

さらに、「三大疾病保険料払込免除特約」には「上皮内新生物保障特則」が、「三大疾病一時金特約」には「上皮内新生物一時金特則」がそれぞれ付加することができます。

「上皮内新生物一時金特則」の給付金額は「三大疾病一時金の100%または10%」から選択することができます。

「主契約を月額給付」へ変更し、「三大疾病保険料払込免除特約」と「三大疾病一時金特約」では、「上皮内新生物」を保障の対象とする改定を行うことで、不振が続く医療保険の新契約獲得の起爆剤にしようということなのでしょう。

【公式コメントの内容】
以下、アフラックの公式コメントの内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

【<手軽に備える医療保険 EVERシンプル>の発売について】

 アフラック生命保険株式会社(代表取締役社長:古出眞敏)は、高額療養費制度も含めた公的医療保険制度を前提に、月々の支払いが必要となる医療費の自己負担額に備えることができる新商品<手軽に備える医療保険 EVERシンプル>を9月19日発売します。

 当社は、2002年の<一生いっしょの医療保険 EVER>の発売以降、社会情勢や医療環境等の変化に応じてEVERシリーズを進化させ続け、多くのお客様に最新の保障をお届けしてまいりました。

 今回新たに発売する<手軽に備える医療保険 EVERシンプル>は、保障内容のシンプルさ・分かりやすさ、保険料の手頃さを追求し、公的医療保険における高額療養費制度を踏まえ、入院・手術・放射線治療を行った場合の自己負担額に応じた給付金が毎月受け取れる合理的な保障内容としています。

 さらに、治療保障期間が長期化しやすい三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)に対しては、治療の長期化に備えられる手厚い保障を提供します。また、「三大疾病保険料払込免除特約」や「三大疾病一時金特約」については、上皮内新生物の保障を追加することも可能となりました。

 当社は、「生きる」を創るリーディングカンパニーへの飛躍を目指し、お客様に真にご満足いただけるよう、「生きる」を創るエコシステム戦略のひとつとして、「生きるための保険」の商品ラインアップとサービスの強化に取り組んでいます。人生100年時代と言われる超高齢化社会において、お客様の「生きる」を支え続けるために、公的制度や医療環境等の変化、さらにライフステージごとのリスクに応じた最適な補償を提案し続ける「アフラック式」に基づき、今後もがんをはじめとする病気やケガの保障、就労保障、介護保障、老後保障などの課題の解決に向けた商品・サービスを提供してまいります。

◇<手軽に備える医療保険 EVERシンプル>の特長

①月額給付を基本とするシンプルで無駄のない基本保障

・高額療養費制度を踏まえた自己負担額に合わせて、治療給付金額を設定できます。

・入院や手術、放射線治療など、これまで重複していた治療費に関する保障を一つにまとめることで、治療費の費用構造に合わせて合理的な保障内容にしました。

②三大疾病に対する手厚い保障
・治療期間が長くなることが多い三大疾病に対する備えとして「三大疾病無制限治療特約」を新設しました。

・「三大疾病保険料払込免除特約」や「三大疾病一時金特約」に上皮内新生物の保障を追加することができます。

③多様なニーズに応じた柔軟な保障設計
・既にご加入されている医療保険の契約内容やお客様のニーズに合わせて、3つのパターンから主契約の保障内容をお選びいただけます。

・充実した特約ラインアップから必要な保障をお選びいただけます。

以上です。

↑春の河原で吸水中のアオスジアゲハ♂(4月撮影)。

アフラックの第1四半期業績。

8月10日、アフラック生命保険はHPにて、2023年度第1四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
8/10・ニュースリリース 2023年度第1四半期報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約件数は減少続く

がん保険、医療保険の保有契約件数はどちらも減少が続き、その結果、個人保険全体の保有契約件数も減少が続いています。主力保障分野での保有契約減少が続くとは…かつて法人の専属代理店社員として働いていたものとして、寂しさを感じます。

保有契約年換算保険料は、個人保険全体で減少。医療保障・生前給付保障でも減少していました。

2.新契約は増加に転じる
がん保険の新契約件数は、前年同期比119.2%と二桁の増加でした。一方、医療保険の新契約件数は前年同期比73.3%と二桁の落ち込みでした。

しかし、個人保険全体の新契約件数は、前年同期比102.1%と減少に歯止めがかかり増加に転じました。

また、新契約年換算保険料は、個人保険全体で前年同期比121.7%、医療保障・生前給付保障で119.6%とどちらも二桁の増加でした。

新契約は状況が少しづつ改善しているようです。

【主要業績の内容】
以下、アフラックの主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約件数 ( )内は前年度実績
・個人保険…2278万7000件 (2324万7000件)

・個人年金保険…32万8000件 (32万5000件)

・個人保険+個人年金保険…2311万5000件 (2357万3000件)

 うちがん保険…1461万6000件 (1491万8000件)

 うち医療保険…561万5000件 (573万3000件)

〇新契約件数
・個人保険…20万件 前年同期比102.1%

 うちがん保険…14万2000件 前年同期比119.2%

 うち医療保険…3万6000件 前年同期比73.3%

〇年換算保険料
1)保有契約 ( )内は前年度実績

・個人保険…1兆2328億円 (1兆2610億円)

・個人年金保険…949億円 (906億円)

・個人保険+個人年金保険…1兆3277億円 (1兆3516億円)

 うち医療保障・生前給付保障等…1兆23億円 (1兆22億円)

2)新契約
・個人保険…139億円 前年同期比121.7%

・個人保険+個人年金保険…139億円 前年同期比121.7%

 うち医療保障・生前給付保障等…124億円 前年同期比119.6%

〇保険料等収入、保険金等支払金、四半期純利益
・保険料等収入…3214億円 前年同期比99.5%

・保険金等支払金…2171億円 前年同期比102.4%

・四半期純利益…645億円 前年同期比81.5%

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…1043億円 前年同期比120.4%

・ソルベンシーマージン比率…921.7% (946.7%)

以上です。

↑4月に撮影したジャコウアゲハ♂。

子供の独立は、生命保険の契約内容を見直す機会。

7月29日の日本経済新聞朝刊に、生命保険の見直しに関する記事がありました。

記事によりますと、

< FPの柳沢美由紀氏は「50代は生命保険の見直しをするのに適した時期」と話す。子供の独立で教育費がかからなくなったり、貯蓄が若いころに比べて増えたりするなどして、万一の際に必要な保障額が少なくなりやすいためだ。会社員なら定年後に収入が減ることを見据えて保険料を抑え、老後の家計の負担を軽くすることも期待できる。>

とのことです。

【管理人の感想】
日経の記事では、

< 「子供が大学を卒業したので生命保険の保障はもっと少なくていいのではないか。」関東地方に住む50代前半の男性Aさんは妻とともにファイナンシャルプランナー(FP)のもとを訪ねた。Aさんは会社員で、妻はパート勤務をしている。これまでは入院で1日1万円の給付金が出る医療保険や入院・手術などで給付されるがん保険のほか、Aさんが亡くなった場合に妻が月に20万円を受け取る収入保障保険に加入。妻も入院日額1万円の医療保険やがん保険に入り、世帯で月約3万円の保険料を払っていた。

 しかし教育費に備える必要がなくなったため、保険を見直すことにしたという。FPの助言を受けて、まず収入保障保険は妻の生活費の不足分を改めて計算し、受給額を月13万円に引き下げた。医療保険は夫婦も入院日額を5000円に減額し、がん保険も保険料が低めで、所定の治療を受けている期間は給付金が出る「都度給付型」に変更した。世帯の保険料は計約2万円と1万円ほど少なくなった。>

という見直しのモデルケースを設定していました。

う~ん…お粗末ですね。遺族年金と配偶者の収入を差し引いても

①子供が就職するまでは最大で毎月20万円の不足が生じていた。

②子供が就職した後でも、毎月13万円不足。

いやはや…収支のバランスがとんでもないことになっている家庭だなと思ってしまいました。また、加入済みのがん保険を解約して、治療給付型のがん保険に乗り換えたとありますが、これもおかしな話です。

30代前半で加入していたがん保険だったと仮定すると、20年ほど経過しているわけですから、保険料はその分高くなっており、乗り換えれば保険料の圧縮効果は小さく、世帯保険料が1万円ほど少なくなるということは考えにくいです。

診断給付金+入院給付金+手術給付金+先進医療給付金などで保障が構成されているがん保険は、確かに治療(化学療法や放射線治療)が入院から通院へとステージが変化した現状に即していない面もありますが、診断給付金の支払事由は変化がないですし、手術給付金や入院給付金、先進医療給付金も全く使えないというわけではありません。

それならば、既存のがん保険に治療給付型の主契約の保障を追加するだけでいいのではないでしょうか。

また、記事においては更新型の保障についての言及もありました。確かに更新型の保険は、保障内容をそのままの状態で更新すれば、保険料が高くなります。

しかし、「更新=保険料の上昇」というのは誤解です。更新時に保障額を引き下げてから保障を更新する「減額更新」の手続きを行えば、保険料の上昇は抑えられるか、支払保険料の減額にもつながります。

なお、更新型の保障を「定期保険特約」+「医療保障」+「就労不能状態に死亡保障をセットしたもの」などと組み合わせてしまうと、更新を迎えた際に、年齢によっては更新後の保険料が思っていた以上に高くなってしまい、保険料の負担と保障のバランスをどうするか頭を悩ませることになりかねません。

更新型の保障はシンプルにすることが重要だと考えています。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2023年7月29日朝刊-

【子が独立、生命保険見直す】

 「子供が大学を卒業したので生命保険の保障はもっと少なくていいのではないか。」関東地方に住む50代前半の男性Aさんは妻とともにファイナンシャルプランナー(FP)のもとを訪ねた。Aさんは会社員で、妻はパート勤務をしている。これまでは入院で1日1万円の給付金が出る医療保険や入院・手術などで給付されるがん保険のほか、Aさんが亡くなった場合に妻が月に20万円を受け取る収入保障保険に加入。妻も入院日額1万円の医療保険やがん保険に入り、世帯で月約3万円の保険料を払っていた。

 しかし教育費に備える必要がなくなったため、保険を見直すことにしたという。FPの助言を受けて、まず収入保障保険は妻の生活費の不足分を改めて計算し、受給額を月13万円に引き下げた。医療保険は夫婦も入院日額を5000円に減額し、がん保険も保険料が低めで、所定の治療を受けている期間は給付金が出る「都度給付型」に変更した。世帯の保険料は計約2万円と1万円ほど少なくなった。

 生命保険文化センターの調査によると、生命保険の世帯加入率は50台で約94%と最も高くなっている(個人年金保険を含む)。結婚や出産といったライフイベントを経験する人が多い30代から上昇し始め、50代でピークになったあと下落に転じる傾向がある。

 FPの柳沢美由紀氏は「50代は生命保険の見直しをするのに適した時期」と話す。子供の独立で教育費がかからなくなったり、貯蓄が若いころに比べて増えたりするなどして、万一の際に必要な保障額が少なくなりやすいためだ。会社員なら定年後に収入が減ることを見据えて保険料を抑え、老後の家計の負担を軽くすることも期待できる。

 では必要な保障額はどう把握すればいいだろうか。選択肢となるのが家族の家計を支える働き手が亡くなったあとに必要となる支出と収入の見込み額を確認すること。支出から収入を差し引いて支出が上回るなら、差額が生命保険で備える保障額となる。

 支出は残された家族の生活費や住宅費のほか、老後の医療・介護に備える予備費を見込む。一方、収入は家族が受け取る遺族年金などの公的保障や亡くなった人の勤務先の死亡退職金、貯蓄額などを確認する。遺された配偶者の収入も合算する。現在契約している保険の保障総額が必要額を上回る場合は保障が過剰な状態で、保険を見直す余地がありそうだ。

 原則として同じ保障内容で契約が続くが、保険料は更新時の年齢で再計算し、年齢が上がるとともに上昇する。契約者が申し出なければ一般的に自動継続になるため、交信を望まなければ手続きをする必要がある。高齢になるほど更新の際の保険料上昇幅は大きくなることが多く、「更新型に加入している場合は保険料が契約満了まで一定の保険に変える方がいい」と柳沢氏は話す。

 がん保険も確認しておきたい。がん保険の主な契約の保障内容は現在、都度給付型のほか、がんと診断されたときに100万円などまとまった金額を出す「診断給付型」が増えている。以前は入院・手術に備える「入院給付型」が主流だったが、最近は入院期間が短くなり、通院で治療するケースが少なくないことが背景にある。

 入院給付型は入院日数に応じて入院日額が出る保障が中心。入院期間が短期化しているため、治療費を十分に賄えない可能性もある。「若いころ契約したがん保険が現在のがん治療の動向にあっているかをチェックすることが大切」とFPの平野雅章氏は話す。

 保険診療の医療費には、毎月の自己負担額に上限を設ける高額療養費制度がある。年収500万円なら自己負担上限額は通常約万円で、加入する健康保険によっては付加給付でさらに負担が減るケースがある。医療保険の保障が過剰なら入院1日あたりの給付額を減らすといったことも一案だろう。

 保障を減らす際は終身保険や養老保険など解約返戻金があるタイプの保険なら、「払済保険」への変更という方法がある。保障の期間は変えずに保険金額を減らし、変更後は保険料を払う必要がなくなる。最低限の保障を確保したい場合に選択肢になりそうだ。

以上です。

↑春の河原で吸水中のナミアゲハ春型の♂(4月撮影)。

給付金等の返還請求を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和5年1~3月の裁定概要集(PDF)に、給付金等の返還請求を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によると、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 約款上の免責事由に該当することを理由に、給付金等の返還を求められたことを不服として、給付金等の返還要求の取下げを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和3年9月上旬に浸潤性乳管癌と診断されたため、同年6月に契約した組立型保険にもとづき、給付金等を請求したところ(請求①。診断書の診断確定日は9月1日)、給付金等が支払われた。その後、同年9月下旬に同疾病の治療のために再度入院したため、2回目の給付金を請求したところ(請求②。診断書の診断確定日は8月25日)、診断確定日が責任開始日から起算して90日以内であることを理由に、給付金が支払われず、また請求①で支払われた給付金等の返還を求められた。しかし、以下等の理由により、給付金等の返還要求を取り下げてほしい。

(1)診断確定日は、主治医の診断書にもとづく日付であり、病理検査による診断が優先される保険会社の主張は納得できない。

(2)検査等を含めて、総合的に診断確定するのは主治医であり、主治医は、請求①の診断書の日付が正しいと言っている。

…この事案は既に裁定終了となっています。

<保険会社の主張>では、請求①と②で診断確定の日付が異なっていることについて、主治医に照会した結果、請求②の日付が正しいとの回答を得ています。

がんの診断確定について、約款では以下のように定義されています(損保系生保H生命の約款より転載)。

「がんの診断確定は、日本の医師または歯科医師の資格を持つ者(以下本項において「医師」といいます。なお、被保険者が医師である場合は、被保険者以外の医師をいいます。)によってなされることを要します。また、病理組織学的所見(生検)、細胞学的所見、理化学的所見(X線、内視鏡等)、臨床学的所見、手術所見またはその他の所見のいずれかにより、医師ががんと診断した日をもって、診断確定されたものとみなします。」

<申立人の主張>と<保険会社の主張>から、病理検査による診断がなされたのが請求②の日付である、8月25日であることが伺えます。そうなりますと、申立人の請求は、90日間の不担保期間内に診断確定されたことによる「がん無効」となります。

保険会社が支払った給付金等の返還請求を行うのは当然のことでしょう。

【事案の内容】

以下、裁定事案の内容です(令和5年1~3月裁定概要集P37~38より転載)。

[事案2022-142]給付金等返還要求取下請求
・令和5年2月3日 裁定終了

<事案の概要>
 約款上の免責事由に該当することを理由に、給付金等の返還を求められたことを不服として、給付金等の返還要求の取下げを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和3年9月上旬に浸潤性乳管癌と診断されたため、同年6月に契約した組立型保険にもとづき、給付金等を請求したところ(請求①。診断書の診断確定日は9月1日)、給付金等が支払われた。その後、同年9月下旬に同疾病の治療のために再度入院したため、2回目の給付金を請求したところ(請求②。診断書の診断確定日は8月25日)、診断確定日が責任開始日から起算して90日以内であることを理由に、給付金が支払われず、また請求①で支払われた給付金等の返還を求められた。しかし、以下等の理由により、給付金等の返還要求を取り下げてほしい。

(1)診断確定日は、主治医の診断書にもとづく日付であり、病理検査による診断が優先される保険会社の主張は納得できない。

(2)検査等を含めて、総合的に診断確定するのは主治医であり、主治医は、請求①の診断書の日付が正しいと言っている。

<保険会社の主張>
 以下等の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)請求①②の診断書で、診断確定日が相違している。

(2)診断確定日の相違について、主治医に照会したところ、請求②の日付が正しいとの回答であったため、約款の免責事由に該当する。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづき審理を行った。なお、申立人が希望しなかったため、事情聴取は行わなかった。

2.裁定結果
 上記手続きの結果、申立人の請求は認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑ハナダイコンにやってきたビロウドツリアブ(4月撮影)。

金融庁、銀行窓口における外貨建保険の販売に対する監視を強化?日経報道。

7月4日の日本経済新聞朝刊に、外貨建保険の銀行窓販に対する金融庁のモニタリング結果と、来年度のモニタリング方針についての記事がありました。

記事によりますと、

< 金融庁は外貨建一時払い保険の販売実態について監視を強化する。売れば売るほど営業担当者の人事や給与評価が高くなる大手銀行や地方銀行があり、顧客のニーズに沿った商品提案ができていない金融機関を問題視しているためだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
1.監視を強化ではなく、銀行が販売・管理態勢の強化をする必要があるということでは?

日経の記事は、6月30日に金融庁がHP内の「報道発表資料」において掲載した、<リスク性商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果>を基にしたものです。

金融庁が公表しているモニタリング結果は「概要版」「全体版」がありますので、ぜひご自身の目でご確認ください。

日経記事の冒頭は、「概要版 2.リスク性商品における販売の現状 その5」にある、

・多くの重点先※では、販売増加の背景の一つが、販売推進する業績評価体系であることが窺われた。

⇒販売・解約額が大幅増加の一方、残高は横ばい。顧客ニーズに即した販売動向か懸念する先が相応に存在。

〇販売姿勢や販売・管理態勢について幅広く対話・モニタリングを強化。

※重点先:「リスク性金融商品の各業態の販売動向や個社別の規模対比での販売額等を軸に、リスクベースで重点的にモニタリングする先」のことです(「全体版P2」より抜粋・転載)。

-という記述にもとづくものと思われます。ここだけを見れば、金融庁が監視を強化するという記事は妥当のように思えます。

しかし、「全体版・P17 6.来事務年度の対話・モニタリングのポイント」では、

6.来事務年度の対話・モニタリングの主なポイント

 金融庁は、以下の観点から、引き続き対話・モニタリングを実施していく。

①、②略

③リスク性金融商品の販売・管理態勢の強化
・仕組み債や外貨建一時払い保険を含むリスク性金融商品の販売に関し、特定の商品への販売偏重や苦情が寄せられていないか。また、顧客の真のニーズの把握や分かりやすい説明を含め、適切な販売・管理態勢が構築できているか。

・仕組債を販売する場合は、仕組債関連ガイドラインへの対応にとどまらず、経営陣が責任をもって、顧客の最善の利益を踏まえた商品性の見直しや販売可否を判断しているか。

④略

-とあります。管理人個人としては、金融庁が監視を強化…というよりも、銀行が適切な販売・管理態勢を強化する必要があり、金融庁はその点も含めて、引き続き対話とモニタリングを行っていく―ということだと思います。

2.課題もある一方で、工夫がみられているのですが…。
日経は記事において、

< …

 保険料を米ドルなどの外貨建てで一括払いする外貨建一時払い保険は、米欧の金利上昇を受けたニーズもあり、大手行や地銀の販売額は2022年度上期に1.2兆円と21年度下期に比べて約7割増えた。

 金融庁は販売増加の背景の一つとして「販売を推進する業績評価体系であることが窺われる」と指摘した。保険販売に占める外貨建一時払い保険の販売割合が9割以上と高い銀行では外貨は円貨に比べて2.5~4倍の業績評価が設定されているケースがあった。

 顧客より銀行の収益を重視するような販売体制の懸念がある先については、重点的に検証する姿勢を示した。そのほか、運用目的での販売にもかかわらず他のリスク性商品とコストやリターンについて比較する説明がない点なども課題に挙げた。>

と、モニタリングの結果、銀行窓口における外貨建一時払い保険等のリスク性金融商品の取扱いや、その管理態勢には、多くの課題が目立ったような報道をしています。

確かに、リスク性商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果(全体版)にて、

3.「顧客の最善の利益の追求」に向けた課題

(1)仕組債や外貨建て一時払い保険の販売・管理態勢の課題【原則2関連】

②外貨建て一時払い保険
(イ)商品導入・販売に際して販売会社に求められる事項

 販売会社は、運用・保障・相続等の顧客ニーズを的確に把握し、「本原則」を踏まえつつ、外貨建て一時払い保険がそのニーズに最適な商品かを検証する必要がある。その上で、前述したパッケージ商品販売の留意点も踏まえつつ、顧客が契約判断に必要な商品の特徴やリスク特性等を丁寧に説明する必要がある。また、当該保険は、過去の円高進行時の解約の円転換によって損失が発生した旨の苦情が多く寄せられた経緯もあり、商品性を十分に理解できる顧客に対し、長期保有を前提に提案・販売する必要がある。特に、目標(ターゲット)到達型については、顧客が目標到達後に解約して同様の保険に再加入する場合、顧客に販売手数料等の二重負担が生じることを踏まえた販売のあり方を検討する必要がある。

(ロ)対話・モニタリングで判明した課題
 多くの重点先では以下の課題が認められた。

・運用目的で販売したにもかかわらず、他のリスク性金融商品とのリスク・リターン・コスト等を比較説明していなかった

・ 相続目的で販売したにもかかわらず、非課税枠を大きく超える保険金等の額を契約時に設定していた

・ 保障目的で目標(ターゲット)到達型保険を販売したにもかかわらず、目標到達後に保険を解約させて保障期間を途絶えさせていた

(5)従業員に対する適切な動機付けの課題【原則7】

①業績評価(個人及び営業拠点)の課題

 販売会社が顧客本位の業務運営を推進するためには、現状の業績評価が、営業職員に「取組方針」に則した行動を促す内容となっているか、業績評価の改定によって営業現場の行動がどのように変化しているか等について、第1線はもとより、経営陣や第2線・第3線が継続的に検証する必要がある。

 しかしながら、多くの重点先では以下の課題が認められた。

・「取組方針」に「グループ総合力をもって顧客のニーズに対応するため銀証で連携する」旨を掲げているにもかかわらず、銀行営業職員の業績目標にグループ証券会社が紹介顧客から得る個別商品の収益が含まれているため、銀行が顧客属性やリスク許容度等を十分に把握することなく、グループ証券会社に送客していた。

・ 個人の収益目標は廃止したものの、営業拠点の業績評価項目にグループ顧客の獲得件数目標が存在しているため、営業拠点長等は自身の判断で個人に営業拠点目標を割り振り、達成状況を管理していた。その結果、銀行で個人向け国債を購入したいとする顧客をグループ証券会社に紹介していた。

・「取組方針」で「収益に偏重しない業績評価体系とすることで、顧客本位のコンサルティングを行う」旨を掲げているにもかかわらず、販売手数料の高い外貨建て一時払い保険の販売に係る個人評価のウェイトが高いため、営業現場が当該保険への販売に傾注していた。

 上記の課題が認められた先では、経営陣がその実態を十分把握しておらず、第2線・第3線も業績評価がリスク性金融商品の販売に与える影響を検証していなかった。

こうした課題がある一方で、以下のような工夫事例も認められた。

◇工夫事例

・ 業績評価項目に、口座数等の顧客基盤に関するものを取り入れている。

・ 業績評価において、定量評価の比重を下げ、顧客へのアンケート調査で得た評価や提案プロセス等定性情報の比重を上げている。

・ 業績プレッシャーを排除し、顧客本位の提案・販売を促進するため、営業店や営業職員の収益目標を全て撤廃している。

・ 若年層・中年層の資産形成を推進するため、同層に対する積立投資信託の獲得の業
績評価ポイントを高く設定している。>

-と課題を挙げています。しかしその一方で、金融機関が取り組んでいる工夫事例も挙げています。経済紙であるなら公平な記事を書いてほしいものです。

↑ツバメシジミ・♂の吸水行動(4月撮影)。

生保の銀行窓販、一時払い保険商品の新契約高が7年ぶりに5兆円越え。

6月27日の日本経済新聞朝刊に、生命保険の銀行窓販の動向に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 保険の銀行窓販が伸びている。保険料をまとめて納める一時払い商品の販売額は2022年度に7年ぶりに5兆円を超えた。世界的な金利上昇で利回りが改善した米ドルなど外貨建が活況だった。最も将来の保険金支払いに備えて保険料の一部を積み立てる制度※が始まり、販売増が短期的には収益を押し下げる構図になっている。>

※管理人補足:2022年4月1日をもって、健全な競争環境の整備と契約者保護の観点から、外貨建保険も「標準責任準備金制度」の対象となりました。これにより、保険会社は保険料の基礎率である予定利率や積立利率の設定に慎重になっていると考えられます。

とのことです。

【管理人の感想】
外貨建ての一時払保険商品は、円建保険商品に比べて高い予定利率や積立利率が設定できるため、退職金の受け皿として積極的に提案されてきました。

しかし、「市場価格調整」を採用しているなど、保険商品の仕組みが分かりやすいとはいいがたく、契約締結後に苦情を申し出たり、代理店である銀行や引受先の保険会社と、契約者・被保険者およびその家族との間で紛争に至ったりするケースが報告されています。

個人的には、どうしても保険金を用意する必要があって、円建の保険商品では希望に沿えない(健康上の理由で加入できないなど)というケースを除いて、「為替の動向」という不確実性を内包している外貨建保険で、保険金を用意する必要性はないと考えています。

しばしば資産運用の手段としても…という理屈を耳にしますが、それなら米国債を購入した方がよほど効率よく資産運用できるでしょうから、それも無理があると考えています。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

【保険、銀行窓販7年ぶり5兆円越え 昨年度、外貨建がけん引】
 保険の銀行窓販が伸びている。保険料をまとめて納める一時払い商品の販売額は2022年度に7年ぶりに5兆円を超えた。世界的な金利上昇で利回りが改善した米ドルなど外貨建が活況だった。最も将来の保険金支払いに備えて保険料の一部を積み立てる制度が始まり、販売増が短期的には収益を押し下げる構図になっている。

 22年度の銀行窓口における一時払い保険の販売額は、21年度から約1.7倍の約5兆5000億円。20年度に比べると2倍近くに伸びた。5兆円を超えたのは、日銀がマイナス金利政策を導入した15年度以来、7年ぶりとなる。

 けん引役は米ドル建てを中心とした外貨建だ。22年度の販売額は前の年度比1.8倍の約3兆9000億円だった。22年前半から海外金利が上昇したことに伴い、積立利率が改善したことが大きい。

 第一生命ホールんディングス(HD)傘下の第一フロンティア生命保険の場合、米ドル建てで10年運用する主力商品の利率が4%を超えている。22年の当初より2%以上高い。同社の23年3月期決算は保険料等収入が前の期比74%増の約2兆6000億円と期初の想定を上回る好調ぶりだった。

 販売は好調だが、単年度の収益にはむしろ悪影響となる。将来の保険金支払いに備えるため、集めた保険料の一部を責任準備金として積み立てる制度の対象に外貨建保険も加わったためだ。第一生命HDでは責任準備金の積み増しが増え、有価証券の売却損益も含めると約500億円利益を押し下げた※。

※管理人補足:令和3年4月23日から5月24日にかけて、「標準責任準備金制度にかかる告示の一部改正(案)」に寄せられたパブリックコメントの中に、日経記事よりも精度の高いコメントがあります。以下抜粋したものです。

< 外貨建保険に対する標準責任準備金制度の適用は、これにより、標準利率より高い利率での運用を謳う保険会社においても、初年度の責任準備金負担の重さから、保険契約者に提示する予定利率を抑えることが想定され、健全な競争環境の整備ひいては契約者の保護に資するものと理解しております。>

 外貨建てに見劣りしていた円建ての妙味も戻りつつある。22年度の販売額は18年度比2.6倍超の約1兆6000億円だった。22年末から国内の長期金利も上昇し、日本生命保険や明治安田生命保険は23年1月に予定利率を引き上げた。

 外貨建保険については、金融庁は実態を「見える化」するために販売金融機関に対し、顧客の損益状況や銘柄別のリスク・リターンの成果指標の策定も求めている。業界側も22年から資格制度の運用を始めるなど販売改革に着手した。

 23年度は外貨建ての需要が一服し、円建ての販売が伸びるとの見方が多い。住友生命保険の高尾延冶・執行役常務は「円建て、ドル建てトフルラインアップの商品を用意する中で、市場環境や顧客ニーズに合わせて販売ボリュームを確保したい」と語る。5月末時点での販売額は円建て、外貨建てともに相対的な金利の高さを受けて、業界全体で前年同期比プラスになっている。

 外貨建て保険については「ほかの運用商品との比較説明が行われておらず、顧客のポートフォリオ全体における位置づけが不明確」(金融庁)といった課題も依然残っている。金融機関には適切な販売体制の構築や手数料など情報開示の充実が求められる。

以上です。

↑ハナダイコンにやってきたキアゲハ・春型の♂(4月撮影)。