生保の銀行窓販、一時払い保険商品の新契約高が7年ぶりに5兆円越え。

6月27日の日本経済新聞朝刊に、生命保険の銀行窓販の動向に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 保険の銀行窓販が伸びている。保険料をまとめて納める一時払い商品の販売額は2022年度に7年ぶりに5兆円を超えた。世界的な金利上昇で利回りが改善した米ドルなど外貨建が活況だった。最も将来の保険金支払いに備えて保険料の一部を積み立てる制度※が始まり、販売増が短期的には収益を押し下げる構図になっている。>

※管理人補足:2022年4月1日をもって、健全な競争環境の整備と契約者保護の観点から、外貨建保険も「標準責任準備金制度」の対象となりました。これにより、保険会社は保険料の基礎率である予定利率や積立利率の設定に慎重になっていると考えられます。

とのことです。

【管理人の感想】
外貨建ての一時払保険商品は、円建保険商品に比べて高い予定利率や積立利率が設定できるため、退職金の受け皿として積極的に提案されてきました。

しかし、「市場価格調整」を採用しているなど、保険商品の仕組みが分かりやすいとはいいがたく、契約締結後に苦情を申し出たり、代理店である銀行や引受先の保険会社と、契約者・被保険者およびその家族との間で紛争に至ったりするケースが報告されています。

個人的には、どうしても保険金を用意する必要があって、円建の保険商品では希望に沿えない(健康上の理由で加入できないなど)というケースを除いて、「為替の動向」という不確実性を内包している外貨建保険で、保険金を用意する必要性はないと考えています。

しばしば資産運用の手段としても…という理屈を耳にしますが、それなら米国債を購入した方がよほど効率よく資産運用できるでしょうから、それも無理があると考えています。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

【保険、銀行窓販7年ぶり5兆円越え 昨年度、外貨建がけん引】
 保険の銀行窓販が伸びている。保険料をまとめて納める一時払い商品の販売額は2022年度に7年ぶりに5兆円を超えた。世界的な金利上昇で利回りが改善した米ドルなど外貨建が活況だった。最も将来の保険金支払いに備えて保険料の一部を積み立てる制度が始まり、販売増が短期的には収益を押し下げる構図になっている。

 22年度の銀行窓口における一時払い保険の販売額は、21年度から約1.7倍の約5兆5000億円。20年度に比べると2倍近くに伸びた。5兆円を超えたのは、日銀がマイナス金利政策を導入した15年度以来、7年ぶりとなる。

 けん引役は米ドル建てを中心とした外貨建だ。22年度の販売額は前の年度比1.8倍の約3兆9000億円だった。22年前半から海外金利が上昇したことに伴い、積立利率が改善したことが大きい。

 第一生命ホールんディングス(HD)傘下の第一フロンティア生命保険の場合、米ドル建てで10年運用する主力商品の利率が4%を超えている。22年の当初より2%以上高い。同社の23年3月期決算は保険料等収入が前の期比74%増の約2兆6000億円と期初の想定を上回る好調ぶりだった。

 販売は好調だが、単年度の収益にはむしろ悪影響となる。将来の保険金支払いに備えるため、集めた保険料の一部を責任準備金として積み立てる制度の対象に外貨建保険も加わったためだ。第一生命HDでは責任準備金の積み増しが増え、有価証券の売却損益も含めると約500億円利益を押し下げた※。

※管理人補足:令和3年4月23日から5月24日にかけて、「標準責任準備金制度にかかる告示の一部改正(案)」に寄せられたパブリックコメントの中に、日経記事よりも精度の高いコメントがあります。以下抜粋したものです。

< 外貨建保険に対する標準責任準備金制度の適用は、これにより、標準利率より高い利率での運用を謳う保険会社においても、初年度の責任準備金負担の重さから、保険契約者に提示する予定利率を抑えることが想定され、健全な競争環境の整備ひいては契約者の保護に資するものと理解しております。>

 外貨建てに見劣りしていた円建ての妙味も戻りつつある。22年度の販売額は18年度比2.6倍超の約1兆6000億円だった。22年末から国内の長期金利も上昇し、日本生命保険や明治安田生命保険は23年1月に予定利率を引き上げた。

 外貨建保険については、金融庁は実態を「見える化」するために販売金融機関に対し、顧客の損益状況や銘柄別のリスク・リターンの成果指標の策定も求めている。業界側も22年から資格制度の運用を始めるなど販売改革に着手した。

 23年度は外貨建ての需要が一服し、円建ての販売が伸びるとの見方が多い。住友生命保険の高尾延冶・執行役常務は「円建て、ドル建てトフルラインアップの商品を用意する中で、市場環境や顧客ニーズに合わせて販売ボリュームを確保したい」と語る。5月末時点での販売額は円建て、外貨建てともに相対的な金利の高さを受けて、業界全体で前年同期比プラスになっている。

 外貨建て保険については「ほかの運用商品との比較説明が行われておらず、顧客のポートフォリオ全体における位置づけが不明確」(金融庁)といった課題も依然残っている。金融機関には適切な販売体制の構築や手数料など情報開示の充実が求められる。

以上です。

↑ハナダイコンにやってきたキアゲハ・春型の♂(4月撮影)。

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