金融庁、銀行窓口における外貨建保険の販売に対する監視を強化?日経報道。

7月4日の日本経済新聞朝刊に、外貨建保険の銀行窓販に対する金融庁のモニタリング結果と、来年度のモニタリング方針についての記事がありました。

記事によりますと、

< 金融庁は外貨建一時払い保険の販売実態について監視を強化する。売れば売るほど営業担当者の人事や給与評価が高くなる大手銀行や地方銀行があり、顧客のニーズに沿った商品提案ができていない金融機関を問題視しているためだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
1.監視を強化ではなく、銀行が販売・管理態勢の強化をする必要があるということでは?

日経の記事は、6月30日に金融庁がHP内の「報道発表資料」において掲載した、<リスク性商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果>を基にしたものです。

金融庁が公表しているモニタリング結果は「概要版」「全体版」がありますので、ぜひご自身の目でご確認ください。

日経記事の冒頭は、「概要版 2.リスク性商品における販売の現状 その5」にある、

・多くの重点先※では、販売増加の背景の一つが、販売推進する業績評価体系であることが窺われた。

⇒販売・解約額が大幅増加の一方、残高は横ばい。顧客ニーズに即した販売動向か懸念する先が相応に存在。

〇販売姿勢や販売・管理態勢について幅広く対話・モニタリングを強化。

※重点先:「リスク性金融商品の各業態の販売動向や個社別の規模対比での販売額等を軸に、リスクベースで重点的にモニタリングする先」のことです(「全体版P2」より抜粋・転載)。

-という記述にもとづくものと思われます。ここだけを見れば、金融庁が監視を強化するという記事は妥当のように思えます。

しかし、「全体版・P17 6.来事務年度の対話・モニタリングのポイント」では、

6.来事務年度の対話・モニタリングの主なポイント

 金融庁は、以下の観点から、引き続き対話・モニタリングを実施していく。

①、②略

③リスク性金融商品の販売・管理態勢の強化
・仕組み債や外貨建一時払い保険を含むリスク性金融商品の販売に関し、特定の商品への販売偏重や苦情が寄せられていないか。また、顧客の真のニーズの把握や分かりやすい説明を含め、適切な販売・管理態勢が構築できているか。

・仕組債を販売する場合は、仕組債関連ガイドラインへの対応にとどまらず、経営陣が責任をもって、顧客の最善の利益を踏まえた商品性の見直しや販売可否を判断しているか。

④略

-とあります。管理人個人としては、金融庁が監視を強化…というよりも、銀行が適切な販売・管理態勢を強化する必要があり、金融庁はその点も含めて、引き続き対話とモニタリングを行っていく―ということだと思います。

2.課題もある一方で、工夫がみられているのですが…。
日経は記事において、

< …

 保険料を米ドルなどの外貨建てで一括払いする外貨建一時払い保険は、米欧の金利上昇を受けたニーズもあり、大手行や地銀の販売額は2022年度上期に1.2兆円と21年度下期に比べて約7割増えた。

 金融庁は販売増加の背景の一つとして「販売を推進する業績評価体系であることが窺われる」と指摘した。保険販売に占める外貨建一時払い保険の販売割合が9割以上と高い銀行では外貨は円貨に比べて2.5~4倍の業績評価が設定されているケースがあった。

 顧客より銀行の収益を重視するような販売体制の懸念がある先については、重点的に検証する姿勢を示した。そのほか、運用目的での販売にもかかわらず他のリスク性商品とコストやリターンについて比較する説明がない点なども課題に挙げた。>

と、モニタリングの結果、銀行窓口における外貨建一時払い保険等のリスク性金融商品の取扱いや、その管理態勢には、多くの課題が目立ったような報道をしています。

確かに、リスク性商品の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果(全体版)にて、

3.「顧客の最善の利益の追求」に向けた課題

(1)仕組債や外貨建て一時払い保険の販売・管理態勢の課題【原則2関連】

②外貨建て一時払い保険
(イ)商品導入・販売に際して販売会社に求められる事項

 販売会社は、運用・保障・相続等の顧客ニーズを的確に把握し、「本原則」を踏まえつつ、外貨建て一時払い保険がそのニーズに最適な商品かを検証する必要がある。その上で、前述したパッケージ商品販売の留意点も踏まえつつ、顧客が契約判断に必要な商品の特徴やリスク特性等を丁寧に説明する必要がある。また、当該保険は、過去の円高進行時の解約の円転換によって損失が発生した旨の苦情が多く寄せられた経緯もあり、商品性を十分に理解できる顧客に対し、長期保有を前提に提案・販売する必要がある。特に、目標(ターゲット)到達型については、顧客が目標到達後に解約して同様の保険に再加入する場合、顧客に販売手数料等の二重負担が生じることを踏まえた販売のあり方を検討する必要がある。

(ロ)対話・モニタリングで判明した課題
 多くの重点先では以下の課題が認められた。

・運用目的で販売したにもかかわらず、他のリスク性金融商品とのリスク・リターン・コスト等を比較説明していなかった

・ 相続目的で販売したにもかかわらず、非課税枠を大きく超える保険金等の額を契約時に設定していた

・ 保障目的で目標(ターゲット)到達型保険を販売したにもかかわらず、目標到達後に保険を解約させて保障期間を途絶えさせていた

(5)従業員に対する適切な動機付けの課題【原則7】

①業績評価(個人及び営業拠点)の課題

 販売会社が顧客本位の業務運営を推進するためには、現状の業績評価が、営業職員に「取組方針」に則した行動を促す内容となっているか、業績評価の改定によって営業現場の行動がどのように変化しているか等について、第1線はもとより、経営陣や第2線・第3線が継続的に検証する必要がある。

 しかしながら、多くの重点先では以下の課題が認められた。

・「取組方針」に「グループ総合力をもって顧客のニーズに対応するため銀証で連携する」旨を掲げているにもかかわらず、銀行営業職員の業績目標にグループ証券会社が紹介顧客から得る個別商品の収益が含まれているため、銀行が顧客属性やリスク許容度等を十分に把握することなく、グループ証券会社に送客していた。

・ 個人の収益目標は廃止したものの、営業拠点の業績評価項目にグループ顧客の獲得件数目標が存在しているため、営業拠点長等は自身の判断で個人に営業拠点目標を割り振り、達成状況を管理していた。その結果、銀行で個人向け国債を購入したいとする顧客をグループ証券会社に紹介していた。

・「取組方針」で「収益に偏重しない業績評価体系とすることで、顧客本位のコンサルティングを行う」旨を掲げているにもかかわらず、販売手数料の高い外貨建て一時払い保険の販売に係る個人評価のウェイトが高いため、営業現場が当該保険への販売に傾注していた。

 上記の課題が認められた先では、経営陣がその実態を十分把握しておらず、第2線・第3線も業績評価がリスク性金融商品の販売に与える影響を検証していなかった。

こうした課題がある一方で、以下のような工夫事例も認められた。

◇工夫事例

・ 業績評価項目に、口座数等の顧客基盤に関するものを取り入れている。

・ 業績評価において、定量評価の比重を下げ、顧客へのアンケート調査で得た評価や提案プロセス等定性情報の比重を上げている。

・ 業績プレッシャーを排除し、顧客本位の提案・販売を促進するため、営業店や営業職員の収益目標を全て撤廃している。

・ 若年層・中年層の資産形成を推進するため、同層に対する積立投資信託の獲得の業
績評価ポイントを高く設定している。>

-と課題を挙げています。しかしその一方で、金融機関が取り組んでいる工夫事例も挙げています。経済紙であるなら公平な記事を書いてほしいものです。

↑ツバメシジミ・♂の吸水行動(4月撮影)。

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