給付金等の返還請求を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和5年1~3月の裁定概要集(PDF)に、給付金等の返還請求を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によると、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 約款上の免責事由に該当することを理由に、給付金等の返還を求められたことを不服として、給付金等の返還要求の取下げを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和3年9月上旬に浸潤性乳管癌と診断されたため、同年6月に契約した組立型保険にもとづき、給付金等を請求したところ(請求①。診断書の診断確定日は9月1日)、給付金等が支払われた。その後、同年9月下旬に同疾病の治療のために再度入院したため、2回目の給付金を請求したところ(請求②。診断書の診断確定日は8月25日)、診断確定日が責任開始日から起算して90日以内であることを理由に、給付金が支払われず、また請求①で支払われた給付金等の返還を求められた。しかし、以下等の理由により、給付金等の返還要求を取り下げてほしい。

(1)診断確定日は、主治医の診断書にもとづく日付であり、病理検査による診断が優先される保険会社の主張は納得できない。

(2)検査等を含めて、総合的に診断確定するのは主治医であり、主治医は、請求①の診断書の日付が正しいと言っている。

…この事案は既に裁定終了となっています。

<保険会社の主張>では、請求①と②で診断確定の日付が異なっていることについて、主治医に照会した結果、請求②の日付が正しいとの回答を得ています。

がんの診断確定について、約款では以下のように定義されています(損保系生保H生命の約款より転載)。

「がんの診断確定は、日本の医師または歯科医師の資格を持つ者(以下本項において「医師」といいます。なお、被保険者が医師である場合は、被保険者以外の医師をいいます。)によってなされることを要します。また、病理組織学的所見(生検)、細胞学的所見、理化学的所見(X線、内視鏡等)、臨床学的所見、手術所見またはその他の所見のいずれかにより、医師ががんと診断した日をもって、診断確定されたものとみなします。」

<申立人の主張>と<保険会社の主張>から、病理検査による診断がなされたのが請求②の日付である、8月25日であることが伺えます。そうなりますと、申立人の請求は、90日間の不担保期間内に診断確定されたことによる「がん無効」となります。

保険会社が支払った給付金等の返還請求を行うのは当然のことでしょう。

【事案の内容】

以下、裁定事案の内容です(令和5年1~3月裁定概要集P37~38より転載)。

[事案2022-142]給付金等返還要求取下請求
・令和5年2月3日 裁定終了

<事案の概要>
 約款上の免責事由に該当することを理由に、給付金等の返還を求められたことを不服として、給付金等の返還要求の取下げを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和3年9月上旬に浸潤性乳管癌と診断されたため、同年6月に契約した組立型保険にもとづき、給付金等を請求したところ(請求①。診断書の診断確定日は9月1日)、給付金等が支払われた。その後、同年9月下旬に同疾病の治療のために再度入院したため、2回目の給付金を請求したところ(請求②。診断書の診断確定日は8月25日)、診断確定日が責任開始日から起算して90日以内であることを理由に、給付金が支払われず、また請求①で支払われた給付金等の返還を求められた。しかし、以下等の理由により、給付金等の返還要求を取り下げてほしい。

(1)診断確定日は、主治医の診断書にもとづく日付であり、病理検査による診断が優先される保険会社の主張は納得できない。

(2)検査等を含めて、総合的に診断確定するのは主治医であり、主治医は、請求①の診断書の日付が正しいと言っている。

<保険会社の主張>
 以下等の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)請求①②の診断書で、診断確定日が相違している。

(2)診断確定日の相違について、主治医に照会したところ、請求②の日付が正しいとの回答であったため、約款の免責事由に該当する。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづき審理を行った。なお、申立人が希望しなかったため、事情聴取は行わなかった。

2.裁定結果
 上記手続きの結果、申立人の請求は認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑ハナダイコンにやってきたビロウドツリアブ(4月撮影)。

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