三大疾病一時金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和4年4~6月の裁定概要集(PDF)に、三大疾病一時金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
告知義務違反を理由に契約が解除され、三大疾病一時金が支払われなかったことを不服として、一時金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和3年6月に皮膚表皮内がんに罹患したことから、令和3年2月に契約した引受緩和型医療保険にもとづき三大疾病一時金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、一時金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、三大疾病一時金を支払ってほしい。

(1)告知時、皮膚の病気により病院で紫外線療法を受けていたことは事実であるが、医師からは、「皮膚の細胞が新しく生まれ変われるサイクルが少しおかしい状態であるが、大した皮膚病ではない」と告げられ、菌状息肉症や皮膚リンパ腫であるとは告げられていない。

(2)右頬扁平皮膚がんの既往歴があるため、引受緩和型の本契約に加入したが、皮膚リンパ腫に罹患していることを知っていれば、嘘をついてまで本契約に申し込みはしなかった。

(3)令和3年2月から9月の間は保険料を払っており、この間は契約が存在するため、三大疾病一時金を給付すべきである。

…この事案は既に裁定が終了しています。

<保険会社の主張>によると、申立人は契約前に菌状息肉腫と診断されています。これでは申立人の主張は認められませんね。

また、一時金請求事由である、皮膚表皮内がんについては<保険会社の主張>によると、「日光角化症」とされています。日光角化症は前癌病変で転移することはありません。

この段階で治療をすれば命にかかわることないものの、放置してしまうと悪性度の高い有棘細胞癌に進展してしまうそうです。

おそらく、前癌病変(腫瘍細胞が表皮内にとどまっている状態)であったことから、約款に定める「悪性新生物」の定義に該当しなかったのでしょう。

【裁定事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和4年4~6月裁定概要集P42~43より転載)。

[事案201-244]三大疾病一時金支払請求
・令和4年6月9日 裁定終了

<事案の概要>
告知義務違反を理由に契約が解除され、三大疾病一時金が支払われなかったことを不服として、一時金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和3年6月に皮膚表皮内がんに罹患したことから、令和3年2月に契約した引受緩和型医療保険にもとづき三大疾病一時金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、一時金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、三大疾病一時金を支払ってほしい。

(1)告知時、皮膚の病気により病院で紫外線療法を受けていたことは事実であるが、医師からは、「皮膚の細胞が新しく生まれ変われるサイクルが少しおかしい状態であるが、大した皮膚病ではない」と告げられ、菌状息肉症や皮膚リンパ腫であるとは告げられていない。

(2)右頬扁平皮膚がんの既往歴があるため、引受緩和型の本契約に加入したが、皮膚リンパ腫に罹患していることを知っていれば、嘘をついてまで本契約に申し込みはしなかった。

(3)令和3年2月から9月の間は保険料を払っており、この間は契約が存在するため、三大疾病一時金を給付すべきである。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人が罹患した皮膚表皮内がんは日光角化症であり、約款に定めるがんに該当せず、三大疾病一時金の支払事由を充足しない。

(2)申立人は、本契約の申込前に菌状息肉症と診断され、医師から皮膚リンパ腫の一種であると説明を受けている。菌状息肉症は、本約款上の癌に該当するが、三大疾病一時金の支払事由である、「責任開始日の年前の応当日の翌日以後責任開始時前にがんと医師によって診断確定されたことのない」を充足しない。

(3)申立人は、告知時に、菌状息肉症に罹患して医師の診察を受けていたが、告知書において、「過去5年以内に、悪性新生物又は上皮内新生物で、医師による診療(問診・診察・検査・治療・投薬)を受けたことがありますか?」の問いに対し「いいえ」と回答しており、その告知は事実に反する。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、告知時の状況等を把握するため、申立人および募集人に対し事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続きの結果、申立人の告知義務違反は認められ、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑5月に撮影したニホンカワトンボ・♂。

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