重大事由による契約解除を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた令和3年7~9月の裁定概要集(PDF)に、重大事由による契約解除を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
重大事由による契約解除を不服として、契約解除の取消しと先進医療給付金の支払を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和元年11月に白内障により、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を受けたため、令和元年5月に契約した医療保険の先進医療特約にもとづき先進医療給付金を請求したところ、告知義務違反および他社契約含め5社に重複して加入していることから重大事由に該当するとして契約が解除された。しかし、以下の理由により、契約解除を取り消して、給付金を支払ってほしい。

(1)5社の先進医療特約は、代理店の同じ募集人からほぼ同時に加入したものであり、重大事由に該当するというのであれば、契約時に募集人がその旨を伝えるべきである。

(2)5社に分散して加入した理由は、保険料と保障内容を分散させるためである。

…この事案は既に裁定打ち切りとなっています。

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、2020年3月末をもって先進医療から除外され選定療養(レンズ代が患者の自己負担になります)となっており、現在は先進医療特約の保障外です。

生命保険の医療保障は治療費の自己負担を軽減するためのものです。5社にわたってほぼ同時期に加入し、先進医療も付加するとは…保険本来の役割から逸脱していると思います。

また、募集人はなぜそのような契約を獲得したのか理解に苦しみます。所属している代理店もなぜ指摘しなかったのか?

今回の重大事由による契約解除の判断は妥当だと思います。

<事案の内容>
以下、裁定事案の内容です(令和3年7~9月裁定概要集・P44~45より転載)。

[事案2020-296]契約解除取消請求
・令和3年9月16日 裁定打切り

<事案の概要>
重大事由による契約解除を不服として、契約解除の取消しと先進医療給付金の支払を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和元年11月に白内障により、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を受けたため、令和元年5月に契約した医療保険の先進医療特約にもとづき先進医療給付金を請求したところ、告知義務違反および他社契約含め5社に重複して加入していることから重大事由に該当するとして契約が解除された。しかし、以下の理由により、契約解除を取り消して、給付金を支払ってほしい。

(1)5社の先進医療特約は、代理店の同じ募集人からほぼ同時に加入したものであり、重大事由に該当するというのであれば、契約時に募集人がその旨を伝えるべきである。

(2)5社に分散して加入した理由は、保険料と保障内容を分散させるためである。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人は、当社以外の4社から先進医療給付金を受け取っており。治療費の実学の約4倍の給付を受けている。これは先進医療保障を目的とする経済的負担軽減の範囲を超えるものであるほか、投機的行為と言え、先進医療保障制度の目的に反する。

(2)同時契約時に重大事由の該当について指摘すべきという申立人の意見は否定しないが、解除権行使を妨げるものではない。

(3)先進医療給付金は、重大事由発生以後に支払事由が発生した場合は支払わない旨が約款に記載されている。契約日の時点で先進医療の付保が5件に及んでおり、この時点で重大事由が生じたため、給付金は支払えない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況等を把握するため、申立人及び募集人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続の結果、本件を判断するためには、契約者の実際の収入及び生活状況、支払保険料の合計額、他社契約全ての給付金の支払履歴及び給付金の妥当性、各契約の加入の経緯ならびに保険契約の有無及び支払限度額等を総合的に勘案して判断しなければならず、これらの事情を明らかにするためには、第三者に対する文書送付食卓または文書提出命令あるいは尋問等の手続きが必要となるところ、当審査会はこのような手続きを有していないため、裁定手続を打ち切ることとした。

以上です。

道端の韮で吸蜜中のツマグロヒョウモン・♂(昨年8月撮影)。

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