三大疾病一時金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和4年4~6月の裁定概要集(PDF)に、三大疾病一時金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
告知義務違反を理由に契約が解除され、三大疾病一時金が支払われなかったことを不服として、一時金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和3年6月に皮膚表皮内がんに罹患したことから、令和3年2月に契約した引受緩和型医療保険にもとづき三大疾病一時金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、一時金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、三大疾病一時金を支払ってほしい。

(1)告知時、皮膚の病気により病院で紫外線療法を受けていたことは事実であるが、医師からは、「皮膚の細胞が新しく生まれ変われるサイクルが少しおかしい状態であるが、大した皮膚病ではない」と告げられ、菌状息肉症や皮膚リンパ腫であるとは告げられていない。

(2)右頬扁平皮膚がんの既往歴があるため、引受緩和型の本契約に加入したが、皮膚リンパ腫に罹患していることを知っていれば、嘘をついてまで本契約に申し込みはしなかった。

(3)令和3年2月から9月の間は保険料を払っており、この間は契約が存在するため、三大疾病一時金を給付すべきである。

…この事案は既に裁定が終了しています。

<保険会社の主張>によると、申立人は契約前に菌状息肉腫と診断されています。これでは申立人の主張は認められませんね。

また、一時金請求事由である、皮膚表皮内がんについては<保険会社の主張>によると、「日光角化症」とされています。日光角化症は前癌病変で転移することはありません。

この段階で治療をすれば命にかかわることないものの、放置してしまうと悪性度の高い有棘細胞癌に進展してしまうそうです。

おそらく、前癌病変(腫瘍細胞が表皮内にとどまっている状態)であったことから、約款に定める「悪性新生物」の定義に該当しなかったのでしょう。

【裁定事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和4年4~6月裁定概要集P42~43より転載)。

[事案201-244]三大疾病一時金支払請求
・令和4年6月9日 裁定終了

<事案の概要>
告知義務違反を理由に契約が解除され、三大疾病一時金が支払われなかったことを不服として、一時金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
令和3年6月に皮膚表皮内がんに罹患したことから、令和3年2月に契約した引受緩和型医療保険にもとづき三大疾病一時金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、一時金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、三大疾病一時金を支払ってほしい。

(1)告知時、皮膚の病気により病院で紫外線療法を受けていたことは事実であるが、医師からは、「皮膚の細胞が新しく生まれ変われるサイクルが少しおかしい状態であるが、大した皮膚病ではない」と告げられ、菌状息肉症や皮膚リンパ腫であるとは告げられていない。

(2)右頬扁平皮膚がんの既往歴があるため、引受緩和型の本契約に加入したが、皮膚リンパ腫に罹患していることを知っていれば、嘘をついてまで本契約に申し込みはしなかった。

(3)令和3年2月から9月の間は保険料を払っており、この間は契約が存在するため、三大疾病一時金を給付すべきである。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人が罹患した皮膚表皮内がんは日光角化症であり、約款に定めるがんに該当せず、三大疾病一時金の支払事由を充足しない。

(2)申立人は、本契約の申込前に菌状息肉症と診断され、医師から皮膚リンパ腫の一種であると説明を受けている。菌状息肉症は、本約款上の癌に該当するが、三大疾病一時金の支払事由である、「責任開始日の年前の応当日の翌日以後責任開始時前にがんと医師によって診断確定されたことのない」を充足しない。

(3)申立人は、告知時に、菌状息肉症に罹患して医師の診察を受けていたが、告知書において、「過去5年以内に、悪性新生物又は上皮内新生物で、医師による診療(問診・診察・検査・治療・投薬)を受けたことがありますか?」の問いに対し「いいえ」と回答しており、その告知は事実に反する。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、告知時の状況等を把握するため、申立人および募集人に対し事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続きの結果、申立人の告知義務違反は認められ、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑5月に撮影したニホンカワトンボ・♂。

医療保険の日額等の上限見直しなどの通達が出されました。

39社の生命保険会社が、新型コロナウイルス感染症における、みなし入院の入院給付金等の支払い対象を見直すことを発表して間もないのですが、モラルリスクが疑われるケースが増加したことを踏まえ、医療保険の給付金上限を引き下げるなどの措置を通知する保険会社が出てきました。

保険会社名や保険商品名などの具体的なことは明かせませんが、勤務先と代理店委託契約を締結している生命保険会社のうち、外資系生保と国内大手生命保険会社から、

①医療保険の給付金日額や一時金の、同一被保険者の通算限度額を引き下げる(外資系生保)。

②医療保険の一時金、入院継続時の一時金の上限・下限を引き下げる(国内大手生保)。

③募集資料の配布や保険商品の提案といった募集行為を行っていない人から、保険商品指定や保険会社指定で医療保障に対する自発的な加入申し込みがあった場合は、保険会社の方針として断る(国内大手生保)。

といった旨の通達が出されました。

こうした通達の背景には、保険会社からみると「加入後から給付金請求までの期間が短いものが多い」など募集人による一時選択では、排除困難なモラルリスクの疑いがある契約締結なされているであろうことが伺えるからです。

以上です。

↑春の林道で縄張りを見張るツマグロヒョウモン・♂(5月撮影)。

アフラック、がん保険の新商品を投入。

8月22日、アフラック生命保険はがん保険の新商品を投入*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 8/5・ニュースリリース <「生きる」を創るがん保険 WINGS>の発売について(PDF)

    【管理人の感想】
    ニュースリリースを読む限り、新商品は

    現行商品(Days1ALL-in)の保障のうち2つを改定し、2つの新特約を設けたもの。

    となっています。2つの新特約は現行商品に付加することが可能となっているようですので、現行商品に契約中の方も、新商品に準じた保障内容に変更することは可能のようです。

    一方で、21世紀がん保険以降行ってきた、既契約者専用の保障内容強化の特約ですが、今回は言及されていません。保障内容が改定された部分で、既契約者と新商品加入者との間に差がつくことはやむなしとしたのでしょうかね。

    【公式コメントの内容】
    以下、アフラックの公式コメントの内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

    【<「生きる」を創るがん保険 WINGS>の発売について】

    アフラック生命保険株式会社(代表取締役社長:古出 眞敏)は、最新のがん治療保障とがんの悩みや不安の解消をサポートするサービスを組み合わせた新商品<「生きる」を創るがん保険 WINGS>を8月22日に発売します。

    人生100年時代ともいわれる超高齢化社会において、がんと診断される人が増加している一方で、医療の進歩により生存率は向上しており、がん患者は長く続く治療や治療後の生活の中で、多種多様な問題や悩み、不安に直面しています。

    こうした中、当社は、がんとの共生という社会的課題の解決に向けて、患者とそのご家族を中心として、医療者、職場など様々なステークホルダーが連携・協業するためのプラットフォーム「キャンサーエコシステム」の構築に取り組んでいます。

    このたび、当社はその取り組みの一環として<「生きるを創る」がん保険 WINGS>を発売します。本商品は、がんと診断される前の精密費用検査やがんゲノムプロファイリング検査費用に加え、患者申出療養として実施された療養など、最新治療の保障に加えて早期発見・早期治療を支援する保障も提供します。

    さらに、2023年1月(予定)から新たに「アフラックの寄り添うがん相談サポート*」を設置し、がん患者とそのご家族の相談窓口となることで、一人ひとりの異なる悩みに寄り添い、適切なサービスをご紹介します。

    当社は「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という思いのもと、1974年の創業以来、がん保険を通して多くのお客様に安心をお届けするとともに、がん保険のパイオニアとして、最も長くがんと向き合い、最も多くのがんと闘う方々を応援してきました。当社は「生きる」を創るリーディングカンパニーへの飛躍に向け、がんにまつわる様々な社会的課題の解決に取り組むと同時に、企業価値のさらなる向上と持続的な成長を目指してまいります。

    ◇<「生きる」を創るがん保険 WINGS>の商品特長

    ■特徴1.最新治療の保障に加え、がんの早期発見・早期治療をサポートする保障の提供
    ①ポイント
    <「生きる」を創るがん保険 WINGS>では、<生きるためのがん保険 Days1 ALL-in>に、「がん特定治療保障特約」「がん要精検後精密検査保障特約」の新設特約を付加可能とし、「がん治療保障特約」「がん先進医療特約」の改定を行うことで、より充実した保障を提供することが可能となりました。

    ②新設・改定特約の保障内容
    a.がん治療保障特約【2022】(改定)
    保険期間「終身」を新たに加え、手術・放射線治療に対する支払限度を無制限に改定します。

    b.がん特定治療保障特約(新設)
    保険適用外の診療やがんゲノムプロファイリング検査を保障します。

    c.がん先進医療・患者申出療養特約(改定)
    「先進医療」に加え、「患者申出療養」の経済的負担も保障します。

    d.がん要精検後精密検査保障特約(新設)
    所定のがんの検診で「要精密検査」の判定を受けた後、精密検査を受けた場合に給付金を支払います。

    ■特徴2.がんに関する様々な問題、悩みの解消をサポートするサービスの提供
    ・ポイント
    豊富な経験と公的な専門資格を有した「アフラックのよりそうがん相談サポーター」が相談窓口となり、がん患者やご家族の悩みを傾聴し、状況に応じた各種サービスを案内することで、悩み・不安の解消をサポートします。

    これに伴い、すでに「ダックのがん治療相談サービス」で提供しているサービスは、「アフラックのよりそうがん相談サポート」から案内するサービスの一部になります。

    ■特徴3.より多くの方にご加入いただけるがん保険の実現
    ①ポイント
    がんに罹患されたことがある方は、これまでは、がん経験者向け専用商品でご加入可能な場合を除き、がん保険にご加入いただけませんでした。また、がんの疑いのある方も、がん保険のご加入が難しい場合がありました。

    ②特定疾病不担保の導入
    所定のがんにおける症状悪化のリスクが低い状態、もしくはそれらのがんの疑いの状態においては、該当のがん・上皮内新生物を不担保とすることにより、標準体保険料での引受を可能とします*。

    *告知内容等によっては特別保険料率での引受となる場合があります。

    ③対象となる疾病
    〇前立腺の悪性新生物・上皮内新生物

    〇甲状腺の悪性新生物・上皮内新生物

    〇子宮頚部の悪性新生物・上皮内新生物(異形成を含む)

    以上です。

↑翅を開いたアオハダトンボ・♂(5月撮影)。

 

日本生命、入院給一時金の給付上限を改定?日経報道。

8月5日の日本経済新聞朝刊に、日本生命の医療保障に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 日本生命保険は9月26日から、入院給付金の一時金を最大40万円から30万円に引き下げる方針だ。新型コロナウイルスの流行が続く中、契約した直後に給付金の請求が届くなど不正が疑われる事例も生じているためだ。医療保険の引き受けも一部で見合わせた。感染第7波の請求が本格化するのを前に、同様の措置に踏み切る生命保険会社が増える可能性もある。>

とのことです。

【管理人の感想】
この記事を書いている時点(8月17日)で、日本生命保険はこの報道に関する公式コメントを発表していません。したがって、今回の報道が正式に決定した事実かどうかは不明です。

ただ、日本生命に限らず、弊社が代理店委託契約を締結している某外資系生保からも、逆選択を疑われる事例(自発的な申し込み。特定の保険商品の指定(比較検討の推奨を拒否)。特に医療保険の複数商品への申し込み。保険金・給付金の高額設定、高額な年収の申告等)が確認されていること等の情報が上がってきています。

また、保障開始直後に給付金(入院一時金)の請求があれば、当然保険会社は告知義務違反を疑い、医的調査を行います(これは新型コロナウイルス感染症に限った話ではありません)。

告知義務違反が確認されれば、当然契約は解除され給付金は一切支払われません。

告知義務違反がなくても、被保険者の収入に比べて著しく高額な給付金額の設定があったりすれば、保険会社は重大事由による契約解除を行います。

告知義務違反や申し込みの給付金額に不自然な点がなくとも、保障開始直後の入院一時金請求の発生率に不自然な点が認められれば、保険会社は入院一時金の上限額を引き下げることになるでしょう。

かつて、レーシック手術を受ける予定があるにもかかわらず医療保険に申し込み、保障開始直後に手術を受け、手術給付金を受け取って解約するという悪質な事例が多くの保険会社で発生したため、保険会社は手術給付金の保障内容を変更して、レーシック手術を手術給付金の支払事由から除外-ということがありました。

今後も悪質な事例が続けば、入院一時金の保障内容が改訂され、①入院給付金日額が1万円未満なら5倍または10倍のいずれか、②入院給付金が1万円を超える場合は5倍のみーといった内容になるかもしれません。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年8月5日朝刊-

【日本生命、入院給付金の上限下げへー一時金30万円に、コロナ対応】

日本生命保険は9月26日から、入院給付金の一時金を最大40万円から30万円に引き下げる方針だ。新型コロナウイルスの流行が続く中、契約した直後に給付金の請求が届くなど不正が疑われる事例も生じているためだ。医療保険の引き受けも一部で見合わせた。感染第7波の請求が本格化するのを前に、同様の措置に踏み切る生命保険会社が増える可能性もある。

コロナ禍で入院給付金の請求が相次ぎ、支払業務に支障が生じる事態になっている。制度の持続性を保ち、契約者間の公平感を確保するためにも給付金の減額に踏み切る必要があると判断した。

病気やけがで働けなくなった際の収入を補填する保険商品でも、1ヵ月あたりの一時金を最大20万円から10万円に下げる方向だ。

給付金を受け取ろうと、あえて医療保険などに入ろうとする人もいる。こうした不正を防ぐには保険の引受時により慎重を期す必要があると判断し、4日から契約を控える措置に乗り出した。

以上です。

↑、眠りについたツマキチョウ・♀(5月撮影)。

6月の新型コロナウイルス感染症に対する生保各社の入院給付金支払額、単月としては過去最高額を更新。

8月2日の日本経済新聞朝刊に、新型コロナウイルス感染症に対して生命保険各社が支払った、6月分の給付金支払額についての記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルスの感染者が相次ぐなか、生命保険会社による入院給付金の支払額が急増している。生命保険協会によれば、今年6月の支払額は640億円と単月として過去最高を更新した。契約者が保険会社に給付金を請求するのは感染から1~2ヵ月後とされる。

これから感染第7波の影響が顕在化してくると支払額は一段と膨らみそうだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
これだけ給付金の支払額が増えれば、当然支払い査定にも大きな負担がかかります。

そのため、新型コロナウイルス感染症による入院給付金の支払い日数は、平均で5営業日以内となっている一方で、それ以外の傷病による給付金支払いには遅延が生じているという情報が保険会社から入ってきています。

ただ、保険会社職員・社員も営業担当者も速やかな給付金請求と支払いを実施すべく懸命に努力しておりますので、何卒ご理解いただきたいです。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年8月2日朝刊-

【生保の入院給付金、支払額最高-6月、コロナ影響】

新型コロナウイルスの感染者が相次ぐなか、生命保険会社による入院給付金の支払額が急増している。生命保険協会によれば、今年6月の支払額は640億円と単月として過去最高を更新した。契約者が保険会社に給付金を請求するのは感染から1~2ヵ月後とされる。

これから感染第7波の影響が顕在化してくると支払額は一段と膨らみそうだ。

入院給付金は各社が取り扱う医療保険につく保障で、病気やけがの治療で入院した場合に受け取れる。加盟42社の支払額を生保協会がこのほど取りまとめた。

最新の6月分では支払額が640億円と1年前の12倍に増えた。3月(403億円)から急増し、4ヵ月続けて最高額を更新している。大手の関係者は「年度初めに見込んでいた想定の支払額を上回って推移している」と話す。

これまでの累計の支払額は入院給付金で2893億円に上る。このうち実際に入院しなくても給付金を受け取れる「みなし入院」と呼ばれる措置の支払額は92%を占める。死亡保険金の支払額は累計で1455億円だった。

第7波の請求はこれから本格化するため、各社は人員を増やすなどの対応策を強化している。住友生命保険は給付金の支払いにあたる人員を先月より40人多い190人へ増やす。第一生命保険も状況を見ながら人員の拡充を県とするとしている。

以上です。

↑翅を休めるジャコウアゲハ・♂(5月撮影)。

新型コロナウイルス感染症による入院給付金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた令和4年1~3月の裁定概要集(PDF)に、新型コロナウイルス感染症による入院給付金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
新型コロナウイルス感染症に罹患した際の、自滝療養機関の入院給付金が支払われなかったことを不服として、給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
新型コロナウイルス感染症に罹患し、令和3年1月に宿泊施設で療養(療養①)し、その後、同年2月に療養(療養②)したため、令和2年10月に契約した医療保険に基づき入院給付金を請求したところ、療養②について、入院の必要性が認められないとして給付金が支払われなかった。しかし、募集人から、新型コロナウイルス感染症による自宅療養についても、入院給付金が支払われるとの誤説明を受けたことから、療養②の入院給付金を支払ってほしい。それが認められない場合は、既払込保険料を返還してほしい。

…この事案はすでに裁定が終了しています。

そういえば…公共放送のデータ連動放送で、新型コロナウイスる感染症による「みなし入院」に対する入院給付金の支払いや、「10万円を受け取ることができた」といったその具体的な受給額の体験談を取り扱っていました。

確かに、入院一時金特約といった特約を付加していたり、入院給付金を日額ではなく、一時金で受給する契約であったりすれば、そうしたまとまった金額を受給することが可能です。

ただし、新型コロナウイルス感染症による「みなし入院」についての取り扱いについては、保険会社が所定の要件を定めており、その要件に該当しなければ本事案同様、給付金は支払うことはできません。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和4年1~3月裁定概要集・P14~15より転載)。

【事案2021-131】入院給付金支払等請求
・令和4年2月17日 裁定終了

<事案の概要>
新型コロナウイルス感染症に罹患した際の、自滝療養機関の入院給付金が支払われなかったことを不服として、給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
新型コロナウイルス感染症に罹患し、令和3年1月に宿泊施設で療養(療養①)し、その後、同年2月に療養(療養②)したため、令和2年10月に契約した医療保険に基づき入院給付金を請求したところ、療養②について、入院の必要性が認められないとして給付金が支払われなかった。しかし、募集人から、新型コロナウイルス感染症による自宅療養についても、入院給付金が支払われるとの誤説明を受けたことから、療養②の入院給付金を支払ってほしい。それが認められない場合は、既払込保険料を返還してほしい。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)本契約では、入院の必要性があるが、医療機関の事情等により入院ができず、自宅や宿泊療養施設で療養した場合に限定して支払を行う運用をしているところ、申立人が通院していた病院や保健所の見解等からすれば、療養②については入院の必要性があったとは認められない。

(2)募集人に誤説明があったとは考えられない。

<裁定の概要>
1.裁定の概要
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況等を把握するため、申立人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続の結果、療養②の入院給付金の支払いは認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続きを終了した。

以上です。

↑5月上旬に撮影したアサマイチモンジ・♂。

マニュライフ生命に業務改善命令。

7月14日、金融庁は外資系生命保険のマニュライフ生命保険に業務改善命令を発出*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 7/14・新着情報 マニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分について

    【管理人の感想】
    金融庁がマニュライフ生命に業務改善命令を出した理由は、法人向けの保険商品の新契約募集において、保険本来の役割から逸脱した「節税目的の保険募集」を行い、その後の税務通達変更の抜け穴をついて不適切な募集を行っていたためです。

    もうね…原因をつくった旧経営陣は我利我利亡者としか言いようがありません。

    【金融庁の公式コメント】
    以下、金融庁の公式コメントの内容です(上記新着情報より抜粋・転載)。

    【マニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分について】

    金融庁は、本日、マニュライフ生命保険株式会社(本店:東京都新宿区、法人番号2012401004592、以下、「当社」という。)に対し、下記のとおり業務改善命令を発出した。

    1.業務改善命令の内容
    保険業法第132条第1項に基づく命令(業務改善命令)

    (1)業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。

    ①今回の処分を踏まえた経営責任の明確化

    ②保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動による契約の特定、調査等、適切な顧客対応の実施

    ③営業優先ではなく、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成

    ④適切な募集管理態勢の確立(代理店に対する十分な牽制機能の構築を含む)

    ⑤適切な商品開発管理態勢の確立

    ⑥上記を着実に実行し、定着を図るためのガバナンスの抜本的な強化

    (2)上記(1)に係る業務の改善計画を令和4年8月15日(月曜)までに提出し、ただちに実行すること。

    (3)上記(2)の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3か月ごとの進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を令和4年9月末とする)。

    2.問題の所在
    当庁検査及び保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告の結果、以下の問題が認められた。

    (1)保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発及び募集活動
    当庁においては、令和元年2月の国税庁による法人税基本通達の改正に係る保険業界への周知以降、累次にわたり保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わないよう注意喚起を行っているほか、同年10月には、「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部を改正し、法人等向け保険商品の設計上の留意点として、「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる商品内容となっていないか」という観点を明確化し、節税(課税の繰り延べ)を訴求した商品開発を含め、同活動を防止するための指針を示している。このような中、当社においては、

    ・法人から個人への名義変更による節税を目的とした名義変更プラン(※注)による販売を推進することを目的として、低解約返戻金型の法人向け商品を開発していく方針が、取締役会等の資料に明示的に記載されていたこと、

    ・前CEO及び前CDO(営業全般の統括責任者)が営業部門の職員等に対して同プランを推進する趣旨の発 言を行っていたと考えられる事実が認められたこと、

    などから、前CEOをはじめとした旧経営陣が主導して同プランを開発・推進していたと認められた。

    (※注)名義変更プランとは、低解約返戻金型定期保険等を活用し、法人から個人(役員等)に名義変更(資産移転)を行うことで、法人と個人の税負担の軽減が可能となる点に着目し、保険期間当初の低解約返戻期間中に法人から個人に名義変更を行い、当該期間経過後に解約することを前提とした保険加入を推奨する手法。

    前専務執行役兼チーフ・ガバナンス・オフィサー(CGO)などの役員についても、同商品の販売が好調である旨の報告を何度も受けており、これらの行為を黙認・看過していたことが強く疑われる実態が認められた。

    現CEOをはじめとした現経営陣が、当庁への報告において「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」の根絶に向けた再発防止策に取り組んでいる中であるにもかかわらず、当社の職員が法人税基本通達改正及び所得税基本通達改正の抜け穴を突いて、不適切な募集と認識しながら、年金保険を使った名義変更プランを考案・推進するといった悪質性が極めて高い事例が認められた。

    現CEOは、商品開発にあたり、営業部門等からの過度の営業推進を牽制し、早期の段階から新商品案を多角的に検証することができるよう、商品開発において経営層が協議・検討を行う場である商品審議会の構成メンバーにチーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)等を追加するなど、再発防止策を講じていた。しかしながら、商品審議会は、開発・販売に向けて協議・検討を進めている法人向けの新商品において、課税の繰り延べ効果が高く、税務上有利になる最高解約返戻率が85%以下となる販売パターンのみを想定した商品とするなど、保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる懸念が認められる商品を再び設計するとともに、そのような募集活動が行われないための実効性ある対応策を協議・検討していない

    など、極めて不適切な実態が認められた。

    (2)営業優先の企業文化やコンプライアンス、リスク管理を軽視する企業風土
    名義変更募集など「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」が繰り返し当社において認められる原因には、ガバナンスの機能発揮が不十分であるなどの問題があるほか、その背景には営業優先の企業文化やコンプライアンス、リスク管理を軽視する企業風土があると考えられる。現経営陣は、全職員を対象としたタウンミーティングを令和3年10月以降計11回にわたり実施し、職員との直接対話の機会を増やしたほか、全営業部門職員を対象とした保険募集ルールに係る研修等を実施するなど、企業文化・風土の刷新に取り組んでいるものの、今回検査において令和4年2月から4月にかけて役員等を除く全職員に対し当庁が実施したアンケートによると、名義変更募集については、回答者の約16%もの職員が「法令違反ではないので問題ではない」または「顧客ニーズに合致すれば問題ではない」との認識を未だに回答しているなど、当社の企業風土の刷新に向けた取組は現時点では道半ばの実態にある。

    このため、当社は経営トップのリーダーシップのもと継続的かつ着実に営業優先の文化からの脱却とコンプライアンスやリスク管理を重視する組織風土の醸成を図るとともに、多様な価値観を有する中途入社者が大宗を占める当社の営業部門職員に対する教育や研修体制をより充実させ、営業部門の意識改革に向けた取組を強化していく必要があるなど、営業優先の企業文化やコンプライアンス、リスク管理を軽視する企業風土の刷新に向けた取組は不十分であると認められた。

    (3)上記の他、取締役会は、傘下の監査委員会による取締役及び執行役の業務執行に関する監査において、前CEOらによる名義変更プランの開発・推進を看過しているなど、取締役及び執行役の職務の執行を監督するという基本的な役割及び責任を十分果たしていないという問題や、3ライン・オブ・ディフェンスの各層において保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を防止するための態勢上の問題が認められた。

    3.処分の理由

    (1)上記2.に関して、
    当社が推進していた名義変更プランによる募集は、税負担を軽減することを主たる目的とし、法人から個人への資産移転や短期の中途解約を前提とするなど、経済的保障・補償を行うことにより個人生活や企業経営の安定を支えるという保険本来の趣旨を逸脱し、その目的に沿った利用を損ねる行為であり、公共性を有する保険業の意義を阻害する行為である。また、当社は、そのような募集行為に関して、当庁の累次にわたる注意喚起に加え、国税庁が昨年6月に名義変更プランに使用され得る保険商品を対象とする所得税基本通達改正を実施し、その行為が不適当であることを明確化していた中、その抜け穴をついて、年金保険を利用した名義変更プランによる募集を行い、契約者に対して租税回避的な行為を推奨していた。以上のような当社の一連の行為は保険業に対する信頼を損ないかねず、よって、公益を著しく侵害しているものと認められること、

    前CEOをはじめとした経営陣が名義変更プランによる募集を商品開発段階から主導していた事実を鑑みると、とりわけ旧経営陣の責任は非常に重く、一連の行為には組織性が認められること、

    当庁から、監督指針に照らして問題のある商品の投入について問題提起を行った後にもかかわらず、国税庁の通達改正の影響による販売減少をカバーするために、名義変更プランを前提とした商品開発及び推進を行っているほか、上述のとおり、その後の通達改正の抜け穴をついて、年金保険を利用した名義変更プランによる募集を行うなど、悪質性、故意性も認められること、

    また、契約者の被害の程度については、当社は契約者に対して通達改正の案内の送付や説明等を行っているとしており、現状、多数の苦情が発生している状況ではないが、契約者が実際に名義変更等を行おうとする際に、初めて税務上の効果を享受できなくなったことを認識する場合もあり得ると考えられるため、今後契約者被害が増加する可能性があること、

    など、現状の契約者被害の程度を勘案しても、今回認められた問題の重大性・悪質性は高い。

    (2)取締役会が取締役等の職務執行を監督するという基本的な役割を十分果たしていないといった経営管理態勢上の問題や、3ライン・オブ・ディフェンスによる機能発揮が不十分であるといった業務運営態勢上の問題も生じている。

    (3)現CEOは、再発防止策等を講じるなど、所用の対応に取り組んでいるものの、根本的原因に基づいた実効性のある施策となっていないなど、自主的な改善は十分には期待できない。

    以上より、当社の確実な業務改善計画の実施及び定着を図っていくためには当局の関与が必要と判断し、業務改善命令を発出した。

    以上です。

↑ハナダイコンで吸蜜中のジャコウアゲハ・♂。

 

関東財務局が少額短期保険の株式会社ジャストインケースに業務改善命令。

6月27日、関東財務局は少額短期保険会社の株式会社justInCaseに対して、業務改善命令(経営管理態勢の改善等)を発出*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 株式会社justInCaseに対する行政処分について

    同社は今年4月に「コロナ助け合い保険(現在新規の契約引き受けは停止中)」で給付金の支払い急増が想定を超えたため、保障内容を変更したことが取り上げられていました。

    「わりかん保険」で一躍注目を集めたのですが、コロナ助け合い保険ではしくじってしまいましたね。

    【公式コメントおよび処分の内容】
    以下、関東財務局の公式コメントと行政処分の内容です(関東財務局ウェブサイトより抜粋・転載)。

    【株式会社justInCaseに対する行政処分について】

    1.株式会社justInCase(本社:東京都中央区。法人番号:1010401128644。以下「当社」という。)は、令和2年5月から、一泊二日以上入院した場合に入院一時金(10万円)を支払い、また新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ感染症」という。)にかかる医療機関以外の自宅や宿泊施設での療養等(以下「みなし入院」という。)に対しても同等の入院一時金(10万円)を支払う「コロナ助け合い保険(シンプル医療保険)」(以下「コロナ保険」という。)の販売を開始している。また、当社においては、コロナ保険について、令和4年1月以降に発生した新型コロナ感染症の感染拡大により、保険金支払いが当初の商品想定を遥かに上回る金額となり、保障内容の維持が困難となったことを理由に、令和4年4月6日、当該保険にかかる当社普通保険約款(以下「約款」という。)の規定に基づき、保険金額を10分の1に減額する旨を公表し、4月7日以降の入院分から適用しているところである(以下「本件保険金の減額払い」という。)。

    ここで、少額短期保険業者は、業務の健全かつ適切な運営を確保していくため、少額短期保険業者自らが様々なリスクを的確に把握・管理し、適切な経営管理のもと、保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢等を構築することが必要である。こうした観点を踏まえ、当社に対し、本件保険金の減額払いに関して保険業法第272条の22第1項の規定に基づき求めた報告内容を検証したところ、本件保険金の減額払いを招いたことに関し、当社の保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢、経営管理態勢について、以下(1)~(3)の問題点が認められた。

    本件保険金の減額払いの実施は、当社の経営判断に基づくものであるが、保険契約者等に重大な影響を及ぼす事態を招いた当社の経営責任は重大であり、当社においては、保険金の減額払いに至ったことについての経営責任を明確にした上で、保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢及び経営管理態勢の改善を図る必要がある。

    (1)保険引受リスク管理態勢
    ・再保険を前提としたリスク管理を行っていたなか、新型コロナ感染症の感染拡大や、それに伴う保険収支の状況等によっては再保険契約の更新に不確実性を伴うことへの認識が不足していたこと

    ・新型コロナ感染症の感染拡大時のモニタリング強化発動基準、販売停止等措置発動基準及び累積損失額基準を設定し、これに基づくリスク管理を実施していたが、これら基準の有効性の検証が十分に行われておらず、本件保険金の減額払いに至った段階でも販売停止等措置発動基準に抵触していないなど、リスク管理が十分に機能していなかったこと

    ・令和3年8月の段階で、契約開始日時から事故発生日までの期間が極端に短い請求が散見され始めたことなどから、契約申込時の告知において、過去1週間以内のPCR検査の実施有無等にかかる告知事項を追加した。しかしながら、保険収支の急激な悪化に至った令和4年3月になって上記告知事項の追加が十分に機能していなかったことを認識し、契約申込み後14日後に保障開始となる取扱いとしたが、依然として保険収支改善への効果が限定的であったこと

    (2)商品開発に係る内部管理態勢
    ・コロナ保険の商品開発時の保険料算定においては新型コロナ感染症にかかる入院(みなし入院を含む)の発生率データ等が反映されていなかったが、販売開始後に保険金支払いが可能な保険料水準となっているかどうかの検証を十分に行っていないこと

    (3)経営管理態勢
    ・コロナ保険に関する保険引受リスク管理や商品開発管理は、当社代表取締役や取締役等の協議により決定・実施されていたが、過去の感染パターンを過信し、上記(1)(2)のとおりリスク管理等が不十分となっていたことから、適切な経営判断を行えなかったこと

    ・こうしたなか、本件保険金の減額払いの公表後、顧客に対して、新型コロナ感染症の感染拡大により、保険金支払いが当初の商品想定を遥かに上回る金額となり保障内容の維持が困難となった旨の説明を行っているが、約款の規定を適用し本件保険金の減額払いに至った詳細な経緯、発生原因を踏まえた改善策及び発生の責任の所在等について、十分な説明を行っていないこと

    2.このため、本日、当社に対し、保険業法第272条の25第1項の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。

    -保険業法第272条の25第1項(業務改善命令)-

    1.経営管理態勢の改善
    保険金の減額払いに至ったことに関し、適切な経営判断を行うために必要な経営管理の在り方を検討し、それを踏まえた経営管理態勢の改善策を策定・実施すること。

    2.保険引受リスク管理態勢・商品開発に係る内部管理態勢の改善
    保険金の減額払いに至ったことに関し、当社の保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢の問題点・発生原因を踏まえた改善策を策定・実施すること。

    3.本件処分に係る経営責任の所在を明確にすること。

    4.上記1~3に関する今回の行政処分の内容について、顧客に対し十分な説明を実施すること。

    5.上記1~4に関する業務改善計画(具体策及び実施時期を明記したもの)を令和4年7月27日までに提出し、提出後、直ちに実行すること。

    6.上記5の実行後、当該業務改善計画の実施完了までの間、3ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに報告すること(初回提出基準日を令和4年9月末とする)。

    以上です。

↑5月に撮影したアオスジアゲハ春型・♂の吸水行動。

 

がんによる収入減少に備える手段。

6月4日の日本経済新聞・朝刊に、がんによる収入減少に備える手段に関する記事がありました。

記事によりますと、

< …

国立がん研究センターの統計によると、がん患者の多くは高齢者。しかし、働く人が多い20~64歳も約25%を占める。厚生労働省の推計では、仕事を持ちながらがんで通院する人は44.8万人(2019年、70歳以上も含む)。10年から4割近く増えている。

東京都の調査では、働くがん患者で収入が「減った」ケースは少なくない。患者本人で約半分。生体全体でも3分の1に上った(がん患者の就労等に関する実態調査)。夫婦でどちらかががんになれば、配偶者も看病などで就労が制限されやすいためとみられる。

長期の闘病や収入減といった事態では、まず社会保障や勤め先の制度が支えとなる。それで足りない分については、貯蓄や民間保険で補うのが基本的な考えだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
今回の記事において、がんに罹患したことに伴う収入減少への備えとして、取り上げられている民間生保の保険は「がん保険」と「就業不能保険」です。

ん~…残念ながら両者とも「がんに罹患したことに伴う収入減少への備え」としては使いにくいかと思います。

まず「がん保険」ですが、がんの治療を受けたときなどの費用を補完する保険商品ですから、がん罹患による収入減少の備えには力不足です。

「就業不能保険」は「国民年金法に定める障害等級1級または2級」や「5大疾病による入院等」など、保険会社所定の就業不能状態に該当すれば支払われる月払給付金を受け取ることで、傷病手当金や障害者年金の上乗せとして生活を支える保険商品ですから、がん罹患による収入減少への備えとして使うにはハードルが高いです。

では、どんな保険商品であれば「がん罹患による収入減少への備え」となるのか?と申しますと、数少ない選択肢のひとつとしてソニー生命保険の「三大疾病収入保障保険」があげられます。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年6月4日朝刊-

【がんの収入減に備える―まずは貯蓄、長期化は保険で】
日本で2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるとされる。近年は医療の進歩などで生存率が上がり「死の病」から「長く付き合う病」へと変わりつつある。がんで長く治療を受けるようになると費用が膨らみやすく収入が減るケースも多い。いざというときに利用できる制度を確認し、必要な備えをしておきたい。

都内に住む会社員の男性(42)はパートで働く妻、2人の子と暮らす。4ヵ月前から腹痛や下痢が続いたので検査を受けたところ、大腸癌(S上結腸癌)と診断された。医師によれば入院して手術の後、半年程度の抗がん剤治療が必要という。手術や治療も心配だが、最も気になるのは仕事や収入への影響だ。「長く働けなくなれば、妻のパート収入だけでは生活できない」

国立がん研究センターの統計によると、がん患者の多くは高齢者。しかし、働く人が多い20~64歳も約25%を占める。厚生労働省の推計では、仕事を持ちながらがんで通院する人は44.8万人(2019年、70歳以上も含む)。10年から4割近く増えている。

東京都の調査では、働くがん患者で収入が「減った」ケースは少なくない。患者本人で約半分。生体全体でも3分の1に上った(がん患者の就労等に関する実態調査)。夫婦でどちらかががんになれば、配偶者も看病などで就労が制限されやすいためとみられる。

長期の闘病や収入減といった事態では、まず社会保障や勤め先の制度が支えとなる。それで足りない分については、貯蓄や民間保険で補うのが基本的な考えだ。

ファイナンシャルプランナー(FP)の黒田尚子氏は「普段から初年度の治療費100万円と生活費3~6ヵ月分の預貯金を用意しておきたい」と話す。がんと診断されても、すぐに公的な制度を利用できなかったり、手続きに時間がかかったりしたりすることがある。数か月間治療に専念できるたくわえがあれば、診断直後の不安を減らせる。独身者よりも家族がいる人、会社員よりも自営業者、住宅ローンがない人よりもある人は、金額を多くしたほうが無難だろう。

公的な制度には「負担を減らす」と「収入を補填する」の2つがある。前者の代表が高額療養費制度で、後者が傷病手当金や障害年金など。高額療養費制度は1ヵ月あたりの医療費の自己負担額に上限を設けるもので、その人の収入により上限額が変わる。上限に達する月が度々あれば、上限額を下げるルールもある。

傷病手当金は会社員や公務員らが対象で、病気などで働けなくなった日の4日目から月収3分の2に相当する額を支給する。以前の支給期間は開始日から1年6ヵ月だったが、今年1月から通算で1年6ヵ月に変わった。いったん仕事に復帰した後、再び休むようなケースでも不利にならない。

病気になった人の休暇や働き方の制度は休職や病気休暇、短時間勤務など勤め先により様々だ。収入の減り方も制度の使い方などにより変わってくる。休暇には悠久のものもあれば、無給のものもある。「傷病手当金を申請する前に、制度をどう使うか勤め先とよく相談したい」と社会保険労務士の近藤明美氏は助言する。

傷病手当金の後は障害年金が選択肢になる。障害年金は原則、初診日から1年6ヵ月(障害認定日)たっても障害状態が続く場合に請求する。自営業者らが対象となる障害基礎年金の受給額は1級が年97万2250円で2級が同77万7800円(22年度)。会社員などが対象の障害厚生年金は1級から3級まであり、金額は働いた期間やその時の月収で変わる。

ただ、障害年金の受給者のうちがんを理由とするケースは全体の1%にとどまる。その中で最も多い障害厚生年金の3級の場合、最低保障額は年58万3400円となっており、「一般に傷病手当金より少ない」(社労士の近藤氏)点には気を付けたい。

60代なら老齢年金を本来の65歳から繰り上げて受給を始め、収入を確保するのも手だ。この方法では年金額は65歳からの需給より下がり、その水準が生涯続くというデメリットもある。

傷病手当金や障害年金を受給できても、一般に金額はがんになる前の収入より少ない。「収入が減った分は貯蓄や保険で賄う必要がある」(FPの黒田氏)。特に公的な保障が薄い自営業者は、備えが欠かせない。貯蓄以外の備えの一つががん保険。治療費などの支出増に対応するのが主目的だが、収入減もカバーできる。主にがんと診断されたときに一定額を給付する「一時金タイプ」は当面の生活費などに充てることができる。治療の度に給付金を出す「都度給付タイプ」は長く通院で治療するようなケースで役立つ。

長期間働けなくなった時に10万円など決まった額の給付金を毎月受け取る就業不能保険もある。10年から就業不能保険を販売するライフネット生命保険では加入は20~40代が中心。「21年度の給付金支払いは420件で3割弱ががん。支払期間が1年半以上になった事例もある」という。

注意点は60日や180日などの免責期間があり、原則としてすぐに給付金が出ないこと。また給付の条件が「入院」「自宅療養」「障害等級1級か2級」など、がん保険など比べてハードルが高いとの指摘もある。FPの加藤梨里氏は就業不能保険について「がん保険や医療保険とは別に、収入減が長期化した備えとして検討したい」と話している。

以上です。

↑5月上旬に撮影したニホンカワトンボ・♀。

悪性神経膠腫に対する新薬登場。増殖型遺伝子組み換え単純ヘルペスウイルスで、腫瘍化したグリア細胞だけを破壊。

5月31日の日本経済新聞朝刊に、悪性神経膠腫に対する新薬についての記事がありました。

記事によりますと、

< ウイルスを使ってがん細胞を退治する「ウイルス療法」という新たな治療技術が日本でも登場した。第一弾として第一三共が、悪性度の高い脳腫瘍向けに2021年11月から治療薬の販売を始めた。骨腫瘍向けに鹿児島大学が臨床試験(治験)を開始したほか、鳥取大学や東京大学などでもウイルス療法薬の開発が進む。既存の手法では治療が難しいがんの患者にとって、希望の薬となりそうだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
第一三共製薬が発売したのは、「デリタクト(がん細胞のみで増殖可能となるよう設計された人為的三重変異を有する増殖型遺伝子組み換え単純ヘルペスウイルス1型(第三世代がん治療用単純ヘルペスウイルス1型))」という薬です。

対象となる疾患はグレードⅢ、Ⅳの悪性神経膠腫です。中でも特に悪性度が高いのが膠芽腫(グレードⅣ)で、悪性神経膠腫のうち約60~70%を占めています。

標準治療として外科手術、放射線、抗がん剤を組み合わせた治療が行われていますが、予後は極めて悪く再発した場合の平均余命は1年以下といわれています。

この膠芽腫は、昨年4月に私のお客様が亡くなった原因疾患でもあります。そのお客様は2018年初頭に歩行障害の症状が現れ、緊急入院となり検査の結果、膠芽腫と診断されました。

標準治療を受け、ご家族と約3年余りの闘病生活を過ごしていたのですが…残念ながら亡くなってしまいました。

予後不良のがんに対する有望な治療薬が保険適用されたことは、悪性神経膠腫と戦っている患者さんやご家族にとってまさに朗報だと思います。

小型加速器を用いたBNCTとの併用が可能になれば、生存期間のさらなる向上につながるかも…と期待しています。

さて、今回の新薬ですが、抗腫瘍薬に分類されるのか?それとも免疫賦活剤に分類されるのか?このあたりがどうしてもわかりませんでした。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年5月31日朝刊-

【ウイルス使ったがん治療-脳腫瘍など、患部に注入で効果】
ウイルスを使ってがん細胞を退治する「ウイルス療法」という新たな治療技術が日本でも登場した。第一弾として第一三共が、悪性度の高い脳腫瘍向けに2021年11月から治療薬の販売を始めた。骨腫瘍向けに鹿児島大学が臨床試験(治験)を開始したほか、鳥取大学や東京大学などでもウイルス療法薬の開発が進む。既存の手法では治療が難しいがんの患者にとって、希望の薬となりそうだ。

「こんな治療法がもっと早く登場していたら…」。7年前に夫を脳腫瘍で亡くした大阪府の70代の女性は、国内で登場したがん治療ウイルス技術について、感想を漏らす。夫は放射線治療後に脳腫瘍を再発したが、手術もできず、当時は有効な治療薬もなかったという。「脳腫瘍の患者とその家族にとって希望の光が見えた」と話す。

がん治療向けウイルス療法は、一般的に治療用に遺伝子を改変したウイルスを注射でがん細胞に直接投与する。ウイルスはがん細胞の中でだけ増殖し、がん細胞を破壊する。ウイルスはがん細胞を破壊後に周辺に広がり、広範囲のがん細胞を除去できる。正常な細胞の中でウイルスは増殖しないように設計しており、安全性は高い。

欧米では15年に悪性度の高い皮膚がん向けに承認されているが、日本では承認されていなかった。

今回、国内承認第一号となった第一三共の「デリタクト(テセルパツレブ)」は、東京大学医学部研究所の藤堂貝紀教授が研究してきた成果を医薬品に応用した製品。脳腫瘍の一つ、神経膠腫(グリオーマ)の中でも悪性度が高い患者に対する治療薬だ。

悪性度の高いグリオーマ(グレード4)は、脳の表面ではなく、脳の内側から発生し、脳の中央部へしみこむように広がる。手術では完全に取りきることが難しく、手術後も時間の経過とともにがん細胞が増えて再発する恐れが強い。放射線治療と化学療法で増殖を抑えることもできるが、予後は12~15ヵ月とされる。再発後は治療の選択肢がほとんどない※のが現状だ。

※管理人補足:再発した悪性神経膠腫に対する効果的な治療として期待されているのが、ホウ素中性子補足療法(BNCT)です。昨年12月下旬に、関連学会の日本BNCT臨床腫瘍学会が、再発した悪性神経膠腫に対するBNCTの保険適用を求める要望書を厚生労働省に提出しました。

現在は治験を行っている段階です。関西BNCT共同医療センターにおいて、特定臨床研究として実施しています。

デリタクトの治験に参加した13人に対して治療後1年たった時点で有効性を調べたところ、1年後も生存している患者の割合は92.3%だった。治験途中でも有効性が証明されたため、治験を中止する「有効中止」となった。藤堂教授は「治療法がなかった悪性脳腫瘍の患者にとって新たな選択肢」と話す。

がんのウイルス療法の特徴は、最も手強いがんに対して効果がある点だ。手術で取り切れず、抗がん剤や放射線も効きにくく、免疫も働きにくい部位にできる脳腫瘍や骨腫瘍など向けに開発されている。

しかもその効果が長期間持続するのも利点だ。ウイルスによって、体内の免疫が刺激すると考えられている。近年の研究では抗がん剤やほかの免疫療法との併用で治療効果が高まるという報告もあり、米国や中国をはじめ世界で140以上の治験が進んでいる。

ただ世界的に見てまだ治療薬となっているものは少ない。欧米で15年に悪性黒色腫(皮膚がん)の治療薬「イムリジック」が承認されて以降、今回のデリタクトで2つ目だ。新規の治療用ウイルスの開発を進めている鹿児島大学の小戝(こさい)健一郎教授は「ウイルスを設計するには高度な技術と複雑な工程が必要だ」と話す。

例えば攻撃性が強い一方、体内であまり増えず、副作用が強いウイルスであれば治療には使いにくい。また複数の候補から有効性が見込まれるウイルス候補を見つけることができても、大量生産するのが難しければ、医薬品として普及させるのは難しい。

小戝教授らの研究チームは日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受け、ウイルスを効率よく改変し、迅速に生産できる基盤技術の開発に世界に先駆けて成功している。16年から始めた初期段階の治験では、悪性度の高い骨軟部腫瘍の患者で安全性と有効性を示す結果を確認。中は2年以上効果が維持されていた患者がいたという。

研究チームは、21年から鹿児島大学病院、久留米大学病院、国立がん研究センター中央病院の全国3施設による多施設治験を始めた。今後2年間で全国から20人程度の悪性骨腫瘍の患者に参加してもらい、安全性と有効性を確かめる。希少がんに対する新たな治療薬として薬事申請を目指す。

もっとも、現時点ではがん治療ウイルスも万能ではない。難治性のがんや再発したがんの増殖を抑え込み、生存期間を伸ばす効果がある一方、一定の割合で効果が見られない患者もいる。そのため安全性が高く、より有効性が高い次世代の治療ウイルスの開発が世界中で急ピッチで進む。

国内ではアステラス製薬と鳥取大学が初期治験を進めるほか、東京大学や信州大学などが臨床開発を進めており、アカデミア発の創薬に期待が高まる。ただ藤堂教授は「日本は基礎研究や技術があるが、臨床開発の現場が欧米に劣っている。薬価を含めた創薬環境の改善が急務だ」と訴える。画期的な新薬をがん患者に届けるための政策的な後押しも必要だ。

以上です。

4月に撮影したダビドサナエ・♂。