入院給付金等の支払いを巡る裁定事案(始期前発病を理由に不支払)。

生命保険協会が取りまとめた令和5年7~9月の裁定概要集(PDF)に、入院給付金等の支払いを巡る裁定事案がありました。

事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 責任開始期前発病を理由に給付金が支払われなったことを不服として、入院給付金および手術給付金の支払い等を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 子宮筋腫の治療のため、令和3年9月に入院し腹腔鏡下子宮筋腫摘出(核出)術を受けたことから、令和2年12月に乗合代理店を通じて契約した終身医療保険にもとづき、入院給付金、入院一時金、手術給付金を請求したところ、責任開始期前発病を理由に不支払となった。しかし、以下の理由により、入院給付金、入院一時金、手術給付金を支払ってほしい。

(1)加入前に、募集人に健康診断結果(以下「健診結果」)を提出し、全ての病歴を伝えている。特に子宮筋腫については以前より指摘があり経過観察であったため、この健康状態で加入できる保険を提案してほしいと伝えていた。

(2)本手術は、本契約締結後にかかりつけ医ではない医師に受診した際、腹腔鏡下手術が可能なうちに行った方が良いと勧められて決めたものである。

(3)告知書入力時に、判断に悩む箇所があり募集人に質問したところ、「すべて『いいえ』で大丈夫です」と言われたためその通りに入力した。その結果、誤った告知書になった。

この事案は既に和解が成立しています。

管理人個人の見解ですが、当該募集人の医的情報の取扱いには??です。申立人から子宮筋腫について告げられたのであれば、生命保険会社の担当者に連絡して、告知項目に該当するか否かやどのように告知すればいいのかを確認しておくべきでした。

また、説明健診結果の写しを預かるのであれば、引き受けの可否や特別条件の有無等を、契約締結前に保険会社から回答してもらう「事前査定(仮査定)」を行うべきでした。

【事案の内容】

以下、裁定事案の内容です(令和7~9月裁定概要集・P35~36より転載)。

[事案2022-198]入院給付金等支払請求
・令和5年7月7日 和解成立

<事案の概要>
 責任開始期前発病を理由に給付金が支払われなったことを不服として、入院給付金および手術給付金の支払い等を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 子宮筋腫の治療のため、令和3年9月に入院し腹腔鏡下子宮筋腫摘出(核出)術を受けたことから、令和2年12月に乗合代理店を通じて契約した終身医療保険にもとづき、入院給付金、入院一時金、手術給付金を請求したところ、責任開始期前発病を理由に不支払となった。しかし、以下の理由により、入院給付金、入院一時金、手術給付金を支払ってほしい。

(1)加入前に、募集人に健康診断結果(以下「健診結果」)を提出し、全ての病歴を伝えている。特に子宮筋腫については以前より指摘があり経過観察であったため、この健康状態で加入できる保険を提案してほしいと伝えていた。

(2)本手術は、本契約締結後にかかりつけ医ではない医師に受診した際、腹腔鏡下手術が可能なうちに行った方が良いと勧められて決めたものである。

(3)告知書入力時に、判断に悩む箇所があり募集人に質問したところ、「すべて『いいえ』で大丈夫です」と言われたためその通りに入力した。その結果、誤った告知書になった。

<保険会社の主張>
 以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人から募集人に対して、子宮筋腫で経過観察中である旨を伝えられた事実はなく、システムの「機微情報(体況等)」欄にも記載がない。事実確認の結果、申立人が医療機関への受診状況を全て募集人に伝えたわけではなく、仮に募集人に告げられていたとしても、募集人には告知受領権がないので告知したことにはならない。

(2)本入院、本手術の対象である子宮筋腫は、責任開始日より前に存在していた。

(3)申立人は、子宮筋腫に関する指摘が記載された健診結果の写しを募集人に渡したが、これは単に保険提案の資料として預かったものであって、当社に送付されておらず、当社は子宮筋腫について一切認識していない。そもそも、この健診結果からは、告知時点においても子宮筋腫が存在し経過観察がなされていた事実を読み取ることはできない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約申込当時の状況および和解を相当とする事情の有無を確認するため、申立人および募集人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
 上記手続きの結果、申立人の子宮筋腫は責任開始期前に発病したものであることが認められるものの、以下の理由により、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、手続を終了した。

(1)本件では、契約前に募集人が申立人の健診結果の写しを預かっていたが、この健診結果は商品選択のための資料としてのみ使用され、保険会社には健診結果の内容は伝えられていなかった。健診結果には、子宮筋腫に関する指摘が記載されており、申立人がそのような体況を前提に加入できる保険を探しているということは募集人も知っていたため、その意向に応えるためにも、健診結果の内容は保険会社と共有することが望ましかったと言える。

(2)募集人は、健診結果に記載された病歴を前提にしても保険に加入できるのかどうかに加えて、子宮筋腫について給付金が出るのかについても特に丁寧に説明するべきであったが、募集人の事情聴取によれば、子宮筋腫については責任開始期前発病となるので今後の治療について給付金を請求できない可能性があることを明確には説明しなかったとのことで、この点につき、募集人の説明は不十分であったと言わざるを得ない。

以上です。

↑百日草にやってきたナミアゲハ夏型の♂(昨年9月撮影)。

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