がん保険は「入院給付」から「治療給付」へ。

11月11日の日本経済新聞朝刊に、生保各社が取り扱っているがん保険に関する記事がありました。

記事によりますと、

< がんは日本人の2人に1人がかかると言われる。深刻な病気であることに変わりないが、検査・治療技術の進展で「治る病気」になりつつある。一方で治療が長期化すれば費用が高額になることも珍しくない。備えのひとつががん保険。最近は治療のたびに小刻みに給付金が出る商品が増えている。

 がん保険は大きく2つのタイプに分けられる。1つ目ががんと診断されると100万円などのまとまった金額を給付する「診断一時金型」。使い道は自由で、生活費や通院時の交通費、保障対象でない治療を受ける費用などにも充てられる。

 もう一つが「治療給付型」で所定の治療を受けたときに給付がある。ここ数年で増えたのがこのタイプだ。所定の治療は手術、放射線、抗がん剤の「三大治療」が一般的。保障対象となる治療を1回でも受けると1ヵ月単位で10万円といった金額給付がある。>

とのことです。

【管理人の感想】
治療給付型のがん保険が登場したのは今から10年ほど前です。日本の保険市場に参入して50年を迎えた某外資系生保が、三大治療を受けたら年額給付で、治療給付金を支払うという保障をメインにした保険商品が最初でした。

それまでは、がんと診断されたら支払われる「診断給付金」に、手術、入院、通院治療を保障する主契約に、先進医療特約を付加する―といった、入院保障中心の保険でした。

しかし、そうしたがん保険の保障内容と、がん治療、特にがん化学療法のステージの変化に伴う乖離が生じてしまい、入院保障中心では経済的負担を十分に賄えないケースも少なくありませんでした※。

※東北大学医療管理学教授の濃沼信夫氏らが、がん化学療法とその経済的負担について、2004年10月~2007年9月までの3年間に行った多施設調査において、

「民間保険があてにできないケースが多いことが分かった。入院から外来に治療の場がシフトしてきている現状に合わせて、民間保険のあり方も検討すべきだ」

と指摘しており、第三分野全面解禁に伴い、生保各社ががん保険を取り扱う状況になってから数年後には、入院保障中心のがん保険や医療保険では十分ではなくなっていたことが窺えます。

治療給付型のがん保険が増えてきた理由のひとつには、がん化学療法のステージが入院から通院へとシフトしてきたことがあるのです。

【記事の内容】
以下、日本経済新聞の記事の内容です。

-日本経済新聞 2023年11月11日朝刊-

【がん保険、長期の通院重視】

 がんは日本人の2人に1人がかかると言われる。深刻な病気であることに変わりないが、検査・治療技術の進展で「治る病気」になりつつある。一方で治療が長期化すれば費用が高額になることも珍しくない。備えのひとつががん保険。最近は治療のたびに小刻みに給付金が出る商品が増えている。

 がん保険は大きく2つのタイプに分けられる。1つ目ががんと診断されると100万円などのまとまった金額を給付する「診断一時金型」。使い道は自由で、生活費や通院時の交通費、保障対象でない治療を受ける費用などにも充てられる。

 もう一つが「治療給付型」で所定の治療を受けたときに給付がある。ここ数年で増えたのがこのタイプだ。所定の治療は手術、放射線、抗がん剤の「三大治療」が一般的。保障対象となる治療を1回でも受けると1ヵ月単位で10万円といった金額給付がある。

 給付が1ヵ月単位となっている一因は、公的医療保険の高額療養費制度と呼ばれる仕組みにある。一般的な所得水準の人は通常の治療を受けた場合、1ヵ月の医療費の自己負担額は9万円ほどが上限となる。多くの商品は治療した月に出る給付金の額を5万~30万円程度から選ぶが、10万円が多い。がん保険で毎月の医療費を賄えれば家計への影響は抑えられる。

 治療給付型が増えた背景にあるのががん治療の変化だ。以前は入院しての治療が主体だったが、今では入院日数は短く、通院治療も多い。がんと診断された人の生存率が上昇する半面、再発を防ぐための治療や定期検査などが長期になることも珍しくない。「治療給付型は一時金型より保険料が安く、効率的にがんに備えられる」とファイナンシャルプランナー(FP)の黒田尚子氏は話す。

 実際に商品を選ぶ際には保障範囲の違いなどを確認したい。基本の契約は公的医療保険の対象の手術、放射線、抗がん剤の3大治療だが、最近ではさらに幅広い治療に対応する商品が増えている。

 SOMPOひまわり生命保険の「健康をサポートするがん保険 勇気のお守り」は3大治療のほかに、自由診療の抗がん剤とホルモン剤治療も給付対象とする。がんの治療では海外で実績があるものの国内では未承認の薬を使うケースが、他の病気に比べて多いとされる。こうした薬を使う場合、公的医療保険が使えないため治療費が高額になりがちだが、主契約で保障対象になる。

 チューリッヒ生命保険の「終身がん保険プレミアムZ」は主契約で、自由診療の抗がん剤もカバーする。ただし主契約の対象治療は抗がん剤のみで、手術や放射線などは特約で追加する。

 東京海上日動あんしん生命保険の「あんしんがん治療保険」も自由診療の保障を厚くできる。主契約は公的医療保険の範囲だが、月500円の「がん特定治療保障特約」に加入できる。この特約では対象病院で受ける未承認薬や国内での利用が制限されている適応外薬といった自由診療などの治療費を通算で1億円まで保障する。

 がんの新しい治療や薬剤は次々開発されている。がんの遺伝子を分析して治療薬を探す「遺伝子パネル検査」は典型例だ。アフラック生命保険の「『生きる』を創るがん保険 WINGS」は3大治療のほか公的医療保険の適用外の診療や最新治療の保障にも対応する。がんと診断される前の精密検査や外見をケアする特約も付けられる。

 がん保険の保険料は保障の手厚さや契約時の年齢に比例する。加入する際は家計の負担と保障内容のバランスを考えたい。例えばチューリッヒ生命で抗がん剤治療のみの契約なら月の保険料は40歳で1000円前後、50歳代で1200円台。一方で商品によっては自由診療や新しい治療に対する保障など様々な特約を付けると、40歳で月5000円を超えるケースもある。

 保険料を抑えるには給付額を下げるのも選択肢になる。FPの松浦建二氏は「加入する健康保険によっては医療費の自己負担の上限が低いことがある。その場合は10万円より減らしてもよい」という。

 多くの商品では抗がん剤などは通算で60ヵ月や120ヵ月といった給付限度が決まっている。FPの黒田氏は「上限が大きい方が安心できる」と話す。例えば乳がんでは抗がん剤や放射線のあとにホルモン剤治療もあり、期間が長くなることもあるためだ。

以上です。

↑昨年8月に撮影した、ホソミイトンボ夏型の♂

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