マニュライフ生命に業務改善命令。

7月14日、金融庁は外資系生命保険のマニュライフ生命保険に業務改善命令を発出*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 7/14・新着情報 マニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分について

    【管理人の感想】
    金融庁がマニュライフ生命に業務改善命令を出した理由は、法人向けの保険商品の新契約募集において、保険本来の役割から逸脱した「節税目的の保険募集」を行い、その後の税務通達変更の抜け穴をついて不適切な募集を行っていたためです。

    もうね…原因をつくった旧経営陣は我利我利亡者としか言いようがありません。

    【金融庁の公式コメント】
    以下、金融庁の公式コメントの内容です(上記新着情報より抜粋・転載)。

    【マニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分について】

    金融庁は、本日、マニュライフ生命保険株式会社(本店:東京都新宿区、法人番号2012401004592、以下、「当社」という。)に対し、下記のとおり業務改善命令を発出した。

    1.業務改善命令の内容
    保険業法第132条第1項に基づく命令(業務改善命令)

    (1)業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。

    ①今回の処分を踏まえた経営責任の明確化

    ②保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動による契約の特定、調査等、適切な顧客対応の実施

    ③営業優先ではなく、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成

    ④適切な募集管理態勢の確立(代理店に対する十分な牽制機能の構築を含む)

    ⑤適切な商品開発管理態勢の確立

    ⑥上記を着実に実行し、定着を図るためのガバナンスの抜本的な強化

    (2)上記(1)に係る業務の改善計画を令和4年8月15日(月曜)までに提出し、ただちに実行すること。

    (3)上記(2)の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3か月ごとの進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を令和4年9月末とする)。

    2.問題の所在
    当庁検査及び保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告の結果、以下の問題が認められた。

    (1)保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発及び募集活動
    当庁においては、令和元年2月の国税庁による法人税基本通達の改正に係る保険業界への周知以降、累次にわたり保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わないよう注意喚起を行っているほか、同年10月には、「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部を改正し、法人等向け保険商品の設計上の留意点として、「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる商品内容となっていないか」という観点を明確化し、節税(課税の繰り延べ)を訴求した商品開発を含め、同活動を防止するための指針を示している。このような中、当社においては、

    ・法人から個人への名義変更による節税を目的とした名義変更プラン(※注)による販売を推進することを目的として、低解約返戻金型の法人向け商品を開発していく方針が、取締役会等の資料に明示的に記載されていたこと、

    ・前CEO及び前CDO(営業全般の統括責任者)が営業部門の職員等に対して同プランを推進する趣旨の発 言を行っていたと考えられる事実が認められたこと、

    などから、前CEOをはじめとした旧経営陣が主導して同プランを開発・推進していたと認められた。

    (※注)名義変更プランとは、低解約返戻金型定期保険等を活用し、法人から個人(役員等)に名義変更(資産移転)を行うことで、法人と個人の税負担の軽減が可能となる点に着目し、保険期間当初の低解約返戻期間中に法人から個人に名義変更を行い、当該期間経過後に解約することを前提とした保険加入を推奨する手法。

    前専務執行役兼チーフ・ガバナンス・オフィサー(CGO)などの役員についても、同商品の販売が好調である旨の報告を何度も受けており、これらの行為を黙認・看過していたことが強く疑われる実態が認められた。

    現CEOをはじめとした現経営陣が、当庁への報告において「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」の根絶に向けた再発防止策に取り組んでいる中であるにもかかわらず、当社の職員が法人税基本通達改正及び所得税基本通達改正の抜け穴を突いて、不適切な募集と認識しながら、年金保険を使った名義変更プランを考案・推進するといった悪質性が極めて高い事例が認められた。

    現CEOは、商品開発にあたり、営業部門等からの過度の営業推進を牽制し、早期の段階から新商品案を多角的に検証することができるよう、商品開発において経営層が協議・検討を行う場である商品審議会の構成メンバーにチーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)等を追加するなど、再発防止策を講じていた。しかしながら、商品審議会は、開発・販売に向けて協議・検討を進めている法人向けの新商品において、課税の繰り延べ効果が高く、税務上有利になる最高解約返戻率が85%以下となる販売パターンのみを想定した商品とするなど、保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる懸念が認められる商品を再び設計するとともに、そのような募集活動が行われないための実効性ある対応策を協議・検討していない

    など、極めて不適切な実態が認められた。

    (2)営業優先の企業文化やコンプライアンス、リスク管理を軽視する企業風土
    名義変更募集など「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」が繰り返し当社において認められる原因には、ガバナンスの機能発揮が不十分であるなどの問題があるほか、その背景には営業優先の企業文化やコンプライアンス、リスク管理を軽視する企業風土があると考えられる。現経営陣は、全職員を対象としたタウンミーティングを令和3年10月以降計11回にわたり実施し、職員との直接対話の機会を増やしたほか、全営業部門職員を対象とした保険募集ルールに係る研修等を実施するなど、企業文化・風土の刷新に取り組んでいるものの、今回検査において令和4年2月から4月にかけて役員等を除く全職員に対し当庁が実施したアンケートによると、名義変更募集については、回答者の約16%もの職員が「法令違反ではないので問題ではない」または「顧客ニーズに合致すれば問題ではない」との認識を未だに回答しているなど、当社の企業風土の刷新に向けた取組は現時点では道半ばの実態にある。

    このため、当社は経営トップのリーダーシップのもと継続的かつ着実に営業優先の文化からの脱却とコンプライアンスやリスク管理を重視する組織風土の醸成を図るとともに、多様な価値観を有する中途入社者が大宗を占める当社の営業部門職員に対する教育や研修体制をより充実させ、営業部門の意識改革に向けた取組を強化していく必要があるなど、営業優先の企業文化やコンプライアンス、リスク管理を軽視する企業風土の刷新に向けた取組は不十分であると認められた。

    (3)上記の他、取締役会は、傘下の監査委員会による取締役及び執行役の業務執行に関する監査において、前CEOらによる名義変更プランの開発・推進を看過しているなど、取締役及び執行役の職務の執行を監督するという基本的な役割及び責任を十分果たしていないという問題や、3ライン・オブ・ディフェンスの各層において保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を防止するための態勢上の問題が認められた。

    3.処分の理由

    (1)上記2.に関して、
    当社が推進していた名義変更プランによる募集は、税負担を軽減することを主たる目的とし、法人から個人への資産移転や短期の中途解約を前提とするなど、経済的保障・補償を行うことにより個人生活や企業経営の安定を支えるという保険本来の趣旨を逸脱し、その目的に沿った利用を損ねる行為であり、公共性を有する保険業の意義を阻害する行為である。また、当社は、そのような募集行為に関して、当庁の累次にわたる注意喚起に加え、国税庁が昨年6月に名義変更プランに使用され得る保険商品を対象とする所得税基本通達改正を実施し、その行為が不適当であることを明確化していた中、その抜け穴をついて、年金保険を利用した名義変更プランによる募集を行い、契約者に対して租税回避的な行為を推奨していた。以上のような当社の一連の行為は保険業に対する信頼を損ないかねず、よって、公益を著しく侵害しているものと認められること、

    前CEOをはじめとした経営陣が名義変更プランによる募集を商品開発段階から主導していた事実を鑑みると、とりわけ旧経営陣の責任は非常に重く、一連の行為には組織性が認められること、

    当庁から、監督指針に照らして問題のある商品の投入について問題提起を行った後にもかかわらず、国税庁の通達改正の影響による販売減少をカバーするために、名義変更プランを前提とした商品開発及び推進を行っているほか、上述のとおり、その後の通達改正の抜け穴をついて、年金保険を利用した名義変更プランによる募集を行うなど、悪質性、故意性も認められること、

    また、契約者の被害の程度については、当社は契約者に対して通達改正の案内の送付や説明等を行っているとしており、現状、多数の苦情が発生している状況ではないが、契約者が実際に名義変更等を行おうとする際に、初めて税務上の効果を享受できなくなったことを認識する場合もあり得ると考えられるため、今後契約者被害が増加する可能性があること、

    など、現状の契約者被害の程度を勘案しても、今回認められた問題の重大性・悪質性は高い。

    (2)取締役会が取締役等の職務執行を監督するという基本的な役割を十分果たしていないといった経営管理態勢上の問題や、3ライン・オブ・ディフェンスによる機能発揮が不十分であるといった業務運営態勢上の問題も生じている。

    (3)現CEOは、再発防止策等を講じるなど、所用の対応に取り組んでいるものの、根本的原因に基づいた実効性のある施策となっていないなど、自主的な改善は十分には期待できない。

    以上より、当社の確実な業務改善計画の実施及び定着を図っていくためには当局の関与が必要と判断し、業務改善命令を発出した。

    以上です。

↑ハナダイコンで吸蜜中のジャコウアゲハ・♂。

 

関東財務局が少額短期保険の株式会社ジャストインケースに業務改善命令。

6月27日、関東財務局は少額短期保険会社の株式会社justInCaseに対して、業務改善命令(経営管理態勢の改善等)を発出*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 株式会社justInCaseに対する行政処分について

    同社は今年4月に「コロナ助け合い保険(現在新規の契約引き受けは停止中)」で給付金の支払い急増が想定を超えたため、保障内容を変更したことが取り上げられていました。

    「わりかん保険」で一躍注目を集めたのですが、コロナ助け合い保険ではしくじってしまいましたね。

    【公式コメントおよび処分の内容】
    以下、関東財務局の公式コメントと行政処分の内容です(関東財務局ウェブサイトより抜粋・転載)。

    【株式会社justInCaseに対する行政処分について】

    1.株式会社justInCase(本社:東京都中央区。法人番号:1010401128644。以下「当社」という。)は、令和2年5月から、一泊二日以上入院した場合に入院一時金(10万円)を支払い、また新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ感染症」という。)にかかる医療機関以外の自宅や宿泊施設での療養等(以下「みなし入院」という。)に対しても同等の入院一時金(10万円)を支払う「コロナ助け合い保険(シンプル医療保険)」(以下「コロナ保険」という。)の販売を開始している。また、当社においては、コロナ保険について、令和4年1月以降に発生した新型コロナ感染症の感染拡大により、保険金支払いが当初の商品想定を遥かに上回る金額となり、保障内容の維持が困難となったことを理由に、令和4年4月6日、当該保険にかかる当社普通保険約款(以下「約款」という。)の規定に基づき、保険金額を10分の1に減額する旨を公表し、4月7日以降の入院分から適用しているところである(以下「本件保険金の減額払い」という。)。

    ここで、少額短期保険業者は、業務の健全かつ適切な運営を確保していくため、少額短期保険業者自らが様々なリスクを的確に把握・管理し、適切な経営管理のもと、保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢等を構築することが必要である。こうした観点を踏まえ、当社に対し、本件保険金の減額払いに関して保険業法第272条の22第1項の規定に基づき求めた報告内容を検証したところ、本件保険金の減額払いを招いたことに関し、当社の保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢、経営管理態勢について、以下(1)~(3)の問題点が認められた。

    本件保険金の減額払いの実施は、当社の経営判断に基づくものであるが、保険契約者等に重大な影響を及ぼす事態を招いた当社の経営責任は重大であり、当社においては、保険金の減額払いに至ったことについての経営責任を明確にした上で、保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢及び経営管理態勢の改善を図る必要がある。

    (1)保険引受リスク管理態勢
    ・再保険を前提としたリスク管理を行っていたなか、新型コロナ感染症の感染拡大や、それに伴う保険収支の状況等によっては再保険契約の更新に不確実性を伴うことへの認識が不足していたこと

    ・新型コロナ感染症の感染拡大時のモニタリング強化発動基準、販売停止等措置発動基準及び累積損失額基準を設定し、これに基づくリスク管理を実施していたが、これら基準の有効性の検証が十分に行われておらず、本件保険金の減額払いに至った段階でも販売停止等措置発動基準に抵触していないなど、リスク管理が十分に機能していなかったこと

    ・令和3年8月の段階で、契約開始日時から事故発生日までの期間が極端に短い請求が散見され始めたことなどから、契約申込時の告知において、過去1週間以内のPCR検査の実施有無等にかかる告知事項を追加した。しかしながら、保険収支の急激な悪化に至った令和4年3月になって上記告知事項の追加が十分に機能していなかったことを認識し、契約申込み後14日後に保障開始となる取扱いとしたが、依然として保険収支改善への効果が限定的であったこと

    (2)商品開発に係る内部管理態勢
    ・コロナ保険の商品開発時の保険料算定においては新型コロナ感染症にかかる入院(みなし入院を含む)の発生率データ等が反映されていなかったが、販売開始後に保険金支払いが可能な保険料水準となっているかどうかの検証を十分に行っていないこと

    (3)経営管理態勢
    ・コロナ保険に関する保険引受リスク管理や商品開発管理は、当社代表取締役や取締役等の協議により決定・実施されていたが、過去の感染パターンを過信し、上記(1)(2)のとおりリスク管理等が不十分となっていたことから、適切な経営判断を行えなかったこと

    ・こうしたなか、本件保険金の減額払いの公表後、顧客に対して、新型コロナ感染症の感染拡大により、保険金支払いが当初の商品想定を遥かに上回る金額となり保障内容の維持が困難となった旨の説明を行っているが、約款の規定を適用し本件保険金の減額払いに至った詳細な経緯、発生原因を踏まえた改善策及び発生の責任の所在等について、十分な説明を行っていないこと

    2.このため、本日、当社に対し、保険業法第272条の25第1項の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。

    -保険業法第272条の25第1項(業務改善命令)-

    1.経営管理態勢の改善
    保険金の減額払いに至ったことに関し、適切な経営判断を行うために必要な経営管理の在り方を検討し、それを踏まえた経営管理態勢の改善策を策定・実施すること。

    2.保険引受リスク管理態勢・商品開発に係る内部管理態勢の改善
    保険金の減額払いに至ったことに関し、当社の保険引受リスク管理態勢、商品開発に係る内部管理態勢の問題点・発生原因を踏まえた改善策を策定・実施すること。

    3.本件処分に係る経営責任の所在を明確にすること。

    4.上記1~3に関する今回の行政処分の内容について、顧客に対し十分な説明を実施すること。

    5.上記1~4に関する業務改善計画(具体策及び実施時期を明記したもの)を令和4年7月27日までに提出し、提出後、直ちに実行すること。

    6.上記5の実行後、当該業務改善計画の実施完了までの間、3ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに報告すること(初回提出基準日を令和4年9月末とする)。

    以上です。

↑5月に撮影したアオスジアゲハ春型・♂の吸水行動。

 

がんによる収入減少に備える手段。

6月4日の日本経済新聞・朝刊に、がんによる収入減少に備える手段に関する記事がありました。

記事によりますと、

< …

国立がん研究センターの統計によると、がん患者の多くは高齢者。しかし、働く人が多い20~64歳も約25%を占める。厚生労働省の推計では、仕事を持ちながらがんで通院する人は44.8万人(2019年、70歳以上も含む)。10年から4割近く増えている。

東京都の調査では、働くがん患者で収入が「減った」ケースは少なくない。患者本人で約半分。生体全体でも3分の1に上った(がん患者の就労等に関する実態調査)。夫婦でどちらかががんになれば、配偶者も看病などで就労が制限されやすいためとみられる。

長期の闘病や収入減といった事態では、まず社会保障や勤め先の制度が支えとなる。それで足りない分については、貯蓄や民間保険で補うのが基本的な考えだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
今回の記事において、がんに罹患したことに伴う収入減少への備えとして、取り上げられている民間生保の保険は「がん保険」と「就業不能保険」です。

ん~…残念ながら両者とも「がんに罹患したことに伴う収入減少への備え」としては使いにくいかと思います。

まず「がん保険」ですが、がんの治療を受けたときなどの費用を補完する保険商品ですから、がん罹患による収入減少の備えには力不足です。

「就業不能保険」は「国民年金法に定める障害等級1級または2級」や「5大疾病による入院等」など、保険会社所定の就業不能状態に該当すれば支払われる月払給付金を受け取ることで、傷病手当金や障害者年金の上乗せとして生活を支える保険商品ですから、がん罹患による収入減少への備えとして使うにはハードルが高いです。

では、どんな保険商品であれば「がん罹患による収入減少への備え」となるのか?と申しますと、数少ない選択肢のひとつとしてソニー生命保険の「三大疾病収入保障保険」があげられます。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年6月4日朝刊-

【がんの収入減に備える―まずは貯蓄、長期化は保険で】
日本で2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるとされる。近年は医療の進歩などで生存率が上がり「死の病」から「長く付き合う病」へと変わりつつある。がんで長く治療を受けるようになると費用が膨らみやすく収入が減るケースも多い。いざというときに利用できる制度を確認し、必要な備えをしておきたい。

都内に住む会社員の男性(42)はパートで働く妻、2人の子と暮らす。4ヵ月前から腹痛や下痢が続いたので検査を受けたところ、大腸癌(S上結腸癌)と診断された。医師によれば入院して手術の後、半年程度の抗がん剤治療が必要という。手術や治療も心配だが、最も気になるのは仕事や収入への影響だ。「長く働けなくなれば、妻のパート収入だけでは生活できない」

国立がん研究センターの統計によると、がん患者の多くは高齢者。しかし、働く人が多い20~64歳も約25%を占める。厚生労働省の推計では、仕事を持ちながらがんで通院する人は44.8万人(2019年、70歳以上も含む)。10年から4割近く増えている。

東京都の調査では、働くがん患者で収入が「減った」ケースは少なくない。患者本人で約半分。生体全体でも3分の1に上った(がん患者の就労等に関する実態調査)。夫婦でどちらかががんになれば、配偶者も看病などで就労が制限されやすいためとみられる。

長期の闘病や収入減といった事態では、まず社会保障や勤め先の制度が支えとなる。それで足りない分については、貯蓄や民間保険で補うのが基本的な考えだ。

ファイナンシャルプランナー(FP)の黒田尚子氏は「普段から初年度の治療費100万円と生活費3~6ヵ月分の預貯金を用意しておきたい」と話す。がんと診断されても、すぐに公的な制度を利用できなかったり、手続きに時間がかかったりしたりすることがある。数か月間治療に専念できるたくわえがあれば、診断直後の不安を減らせる。独身者よりも家族がいる人、会社員よりも自営業者、住宅ローンがない人よりもある人は、金額を多くしたほうが無難だろう。

公的な制度には「負担を減らす」と「収入を補填する」の2つがある。前者の代表が高額療養費制度で、後者が傷病手当金や障害年金など。高額療養費制度は1ヵ月あたりの医療費の自己負担額に上限を設けるもので、その人の収入により上限額が変わる。上限に達する月が度々あれば、上限額を下げるルールもある。

傷病手当金は会社員や公務員らが対象で、病気などで働けなくなった日の4日目から月収3分の2に相当する額を支給する。以前の支給期間は開始日から1年6ヵ月だったが、今年1月から通算で1年6ヵ月に変わった。いったん仕事に復帰した後、再び休むようなケースでも不利にならない。

病気になった人の休暇や働き方の制度は休職や病気休暇、短時間勤務など勤め先により様々だ。収入の減り方も制度の使い方などにより変わってくる。休暇には悠久のものもあれば、無給のものもある。「傷病手当金を申請する前に、制度をどう使うか勤め先とよく相談したい」と社会保険労務士の近藤明美氏は助言する。

傷病手当金の後は障害年金が選択肢になる。障害年金は原則、初診日から1年6ヵ月(障害認定日)たっても障害状態が続く場合に請求する。自営業者らが対象となる障害基礎年金の受給額は1級が年97万2250円で2級が同77万7800円(22年度)。会社員などが対象の障害厚生年金は1級から3級まであり、金額は働いた期間やその時の月収で変わる。

ただ、障害年金の受給者のうちがんを理由とするケースは全体の1%にとどまる。その中で最も多い障害厚生年金の3級の場合、最低保障額は年58万3400円となっており、「一般に傷病手当金より少ない」(社労士の近藤氏)点には気を付けたい。

60代なら老齢年金を本来の65歳から繰り上げて受給を始め、収入を確保するのも手だ。この方法では年金額は65歳からの需給より下がり、その水準が生涯続くというデメリットもある。

傷病手当金や障害年金を受給できても、一般に金額はがんになる前の収入より少ない。「収入が減った分は貯蓄や保険で賄う必要がある」(FPの黒田氏)。特に公的な保障が薄い自営業者は、備えが欠かせない。貯蓄以外の備えの一つががん保険。治療費などの支出増に対応するのが主目的だが、収入減もカバーできる。主にがんと診断されたときに一定額を給付する「一時金タイプ」は当面の生活費などに充てることができる。治療の度に給付金を出す「都度給付タイプ」は長く通院で治療するようなケースで役立つ。

長期間働けなくなった時に10万円など決まった額の給付金を毎月受け取る就業不能保険もある。10年から就業不能保険を販売するライフネット生命保険では加入は20~40代が中心。「21年度の給付金支払いは420件で3割弱ががん。支払期間が1年半以上になった事例もある」という。

注意点は60日や180日などの免責期間があり、原則としてすぐに給付金が出ないこと。また給付の条件が「入院」「自宅療養」「障害等級1級か2級」など、がん保険など比べてハードルが高いとの指摘もある。FPの加藤梨里氏は就業不能保険について「がん保険や医療保険とは別に、収入減が長期化した備えとして検討したい」と話している。

以上です。

↑5月上旬に撮影したニホンカワトンボ・♀。

オリックス生命の2021年度決算。

5月30日、オリックス生命保険はHPにて2021年度決算を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 5/30・プレスリリース 2021年度決算報告(PDF)

    【管理人の感想】
    1.保有契約は堅調に増加

    個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度末比101.9%、101.2%、103.7%といずれも増加していました。

    また、個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度末比92.9%、83.5%、94.7%といずれも減少していました(なお、オリックス生命は既に個人年金保険の新契約を停止しています)。

    医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年度末比103.3%とこちらも増加していました。

    保有契約は今年度も堅調に増加したことが伺えます。

    2.新契約は不調
    個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度比68.8%、58.7%、69.4%と大幅な減少でした。

    また、医療保障・生前給付保障等の新契約県換算保険料は、前年度比61.2%とこちらも大幅な減少でした。

    新契約は軒並み不調だったことが伺えます。

    【主要業績の内容】
    以下、オリックス生命の主要業績の内容です(上記プレスリリースより抜粋・転載)。

    〇保有契約
    1)件数

    ・個人保険…488万2000件 前年度末比101.9%

    ・個人年金保険…9万8000件 前年度末比92.9%

    2)契約高
    ・個人保険…14兆2622億円 前年度末比101.2%

    ・個人年金保険…3248億円 前年度末比83.5%

    ・団体保険…7352億円 前年度末比108.2%

    〇新契約
    1)件数

    ・個人保険…33万1000件 前年度比68.8%

    2)契約高
    ・個人保険…1兆33億円 前年度比58.7%

    〇年換算保険料
    1)保有契約

    ・個人保険…3323億円 前年度末比103.7%

    ・個人年金保険…432億円 前年度末比94.7%

    ・個人保険+個人年金保険…3756億円 前年度末比102.6%

    うち医療保障・生前給付保障等…2123億円 前年度末比103.3%

    2)新契約
    ・個人保険…289億円 前年度比69.4%

    ・個人保険+個人年金保険…289億円 前年度比69.4%

    うち医療保障・生前給付保障等…173億円 前年度比61.2%

    〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、当期純利益 ( )内は前年度実績。▲はマイナス
    ・保険料等収入…4485億円 前年度比87.7%

    ・保険金等支払金…2408億円 前年度比103.2%

    ・経常利益…▲117億円 (▲225億円)

    ・当期純利益…▲103億円 (▲182億円)

    〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度実績および数値。▲はマイナス
    ・基礎利益…▲57億円 (▲205億円)

    ・ソルベンシー・マージン比率…1275.9% (1517%)

    以上です。

↑耕作放棄地で交尾中のヒメウラナミジャノメ(4月撮影)。

 

アフラックの2021年度決算。

5月25日、アフラック生命保険はHPにて2021年度決算を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

5/25・ニュースリリース 2021年度決算報告(案)(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約の減少止まらず

2大看板商品であるがん保険、医療保険の保有契約件数は、がん保険が前年度末比98%、医療保険が前年度末比98.1%どちらも減少が続きました。

保有契約の減少がなかなか止まりませんね。

2.医療保険の新契約は伸びる
がん保険の新契約件数が前年度比93.2%と減少したのに対し、医療保険の新契約件数は前年度比106.6%とこちらは増加でした。がん保険の新契約は一時好調を取り戻したものの、なかなか続きませんね。

【主要業績の内容】
以下、アフラックの主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約件数
・個人保険…2335万9000件 前年度末比98.1%

・個人年金保険…32万4000件 前年度末比99.4%

・個人保険+個人年金保険…2368万4000件 前年度末比98.1%

うちがん保険…1499万9000件 前年度末比98%

うち医療保険…575万8000件 前年度末比98.3%

〇新契約件数
・個人保険…80万3000件 前年度比100.5%

うちがん保険…48万9000件 前年度比93.2%

うち医療保険…23万6000件 前年度比106.6%

〇年換算保険料
1)保有契約

・個人保険…1兆2682億円 前年度末比97.8%

・個人年金保険…897億円 前年度末比101.3%

・個人保険+個人年金保険…1兆3580億円 前年度末比98.1%

うち医療保障・生前給付保障等…1兆278億円 前年度末比98.1%

2)新契約
・個人保険…480億円 前年度比104.7%

・個人保険+個人年金保険…480億円 前年度比104.7%

うち医療保障・生前給付保障等…437億円 前年度比105.4%

〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益
・保険料等収入…1兆3203億円 前年度比96.8%

・保険金等支払金…3558億円 前年度比112.6%

・経常利益…3668億円 前年度比109.8%

〇三利源 ( )内は前年度実績
・危険差損益…2361億円 (2306億円)

・費差損益…786億円 (743億円)

・利差損益…549億円 (333億円)

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…3697億円 前年度比19.3%

・ソルベンシー・マージン比率…940.6% (916.7%)

以上です。

↑ハルジオンで吸蜜中のベニジジミ(4月撮影)。

 

ソニー生命の2021年度決算。

5月24日、ソニー生命保険はHPにて、2021年度決算を発表*しました。

*詳しくは、こちらをどうぞ。
5/24・ニュースリリース 2021年度決算(案)のお知らせ(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は堅調に増加
個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度末比100.7%、104.5%、103.8%といずれも増加していました。

また、個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度末比149.9%、152.3%、178%といずれも二桁の増加でした。

医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年度末比102.4%とこちらも増加していました。

ソニーライフ・ウィズ生命帆を吸収合併した効果もありますが、保有契約が堅調に増加したことが伺えます。

2.新契約は好調
個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前値同期比102.4%、122.9%、132.1%といずれも増加していました。死亡保障が堅調に増加したことが伺えます。

また、個人年金保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比163.5%、163.9%、167.8%といずれも二桁の増加でした。

医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比141.4%とこちらも二桁の増加でした。

新契約は全体的に好調だったことが伺えます。

【主要業績の内容】
以下、ソニー生命の主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約
1)件数
・個人保険…786万件 前年同期末比100.7%

・個人年金保険…85万1000件 前年同期末比149.9%

・個人保険+個人年金保険…871万2000件 前年同期末比104%

2)契約高
・個人保険…52兆3974億円 前年同期末比104.5%

・個人年金保険…5兆2539億円 前年同期末比152.3%

・個人保険+個人年金保険…57兆6513億円 前年同期末比107.5%

・団体保険…1兆5274億円 前年同期末比93.1%

・団体年金保険…53億円 前年同期末比84.6%

〇新契約
1)件数
・個人保険…40万7000件 前年同期比102.4%

・個人年金保険…20万8000件 前年同期比163.5%

・個人保険+個人年金保険…61万5000件 前年同期比117.2%

2)契約高
・個人保険…5兆2422億円 前年同期比122.9%

・個人年金保険…1兆4130億円 前年同期比163.9%

・個人保険+個人年金保険…6兆3552億円 前年同期比129.8%

・団体保険…84億円 前年同期比158.4%

〇年換算保険料
1)保有契約
・個人保険…8983億円 前年同期末比103.8%

・個人年金保険…1556億円 前年同期末比178%

・個人保険+個人年金保険…1兆540億円 前年同期末比110.6%

うち医療保障・生前給付保障等…2137億円 前年同期末比102.4%

2)新契約
・個人保険…729億円 前年同期比132.1%

・個人年金保険…325億円 前年同期比167.8%

・個人保険+個人年金保険…1054億円 前年同期比141.4%

うち医療保障・生前給付保障等…129億円 前年同期比109.8%

〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、当期純利益
・保険料等収入…1兆3773億円 前年同期比113.6%

・保険金等支払金…6700億円 前年同期比126%

・経常利益…536億円 前年同期比80.7%

・当期純利益…190億円 前年同期比44%

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…1322億円 前年同期比96.8%

・ソルベンシー・マージン比率…2191.1% (2126.6%)

以上です。

リビングニーズ特約にもとづく特定状態保険金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた令和3年10~12月の裁定概要集(PDF)に、リビングニーズ特約にもとづく特定状態保険金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
余命6ヵ月以内と診断されたにもかかわらず、リビング・ニーズ特約にもとづく特定状態保険金が支払われないことを不服として、保険金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
胃がんにより入院し、平成25年7月に余命6ヵ月である旨宣告され、その後、令和3年2月にリビング・ニーズ特約にもとづき特定状態保険金を請求したが、支払事由である「被保険者が余命6ヵ月と判断される場合」に該当しないとして、支払われなかった。しかし、以下の理由により、特定状態保険金を支払ってほしい。

(1)診断書に記載されているとおり、平成25年7月に余命6ヵ月と診断されている。

(2)保険会社から、特定状態保険金の請求ができることを案内されなかった。

…この事案はすでに裁定が終了しています。

医師から「余命6ヵ月以内」と診断されたにもかかわらず、なぜ特定状態保険金が支払われなかったのか?

実は、特定状態保険金は医師が余命6ヵ月以内と判断すればしはらわれるというものではありません。

「余命6ヵ月以内」とは、「日本で一般に認められた医療による治療を行っても余命が6ヵ月以内である」ことを意味しています。そしてその判断は、医師が記入した診断書や保険金の請求書類にもとづいて保険会社が行います。

つまり、申立人の状態は、支払事由の定義に該当していなかったため、保険金が支払われなかったのです。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年10~12月裁定概要集・P55~56より転載)。

[事案2021-104] 特定状態保険金支払請求
・令和3年11月11日 裁定終了

<事案の概要>
余命6ヵ月以内と診断されたにもかかわらず、リビング・ニーズ特約にもとづく特定状態保険金が支払われないことを不服として、保険金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
胃がんにより入院し、平成25年7月に余命6ヵ月である旨宣告され、その後、令和3年2月にリビング・ニーズ特約にもとづき特定状態保険金を請求したが、支払事由である「被保険者が余命6ヵ月と判断される場合」に該当しないとして、支払われなかった。しかし、以下の理由により、特定状態保険金を支払ってほしい。

(1)診断書に記載されているとおり、平成25年7月に余命6ヵ月と診断されている。

(2)保険会社から、特定状態保険金の請求ができることを案内されなかった。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)特定状態保険金の請求時点では、被保険者の余命は6ヵ月以内ではない。

(2)診断書等の内容によれば、日本で一般に認められた医療による診療を行った場合には、「被保険者の余命は6ヵ月以内と判断される場合」には該当しない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会では、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、申立人の主張内容等を把握するため、申立人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続きの結果、リビング・ニーズ特約にもとづく特定状態保険金の支払事由に該当するとは認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続きを終了した。

以上です。

新型コロナウイルス感染症への入院給付金の請求が急増。支払の遅延も生じる。

4月19日の日本経済新聞朝刊に、新型コロナウイルス感染症への入院給付金支払の動向に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルスの第6波による感染拡大を受け、生命保険会社に対する入院給付金の請求が急増している。明治安田生命保険では直近の支払件数が第5波の影響を受けた昨年秋の約3倍に膨らんだ。査定の担当者を増やしても人手が追い付かず、5営業日以内とする支払いが遅れ始めた生保もある。重症化の懸念が小さくなる中、自宅で療養する軽症者に「みなし入院」として給付金を支払う是非を問う声も出始めている。>

とのことです。

【管理人の感想】
新型コロナウイルス感染症に伴う入院給付金の請求は各社とも増加しており、請求受付にもかなりの負担がかかっています。できる限り、速やかに請求を受け付けて書類を発送するために各社とも懸命に対応しており、頭が下がります。

なお保険商品は、今回のようなパンデミックで各種保険金、給付金の支払いが急増しても支払うべきものを支払い、保険財務が悪化することがないよう設定されています。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年4月19日朝刊-

【入院保険金「第6波」で急増-明治安田、第5波の3倍に。人繰り苦慮で給付遅れも】
新型コロナウイルスの第6波による感染拡大を受け、生命保険会社に対する入院給付金の請求が急増している。明治安田生命保険では直近の支払件数が第5波の影響を受けた昨年秋の約3倍に膨らんだ。査定の担当者を増やしても人手が追い付かず、5営業日以内とする支払いが遅れ始めた生保もある。重症化の懸念が小さくなる中、自宅で療養する軽症者に「みなし入院」として給付金を支払う是非を問う声も出始めている。

病気やけがの治療で入院した患者に支払われる入院給付金は、生保が取り扱う医療保険につく保障だ。実際の入院から保険会社へ請求が届くまで時間差がある。現在は第6波で1日当たりの感染者が10万人を超えた2月以降の請求に対し、保険会社が書類の審査や支払いの対応に追われている。

明治安田生命では第5波の影響で支払いが増えた昨年10月に比べ、今年3月の支払い件数は約3倍の2万5000件程度に増えたという。住友生命保険も3月の請求が前月比で3倍以上に膨らんでおり、ほかの生保でも同じような状況だ。

保険金・給付金を支払うには、被保険者の診断書など書類を審査する必要がある。各社は支払いに備えて日ごろから一定の人員を抱えているが、想定を上回る請求で体制の見直しを急いでいる。

日本生命保険は他部署などからの応援で、平均の2倍近い300人規模に拡充した。別の大手も3割程度増やしたといい、「感染の第7波に備えてさらに人員の増強を検討しなければならない」(幹部)。

人繰りに苦慮する中、支払いが遅れるケースも出始めた。保険会社と契約者の約束を記載する約款では一般的に、請求が届いてから5営業日以内に保険金・給付金を支払うと定めている。これを過ぎると年3%の遅延利息を上乗せする必要がある。

ある大手生保の幹部は「支払の急増で支払いに5日以上を要する場合が増えてきた」と明かす。住友生命も「平時より遅れが多くなっているのは事実」と認める。日本生命は4月半ばから、支払い遅れが生じる可能性があることを一部の契約者に通知し始めた。

「入院給付金」と銘打っているが、実際に入院した患者からの請求は2割前後にとどまる。残りは新型コロナウイルスの陽性と要請と判定されても、自宅やホテルでの療養を余儀なくされた「みなし入院」が占める。医師に入院を勧められても、医療機関の逼迫で希望がかなわない人を実際に入院したとみなして給付金を支払う措置だ。

生命保険協会でも「宿泊・自宅療養証明書」を用意し、自治体や保健所の担当者による署名で保険金を申請できるよう手続きの簡素化を進めてきた。同協会によると、今年2月末時点の支払額は加盟42社の合計で580億円弱にのぼる。

第6波の中心であるオミクロン株は感染力が強い一方、重症化率は従来株より低い傾向にあることが分かっている。症状が軽く、数日で職場などに復帰できるような感染者でも給付を受けられる。ある生保首脳は「(季節性のインフルエンザでも)支払いを受けられない契約者が不公平感を強めるのではないか」と違和感を口にする。

それでも毒性の強い変異株の新型コロナウイルスがこれから流行しないとも限らない。15日に記者会見した生保協の高田幸徳会長(住友生命保険社長)は「(現段階でみなし入院中の)給付金としてお支払いするのがコンセンサスではないか」と措置の見直しに否定的な考えを示す。

新型コロナウイルスの感染症法上の分類を「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」へ下げることについては議論がある。当面はみなし入院となる契約者・被保険者への支払いは続く。不公平さの解消と社会的な要請のはざまに揺れる生保の苦悩が強まっている。

以上です。

↑3月下旬に撮影した染井吉野。

保険金等支払い時の備え。いざというときは家族が請求手続き。

4月16日の日本経済新聞朝刊に、生命保険の指定代理請求制度など、契約者・被保険者本人以外の家族が契約内容の照会や、保険金等の支払い請求ができる制度に関する記事がありました。

【管理人の感想】
記事が取り上げているのは、家族情報登録制度、指定代理請求制度、保険契約者代理制度の3つです。

このうち、家族情報登録制度は契約内容の照会ができる制度で、指定代理請求制度と保険契約者代理制度は家族が契約者・被保険者本人に代わって、保険金等の請求ができる制度です。

また、保険契約者代理制度は契約者本人に代わって保険契約の解約もできる制度です。

記事でも書かれていますが、こうした制度は契約者・被保険者本人に正常な判断力があるうちに保険会社に申し出て制度が利用できるようにしておくことが大事です。

指定代理請求制度は、医療保険やがん保険、リビングニーズ特約等で契約前に約款で説明を受け、契約締結時に付加しておいた方も多いかと存じます。どのようなときに指定代理請求が可能なのかは約款に記載されていますので、定期的に確認してください。

家族情報登録制度は、契約後に保険会社から書面が送られてきて登録を申し出たという方も多いかと存じます。管理人は母の契約でこの手続きを行いました。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年4月16日朝刊-

【認知症、家族が保険手続き】
「せっかく加入しても、保険金の請求ができなければ意味がない」。こう話すのはファイナンシャルプランナー(FP)の清水香氏。80代の両親がそれぞれ契約する医療保険で、3月に代理人登録をしてもらったという。両親は今のところ健康状態に大きな問題はないが、認知症などを今後患って保険金を請求できなくなるといった事態に備えるためだ。

保険に加入する高齢者は増えている。生命保険文化センターの調査では、医療保険や医療特約に加入する80歳以上の世帯は2021年に8割超と18年の6~7割から増加した。「80代でも契約できる終身タイプの医療保険が増えたことが影響している」と清水氏は語る。

一方、厚生労働省の調査によると認知症の患者は25年で推計約700万人と65歳以上の約5人に1人を占める見通し。何らかの保険に加入しながら認知症になる人も多くなりそうだ。

ただし保険会社は個人情報保護の観点から、原則として契約者以外に契約の有無や内容を開示しない。保険の手続きも契約者や被保険者本人がするか、成年後見制度を利用する場合に限られる。このため契約者などが認知症になると、家族が保険の存在や内容を知ることが難しくなったり、必要な手続きができなかったりする恐れがある。

そこで選択肢の一つになるのが清水氏も利用する「指定代理請求制度」だ。病気やけがなどで被保険者の判断能力がなくなった際に備えて代理人を決めておけば※、万一の際に被保険者に代わって保険金の請求と請求に必要な情報を照合することができる。

※管理人補足:指定代理請求制度は「被保険者の判断能力がなくなった」ということに限った制度ではありません。病名の告知がされていないなど保険会社が認めるやむを得ない事情に該当すれば利用できる制度です。詳細は約款で確認してください。

指定代理請求制度と並んで多くの保険会社が導入しているのが「家族情報登録制度」。事前に登録した家族などが契約内容を教えてもらえる。契約者の判断能力が十分で、登録する家族の同意があることなどが条件となる。18年に導入したかんぽ生命保険は「高齢の新規契約者のほとんどが利用する」(契約サービス部)という。

生命保険の保険金は請求しないと受け取れないため、契約があることを知っていれば請求漏れを防ぐことができる。入院などで治療費がかかっても給付金を代理で請求することは基本的にできないが、各社が個別のケースに応じて対応することが多いため問い合わせてみるといいだろう。

大手生保の一部がここ数年で導入し始めた「保険契約者代理制度」は、あらかじめ登録した家族などが代理人として契約内容の照会や住所変更、解約などをすることができる。22年4月に金融機関の窓口販売商品から同制度を始めた日本生命保険では「高齢の親などが加入する保険の手続きを代行したいといった問い合わせが増加傾向にあることに対応した」(お客様サービス部)と説明する。

同社の制度で登録できるのは主に3親等以内の親族で、契約者本人が家族を1人指定し、氏名や連絡先などを登録する。手続きが完了すると登録家族にも通知を送る。日生のほか住友生命保険や朝日生命保険などが導入している。

家族情報登録、指定代理請求、保険契約者代理制度はいずれも契約者や被保険者に判断能力があるうちに手続きをする必要がある。もし手続きをする前に認知症になったり、亡くなったりしたりしたらどうすればいいのか。

こうした場合に家族の保険契約の有無を一括で確認できるのが「生命保険契約紹介制度」。生命保険協会が21年7月から運営している。法定相続人や3親等以内の親族などが利用でき、紹介する際には戸籍や診断書等の書類を提出する。利用料が1回3000円(税込み)かかるが、生保42社に契約があるかどうかがわかる。

契約がある場合に家族などが保険会社に連絡すれば個別で対応する。ただし手続きには時間がかかるため、「加入している保険の種類や受取人、保険証券の保管場所などを本人と家族が事前に共有することが大切」(FPの田中香津奈氏)という。

損害保険でも生保と同様の仕組みを設ける例がある。東京海上日動火災保険の「親族連絡先制度」は、配偶者や2親等以内の親族を登録すれば契約者に代わって契約内容を確認できる。損害保険ジャパンは被保険者に面会などで確認してから配偶者などに代理請求を認める場合がある。「被保険者が手続できない場合の代理請求については商品の約款に記載するのが一般的。まず約款を確認したい」と日本損害保険協会では話す。

以上です。

↑、3月に撮影した大島桜。

コロナ保障特化の保険商品の誤算。収支悪化、短期間で新規引き受け停止、モラルリスクの疑い。

4月12日の日本経済新聞朝刊に、新型コロナウイルス感染症に特化した保険商品などの動向に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルス禍で需要が高まったコロナ保険が苦境に陥っている。保険スタートアップのジャストインケース(東京・中央)が既契約の入院給付金を従来の1割に減らす異例の対応に踏み切ったほか、大手保険会社による販売停止や保険料引き上げが相次ぐ。想定以上に感染者が膨らみ、保険収支が悪化したためだ。ニーズをとらえた商品投入を急いだものの、需要予測など商品設計が甘くなり、不十分な金融商品になった可能性がある。>

とのことです。

【管理人の感想】
収支の悪化による保障内容変更、モラルリスクの疑い、短期間で新規契約の引き受け停止、保険料引き上げーと、新型コロナウイルス感染症に特化した、あるいは重点を置いた保険商品を投入した保険会社に誤算があったようです。

保守的に基礎率を設定したはずなのに、短期間での引き受け停止などの事態を招いたとなると、新型感染症に特化した、あるいは保障の重点を置いた保険商品は保険契約として成立させることが困難なのかもしれません。

ただ、モラルリスクの疑いは、保険会社の考えが甘すぎたとしか言いようがありません。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年4月12日朝刊-

【コロナ保険、際立つ苦境-給付削減や新規契約停止も】
新型コロナウイルス禍で需要が高まったコロナ保険が苦境に陥っている。保険スタートアップのジャストインケース(東京・中央)が既契約の入院給付金を従来の1割に減らす異例の対応に踏み切ったほか、大手保険会社による販売停止や保険料引き上げが相次ぐ。想定以上に感染者が膨らみ、保険収支が悪化したためだ。ニーズをとらえた商品投入を急いだものの、需要予測など商品設計が甘くなり、不十分な金融商品になった可能性がある。

「大変申し訳ございません。当社の予測が甘かったことに尽きます」。ジャストインケースの畑和寿也社長は6日、ホームページ上でコメントを出した。7日以降に入院を始めた契約者への入院給付金を従来の1割に引き下げたことへの謝罪だ。

具体的にはコロナ罹患時の入院の定義を大きく2つに分ける。自宅やホテルでの療養である「みなし入院」の場合、入院給付金は従来の1割になる。一方、医療機関で1泊2日以上の入院をした場合は1割に減らした入院給付金とは別の9割分を見舞金として支払う。療養場所によって給付金に格差をつけた。

保障内容を変えたのは、保険金請求の殺到で保険収支が大幅に悪化したためだ。3月の保険料収入が3000万円程度に対し、保険金支払いは1億8000万円程度になった模様。2月に1日10万人に迫る勢いで増えた国内のコロナ感染のスピードを読み誤った。3月10日までは加入から2週間の免責期間を設けておらず、コロナに感染してから保険申請した不正加入も発生したとみられる。

ジャストインケースは約款に「保険期間中に当社の収支が悪化し、保険料の計算基礎に著しく影響を及ぼす事象が発生した場合は、保険期間中に保険料の増額または保険金額の減額をすることがある」と記載している。3月に新規契約を停止していたが、それでも収支悪化に歯止めがかからず、契約済みの加入者に訴求して保障内容を引き下げる異例の措置に踏み切った。

契約者からは「過去の保険料を返金しないのか」などの声が上がる。ジャストインケースは顧客サポートの人員を3人から9人に増やし、4月に解約を申し出た契約者については4月分の保険料を返金する方向だ。金融庁は「顧客対応を徹底してほしい」(幹部)という。

ジャストインケースは複数の契約者が保険料を出し合ってプールし、そこから保険金を支払うピア・ツー・ピア(P2P)保険を作るのを得意として来た。P2Pのコロナ保険なら保険料の範囲内でしか保険金を払わない仕組みにできたはず。だが、P2P保険として開発するには金融庁との折衝などに時間がかかる。市場への投入を優先し、従来の少額短期保険として発売したことが失敗の一因となった。

需要予測を見誤ったのは大手も同じだ。日本生命保険傘下の大樹生命は2月4日、販売開始から約1ヵゲッツハンデ新型コロナウイルを含む感染症で入院すると10万円の一時金を受け取れる保険「おまもリーフ」の新規販売を停止した。販売再開は未定だ。

損害保険ジャパンがスマートフォン決済「Pay Pay(ペイペイ)」のアプリ内で販売するコロナ保険は2月10日から3ヵ月分を3倍の1500円に値上げした。同社は「感染の急拡大や保険金支払い増によっては、新規契約者の保険料をさらに上げる可能性がある」と指摘する。

コロナ保険はどうすれば需要と供給のバランスをとれたのか。参考になるのが、第一生命保険グループの第一スマート少額短期保険の商品設計だ。同社は月々の感染状況に応じて保険料が変動する「ダイナミックプライシング」を導入している。21年4月時点では890~2270円だったが、22年4月時点では870~2万円と価格幅が広がった。価格を柔軟に動かすことで採算を管理し、P2P保険に近い仕組みを実現した。

実は新型コロナが理由の入院や投薬、検査費用は平均的な所得なら全額公的負担となる。にもかかわらず、コロナ保険を保険各社が競って販売したのは、保険離れが顕著な若年層など新たな顧客層を開拓できるとの思惑があった。本当に必要な保険は何なのか。コロナ保険騒動は保険各社にこうした問いを突き付けている。

以上です。

↑、3月に撮影した彼岸桜。