終身医療保険の契約を巡る裁定事案(契約取り消しを求めて申立て)。

生命保険協会が取りまとめた、令和4年10~12月の裁定概要集(PDF)に、終身医療保険の新契約を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によると、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 募集人の不適切な行為等を理由に、契約の取消しを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 平成30年1月に乗合代理店を通じて契約した終身医療保険について、以下等の理由により、契約を取り消して既払込保険料を返還してほしい。

(1)代理店担当者から勧誘の電話があり、断ったにもかかわらず、翌日自宅を訪問してきた。契約するつもりがないことを伝えたものの、しつこく勧誘を受けたため、契約した。

(2)自分は85歳と高齢であったが、契約時、同居していた子の同席がなかった。

(3)平成28年10月及び12月に契約した他社の終身保険とがん保険は、苦情を申し出たところ、契約取消となった。

この事案は既に和解が成立しています。

<裁定の概要>を読む限り、募集人の行為が高齢者に対する募集ルールに違反していることは明白です。

そもそも、募集人が高齢者に対する募集ルールを守るつもりがあったのか疑わしいといえるでしょう。代理店と募集人双方に厳しい処分があってしかるべき事案だと思います。

【事案の内容】

以下、裁定事案の内容です(令和4年10~12月裁定概要集・P7~8より転載)

[事案2021-300]新契約取消請求
・令和4年10月21日 和解成立

<事案の概要>
 募集人の不適切な行為等を理由に、契約の取消しを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 平成30年1月に乗合代理店を通じて契約した終身医療保険について、以下等の理由により、契約を取り消して既払込保険料を返還してほしい。

(1)代理店担当者から勧誘の電話があり、断ったにもかかわらず、翌日自宅を訪問してきた。契約するつもりがないことを伝えたものの、しつこく勧誘を受けたため、契約した。

(2)自分は85歳と高齢であったが、契約時、同居していた子の同席がなかった。

(3)平成28年10月及び12月に契約した他社の終身保険とがん保険は、苦情を申し出たところ、契約取消となった。

<保険会社の主張>
 以下等の理由により、申立人の主張に応じることはできない。

(1)代理店担当者は、以前より申立人から、既契約の保険料が高いため抑えたいとの希望を聞いていたため、申立人に了承を得たうえで訪問し、勧誘を行っている。

(2)契約にあたって、申立人に家族の同席を依頼したところ、同居している子は働いているため同席が難しいと回答された。

(3)契約手続後、申立人に電話で確認した際、申込内容が自身の意向にあっていること、家族に本契約の話をしていることを回答している録音記録が存在する。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況等を把握するため、申立人および申立人の子に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
 上記手続きの結果、募集人の不適切な行為等を理由とした契約の取消しは認められないものの、以下の理由により、和解により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、手続を終了した。

(1)契約時、申立人は85歳であり、相当程度、判断能力が減退していたことが推測できる。

(2)代理店担当者は、電話にて、保険料が安くなると勧誘して面談の約束を取り付けたが、実際の面談の際には、電話で話した保険料の2倍を上回る金額の商品を勧めており、申立人の判断能力が減退していることを利用して、本申込みに至っている。

(3)代理店担当者は、電話にて申立人の家族に同席を求めたが、申立人の家族が同席できないと回答したにもかかわらず訪問している。代理店担当者は、家族が同席できる日に訪問することが望ましかったといえ、代理店担当者による家族同席の依頼は極めて形式的である。

以上です。

↑昨年6月に撮影したカブトムシ♂。

「子の独立」というライフイベントが発生したお客様。

今回は、2月に訪問したお客様について書いてまいります。

訪問した理由は、「子の独立(お子様の大学卒業と県外での就職が決定)」というライフイベントが発生し、現在加入している保険の保障を見直す必要性が生じたためです。

訪問の前に、現在加入している保険契約の概要を再度確認したところ、

①終身保険(60歳払込満了)

②収入保障保険「60歳満了」

③終身がん保険(終身払い)

④終身医療保険・死亡給付金あり(60歳払込満了)

-の4契約でした。

管理人は「収入保障保険の役割は終了したので、解約しても差し支えない」と判断しました。理由は、お客様は数年前に離婚し、シングルファーザーであり、「子の独立後は配偶者の生活保障を用意する」という収入保障保険の保険期間満了年齢を60歳とした前提条件が無くなったからです。

お客様との面談で、そのことを申し上げたうえで「これから保障の中心になるのは、ご自身の生活保障ではないか?」と見解を述べたうえで「何か思い浮かぶ保障はございますか?」と質問してみました。

お客様からは「医療の充実かなぁ」との回答がありましたので、現在加入している終身がん保険と医療保険について

①終身がん保険は、長期入院を保障の前提としており、抗がん剤治療や放射線治療が通院へとステージがシフトしている現状への対応力が弱い。

②終身医療保険の手術は約款所定の88種類に限定されており、約款所定の手術の定義に該当するかどうかの解釈運用となっている。先進医療への対応ができていない。現在の医療保険は医科診療報酬点数表に手術料が記載されていることが条件となっている。

-と管理人の見解や保障の変化などを申し上げたうえで、お客様と話し合った結果、

①がん保険の保障は現行の契約を解約するのではなく、新たに通院治療を保障する主契約を別保険会社の商品で追加することも検討していいのではないか。

②終身医療保険は、「手術給付金の保障範囲の見直し」と「先進医療への対応」の2点で現行の契約を解約し、別保険会社への商品に乗り換えるというのは、年齢と払込期間の変化に伴う支払保険料の増加という負担を考慮すると、積極的に行うべきとは言えない。

③がん保険や医療保険の保障見直しよりも、ご自身の生活保障を今後の保障の中心に据えるということが重要なのではないか?そのためには就労不能状態を保障する生命保険商品を検討する必要がある。

-という結論に達しました。3月は年度末で多忙なため、具体的な商品提案は4月に入ってから、ということになりました。

以上です。

ソニー生命の第3四半期業績。

2月15日、ソニー生命保険はHPにて、2022年度第3四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
2/15・ニュースリリース 2022年度第3四半期業績のご報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は堅調に増加

個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比99.4%、103.5%、102.3%と件数こそ伸びなかったものの、契約高と年換算保険料は増加していました。

また、個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比132.2%、134.9%、129.6%といずれも二桁の増加でした。

医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比102.2%とこちらも増加していました。

保有契約は、個人保険の件数を除いて堅調に増加したことがうかがえます。

2.新契約は個人年金保険が好調
個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比90.7%、113.5%、98.7%と契約高は二桁の増加でした。

また、個人年金保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比148.7%、146.6%、169%といずれも二桁の増加でした。

医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比93.6%とこちらは伸び悩んでいました。

個人年金保険は、昨年10月に新商品を投入した効果もあったのか、まさに好調だったことが伺えます。

【主要業績の内容】
以下、ソニー生命の主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約
1)件数

・個人保険…781万件 前年同期末比99.4%

・個人年金保険…106万1000件 前年同期末比132.2%

・個人保険+個人年金保険…887万2000件 前年同期末比102.4%

2)契約高
・個人保険…53兆5105億円 前年同期末比103.5%

・個人年金保険…6兆6230億円 前年同期末比134.9%

・個人保険+個人年金保険…60兆1335億円 前年同期末比106.2%

・団体保険…1兆4481億円 前年同期末比92.7%

・団体年金保険…45億円 前年同期末比83.1%

〇新契約
1)件数

・個人保険…28万2000件 前年同期比90.7%

・個人年金保険…22万9000件 前年同期比148.7%

・個人保険+個人年金保険…51万2000件 前年同期比109.9%

2)契約高
・個人保険…4兆4600億円 前年同期比113.5%

・個人年金保険…1兆5217億円 前年同期比146.6%

・個人保険+個人年金保険…5兆9817億円 前年同期比120.4%

・団体保険…41億円 前年同期比63.3%

〇年換算保険料
1)保有契約

・個人保険…9077億円 前年同期末比102.3%

・個人年金保険…1914億円 前年同期末比129.6%

・個人保険+個人年金保険…1兆991億円 前年同期末比106.2%

 うち医療保障・生前給付保障等…2167億円 前年同期末比102.2%

2)新契約
・個人保険…536億円 前年同期比98.7%

・個人年金保険…405億円 前年同期比169%

・個人保険+個人年金保険…941億円 前年同期比120.2%

 うち医療保障・生前給付保障等…91億円 前年同期比93.6%

〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、四半期純利益 ( )内は前年度実績
・保険料等収入…1兆818億円 前年同期比106.1%

・保険金等支払金…7110億円 前年同期比139.8%

・経常利益…655億円 前年同期比177.8%

・四半期純利益…815億円 (93億円)

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…711億円 前年同期比62.8%

・ソルベンシー・マージン比率…1994.7% (2313.1%)

以上です。

アフラックの第3四半期業績。

2月10日、アフラック生命保険はHPにて、2022年度第3四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
2/10・ニュースリリース 2022年度第3四半期報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は減少止まらず

同社の2大看板商品である、がん保険、医療保険の保有契約件数は、どちらも前年同期末比で減少していました。一時保有契約件数は持ち直したのですが、再び減少が続いています。

また、医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比でこちらも減少していました。

2.がん保険の新契約が伸びる
がん保険と医療保険の新契約件数ですが、がん保険は前年同期比113.7%と増加したのに対し、医療保険は前年同期比74.6%と大きく落ち込んでいました。

がん保険は新商品の投入効果が出てきたようです。

また、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比103.5%とこちらも増加していました。

【主要業績の内容】
以下、アフラックの主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約件数 ( )内は前年度実績
・個人保険…2306万件 (2349万件)

・個人年金保険…32万7000件 (32万5000件)

・個人保険+個人年金保険…2338万8000件 (2381万5000件)

 うちがん保険…1479万9000件 (1508万9000件)

 うち医療保険…568万4000件 (578万9000件)

〇新契約件数
・個人保険…64万件 前年同期比103.8%

 うちがん保険…42万1000件 前年同期比113.7%

 うち医療保険…14万1000件 前年同期比74.6%

〇年換算保険料
1)保有契約 ( )内は前年度実績

・個人保険…1兆2486億円 (1兆2763億円)

・個人年金保険…929億円 (894億円)

・個人保険+個人年金保険…1兆3416億円 (1兆3657億円)

 うち医療保障・生前給付保障等…1兆141億円 (1兆336億円)

2)新契約
・個人保険…382億円 前年同期比104.5%

・個人保険+個人年金保険…382億円 前年同期比104.5%

 うち医療保障・生前給付保障等…344億円 前年同期比103.5%

〇保険料等収入、保険金等支払金、四半期純利益
・保険料等収入…9684億円 前年同期比97.7%

・保険金等支払金…6440億円 前年同期比107.5%

・四半期純利益…2117億円 前年同期比111.5%

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…2735億円 前年同期比103.8%

・ソルベンシー・マージン比率…874.2% (1006.2%)

以上です。









オリックス生命の第2四半期業績。

11月28日、オリックス生命保険はHPにて、2022年度第2四半期(上半期)業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 11/28・プレスリリース 2022年度第2四半期(上半期)決算報告(PDF)

    【管理人の感想】
    1)保有契約は堅調に増加

    個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比でいずれも増加していました。

    また、医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料も、前年同期末比で増加していました。

    今季も保有契約は堅調だったことが伺えます。

    2)新契約は減少続く
    個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比で89.8%、79.8%、97.1%と減少していました。為替相場が円安になった影響で、米ドル建て保険商品の契約が落ち込み、死亡保険商品の新契約高が減少したようです。

    また、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比で91.4%とこちらも減少でした。医療保険の新商品が好調だったようですが、前年同期比増にまで押し上げるには至らなかったようです。

    〇主要業績の内容
    以下、オリックス生命の主要業績の内容です(上記プレスリリースより抜粋・転載)。

    〇保有契約 ( )内は前年度実績
    1)件数

    ・個人保険…490万7000件 (484万1000件)

    ・個人年金保険…9万6000件 (10万件)

    2)契約高
    ・個人保険…14兆4547億円 (14兆1231億円)

    ・個人年金保険…3025億円 (3616億円)

    ・団体保険…7458億円 (6804億円)

    〇新契約
    1)件数

    ・個人保険…15万300件 前年同期比89.8%

    2)契約高
    ・個人保険…4137億円 前年同期比79.8%

    〇年換算保険料
    1)保有契約 ( )内は前年度実績

    ・個人保険…3398億円 (3255億円)

    ・個人年金保険…422億円 (445億円)

    ・個人保険+個人年金保険…3820億円 (3700億円)

    うち医療保障・生前給付保障等…2175億円 (2092億円)

    2)新契約
    ・個人保険…140億円 前年同期比97.1%

    ・個人保険+個人年金保険…140億円 前年同期比97.1%

    うち医療保障・生前給付保障等…84億円 前年同期比91.4%

    〇保険料等収入、保険金等支払金、当期純利益 ( )内は前年度実績。▲はマイナス
    ・保険料等収入…2203億円 前年同期比100.5%

    ・保険金等支払金…1395億円 前年同期比117.2%

    ・当期純利益…▲105億円 ▲12億円

    〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度実績および数値。▲はマイナス
    ・基礎利益…▲94億円 (4億円)

    ・ソルベンシー・マージン比率…1007.8% (1497.3%)

    以上です。

↑5月に撮影したキタテハ・夏型。

 

アフラックの第2四半期業績。

11月24日、アフラック生命保険はHPにて、2022年度第2四半期(上半期)業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 11/24・ニュースリリース 2022年度第2四半期(上半期)報告(PDF)

    【管理人の感想】
    1)保有契約は減少続く

    2大看板商品である、「がん保険」「医療保険」の保有契約件数ですが、どちらも前年同期末比で減少していました。

    また、医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比でこちらも減少していました。

    新契約件数では改善傾向がみられているのですが、保有契約件数を押し上げるまでには至っていないようです。

    2)新契約では明暗
    がん保険の新契約件数は、前年同期比110%と二桁の増加でした。一方、医療保険の新契約件数は、前年同期比72.8%と二桁の落ち込みでした。

    また、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比で100.8%と増加していました。がん保険だけでなく、新種第三分野である就労不能状態を保障する保険商品が徐々に新契約を伸ばして、医療保険の不調をカバーしたのかもしれません。

    がん保険はこの秋に新商品が投入されました。その効果が出るのはおそらく第3四半期でしょう。医療保険は早くも息切れでしょうかね。

    【主要業績の内容】
    以下、アフラックの主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

    〇保有契約件数 ( )内は前年度実績
    ・個人保険+個人年金保険…2348万8000件 (2391万件)

    うちがん保険…1486万4000件 (1515万8000件)

    うち医療保険…571万2000件 (581万2000件)

    〇新契約件数
    ・個人保険+個人年金保険…41万2000件 前年同期比101.6%

    うちがん保険…26万5000件 前年同期比110%

    うち医療保険…9万8000件 前年同期比72.8%

    〇年換算保険料
    1)保有契約 ( )内は前年度実績

    ・個人保険…1兆2549億円 (1兆2825億円)

    ・個人年金保険…919億円 (889億円)

    ・個人保険+個人年金保険…1兆3469億円 (1兆3714億円)

    うち医療保障・生前給付保障等…1兆189億円 (1兆379億円)

    2)新契約
    ・個人保険…241億円 前年同期比100.2%

    ・個人保険+個人年金保険…241億円 前年同期比100.2%

    うち医療保障・生前給付保障等…220億円 前年同期比100.8%

    〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、当期純利益 ( )内は前年度実績
    ・保険料等収入…6472億円 前年同期比96.4%

    ・保険金等支払金…4172億円 (3939億円)

    ・経常利益…1905億円 前年同期比118.2%

    ・当期純利益…1358億円 前年同期比118.9%

    〇三利源 ( )内は前年度実績
    ・危険差損益…1807億円 (1851億円)

    ・費差損益…378億円 (409億円)

    ・利差損益…531億円 (230億円)

    〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年同数値
    ・基礎利益…1891億円 前年同期比111.6%

    ・ソルベンシー・マージン比率…970.1% (924.3%)

    以上です。

↑5月に撮影したウラナミアカシジミ。

 

ソニー生命の第2四半期業績。

11月17日、ソニー生命保険はHPにて、2022年度第2四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 11/17・ニュースリリース 2022年度第2四半期(上半期)業績のご報告(PDF)

    【管理人の感想】
    1)保有契約件数が減少に転じる

    個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比で99.9%、105.3%、104.7%と保有契約件数が減少に転じた以外、増加していました。

    また、個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比で127.3%、131.4%、123.1%といずれも二桁の増加でした。

    医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期比で103.6%とこちらも増加していました。

    保有契約は、個人保険の件数が減少に転じたものの、それ以外では今期も堅調に増加したことが伺えます。

    2)新契約は個人年金保険がけん引
    個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比で84.3%、96.3%、99.4%といずれも減少していました。

    一方、個人年金保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比で120.4%、125.1%、123.5%といずれも二桁の増加でした。

    医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比で93.2%とこちらは減少していました。

    【主要業績の内容】
    以下、ソニー生命の主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

    〇保有契約
    1)件数

    ・個人保険…783万8000件 前年同期末比99.9%

    ・個人年金保険…96万1000件 前年同期末比127.3%

    ・個人保険+個人年金保険…880万件 前年同期末比102.3%

    2)契約高
    ・個人保険…53兆8402億円 前年同期末比105.3%

    ・個人年金保険…6兆177億円 前年同期末比131.4%

    ・個人保険+個人年金保険…59兆8579億円 前年同期末比107.4%

    ・団体保険…1兆4733億円 前年同期末比92.9%

    ・団体年金保険…48億円 前年同期末比84.7%

    〇新契約
    1)件数

    ・個人保険…18万2000件 前年同期比84.3%

    ・個人年金保険…12万1000件 前年同期比120.4%

    ・個人保険+個人年金保険…30万3000件 前年同期比95.8%

    2)契約高
    ・個人保険…2兆5468億円 前年同期比96.3%

    ・個人年金保険…8476億円 前年同期比125.1%

    ・個人保険+個人年金保険…3兆3944億円 前年同期比102.2%

    ・団体保険…29億円 前年同期比76.4%

    〇年換算保険料
    1)保有契約

    ・個人保険…9205億円 前年同期末比104.7%

    ・個人年金保険…1725億円 前年同期末比123.1%

    ・個人保険+個人年金保険…1兆930億円 前年同期末比107.2%

    うち医療保障・生前給付保障等…2188億円 前年同期末比103.6%

    2)新契約
    ・個人保険…365億円 前年同期比99.4%

    ・個人年金保険…192億円 前年同期比123.5%

    ・個人保険+個人年金保険…557億円 前年同期比106.6%

    うち医療保障・生前給付保障等…62億円 前年同期比93.2%

    〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、中間純利益 ( )内は前年度実績。▲はマイナス
    ・保険料等収入…7004億円 前年同期比101.7%

    ・保険金等支払金…4259億円 前年同期比139.1%

    ・経常利益…449億円 前年同期比267.6%

    ・中間純利益…507億円 (▲42億円)

    〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
    ・基礎利益…407億円 前年同期比59.7%

    ・ソルベンシー・マージン比率…1952.2% (2313%)

    以上です。

↑翅を開いたアオハダトンボ・♂(5月撮影)。

 

生保の「就業不能保険」への関心が高まってるそうです。-日経報道。新型コロナウイルス感染症がきっかけ?

11月12日の日本経済新聞朝刊に、生命保険会社が取り扱っている「就業不能保険」に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルス禍をきっかけに、働けなくなるリスクに備えたいと考える人が増えている。長期の入院や療養をすれば収入が大きく減ってしまう。預貯金などで準備するのが基本だが、生命保険会社の「就業不能保険」も不足資金を補う選択肢のひとつだ。>

とのことです。

…今回記事が取り上げているのは、東京海上日動あんしん生命、チューリッヒ生命、SBI生命、アフラック生命の保険商品と保障概要です。

生命保険における就業不能保険の歴史はまだ浅く、当初は死亡保険(収入保障保険など)の特則として付加する保障でしたが、ここ数年の間に、単品で就業不能状態(国民年金法が定める障害等級1級・2級に該当する場合など)に該当した場合に、月払い給付金を支払う保険商品が登場してきました。

最近は、商品改定を行い、保険会社所定の疾病に罹患し、所定の状態が継続した場合にも月払い給付金を支払う商品が登場しており、選択肢が広くなっています。

ただし、月払い給付金等の支払いには、免責期間が設けられているので、働けなくなったら即座に給付されるわけではありません。

免責期間が設けられているのは、被保険者集団に悪質なリスク(モラルリスク)が入り込むのを防ぐためです。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年11月12日朝刊-

【働けないリスク、保険で対応】
新型コロナウイルス禍をきっかけに、働けなくなるリスクに備えたいと考える人が増えている。長期の入院や療養をすれば収入が大きく減ってしまう。預貯金などで準備するのが基本だが、生命保険会社の「就業不能保険」も不足資金を補う選択肢のひとつだ。

「家計相談に来る人から、就業不能保険に入った方がいいか質問を受けるケースが増えた」とファイナンシャルプランナー(FP)の氏家祥美氏は話す。就業不能保険は昨年以降、発売や改定が相次いだ。東京海上日動あんしん生命保険、チューリッヒ生命保険、アフラック生命保険などだ。テレビCMなどを見て尋ねる人も多い。

現役世代では死亡より病気やけがで働けなくなるリスクの方が高いとされる。収入がなくなったり減少したりするのは一緒だが、働けなくなる方が家計のバランスが崩れる可能性が高い。生活費はあまり変わらないのに治療費などがかさむからだ。夫が働けなくなれば妻も看病などで就労が制限され「亡くなるより家族が困ってしまう場合がある」(氏家氏)。

公的な支援では健康保険の傷病手当金や年金制度の障害年金がある。ただ傷病手当金の支給額は給与の3分の2、通算で1年6ヵ月に限られる。しかも対象は健保に入る会社員などで国民健康保険の自営業者らには原則としてない。障害年金も受給のハードルが高い。就業不能保険はこれらの制度を補う目的で2010年に始まった。年収などを基に給付金額を決め、働けなくなったら受け取る。

生命保険文化センターの調査では世帯加入率が約18%(特約含む)で医療やがんを下回る。認知度はまだ低く、勘違いも多い。

ありがちな勘違いは「働けなくなれば給付金をすぐにもらえる」だ。実際には60日や180日などの支払い対象外(免責)期間があり、入院や療養で日数を満たさないと支払われない。

給付を受けるには各社が決めた条件も満たさなければならない。国民年金法が定める障害等級1級・2級など重い障害状態を求める会社もある。たとえば病気やケガで短期間入院をし、その後も不調が続いて働けずに自宅にいても、医師からの在宅療養の支持がなければ多くは給付金は出ない。医師の診断書などが欠かせない。FPの黒田尚子氏は「一般に給付のハードルは高い。がんや脳卒中などは治療が長期化する場合もあり、比較的給付は受けやすい」と話す。

最近の商品では免責期間が短縮され、給付が早めになっている。今年3月に発売された「アフラックの休職保険」は、病気やケガで休職(就労困難状態)が31日以上継続した場合、給付金が支給される。会社員らが対象で性急には医師の診断書、勤務先の給食証明書が必要になる。チューリッヒ生命の「くらすプラスZ」は、同一の月の入院・在宅療養の合計が10日以上で通常の半分の「短期収入サポート月額給付金」が出る。両社は新型コロナによる就業不能でも給付金を支払った。

職場に復帰したら給付打ち切りが多かったが、復職後も長く給付金が出るパターンが増えている。すぐには以前のように働けないことが多いからだ。あんしん生命の「あんしん就業不能保障保険」は、がんや急性心筋梗塞といった5疾病で所定の入院・在宅療養が60日以上続くなどの条件に該当すれば給付金が出る。復職しても給付は保険期間満了まで継続し、保険料の支払いも免除になる。

精神疾患を対象とする商品も目立つ。全国健康保険協会(協会けんぽ)では傷病手当金全体の3分の1を「精神および行動の障害」が占めるなど、就業不能になる事例が多い。SBI生命保険の「働く人のたより」は、精神疾患に対し通算18回まで給付金を支給する。精神疾患が給付全体の23%に上り疾病の中で最も多いという。

就業不能保険は各社の違いが大きく保険料にも差がある。検討する際は世帯の収支や貯蓄などの確認、商品内容の理解が欠かせない。公的保証の薄い自営業者の方が必要性は高いかもしれない。

会社員では勤務先で団体長期所得補償保険(GLTD)に加入している場合がある。働けなくなった時に保険金が出る仕組みだ。住宅ローンの契約者ではがんなどの疾病になると返済が免除になる団体信用生命保険(団信)に入っている人もいる。「ローンの支払いがなくなれば家計に余裕ができ、就業不能保険の必要性は低下する」(黒田氏)。すでに加入している保険や商品も事前にチェックする必要がありそうだ。

以上です。

↑水辺の青竹で翅を開いたミヤマカワトンボ・♂(5月撮影)。

死亡保険金等(養老保険)の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和4年4~6月の裁定概要集(PDF)に、死亡保険金等(養老保険)の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
告知義務違反により契約が解除されたことを不服として、解除の取消しと死亡保険金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
被保険者が大動脈解離により入院し、出血性ショックで死亡したため、平成31年3月に契約した養老保険の医療特約にもとづき、死亡保険金および疾病入院保険金を請求したところ、告知義務違反により契約が解除となった。しかし、以下の理由により、解除を取り消して、死亡保険金および疾病入院保険金を支払ってほしい。

(1)告知書の内容からは、5年以上前の大動脈解離の事実記載の必要性はないと考えるのが一般的である。

(2)大動脈解離は持病に類するものではなく、再発も予想されにくい病気である。

…この事案は既に裁定が終了しています。

結論を申しますと、契約解除は当然です。

大動脈解離は医的査定結果が厳しい病のひとつです。加入時に告知していれば、謝絶(引受不可)となっていたでしょう。

大動脈解離とは、大動脈の血管に傷が生じたことで、内膜・中膜・外膜という3つの血管層の内の、内膜(ないまく)と中膜(ちゅうまく)の間に血液が流れ込んで内膜と中膜との間が裂けてしまう病気です。

故・石原裕次郎さんやドリフターズのメンバー・加藤茶さんが発症しました。

上行大動脈や弓部大動脈、下行大動脈、腹部大動脈といった場所によって、胸部の激痛など症状が多様といわれています。

上行大動脈に解離が生じたものを「スタンフォードA型」、下行大動脈に解離が生じたものを「スタンフォードB型」と言います。スタンフォードA型は緊急手術を要するものがほとんどで、一般的に予後不良と言われています。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和4年4~6月裁定概要集・P46より転載)。

[事案2021-211]死亡保険金等支払請求
・令和4年5月17日 裁定終了

<事案の概要>
告知義務違反により契約が解除されたことを不服として、解除の取消しと死亡保険金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
被保険者が大動脈解離により入院し、出血性ショックで死亡したため、平成31年3月に契約した養老保険の医療特約にもとづき、死亡保険金および疾病入院保険金を請求したところ、告知義務違反により契約が解除となった。しかし、以下の理由により、解除を取り消して、死亡保険金および疾病入院保険金を支払ってほしい。

(1)告知書の内容からは、5年以上前の大動脈解離の事実記載の必要性はないと考えるのが一般的である。

(2)大動脈解離は持病に類するものではなく、再発も予想されにくい病気である。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)被保険者は、平成26年11月に大動脈解離により入院し、以後定期的に通院治療をしている。

(2)死亡保険金の支払事由が、解除の原因となった事実にもとづくため、死亡保険金を支払うことはできない。

(3)疾病入院保険金については、発病が特約の保険期間外のため支払うことはできない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、本件にかかる経緯等と和解を相当とする事情の有無を確認するため、申立人および申立人子に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続きの結果、契約解除の取消しおよび死亡保険金等の支払いは認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑5月に撮影したアオハダトンボ・♀。

新型コロナウイルス感染症に対する公費と自助(民間生命保険)について。

0月15日の日本経済新聞朝刊に、新型コロナウイルス感染症における公費と自助(民間生命保険)に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 新型コロナウイルスは「第7波」が落ち着き、小康状態が続いている。だが、冬に向けて再び感染者が増えるとも想定される。完全な感染終息を期待せず、日常生活への影響を抑える「withコロナ」へと社会にも変化が出てきた。コロナに感染したときの医療費などの自己負担や給付について改めて確認してみた。

ただ、そもそも新型コロナに感染した場合の医療費には公的な支援が手厚く、自己負担は限られるといえる。

一般的なケースで見てみよう。まず発熱などの症状があり、新型コロナへの感染の疑いがあれば、かかりつけ医などの医療機関を受診する。この際の初診料などは健康保険の対象で、自己負担は原則として3割になる。個々で医師が感染の有無を調べる「PCR検査」や「抗原検査」の必要があると判断したとする。これらの検査費用は健康保険と公費での負担になり、自己負担はゼロになる。

さらに検査結果が陽性となった場合、保健所などがコロナの療養機関として認める期間は医療費は全額、健康保険と公費負担で賄うため自己負担はゼロだ。入院したり、病院の代わりにホテルなどの宿泊施設で療養したりする場合も、基本的な食費や滞在費は公費負担になる。

治療で自己負担となるのは、肺のコンピューター断層撮影装置(CT)検査といった感染の有無を調べる以外の検査など。それも健康保険の対象なら自己負担は3割で済む。1ヵ月当たりの医療費が膨らんだ場合は高額療養費制度により自己負担の上限額が8万円程度(一般的な収入の場合)に抑えられる。なお、入院や宿泊施設での療養期間中の衣類や歯ブラシなどの日用品や洗濯などの費用は自己負担となる。これは通常の入院と同じだ。>

とのことです。

【管理人の感想】
民間生命保険の対応は、すでに39の生命保険会社が発表しているように、「みなし入院」における入院給付金や入院一時金の支払い対象を妊産婦など、重症化リスクが高い人たちに限る変更を行っています。

2020年に金融庁からの要請が出されたことに伴い、生命保険各社は特例として入院給付金の支払事由の解釈を弾力的に運用し、入院給付金や入院一時金の支払いについて、宿泊施設や自宅で療養を余儀なくされた人も対象としてきました。

しかし新型コロナウイルスの変異に伴い、重症患者よりも軽症や無症状の患者の割合が多くなりました。

軽症患者や無症状の患者は、

「医師の治療が必要であり、かつ自宅等での治療が困難なため、病院または診療所に入り、常に医師の管理下において治療に専念する」

という入院の定義に該当する状態にはないといえますから、特例の対象から外して当然かと思います。

また、新型コロナウイルス感染症への保障に特化した保険商品が相次いで販売停止となり、引き受けていた少額短期保険会社が業務改善命令を受けました。

これについては、統計が固まっていない新型感染症を単体で保険契約として引き受けた時点で、見通しが甘すぎたとしか言いようがありません。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年10月15日朝刊-

【コロナ感染「費用」を確認】
新型コロナウイルスは「第7波」が落ち着き、小康状態が続いている。だが、冬に向けて再び感染者が増えるとも想定される。完全な感染終息を期待せず、日常生活への影響を抑える「withコロナ」へと社会にも変化が出てきた。コロナに感染したときの医療費などの自己負担や給付について改めて確認してみた。

神奈川県内に住む会社員男性(50)は最近、自身が加入する生命保険会社に問い合わせの電話をかけた。新型コロナ感染者への医療保険の支払条件を厳しくすると報道で知ったためだ。保険会社の回答は「今後は自宅療養なら給付の対象がになる」というもので、落胆したという。

このほど変わったのは「入院給付金」の支払い条件だ。生命保険協会に加盟する生保42社のうち、39社が新型コロナの感染者に支払う入院給付金の対象を大幅に絞った。9月25日までに感染が判明した場合は軽症で自宅療養でも給付金を受け取れる。9月26日以降に感染が分かった場合は新基準が適用される。

本来、入院給付金の支払いは「病院に入り、常に医師の管理下で治療に専念すること」が条件。だが新型コロナウイルスに感染すると、比較的軽症で自宅などで療養する場合でも「みなし入院」として入院給付金の対象になっていた。感染拡大当初に医療機関の病床圧迫を避けるための金融庁の要請を踏まえての「特例」だった。9月26日以降は(1)65歳以上の高齢者(2)入院が必要な人(3)新型コロナウイルス感染症の治療薬を投与する必要がある(4)妊婦-を条件に変えた。

新型コロナウイルス感染症に対応する保険の見直しは相次いでいる。大手損害保険も医療保険などの加入者には、みなし入院に対して保険金を払っていたが、生保と同様に9月下旬から支払い対象を絞った。

ネット経由などで販売が拡大した「コロナ専用保険」では販売停止が相次いでいる。医師に陽性と診断されたら保険金が出る分かりやすさで支持を集めたが、第7波での陽性者数が想定を上回り、保険金の支払い件数が増加。収支のバランスが崩れたことが主因とみられている。

損が保険ジャパンは8月にスマホ決済「Pay Pay(ペイペイ)」を通じて販売していた保険「コロナお見舞金」の販売を停止した。今年に入り新契約の保険料を引き上げたり保険金の減額をしたりしたが、収支悪化に歯止めがかからなかった。なお、すでに契約済みの保険は満期まで契約時の内容で補償されるという。

入院給付金の制度変更は対象外となる契約者からみれば心理的な影響は小さくないだろう。商品によっては陽性と診断されれば数万円から数十万円を受け取れるためだ。ただ、そもそも新型コロナに感染した場合の医療費には公的な支援が手厚く、自己負担は限られるといえる。

一般的なケースで見てみよう。まず発熱などの症状があり、新型コロナへの感染の疑いがあれば、かかりつけ医などの医療機関を受診する。この際の初診料などは健康保険の対象で、自己負担は原則として3割になる。個々で医師が感染の有無を調べる「PCR検査」や「抗原検査」の必要があると判断したとする。これらの検査費用は健康保険と公費での負担になり、自己負担はゼロになる。

さらに検査結果が陽性となった場合、保健所などがコロナの療養機関として認める期間は医療費は全額、健康保険と公費負担で賄うため自己負担はゼロだ。入院したり、病院の代わりにホテルなどの宿泊施設で療養したりする場合も、基本的な食費や滞在費は公費負担になる。

治療で自己負担となるのは、肺のコンピューター断層撮影装置(CT)検査といった感染の有無を調べる以外の検査など。それも健康保険の対象なら自己負担は3割で済む。1ヵ月当たりの医療費が膨らんだ場合は高額療養費制度により自己負担の上限額が8万円程度(一般的な収入の場合)に抑えられる。なお、入院や宿泊施設での療養期間中の衣類や歯ブラシなどの日用品や洗濯などの費用は自己負担となる。これは通常の入院と同じだ。

新型コロナで仕事を休んだ場合の補償も確認しておきたい。まず、会社員などが業務によって感染したことが明らかな場合は、労働者災害補償保険(労災保険)の対象になる。療養のために仕事を休み、賃金が支払われなかった場合は、休業4日目から給与の8割程度の給付を受けられる。飲食店で接客業務をしていて、客に集団感染があった場合などは認められる可能性が高い。

労災の対象にならない場合、健康保険に加入する会社員は、傷病手当金を受け取れる。賃金が支払われない場合は休業4日目から、給与の約3分の2をもらえる。ファイナンシャルプランナーの内藤真弓氏は「企業によっては独自の給付を用意してる例もある。勤務先の内容を確認しておきたい」と話す。

国民健康保険には、通常傷病手当金はないが、新型コロナの感染の場合は傷病手当金を受け取れる場合がある。パートやアルバイトなど短時間労働でも給与をもらい、勤務先の健康保険に加入していない場合は、多くの自治体の国民健康保険で傷病手当金の支給対象になる。ただし、フリーランスや自営業者の場合は支給される自治体が少ない。その場合は、民間の所得補償保険への加入で備えることも一案になる。

以上です。

↑、5月に撮影したイチモンジチョウ・♂。