抗がん剤治療給付金の支払いを巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた令和3年1~3月の裁定概要集(PDF)に、抗がん剤治療給付金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
投与を受けた薬剤が、約款所定のものではないことを理由に給付金が支払われなかったことを不服として、抗がん剤治療給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
甲状腺乳頭がんの治療を目的としてチラージンの投与を受けたため、平成30年5月に契約したがん保険にもとづき抗がん剤治療給付金を請求したところ、チラージンは保障の対象となる約款所定の薬剤には該当しないとして、支払われなかった。しかし、以下の理由により、抗がん剤治療給付金を支払ってほしい。

(1)診断書にはチラージンについて、抗がん剤・ホルモン療法である旨が記載されており、約款にも、保障対象にホルモン療法を含む旨の記載がある。また、医師からは、術後の凝ったがんの発育・抑制を目的に、ホルモン療法としてチラージンを5年間服用するという説明を受けており、チラージンが保障対象外となるのは問題である。

(2)約款において、チラージンが保障対象外の薬剤である旨の定めはない。

(3)給付金は毎月支払われるものであるが、1回目は支払われた。

…この事案はすでに裁定が終了しています。

申立人が罹患した甲状腺乳頭がんは、甲状腺がんの中で最も多く、進行がゆっくりであることが多いそうです。

このがんは、脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)で増殖します。

治療の原則は手術によるがんの切除で、がんの広がり程度で、甲状腺の摘出範囲を決めるそうです。

進行の程度で甲状腺全摘出術後に追加治療を行い、その一つであるホルモン補充療法は、脳下垂体のTSH分泌を抑制するよう、甲状腺ホルモン剤(チラージンS錠)を通常より多く投与します。申立人が受けたのはこの治療であると思われます。

保険会社はチラージンを保障対象外の薬剤としていますが、個人的には、標準治療をもれなく保障するようにしてほしいですね。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年1~3月裁定概要集・P35より転載)。

[事案2020-146]給付金支払請求
・令和3年3月8日 裁定終了

<事案の概要>
投与を受けた薬剤が、約款所定のものではないことを理由に給付金が支払われなかったことを不服として、抗がん剤治療給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
甲状腺乳頭がんの治療を目的としてチラージンの投与を受けたため、平成30年5月に契約したがん保険にもとづき抗がん剤治療給付金を請求したところ、チラージンは保障の対象となる約款所定の薬剤には該当しないとして、支払われなかった。しかし、以下の理由により、抗がん剤治療給付金を支払ってほしい。

(1)診断書にはチラージンについて、抗がん剤・ホルモン療法である旨が記載されており、約款にも、保障対象にホルモン療法を含む旨の記載がある。また、医師からは、術後の凝ったがんの発育・抑制を目的に、ホルモン療法としてチラージンを5年間服用するという説明を受けており、チラージンが保障対象外となるのは問題である。

(2)約款において、チラージンが保障対象外の薬剤である旨の定めはない。

(3)給付金は毎月支払われるものであるが、1回目は支払われた。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人に投与されたチラージンは、保障対象外の薬剤である。

(2)保障対象とならない薬をすべて約款に規定しなければならない義務はない。

(3)1回目の抗がん剤治療給付金の支払いは誤払いである。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、本手術の状況等を把握するため、申立人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
上記手続きの結果、チラージンは保障の対象となる約款所定の薬剤に該当するとは認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続きを終了した。

以上です。

5月に撮影したホソミイトトンボ・♂の越冬型。

入院は自分事ではなく家族事。治療費以外の見えざる費用も発生-損保ジャパン調査結果。

6月25日、損害保険ジャパンはHPにて、入院に関する家族の時間やお金への影響調査の結果を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 6/25・ニュースリリース 「入院に関する家族の時間やお金への影響調査」(PDF)【管理人の感想】
    今回は損害保険会社の調査結果ですが、生命保険の第三分野にも共通していることなので取り上げました。

    調査結果のポイントの中で気になったのは、

    <入院当時加入していた医療保険だけでは全額補填できなかったと30.8%が回答!医療保険に加入していれば全て賄えるわけではない実態と、入院に関する見えざる費用が浮き彫りとなりました。

    ・医療保険に加入していた入院経験者のうち30.8%が保険だけで賄いきれなかった費用があると回答しました。なお、平均不足額は13.7万円でした。

    ・治療費以外にかかった費用については、「家族の交通費」(82.2%)、「食費(病院食を除く)」(80.4%)、「洋服・パジャマ・下着代」(75.5%)や「入院保証金」(40.2%)と、治療費以外の“見えざる費用“が発生することが明らかとなりました。>

    -です。

    まず、医療保険だけでは全額補填ができなかったという回答が調査の中で最も多いかのような印象を覚えますが、よく見ると最多の回答は「加入していた保険で全額補填できた」(55.5%)でした。

    では、全額補填できたケースは?というと、そうした具体的なデータは記載されていませんでした。また、不足額が生じた入院期間や疾病、ケガの種類についてのデータもありませんでした。

    う~ん…このデータで分るのは、医療保険で受け取る各種給付金や一時金で自己負担分をカバーできるケースが最も多い一方で、治療に関係ない費用で預貯金を取り崩す必要があるケースも少なくないといえる程度でしょうかね。

    【公式コメントの内容】
    以下、損保ジャパンの公式コメントの内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

    【「入院に関する家族の時間やお金への影響調査」】

    -入院は、自分ゴトではなく”家族ゴト”!配偶者の入院により約6割が仕事を休んだという結果に。また、治療費以外の”見えざる費用”も発生ー

    損害保険ジャパン株式会社(取締役社長:西澤 敬二、以下「損保ジャパン」)は、入院経験者・未経験者合計2000人に「入院に関する家族の時間やお金への影響調査」を実施しました。

    ◇調査実施の背景
    日本の医療保険世帯加入率は85%を超えており※、多くの方が入院時の治療費の備えとして医療保険に加入しています。

    本調査では、「自身が入院したことがある方(500名)」ならびに「配偶者が入院したことがある方(500名)」の回答から、入院が周囲に及ぼす様々な影響を調査し、経験者だからこそ分かる「入院に必要な備え」が明らかになりました。また、「入院未経験者(1000名)」の回答と比較することで、入院に対する意識のギャップも調査いたしました。

    ※公益財団法人生命保険文化センター平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年12月発行)

    ◇調査結果のポイント
    ■入院は、入院した本人だけではなく家族の仕事や時間にも影響を与えると50%以上の人が回答!

    ・配偶者の入院により、56.0%が自身の仕事を休んだと回答しました。

    ・配偶者の入院により、74.6%が自身の何らかの時間を喪失したと回答しました。

    ■入院当時加入していた医療保険だけでは全額補てんできなかったと30.6%が回答!医療保険に加入していれば全てまかなえるわけではない実態と、入院に関する見えざる費用が浮き彫りとなりました。
    ・医療保険に加入していた入院経験者のうち30.6%が保険だけでまかないきれなかった費用があると回答しました。なお、平均不足額は13.7万円でした。

    ・治療費以外にかかった費用については、「家族の交通費」(82.2%)、「食費(病院食を除く)」(80.4%)、「洋服・パジャマ・下着代」(75.5%)や「入院保証金」(40.2%)と、治療費以外の“見えざる費用”が発生することが明らかとなりました。

    ■入院未経験の方の50%以上が、自身が入院した場合に配偶者が行う「家事」「育児」に対して不安と回答し、入院経験者および未経験者のうち30%近くの方が、各種代行サービスを使用したいと回答しました。

    ・入院未経験者は、今後もし自身が入院した場合に、配偶者が行う「育児」について57.0%、「家事」について53.5%、「介護」について33.8%の人が不安を感じると回答しました。

    ・入院未経験者は、61.2%が両親からのサポートを受けられると想定しているのに対し、実際に両親からサポートを受けられた入院経験者は40.1%に留まりました。また、入院未経験者のうち、誰からもサポートを受けられないであろうと想定している人は22.1%でしたが、入院経験者の実体験では36.1%となり、入院未経験者の想定と入院経験者の実体験とにギャップがあることが明らかとなりました。

    ・入院経験者および未経験者が今後もし入院した場合、「ペット預入れサービス」を利用したいと回答した人は45.5%、「家事代行サービス」は37.4%、「介護代行サービス」は38.2%、は、「入院生活サポート(病室での生活を支援するサービス)」は37.7%、「育児代行サービス」は27.1%でした。

    【調査概要】
    ●調査期間:2021年3月26日(金)~3月29日(月)

    ●調査方法:インターネット(PC・携帯電話・モバイルサイト)

    ●調査対象:自身・配偶者が入院経験のある既婚者30~60代の1032人 入院経験のない既婚者30~40代の1032人

    以上です。