がん保険の手術給付金の支払を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた令和3年10~12月の裁定概要集(PDF)に、がん保険の手術給付金の支払を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
約款の支払事由に該当しないことを理由に、手術給付金が支払われないことを不服として、給付金の支払を求めて申立てがあったもの。

<申立人の主張>
乳がんに対する電磁波温熱療法を受けたことから、平成17年11月及び平成19年2月に契約した2件のがん保険にもとづき、手術給付金を請求したところ、約款の支払事由に該当しないとして支払われなかったが、以下の理由により、給付金を今後も継続的に支払ってほしい。

(1)保険会社は、「画像診断の結果のみ」で、約款非該当の判断をしているが、本疾病は再発進行がんで、がんは治っておらず、抗がん剤の治療は完了したのではなく、あくまで休薬しているのみであり、がんがcCR(触診しても腫瘤が触れず、画像検査でも腫瘍の消失が確認された状態のこと)の状態を保っているのも、本療法を続けていることが功を奏しているからである。

(2)がん細胞自体が消失してはおらず、がんがあるであろう場所については、医師もその旨理解している。

…この事案は既に和解が成立しています。

電磁波温熱療法とは、がんが熱に弱いことを利用した治療法で、がん温熱治療装置を用いて体外から癌病変を42~43度に加熱します。加熱された腫瘍は死滅します(血管を拡張させて熱を逃がすことができないため)。

この療法で免疫力が高まる効果が報告されています。また、この療法は放射線治療や化学療法の効果を高めることもでき、放射線治療や化学療法との併用でさらに効果が高まるそうです。

さて、申立人の治療内容ですが、どうも腫瘍を消滅・縮小させるための治療ではないようです。そうなると、約款に定める「治療を直接の目的とする手術」には該当しないため、保険会社は支払うことができないですね。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年10~12月裁定概要集・P37~38より転載)。

[事案2020-345]手術給付金支払請求
・令和3年11月10日 和解成立

<事案の概要>
約款の支払事由に該当しないことを理由に、手術給付金が支払われないことを不服として、給付金の支払を求めて申立てがあったもの。

<申立人の主張>
乳がんに対する電磁波温熱療法を受けたことから、平成17年11月及び平成19年2月に契約した2件のがん保険にもとづき、手術給付金を請求したところ、約款の支払事由に該当しないとして支払われなかったが、以下の理由により、給付金を今後も継続的に支払ってほしい。

(1)保険会社は、「画像診断の結果のみ」で、約款非該当の判断をしているが、本疾病は再発進行がんで、がんは治っておらず、抗がん剤の治療は完了したのではなく、あくまで休薬しているのみであり、がんがcCR(触診しても腫瘤が触れず、画像検査でも腫瘍の消失が確認された状態のこと)の状態を保っているのも、本療法を続けていることが功を奏しているからである。

(2)がん細胞自体が消失してはおらず、がんがあるであろう場所については、医師もその旨理解している。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人には現在がんの再発や転移はなく、電磁波温熱療法は、再発予防を目的としたものにすぎず、約款の支払事由(治療を直接の目的とする手術)を充足するものではない。

(2)当社は、「画像診断のみ」で約款非該当とは判断していない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、申立人の主張等を把握するため、申立人に事情聴取を行った。また、独自に外部の専門医の意見を求め医学的判断の参考にした。

2.裁定結果
上記手続きの結果、手術給付金の支払は認められないが、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、手続きを終了した。

以上です。

↑、染井吉野で吸蜜中のヨコヅナサシガメの幼虫(3月撮影)。

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