国税庁が保険商品の審査に参加?日経報道。

2月10日の日本経済新聞・朝刊に、金融庁が実施している保険商品の審査に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 金融庁と国税庁は行き過ぎた節税が問題となってきた「節税保険」に歯止めをかけるためにタッグを組む。両庁が協力して生命保険会社が設計した商品の内容を審査するほか、現場での募集の実態も調べる。市場規模が一時8000億円超に膨れ、貴重な収益源を失いたくない生保の対応は鈍かった。一方、同保険を認可してきた金融庁にも責任の一端がある。審査体制を改めることで、節税保険の抜け道を防ぐ狙いがある。>

とのことです。

【管理人の感想】
まず、「節税保険」などというものは存在しません。こうした誤解を招く表現で記事を書かなないでいただきたいものです。

保険商品の審査業務に国税庁が加わって、保険本来の役割から逸脱していないかどうかを助言するようですが、保険料の取り扱いに関することであれば、現状の仕組みで十分ではないかと思います。

募集の実態調査であれば、それこそ金融庁だけで十分でしょう。募集の現場にも国税庁まで加入させるようですが、大きなお世話です。適切な募集云々というのであれば、銀行窓販の規律を健全な状態すべきでしょう。

生保各社が国税庁と金融庁から本気で怒られることになった、保険料を全額損金算入できた逓増定期保険に限らず、法人契約の保険商品に関して、実効税率を反映した返戻率の高さを競うなどして、保障の提供という本来の役割から逸脱、あるはそう受け取られかねない契約を獲得してきたことは事実です。

しかし、近年の通達変更や法人向け商品の提案時に手交と説明が義務付けられた資料(保険による節税効果はないと明言)などによって、いわゆる「節税効果」なるものをPRすることはできなくなっています。

特に通達変更の影響は大きく、某外資系生保では優秀な人材が他社に移ったり、その代理店が廃業したりしたという噂まであったほどです。

医療保険やがん保険といった第三分野保険の法人契約も、保険料の全額損金算入について一定の制限がかけられていますから、以前のような募集はかなり難しい状況です。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年2月10日朝刊-

【節税保険 行き過ぎに歯止め】
金融庁と国税庁は行き過ぎた節税が問題となってきた「節税保険」に歯止めをかけるためにタッグを組む。両庁が協力して生命保険会社が設計した商品の内容を審査するほか、現場での募集の実態も調べる。市場規模が一時8000億円超に膨れ、貴重な収益源を失いたくない生保の対応は鈍かった。一方、同保険を認可してきた金融庁にも責任の一端がある。審査体制を改めることで、節税保険の抜け道を防ぐ狙いがある。

節税保険は支払った保険料を会社の経費として損金算入し、課税額を抑えられると称する商品。2010年代後半に日本生命保険や第一生命ホールディングス(HD)傘下のネオファースト生命保険などが相次ぎ商品を投入し、中小企業経営者らの需要をとらえて販売が拡大した。18年頃の市場規模は推定8000億円以上で、生命保険の新規契約全体の3割程度を占めるに至った。

金融庁は保険商品の認可にあたって、国税庁と連携する。脱税や、行き過ぎた節税に関する現場の知見を積んできた国税庁が保険商品に悪質な節税目的がないかを金融庁の商品審査部門に助言する。

節税に使われた保険は金融庁が認可しており、違法ではない。金融庁は「節税につながるかは認可の要素ではなく、保障上問題が無ければ認可する」との立場だった。だが、節税効果を分析しきれず、節税保険が蔓延する結果を招いた。国税庁が入り口段階から審査に絡むことで、商品認可のハードルが上がる可能性が高い。

募集の現場にも介入する。金融庁と国税庁は顧客にどのような勧誘をしているか、保険の販売代理店の調査でも協力する。ヒアリングを通じて、募集人が本来の趣旨に沿った保険として説明しているかチェックする。詳細は今後詰めていく。

省庁をまたぐ異例のタッグの背景には、節税の悪質性が年々高まっていることがある。国税庁は19年6月に保険料の損金算入方法を大幅に見直す通達を出し、「ドル箱」状態だった中小企業の経営者向け保険にメスを入れた。だが今度は別の抜け穴をついた「名義変更プラン」と呼ばれる商品が外資系など一部の生保から登場した。

名義変更プランは定期保険の一種で、解約時の返戻率が低いうちに契約者の名義を法人から個人へ変え、返戻率が高くなった時期に解約して返戻金を受け取る仕組み。解約返戻金は「一時所得」として扱われ、通常の所得より税負担が軽い。国税庁は21年6月に実質認めない通達を出した。

介護保険にも問題が広がった。一部の外資系生保が、介護保険を通じて高所得者が子供など親族に非課税でお金を移せる手法として打ち出した。国税庁は21年3月、介護保険で保険金の非課税制度を悪用した節税手法をとらないよう生保業界に注意喚起した。

金融庁も21年11月の生命保険協会との意見交換会で、節税保険も含め「適正な保険募集の徹底を改めてお願いしたい」とくぎを刺した。同庁幹部は「節税効果の有無にかかわらず、顧客のための商品でなければ保険として意味をなさない」と話す。

これまで金融庁と国税庁は事務的なやり取り以外は別に動いていた。金融庁は顧客の保護、国税庁は税金の適正な徴収と行政目的が違うためだ。行き過ぎた節税行為を抑止するには、省庁を超えて連携したほうが効率的との判断に至った。

生保業界からは不満もこぼれる。ある大手生保幹部は顧客への商品説明の充実は重要としながらも、「問題が長年収束しなかったのは、商品にお墨付きを与える当局にも責任の一端がある」と本音を漏らす。別の生保の執行役員は「企業経営者の需要があるから商品をそろえた。駄目なら一律禁止にすればいい」と話す。

生命保険協会によれば、2020年度の個人保険(経営者保険含む)の保有契約高は815兆円と5年前比で5%減った。人口減や若者の保険離れが進む中、業界全体として売りやすい保険に飛びついた面は否めない。今回の商品審査見直しをきっかけに経営者向け保険のあり方について生保業界全体として真剣に考える必要がある。

以上です。

↑、成虫越冬から目覚めたキタテハ・秋型(3月撮影)。

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