がん保険の手術給付金の支払を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた令和3年10~12月の裁定概要集(PDF)に、がん保険の手術給付金の支払を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
約款の支払事由に該当しないことを理由に、手術給付金が支払われないことを不服として、給付金の支払を求めて申立てがあったもの。

<申立人の主張>
乳がんに対する電磁波温熱療法を受けたことから、平成17年11月及び平成19年2月に契約した2件のがん保険にもとづき、手術給付金を請求したところ、約款の支払事由に該当しないとして支払われなかったが、以下の理由により、給付金を今後も継続的に支払ってほしい。

(1)保険会社は、「画像診断の結果のみ」で、約款非該当の判断をしているが、本疾病は再発進行がんで、がんは治っておらず、抗がん剤の治療は完了したのではなく、あくまで休薬しているのみであり、がんがcCR(触診しても腫瘤が触れず、画像検査でも腫瘍の消失が確認された状態のこと)の状態を保っているのも、本療法を続けていることが功を奏しているからである。

(2)がん細胞自体が消失してはおらず、がんがあるであろう場所については、医師もその旨理解している。

…この事案は既に和解が成立しています。

電磁波温熱療法とは、がんが熱に弱いことを利用した治療法で、がん温熱治療装置を用いて体外から癌病変を42~43度に加熱します。加熱された腫瘍は死滅します(血管を拡張させて熱を逃がすことができないため)。

この療法で免疫力が高まる効果が報告されています。また、この療法は放射線治療や化学療法の効果を高めることもでき、放射線治療や化学療法との併用でさらに効果が高まるそうです。

さて、申立人の治療内容ですが、どうも腫瘍を消滅・縮小させるための治療ではないようです。そうなると、約款に定める「治療を直接の目的とする手術」には該当しないため、保険会社は支払うことができないですね。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年10~12月裁定概要集・P37~38より転載)。

[事案2020-345]手術給付金支払請求
・令和3年11月10日 和解成立

<事案の概要>
約款の支払事由に該当しないことを理由に、手術給付金が支払われないことを不服として、給付金の支払を求めて申立てがあったもの。

<申立人の主張>
乳がんに対する電磁波温熱療法を受けたことから、平成17年11月及び平成19年2月に契約した2件のがん保険にもとづき、手術給付金を請求したところ、約款の支払事由に該当しないとして支払われなかったが、以下の理由により、給付金を今後も継続的に支払ってほしい。

(1)保険会社は、「画像診断の結果のみ」で、約款非該当の判断をしているが、本疾病は再発進行がんで、がんは治っておらず、抗がん剤の治療は完了したのではなく、あくまで休薬しているのみであり、がんがcCR(触診しても腫瘤が触れず、画像検査でも腫瘍の消失が確認された状態のこと)の状態を保っているのも、本療法を続けていることが功を奏しているからである。

(2)がん細胞自体が消失してはおらず、がんがあるであろう場所については、医師もその旨理解している。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人には現在がんの再発や転移はなく、電磁波温熱療法は、再発予防を目的としたものにすぎず、約款の支払事由(治療を直接の目的とする手術)を充足するものではない。

(2)当社は、「画像診断のみ」で約款非該当とは判断していない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、申立人の主張等を把握するため、申立人に事情聴取を行った。また、独自に外部の専門医の意見を求め医学的判断の参考にした。

2.裁定結果
上記手続きの結果、手術給付金の支払は認められないが、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、手続きを終了した。

以上です。

↑、染井吉野で吸蜜中のヨコヅナサシガメの幼虫(3月撮影)。

アフラックの第3四半期業績。

2月14日、アフラック生命保険はHPにて、第3四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 2/14・ニュースリリース 2021年度第3四半期報告(PDF)

    【管理人の感想】
    1.保有契約は減少続く

    個人保険+個人年金保険の保有契約件数は、前年同期末比で減少していました。また、がん保険と医療保険の保有契約件数も前年同期末比で減少していました。

    新契約件数では改善傾向がみられるものの、保有契約件数を回復させるまでには至っていないことが伺えます。

    2.新契約は医療保険がけん引
    新契約件数は、がん保険は前年年度同期比98.7%と伸びなかったものの、医療保険が前年同期比128.8%と二桁の増加でした。このこともあって、個人保険+個人年金保険の新契約件数は104.9%と今期も改善傾向がみられました。

    【主要業績の内容】
    以下、アフラックの主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

    〇保有契約件数 ( )内は前年度実績
    ・個人保険…2349万件 (2392万7000件)

    ・個人年金保険…32万5000件 (32万7000件)

    ・個人保険+個人年金保険…2381万5000件 (2425万5000件)

    うちがん保険…1508万9000件 (1539万7000件)

    うち医療保険…578万9000件 (587万4000件)

    〇新契約件数
    ・個人保険…61万6000件 前年同期比104.9%

    うちがん保険…37万件 前年同期比92.3%

    うち医療保険…18万9000件 前年同期比128.8%

    〇年換算保険料
    1)保有契約 ( )内は前年度実績

    ・個人保険…1兆2763億円 (1兆3030億円)

    ・個人年金保険…894億円 (883億円)

    ・個人保険+個人年金保険…1兆3657億円 (1兆3913億円)

    うち医療保障・生前給付保障等…1兆336億円 (1兆524億円)

    2)新契約
    ・個人保険…365億円 前年同期比112.7%

    ・個人保険+個人年金保険…365億円 前年同期比112.7%

    うち医療保障・生前給付保障等…332億円 前年同期比113.9%

    〇保険料等収入、保険金等支払金、四半期純利益
    ・保険料等収入…9916億円 前年同期比96.5%

    ・保険金等支払金…5990億円

    ・四半期純利益…1898億円 前年同期比114.8%

    〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
    ・基礎利益…2698億円 前年同期比110.3%

    ・ソルベンシー・マージン比率…1006.2% (959.8%)

    以上です。

↑、道端の小栴檀草で眠るヤマトシジミ(3月撮影)。

 

オリックス生命の第3四半期業績。

2月14日、オリックス生命保険はHPにて、2021年度第3四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 2/14・プレスリリース 2021年度第3四半期報告(PDF)

    【管理人の感想】
    1.保有契約は堅調に増加

    個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料はいずれも前年同期末比で増加していました。

    また、医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比でこちらも増加していました。

    今季も保有契約は堅調に増加したことがうかがえます。

    2.新契約は大幅減
    個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期比で68.8%、56%、68.9%と大幅減でした。米ドル建終身保険の料率改定前における「駆け込み契約」の反動もあり、死亡保障の新契約が低迷したことがうかがえます。

    また、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比で59.1%とこちらも大幅減でした。

    死亡保障・第三分野とも新契約が不調だったことがうかがえます。

    【主要業績の内容】
    以下、オリックス生命の主要業績の内容です(上記プレスリリースより抜粋・転載)。

    〇保有契約 ( )内は前年度実績
    1)件数

    ・個人保険…486万1000件 (473万4000件)

    ・個人年金保険…9万9000件 (10万9000件)

    2)契約高
    ・個人保険…14兆1738億円 (13兆9266億円)

    ・個人年金保険…3383億円 (4085億円)

    ・団体保険…7300億円 (6764億円)

    〇新契約
    1)件数

    ・個人保険…24万9000件 前年同期比68.8%

    2)契約高
    ・個人保険…7705億円 前年同期比56%

    〇年換算保険料
    1)保有契約 ( )内は前年度実績

    ・個人保険…3285億円 (3141億円)

    ・個人年金保険…440億円 (467億円)

    ・個人保険+個人年金保険…3726億円 (3608億円)

    うち医療保障・生前給付保障等…2110億円 (2023億円)

    2)新契約
    ・個人保険…216億円 前年同期比68.9%

    ・個人保険+個人年金保険…216億円 前年同期比68.9%

    うち医療保障・生前給付保障等…134億円 前年同期比59.1%

    〇保険料等収入、保険金等支払金、当期純利益 ( )内は前年度実績。▲はマイナス
    ・保険料等収入…3268億円 前年同期比85.4%

    ・保険金等支払金…1850億円 前年同期比109.4%

    ・当期純利益…▲34億円 (▲93億円)

    〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度実績および数値。▲はマイナス
    ・基礎利益…▲1億円 (▲157億円)

    ・ソルベンシー・マージン比率…1396.4% (1439.4%)

    以上です。

 

↑フキノトウで吸蜜するモンキチョウ(3月撮影)。

 

ソニー生命の第3四半期業績。

2月16日、ソニー生命保険はHPにて2021年度第3四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

  • 2/16・ニュースリリース 2021年度第3四半期業績のご報告(PDF)

    【管理人の感想】
    1.保有契約は堅調に増加

    個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期末比で101%、104.7%、102.5%といずれも増加していました。

    また、個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期末比で151.1%、153.2%、168.9%といずれも二桁の増加でした。

    医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比で102.4%とこちらも増加していました。

    ソニーライフ・ウィズ生命保険の吸収合併を反映したことも含め、今期も保有契約が堅調に増加したことが伺えます。

    2.新契約も順調に増加
    個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期比で111.4%、133%、146.1%といずれも二桁の増加でした。

    個人年金保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期比で177.9%、176.2%、181.%とこちらも二桁の増加でした。変額年金保険が好調だったものと思われます。

    医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比で120.7%とこちらも二桁の増加でした。

    新契約も順調に増加したことが伺えます。

    【主要業績の内容】
    以下、ソニー生命の主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

    〇保有契約
    1)件数

    ・個人保険…785万8000件 前年同期末比101%

    ・個人年金保険…80万2000件 前年同期末比151.1%

    ・個人保険+個人年金保険…866万1000件 前年同期末比104.2%

    2)契約高
    ・個人保険…51兆7253億円 前年同期末比104.7%

    ・個人年金保険…4兆9103億円 前年同期末比153.2%

    ・個人保険+個人年金保険…56兆6357億円 前年同期末比107.6%

    ・団体保険…1兆5620億円 前年同期末比93.6%

    ・団体年金保険…55億円 前年同期末比84.8%

    〇新契約
    1)件数

    ・個人保険…31万2000件 前年同期比111.4%

    ・個人年金保険…15万4000件 前年同期比177.9%

    ・個人保険+個人年金保険…46万6000件 前年同期比127.1%

    2)契約高
    ・個人保険…3兆9287億円 前年同期比133%

    ・個人年金保険…1兆383億円 前年同期比176.2%

    ・個人保険+個人年金保険…4兆9671億円 前年同期比140.2%

    ・団体保険…64億円 前年同期比149.2%

    〇年換算保険料
    1)保有契約

    ・個人保険…8870億円 前年同期末比1037.%

    ・個人年金保険…1476億円 前年同期末比180.1%

    ・個人保険+個人年金保険…1兆346億円 前年同期末比110.4%

    うち医療保障・生前給付保障等…2120億円 前年同期末比102.4%

    2)新契約
    ・個人保険…543億円 前年同期比146.1%

    ・個人年金保険…240億円 前年同期比181.1%

    ・個人保険+個人年金保険…783億円 前年同期比155.3%

    うち医療保障・生前給付保障等…97億円 前年同期比120.7%

    〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、四半期純利益
    ・保険料等収入…1兆193億円 前年同期比115.6%

    ・保険金等支払金…5085億円 前年同期比132.4%

    ・経常利益…368億円 前年同期比69.2%

    ・四半期純利益…93億円 前年同期比25.6%

    〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
    ・基礎利益…1134億円 107.4%

    ・ソルベンシー・マージン比率…2313.1% (2296.3%)

    以上です。

↑成虫越冬から目覚めたルリタテハ(3月撮影)。

 

国税庁が保険商品の審査に参加?日経報道。

2月10日の日本経済新聞・朝刊に、金融庁が実施している保険商品の審査に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 金融庁と国税庁は行き過ぎた節税が問題となってきた「節税保険」に歯止めをかけるためにタッグを組む。両庁が協力して生命保険会社が設計した商品の内容を審査するほか、現場での募集の実態も調べる。市場規模が一時8000億円超に膨れ、貴重な収益源を失いたくない生保の対応は鈍かった。一方、同保険を認可してきた金融庁にも責任の一端がある。審査体制を改めることで、節税保険の抜け道を防ぐ狙いがある。>

とのことです。

【管理人の感想】
まず、「節税保険」などというものは存在しません。こうした誤解を招く表現で記事を書かなないでいただきたいものです。

保険商品の審査業務に国税庁が加わって、保険本来の役割から逸脱していないかどうかを助言するようですが、保険料の取り扱いに関することであれば、現状の仕組みで十分ではないかと思います。

募集の実態調査であれば、それこそ金融庁だけで十分でしょう。募集の現場にも国税庁まで加入させるようですが、大きなお世話です。適切な募集云々というのであれば、銀行窓販の規律を健全な状態すべきでしょう。

生保各社が国税庁と金融庁から本気で怒られることになった、保険料を全額損金算入できた逓増定期保険に限らず、法人契約の保険商品に関して、実効税率を反映した返戻率の高さを競うなどして、保障の提供という本来の役割から逸脱、あるはそう受け取られかねない契約を獲得してきたことは事実です。

しかし、近年の通達変更や法人向け商品の提案時に手交と説明が義務付けられた資料(保険による節税効果はないと明言)などによって、いわゆる「節税効果」なるものをPRすることはできなくなっています。

特に通達変更の影響は大きく、某外資系生保では優秀な人材が他社に移ったり、その代理店が廃業したりしたという噂まであったほどです。

医療保険やがん保険といった第三分野保険の法人契約も、保険料の全額損金算入について一定の制限がかけられていますから、以前のような募集はかなり難しい状況です。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年2月10日朝刊-

【節税保険 行き過ぎに歯止め】
金融庁と国税庁は行き過ぎた節税が問題となってきた「節税保険」に歯止めをかけるためにタッグを組む。両庁が協力して生命保険会社が設計した商品の内容を審査するほか、現場での募集の実態も調べる。市場規模が一時8000億円超に膨れ、貴重な収益源を失いたくない生保の対応は鈍かった。一方、同保険を認可してきた金融庁にも責任の一端がある。審査体制を改めることで、節税保険の抜け道を防ぐ狙いがある。

節税保険は支払った保険料を会社の経費として損金算入し、課税額を抑えられると称する商品。2010年代後半に日本生命保険や第一生命ホールディングス(HD)傘下のネオファースト生命保険などが相次ぎ商品を投入し、中小企業経営者らの需要をとらえて販売が拡大した。18年頃の市場規模は推定8000億円以上で、生命保険の新規契約全体の3割程度を占めるに至った。

金融庁は保険商品の認可にあたって、国税庁と連携する。脱税や、行き過ぎた節税に関する現場の知見を積んできた国税庁が保険商品に悪質な節税目的がないかを金融庁の商品審査部門に助言する。

節税に使われた保険は金融庁が認可しており、違法ではない。金融庁は「節税につながるかは認可の要素ではなく、保障上問題が無ければ認可する」との立場だった。だが、節税効果を分析しきれず、節税保険が蔓延する結果を招いた。国税庁が入り口段階から審査に絡むことで、商品認可のハードルが上がる可能性が高い。

募集の現場にも介入する。金融庁と国税庁は顧客にどのような勧誘をしているか、保険の販売代理店の調査でも協力する。ヒアリングを通じて、募集人が本来の趣旨に沿った保険として説明しているかチェックする。詳細は今後詰めていく。

省庁をまたぐ異例のタッグの背景には、節税の悪質性が年々高まっていることがある。国税庁は19年6月に保険料の損金算入方法を大幅に見直す通達を出し、「ドル箱」状態だった中小企業の経営者向け保険にメスを入れた。だが今度は別の抜け穴をついた「名義変更プラン」と呼ばれる商品が外資系など一部の生保から登場した。

名義変更プランは定期保険の一種で、解約時の返戻率が低いうちに契約者の名義を法人から個人へ変え、返戻率が高くなった時期に解約して返戻金を受け取る仕組み。解約返戻金は「一時所得」として扱われ、通常の所得より税負担が軽い。国税庁は21年6月に実質認めない通達を出した。

介護保険にも問題が広がった。一部の外資系生保が、介護保険を通じて高所得者が子供など親族に非課税でお金を移せる手法として打ち出した。国税庁は21年3月、介護保険で保険金の非課税制度を悪用した節税手法をとらないよう生保業界に注意喚起した。

金融庁も21年11月の生命保険協会との意見交換会で、節税保険も含め「適正な保険募集の徹底を改めてお願いしたい」とくぎを刺した。同庁幹部は「節税効果の有無にかかわらず、顧客のための商品でなければ保険として意味をなさない」と話す。

これまで金融庁と国税庁は事務的なやり取り以外は別に動いていた。金融庁は顧客の保護、国税庁は税金の適正な徴収と行政目的が違うためだ。行き過ぎた節税行為を抑止するには、省庁を超えて連携したほうが効率的との判断に至った。

生保業界からは不満もこぼれる。ある大手生保幹部は顧客への商品説明の充実は重要としながらも、「問題が長年収束しなかったのは、商品にお墨付きを与える当局にも責任の一端がある」と本音を漏らす。別の生保の執行役員は「企業経営者の需要があるから商品をそろえた。駄目なら一律禁止にすればいい」と話す。

生命保険協会によれば、2020年度の個人保険(経営者保険含む)の保有契約高は815兆円と5年前比で5%減った。人口減や若者の保険離れが進む中、業界全体として売りやすい保険に飛びついた面は否めない。今回の商品審査見直しをきっかけに経営者向け保険のあり方について生保業界全体として真剣に考える必要がある。

以上です。

↑、成虫越冬から目覚めたキタテハ・秋型(3月撮影)。

オリックス生命、医療保険の新商品を発表。

2月14日、オリックス生命保険はHPにて、医療保険の新商品を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。

2/14・プレスリリース 医療保険「キュア・ネクスト」「キュア・レディ・ネクスト」を発売(PDF)

【管理人の感想】
今回の新商品の特徴は、3大疾病の保障を強化したことです。まず、三大疾病への一時金給付です。

現行商品は「重度三疾病一時金」で、悪性新生物と上皮内新生物、急性心筋梗塞、脳卒中が対象です。

新商品では「特定三疾病一時金」となり、悪性新生物と上皮内新生物、心疾患、脳血管疾患が対象となり、一時金の支払い範囲が拡大します。

支払事由も、心疾患や脳血管疾患の場合、60日の労働制限などから入院又は手術、10日以上の継続入院又は手術となり、支払事由も拡大します。

次に、保険料の払込免除事由です。

現行商品は、悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中による約款所定の状態に該当することが免除自由です。

新商品では、悪性新生物と上皮内新生物、心疾患、脳血管疾患による約款所定の状態に該当することが免除事由となり、保険料の払込免除の範囲が拡大します。

一時金支払事由が拡大されることは、まとまったお金をできるだけ速やかに受け取りたいと考えているお客様にとっていいことだと思います。

【公式コメントの内容】
以下、オリックス生命の公式コメントの内容です(上記プレスリリースより抜粋・転載)

【医療保険「キュア・ネクスト」「キュア・レディ・ネクスト」を発売】

~三大疾病の保障をさらに手厚く、「治したい気持ち」を力強くささえる医療保険へ~

オリックス生命保険株式会社(本社:東京都千代田区、社長:片岡 一則)は、このたび、当社主力商品の「医療保険 新キュア」「医療保険 新キュア・レディ」※1をリニューアルし、2022年4 月2日より「医療保険キュア・ネクスト」「医療保険キュア・レディ・ネクスト」(以下、キュア・ネクスト)の販売を開始しますのでお知らせします。

「医療保険キュア」は、“シンプルで分かりやすいこと”“合理的な保障をお手頃な価格でご提供すること”をコンセプトとしており、2006年9月発売以降の保有契約件数が200万件※2を超える当社のベストセラー商品として、多くのお客さまからご支持をいただいています。今回の新商品「キュア・ネクスト」は、従来商品のコンセプトを継承しながらも、三大疾病(がん※3・心疾患・脳血管疾患)をさらに手厚く保障できる商品へと進化しました。

医療技術の進歩等により、三大疾病は治る病気になりつつあると言われる一方、人生100年時代の到来で平均寿命が延び、年齢とともにその発症リスクが高くなる傾向にあります。

また、入院や治療の長期化により金銭面の負担が大きくなるケースも多い中、「キュア・ネクスト」は、保険料はお手頃なまま三大疾病の保障をより充実することで、お客さまの「治したい気持ち」をさらに力強くお支えします。

当社は、今後も時代のニーズに合った商品をご提供し、多くのお客さまに選ばれる保険会社であり続けることを目指してまいります。

【主なリニューアルポイント】

①三大疾病をさらに手厚く保障します
保険料払込免除特則と三疾病一時金の保障範囲を「心疾患」「脳血管疾患」に拡大するとともに、「上皮内新生物」を、保険料払込免除特則の保障範囲に追加しました。

②死亡保障にも備えられるようになります
「終身保険特約」の付加を可能とし、医療保障とともに、終身の死亡保障を一つの契約でご準備いただけるようになりました。

③保障はシンプルで分かりやすく、保険料はお手頃なままに
医療保険キュアシリーズのコンセプトはそのままに、保障範囲は拡大しつつも、シンプルで分かりやすく、かつ合理的な保障をお手頃な価格でご準備いただけます。

※1.「医療保険 新キュア」「医療保険 新キュア・レディ」は、2022年4月1日をもって販売停止となります。

※2.「キュア」「キュア・レディ」(2006年発売)、および「新キュア」「新キュア・レディ」(2013年発売)の保有契約件数(2021年9月時点)。

※3.上皮内新生物を含みます。

以上です。

↑道端のカラスノエンドウでアブラムシを捕食するナナホシテントウ(2月撮影)。

 

がん治療の費用と保険での備え方。がん保険の保障内容に差。各社横並びは過去の話。

2月5日の日本経済新聞・朝刊に、がん治療の費用とがん保険での備え方に関する記事がありました。

記事によりますと、

< がんになると高額な治療費が必要になったり、働けなくなって収入が減ったりすることがある。こうした経済的なリスクに対応するには「まず国の公的保障や勤務先の制度が基本になる」とファイナンシャルプランナー(FP)の黒田ちはる氏は説明する。

代表が健康保険の高額療養費制度だ。1ヵ月の医療費を抑える公的な制度で、「がんになっても保険適用の標準治療を受ければ、一般的な所得水準の人は1ヵ月の自己負担を8万~9万円程度に抑えることができる」(黒田氏)。

治療費については部位や進行度合いなどによって変わるが、一般に年間100万円が目安とされる。高額療養費の自己負担の合計に入院時の差額ベッド代や食事代などを合わせるとほぼ同じ金額になる。加えて仕事に支障をきたしたときの備えも必要とされる。

会社員や公務員には勤め先の制度も加わる。人によっては傷病手当金を受け取ることができたり、健保組合などから付加給付があったりするので負担は小さくなる。こうした保障が自分はどれぐらいあるかを知った上で、不足分などを預貯金や民間の保険でカバーする。「預貯金の目安は扶養家族の数や住宅ローンの有無などで変わるが、生活費の3~6ヵ月分は準備したい」とFPの黒田尚子氏は話す。

自営業やフリーランスで働く人や専業主婦らはベースとなる保障が会社員などに比べると薄く、その分、預貯金や保険の必要性が高まる。また、「治療が長引くことが不安だったり、自由診療などの治療の選択肢を増やしておきたかったりするなら、保険で備えるのもよい」とFPの加藤梨里氏は言う。生命保険文化センターの調査では、がん保険や医療保険などのがん特約に加入する人は増えており、21年は世帯主で60.1%、配偶者で43.6%となっている。

がん保険の加入を考えるならトレンドを知っておきたい。「以前は手術とそれに伴う入院に備える入院給付金が主流だったが、通院へのシフトなど治療の変化を受けて変わってきている」(加藤氏)。現在は入院給付金と切り離し、がん診断時に一定額を給付する「一時金給付タイプ」と、治療のたびに給付金を出す「都度給付タイプ」に分けることができる。>

とのことです。

【管理人の感想】
がん保険の保障内容ですが、最初は診断給付金等はなく、がん死亡保障を中心とするものでした。診断給付金が保障として登場したのは1990年代に入ってからのことです。団塊の世代の方たちが加入しているのはこの頃のものです。

当時はまだ、上皮内新生物は保障の対象外で、悪性新生物のみを保障するものでした。上皮内新生物が保障されるようになったのは2000年末から2001年にかけて登場したがん保険からです。先進医療を保障するようになったのもこの頃からです。

その後、第三分野への国内生保の参入が全面解禁され、損保系生保を中心に「診断給付金の複数回払い」「上皮内新生物と悪性新生物の診断給付金額を同額」といった、対アフラックを意識した保険商品が次々に登場しました。

とはいえ、保障の仕組みは「診断給付金」を主契約に「入院」「手術」「退院後の通院」「先進医療」を特約として選択付加する、で大きな差はありませんでした。

しかし、外資系生保M社が治療給付型の終身がん保険を投入し、状況に変化が生じます。その後、ダイレクト販売を強みとする生保からも治療給付型の保険商品が投入され始め、損保系生保からも投入されました。

保障の内容も、自由診療を保障範囲に含めるものが出てきています。

がん治療の現状に沿った保障内容のものを…というのであれば、治療給付型を中心に比較検討したほうがよいでしょう。個人的には、経口投与の抗がん剤も抗ガン治療の保障に含まれるかどうかを比較の基準にすることを推奨します。

また、悪性新生物と診断された場合に、以後の保険料の払い込みが免除される特約が付加できるのかも確認しておくことを勧めます。

すでに加入していて保障内容が古くなっている場合は、新しい保険商品への切り替え(ただし、90日間の不担保期間があるので慎重に検討してください)や専用の特約を付加して(これはアフラック限定)保障内容を強化することを推奨します。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2022年2月5日朝刊-

【がん費用、保険での備え方】
「同い年の友人が最近がんになり、他人事とは思えなくなった」と話すのは東京都に住む40代の男性会社員のAさん。がんになると治療に多くのお金がかかったり、仕事に影響したりすると聞き「がん保険に入っておいた方がいいだろうか」と心配する。

がんを患う人は増えている。厚生労働省の「患者調査」では悪性新生物(がん)の総患者数は201年に180万人近くに達し、3年前に比べて約1割増加した。がんは一般に年齢が上がると患者数が増えるので、増加の理由には高齢化があるとされる。

ただ近年は医療の進歩などで生存率が上がり、「がん=死」のイメージは以前より低下している。治療は入院から通院(外来)にシフトしており、入院患者数が減少する一方で、通院患者数は増加している。厚労省によれば仕事を持ちながらがんで通院する人も10年の32.5万人から19年には44.8万人と4割近く増えた。

がんになると高額な治療費が必要になったり、働けなくなって収入が減ったりすることがある。こうした経済的なリスクに対応するには「まず国の公的保障や勤務先の制度が基本になる」とファイナンシャルプランナー(FP)の黒田ちはる氏は説明する。

代表が健康保険の高額療養費制度だ。1ヵ月の医療費を抑える公的な制度で、「がんになっても保険適用の標準治療を受ければ、一般的な所得水準の人は1ヵ月の自己負担を8万~9万円程度に抑えることができる」(黒田氏)。

治療費については部位や進行度合いなどによって変わるが、一般に年間100万円が目安とされる。高額療養費の自己負担の合計に入院時の差額ベッド代や食事代などを合わせるとほぼ同じ金額になる。加えて仕事に支障をきたしたときの備えも必要とされる。

会社員や公務員には勤め先の制度も加わる。人によっては傷病手当金を受け取ることができたり、健保組合などから付加給付があったりするので負担は小さくなる。こうした保障が自分はどれぐらいあるかを知った上で、不足分などを預貯金や民間の保険でカバーする。「預貯金の目安は扶養家族の数や住宅ローンの有無などで変わるが、生活費の3~6ヵ月分は準備したい」とFPの黒田尚子氏は話す。

自営業やフリーランスで働く人や専業主婦らはベースとなる保障が会社員などに比べると薄く、その分、預貯金や保険の必要性が高まる。また、「治療が長引くことが不安だったり、自由診療などの治療の選択肢を増やしておきたかったりするなら、保険で備えるのもよい」とFPの加藤梨里氏は言う。生命保険文化センターの調査では、がん保険や医療保険などのがん特約に加入する人は増えており、21年は世帯主で60.1%、配偶者で43.6%となっている。

がん保険の加入を考えるならトレンドを知っておきたい。「以前は手術とそれに伴う入院に備える入院給付金が主流だったが、通院へのシフトなど治療の変化を受けて変わってきている」(加藤氏)。現在は入院給付金と切り離し、がん診断時に一定額を給付する「一時金給付タイプ」と、治療のたびに給付金を出す「都度給付タイプ」に分けることができる。

一時給付は主契約が「がん診断給付金」などで、がんが見つかった時にまとまった金額を支払う。その後も定期的に給付金が出る商品も多い。給付金の額は100万円などと大きいので、治療費だけでなく生活費などに充てることもできそうだ。ただし、月々の保険料は高めになる。

FWD生命保険の「FWDがんベスト・ゴールド」は、初めてがんと診断されたときに最大300万円のがん診断給付金が出る。以後も条件を満たせば年1回、何度でも支給する。取り扱いが多い給付金100万円のプランの保険料(終身払い)は、40歳男性が月4218円、50歳男性は同6835円となっている。

一方の都度給付は放射線や抗がん剤などの治療給付金が主契約で、該当する治療を受けた月などに5万~10万円程度を支給する商品が多い。給付は小刻みで金額も比較的小さいので、月々の保険料は低くなる。ただ、所定の治療を受けないと給付金は出ない。

チューリッヒ生命保険の「終身がん保険プレミアムZ」は、月10万~30万円の「抗がん剤治療給付金」と国内未承認の抗がん剤治療も保障する「自由診療抗がん剤治療給付金」の2本立て。抗がん剤治療10万円とその2倍の自由診療抗がん剤治療のコースの保険料(終身払い)は、50歳男性で月1240円となる。

一時給付と都度給付のどちらかを選ぶかはその人の状況などで変わる。自営業などの公的な保障が薄い人なら、まとまった金額が出る一時金給付のほうが安心感を得られるかもしれない。金額が大きく使い勝手もよいが、頻繁に出るわけではないので計画的に使える人が望ましい。会社員で勤務先の保障も厚ければ、都度給付で通院治療に備えるとよいとの見方もある。高額療養費の自己負担額などを踏まえ、比較的少ない保険料で合理的に備えることができる。

「がん保険を考える際は、健康に対する向き合い方も重要になる」(黒田尚子氏)。生活習慣が影響するとされるがんは、規則正しい生活や運動で罹患(りかん)するリスクが低下するといわれる。定期的に検診を受け予防にも努めれば、がん保険の必要性や選び方も変わる可能性がある。

以上です。

↑2月に撮影したツチイナゴ。

生保各社、MVAを利用した外貨建保険のタイムラグマージンを見直しへ。

2月1日付の日本経済新聞・朝刊に、MVAを利用した外貨建保険についての記事がありました。

記事によりますと、

< 生命保険各社が外貨建保険の解約時に発生する手数料を見直す。業界トップの三井住友海上プライマリー生命保険が4月の契約分から廃止し、日本生命保険などは料率を下げる。金利の変動リスクに備える保険会社が設定してきたが、契約者に負担を求める不透明さを金融庁が問題視していた。苦情が目立つ外貨建保険の販売を適正化する動きが広がってきた。>

【管理人の感想】
今回の日経を記事を読んだだけでは、金融庁がMVAを利用した外貨建保険のタイムラグマージンを問題視していたという誤った情報を受け取ってしまいます。

しかし、事実は全く異なります。今回生保各社がタイムラグマージンの見直しを行う主な理由は、昨年8月27日付で適用された「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正によるものです。

改正は以下の(新設)の2か所です。

〇Ⅱ-4-2-2 保険契約の募集上の留意点
(2)法第294条、第300条の2関係(情報提供義務)

③準金融商品取引法第37条の3関係

イ.契約締結前交付書面に関し、「契約概要」と「注意喚起情報」について、書面を作成し、交付しているか。

なお、契約締結前交付書面の主な項目は以下のとおりとする。

(MVA(Market Value Adjustment)(注)を利用した商品)
l.市場金利に応じた運用資産の書かう変動を解約返戻金に反映させる保険であることの説明。

m.保険契約の締結から一定の期間内に解約された場合、解約返戻金が市場金利に応じて計算されるため、損失が生じることとなる恐れがあること。

n.解約返戻金額の計算基礎率を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、運用資産の売却にかかる取引費用等に備えるために係数を定める場合、その係数が及ぼす影響(解約時の保険料積立金に対して控除される割合の例示等)(新設)

o.諸費用に関する事項(運用期間中の費用等)

〇Ⅳ 保険商品審査上の留意点

Ⅳ-5-3 契約者価額
(1)解約返戻金については、支出した事業費及び投資上の損失、保険設計上の仕組み等に照らし、合理的かつ妥当に設定し、保険契約者にとって不当に不利益なものになっていないか。

(2)MVAを利用した商品について、解約返戻金額の計算基礎率を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、運用資産の売却に係る取引費用等に備えるために係数を定める場合、その係数については、解約に伴い発生する費用との整合性やリスク管理の高度化等に照らして、合理的かつ妥当な水準に設定し、保険契約者にとって不当に不利益になものとなっていないか。(新設)

今回、日経が報じているのは商品審査上の留意点の改正によるものです。

では、なぜ監督指針改正に至ったのか?日経が報じているような不透明さがあったのではないか?と思うかもしれませんが、それは違います。2021年9月10日の保険モニタリングレポート(PDF)において、次のようにその経過が記述されていました。

※P50より転載

< ⑦ 商品性(タイムラグマージン)
外貨建保険において、市場金利に応じた運用資産の価格変動を解約返戻金額に反映する MVA を導入している商品が多く存在している。MVA の計算に当たっては、解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間(最大2週間程度)に生じる金利変動等に備えるための係数(いわゆる「タイムラグマージン」)を設定して解約返戻金額を減じて計算していることが多く、その水準の合理性・妥当性と、顧客説明の充実について保険業界と対話を行った。

その結果、係数の水準については、リスク管理の高度化や解約に伴って見込まれる取引費用との整合性等に照らして、合理的かつ妥当な水準とする必要があるとの共通認識に至った。また、顧客説明については、募集資料において複雑な数式を用いて記載されていることから、解約返戻金額からの控除割合の例示を記載することが顧客にとって分かりやすいであろうという共通認識が得られた。

こうした対話を踏まえ、2021年8月に、顧客本位の業務運営の観点から、係数を設定する場合における保険商品審査上・募集上の留意点等を明示する監督指針の改正を行った。>

このことからみても、金融庁がタイムラグマージンについて不透明さが…などと問題視していなかったことが分かります。

また、これとは別に過去3回分の「保険商品審査事例集」にも、タイムラグマージンの見直しについての事例が登場していましたので取り上げます。

1.「令和2年2月 保険商品審査事例集」(PDF)P4~5
2.生命保険商品(算出方法書)
(1)監督指針Ⅳ-5-3(契約者価額)
<MVAにおける調整項の水準について>
MVA(市場価格調整)の適用にあたり、過去の指標金利の推移などを参考に解約時と資産売却時のズレ(タイムラグ)から発生する損失は限定的と判断し、タイムラグマージンを 0.00%と設定した。

(コメント)
一般的に、MVAの適用にあたり、解約時と保険会社の資産売却時とのタイムラグから発生する保険会社の損失をカバーするため、調整項(タイムラグマージン)を設定することが行われているが、その水準は、解約に伴う費用相当額として合理的かつ説明可能な範囲に設定する必要がある。本商品は、当該調整項の数値を必要以上に保守的に設定することは、中途解約をする契約者に過度の負担を強いることになることに留意し、過去の指標金利の推移を踏まえた上で、タイムラグマージンを 0.00%としたものであり、顧客本位の業務運営の観点から望ましいものと考えられる。

2.「令和2年6月 保険商品審査事例集」(PDF)P5~6
(2)指針Ⅳ-5-3(契約者価額)
<経済環境等の変化を踏まえたタイムラグマージンの適切な設定>
既存商品の支払事由等を変更する特約を創設するにあたり、タイムラグマージンの水準について、他の商品も含め直近開発商品の水準に改定すべく、可能な範囲で速やかに変更認可申請することとなった。

(コメント)
一般的に、MVAの適用にあたり、タイムラグマージン(※)の設定が行われているが、その水準は、解約に伴う費用相当額として合理的かつ説明可能な範囲に設定する必要がある。このタイムラグマージンの数値を必要以上に保守的に設定することは、中途解約をする契約者に過度の負担を強いることになることから、商品創設時との経済環境等の相違を踏まえ、現行販売している商品についてもその水準を直近開発商品の水準に見直すことは、顧客本位の業務運営の観点から望ましいものと考えられる。

審査においては、現在の経済環境等を踏まえ、直近に開発した商品のタイムラグマージンの水準の妥当性についても確認した。

(※)統一的な定義はないが、一般的に、保険会社が解約に関する利率を設定する時期と保険契約者が解約を決断する時期とのタイムラグ、又は契約者の解約申出時と保険会社の運用資産売却時とのタイムラグから発生する保険会社の費用(損失)に備えるためのマージンとして説明されている。

3.「令和4年1月 保険商品審査事例集」(PDF)P1~2
1.生命保険商品(約款・事業方法書)
(1)法第5条第1項第3号イ(契約者等保護)、指針Ⅳ-5-3(2)(タイムラグマージン)
<タイムラグマージンの適切な設定、検証・評価による可変化の対応>
解約時等に市場価格調整(MVA)が適用される商品に関し、解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、解約に伴う運用資産の売却に係る取引費用等に備えるための係数(以下「タイムラグマージン」という。)の水準適正化にあたり、その水準の適切性について検証・評価を行うとともに、タイムラグマージンの水準設定に関しては一定の範囲(幅)で定める値として基礎書類に規定することとした。

(コメント)
タイムラグマージンに関し、リスク管理の高度化や資本調達コスト・取引費用等の見直しは継続して取り組むべき課題であるとの認識から、当社はタイムラグマージンの水準の適切性について継続的な検証・評価を行うこととし、それが過分な状況にあると判断した場合には適切な水準まで速やかに引き下げることを想定して、タイムラグマージンについては一定の範囲で定める値として約款および算出方法書に記載することとした。(実際に使用する値は事前に金融庁に届け出る。)タイムラグマージンについて、金利変動、取引費用等のマーケット水準に比して過分な水準となっていないか、年度ごとに検証・評価を実施し、適時適切な水準に見直しを行っていくことは、タイムラグマージンの趣旨や顧客保護の観点から、適当な対応と考えられる。

解約時等に市場価格調整(MVA)が適用される商品に関し、解約返戻金額の計算基礎を設定する時期と解約時期の間に生じる金利変動や、解約に伴う運用資産の売却に係る取引費用等に備えるための係数(以下「タイムラグマージン」という。)の水準適正化にあたり、その水準の適切性について検証・評価を行うとともに、タイムラグマージンの水準設定に関しては一定の範囲(幅)で定める値として基礎書類に規定することとした。

あわせて、解約時の運用対象資産の時価に基づいた額で解約返戻金額を調整するといった市場価格調整の趣旨を踏まえれば、契約時にタイムラグマージンを固定(ロックイン)するのではなく、解約時点におけるタイムラグマージンを適用して解約返戻金を支払うことには一定の合理性があると考えられる。したがって、契約者への説明上、当社のタイムラグマージンが可変のものであることや、その考え方について説明するとともに、パンフレットや契約のしおり、保険設計書等において、解約返戻金額の例示は、顧客本位な分かりやすい情報提供を行う観点から、上記「一定の範囲(0.00%~0.10%)」の上限である 0.10%(顧客にとって最も不利なケース)を使ったものを表示することとした。また、直近の数値については当社ホームページで契約者に適時開示し、契約者が自ら解約返戻金額を試算するための情報を提供するなど、顧客本位の対応を行うこととしており、適当と考えられる。

以上です。

韮の花にやってきたホシホウジャク(昨年9月撮影)。

手術給付金の支払を巡る裁定事案。

生命保険協会が取りまとめた、令和3年7~9月の裁定概要集(PDF)に、手術給付金の支払を巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によりますと、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
約款の重要事項を説明しなかったこと等を理由に、手術給付金の支払もしくは既払込保険料の返還を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
下肢閉塞性動脈硬化症により入院し手術したため、平成22年8月に契約した医療保険にもとづき給付金を請求したところ、約款における支払事由に該当しないとして、手術給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金を支払うか、既払込保険料を返してほしい。

(1)保険会社は、約款の重要事項を一切説明しておらず、説明義務違反がある。

(2)保険会社から、「古くて安い商品」に入っていたからこのような結果が生じたと説明されたが、自分は契約時に他の種類の保険があったことは知らず、団体保険の性質上、保険会社から提案された本契約に加入する以外に選択肢はなかった。

(3)本手術は、公的医療制度で認められた手術であるにもかかわらず、手術給付金の対象とならないことは、保険会社の社会的使命がどこにあるのか、その姿勢を問わざるを得ない。

(4)保険会社が重要事項説明の代用としている「契約のしおり」には、手術によっては手術給付金の対象とならない場合がある旨の記載があるが、そもそも、募集人と直接保険に関する質疑応答を行う機会を与えられなかった。

…この事案は既に裁定が終了しています。

下肢閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化による血管の狭窄や閉塞により主に足先への血流が悪くなってしまう病気です。状態が悪化すると潰瘍や壊死を引き起こして切断することになり、最悪の場合は命を落とします。

また、下肢閉塞性動脈硬化症は他の動脈硬化による疾患(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞)を発症しやすいことが知られています。糖尿病の合併症による下肢閉塞性動脈硬化症はさらに危険と言われています。

申立人は薬物療法や運動療法ではなく手術を受けたので、状態が悪化していたことがうかがえます。ただ、その手術が約款に定める手術の定義に該当しなかったようです。

これはあくまで推測ですが、申立人が受けたのは血管バイパス手術ではなく、バルーンやステントによる血管内治療だったのかもしれません。

【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和3年7~9月裁定概要集・P31~32より転載)。

【事案2020-288】手術給付金支払請求
・令和3年8月20日 裁定終了

<事案の概要>
約款の重要事項を説明しなかったこと等を理由に、手術給付金の支払もしくは既払込保険料の返還を求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
下肢閉塞性動脈硬化症により入院し手術したため、平成22年8月に契約した医療保険にもとづき給付金を請求したところ、約款における支払事由に該当しないとして、手術給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金を支払うか、既払込保険料を返してほしい。

(1)保険会社は、約款の重要事項を一切説明しておらず、説明義務違反がある。

(2)保険会社から、「古くて安い商品」に入っていたからこのような結果が生じたと説明されたが、自分は契約時に他の種類の保険があったことは知らず、団体保険の性質上、保険会社から提案された本契約に加入する以外に選択肢はなかった。

(3)本手術は、公的医療制度で認められた手術であるにもかかわらず、手術給付金の対象とならないことは、保険会社の社会的使命がどこにあるのか、その姿勢を問わざるを得ない。

(4)保険会社が重要事項説明の代用としている「契約のしおり」には、手術によっては手術給付金の対象とならない場合がある旨の記載があるが、そもそも、募集人と直接保険に関する質疑応答を行う機会を与えられなかった。

<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)募集時に約款の記載事項すべてを説明することはできないため、約款を交付し、契約者自身で内容を確認するように依頼している。手術給付金の支払い対象となる手術の詳細については、特に契約者から申し出がない限り、個別の説明は行っていない。

(2)申立人が主張するような説明は行っておらず、手術給付金が支払えないことに関連して、最近では保障範囲が広くなっている商品が出ていることを述べた。

(3)本契約の約款における手術給付金の支払事由に該当しなければ、公的医療の対象であっても手術給付金の支払い対象外となる。

<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況を把握するため、申立人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
乗機手続きの結果、約款の重要事項についての説明不足は認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見いだせないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続きを終了した。

以上です。

↑開花を始めた庭先のクロッカス(今月撮影)。

陽子線、重粒子線治療の保険適用範囲拡大へ。

本題の前に、当ブログに関する非常に重要なことを申し上げます。2023年1月末をもってBiglobeのブログサービスが終了します。それに伴い今年4月(予定)に他社ブログサービスへの移行ツールが提供されることになりました。

季節のデザインテンプレートが豊富で、とても気に入っているブログサービスなのですが…あと1年で終了となってしまい、本当に残念です。なお、当ブログですが提供される移行ツールを使用し、他社ブログサービスで引き続き記事を気ままに書いていく所存です。

今後ともよろしくお願いいたします。

さて、本題です。

1月19日の日本経済新聞朝刊に、陽子線と重粒子線治療に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 厚生労働省は18日の医療技術評価分科会で、放射線の一種である粒子線治療を巡り、肝内胆管がんなど5つのがんについて保険適用が妥当だとまとめた。これまでは高額な医療費が患者負担となっていた。月内にも中央社会保険医療協議会の総会で最終決定し、4月から全額保険適用とする。同治療の適用対象が拡大するのは4年ぶり。

大型の肝細胞がんや手術後に局所再発した大腸がんなどが新たに対象となる。いずれも切除ができない場合に限る。現在は保険適用の医療を併用できる先進医療の位置づけで、約300万円とされる粒子線の照射費用は全額自己負担となる。>

とのことです。

【管理人の感想】
記事では陽子線治療と重粒子線治療を「粒子線治療」と一括りにしているため、陽子線治療で保険収載が認められたものと、重粒子線治療で保険収載が認められたものの詳細が分かりません。詳細が分かるのはまだ先ですね。

昨年11月4日の医療技術評価分科会の医療技術評価・再評価提案書「提案書19」のP105~114(PDF)によると、日本腫瘍学会が提案した陽子線治療と重粒子線治療の適応拡大の概要は以下の通りです。

◇陽子線治療の適応拡大
〇適応拡大疾患:日本放射線腫瘍学会が定めた適応症
既保険収載疾患(小児腫瘍、骨軟部腫瘍、頭頚部悪性腫瘍、前立腺癌)に加えて、下記の5疾患の適用拡大を要望

①消化器腫瘍(原発性肝癌、胆道癌、進行性膵癌、食道癌、再発性直腸癌)

②肺・縦隔腫瘍(原曲性肺がん、局所進行非小細胞肺癌、縦隔腫瘍)

③泌尿器腫瘍(膀胱癌、腎癌)

④脳脊髄腫神経膠腫、髄膜種等腫等)

⑤少数転移性腫瘍(転移性肺腫瘍、転移性肝腫瘍、転移性リンパ節腫瘍)

国内の治療方針が統一され、既存の放射線治療との比較において、優位性また同等性が明らかである。

◇重粒子線治療の適応拡大
〇適応拡大疾患:日本放射線腫瘍学会が定めた適応症
既保険収載疾患(頭頚部腫瘍、骨軟部腫瘍、前立腺癌)に加えて下記5疾患の適応拡大を要望

①消化器腫瘍(肝胆膵腫瘍、食道癌、大腸癌術後再発)

②肺・縦隔腫瘍(肺癌)

③泌尿器科腫瘍(腎癌)

④婦人科腫瘍(子宮頸癌。婦人科領域悪性黒色腫等)

⑤少数転移性腫瘍(肝転移、肺転移、リンパ節転移)

治療方針が統一され、既存の放射線治療との比較で、優位性又は同等性が明らかである。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です

-日本経済新聞 2022年1月19日朝刊-

【粒子線治療の保険拡大】
厚生労働省は18日の医療技術評価分科会で、放射線の一種である粒子線治療を巡り、肝内胆管がんなど5つのがんについて保険適用が妥当だとまとめた。これまでは高額な医療費が患者負担となっていた。月内にも中央社会保険医療協議会の総会で最終決定し、4月から全額保険適用とする。同治療の適用対象が拡大するのは4年ぶり。

大型の肝細胞がんや手術後に局所再発した大腸がんなどが新たに対象となる。いずれも切除ができない場合に限る。現在は保険適用の医療を併用できる先進医療の位置づけで、約300万円とされる粒子線の照射費用は全額自己負担となる。

粒子線は放射線治療で一般的なエックス線に比べ、がん部分に集中して作用する特徴がある。他の組織が受ける負担を減らしながら、必要な場所に高い放射線量を照射できる。2016年度に初めて保険適用された。粒子線治療は陽子線と重粒子線の2種類があり、現在は陽子線で4種類、重粒子線で3種類が保険適用されている。

食道がんや腎がんへの保険適用は見送った。粒子線治療がエックス線治療よりも生存率が高いといった明確な評価が得られず、1月初めの専門家会議では「一定の科学的根拠がある」との評価にとどめていた。

先進医療に位置づけているがん治療について、22年度から見直しを進める。保険適用にするほか、先進医療の枠組みから外すといったことも検討する。専門家からは「効果が不十分な治療もあり、一度再整理すべきだ」との声が上がっていた。21年度の診療報酬改定に向け、引き続き議論する。

以上です。

↑昨年8月に撮影したマユタテアカネ・♂。