生命保険協会が取りまとめた、令和7年1~3月の裁定概要集(PDF)に、手術給付金の支払いを巡る裁定事案がありました。
事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。
<事案の概要>
約款上の支払事由に該当しないことを理由に、手術給付金が支払われなかったことを不服として、手術給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
令和5年5月に胃がんで入院し、「内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術)」(手術①)を受け、その4日後に「内視鏡的消化管止血術」(手術②)を受けたため、令和4年5月に契約した組立型保険にもとづき、給付金を請求したところ、手術②について、がんの治療を直接の目的とした手術に対する手術給付金は、支払事由に該当しないことを理由に支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金を支払ってほしい。
(1)2回も内視鏡を入れて、なぜ1回の手術とされるのかわからない。
(2)他の保険会社に聞くと、給付金が支払われないことはおかしいと言われた。
この事案はすでに和解が成立しています。
<裁定の概要>を読むと、和解の内容はほぼ申立人の主張が認められたと考えられます。
【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和7年1~3月裁定概要集・P32~33より転載)。
[事案2023-328]手術給付金支払請求
・令和7年2月4日 和解成立
<事案の概要>
約款上の支払事由に該当しないことを理由に、手術給付金が支払われなかったことを不服として、手術給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
令和5年5月に胃がんで入院し、「内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術)」(手術①)を受け、その4日後に「内視鏡的消化管止血術」(手術②)を受けたため、令和4年5月に契約した組立型保険にもとづき、給付金を請求したところ、手術②について、がんの治療を直接の目的とした手術に対する手術給付金は、支払事由に該当しないことを理由に支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金を支払ってほしい。
(1)2回も内視鏡を入れて、なぜ1回の手術とされるのかわからない。
(2)他の保険会社に聞くと、給付金が支払われないことはおかしいと言われた。
<保険会社の主張>
手術②は、「止血術」であり、がんの治療を直接の目的とする手術ではないことから、給付金の支払事由に該当しないため、申立人の請求に応じることはできない。
<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、手術①②当時の状況等を確認するため、申立人に対して事情聴取を行った。
2.裁定結果
上記手続の結果、以下の理由により、本件は和解による解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、手続を終了した。
(1)手術②は、手術①の3日後から腹痛、腹部の張り、嘔吐の症状が生じた上、その翌日には手術①の治療創部からの出血があったため、これに対する止血を行ったものである。
(2)これは、がんそのものに対する処置、または、これらの治療に伴い生命維持のために必然的に付随する処置ではないものの、がんの治療として切除術を行った場合に相当の可能性を持って生ずる「治療創部からの出血」に対する治療であり、生命維持のために必要な処置であって、かつ手術①の4日後という近接した時期の処置であるから、社会通念上「がんの治療を直接の目的」とする処置と同視しなければ著しく不合理であるといえる。
以上です。
