生命保険協会が取りまとめた、令和6年10~12月の裁定概要集(PDF)に、がん保険の給付金支払を巡る裁定事案がありました。
事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。
<事案の概要>
責任開始期前発病を理由に給付金が支払われなかったことを不服として、給付金の支払い等を求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
令和3年6月中旬にA病院にて右浸潤性乳管がんと診断された後、同年7月中旬にB病院にてPET-CT検査を受けた結果、診断確定され、令和4年2月に乳腺悪性腫瘍手術を受けたため、令和3年4月に代理店を通じて契約したがん保険(責任開始期は同年6月下旬)に基づき給付金を請求したところ、責任開始期前にがんと診断確定されていることを理由に、契約が無効となり、給付金が支払われなかった。しかし、以下等の理由により、契約無効の判断を撤回して、給付金を支払ってほしい。
(1)約款には、診断書が複数あった場合の採用方法や診断確定日の定義について、詳細な記載がない。医師により記入された診断書が複数ある場合、診断に係る経緯や検査履歴、主治医判断等を鑑みて、診断書を採用すべきである。
(2)がん診断確定日の認定は、B病院にて最も詳細な情報を得られるPET‐CT検査を実施して、初めて治療方針が確定した令和3年7月中旬とすべきである。A病院では治療方針党の決定には至っていない。
この事案は裁定が終了しています。
<保険会社の主張>には、A病院にて約款が定める方法(病理組織学的所見により、医師によってなされること)で診断確定されたことが記されています。
従って、本事案は「責任開始期前発病によるがん無効」とするのが妥当な取り扱いですね。PET-CT検査は申立人が罹患した浸潤性乳管癌の転移の有無を確認するために実施したものと思われます。
【事案の内容】
以下、裁定事案の内容です(令和6年10~12月裁定概要集P37より転載)。
[事案2024-14]給付金支払請求
・令和6年10月15日 裁定終了
<事案の概要>
責任開始期前発病を理由に給付金が支払われなかったことを不服として、給付金の支払い等を求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
令和3年6月中旬にA病院にて右浸潤性乳管がんと診断された後、同年7月中旬にB病院にてPET-CT検査を受けた結果、診断確定され、令和4年2月に乳腺悪性腫瘍手術を受けたため、令和3年4月に代理店を通じて契約したがん保険(責任開始期は同年6月下旬)に基づき給付金を請求したところ、責任開始期前にがんと診断確定されていることを理由に、契約が無効となり、給付金が支払われなかった。しかし、以下等の理由により、契約無効の判断を撤回して、給付金を支払ってほしい。
(1)約款には、診断書が複数あった場合の採用方法や診断確定日の定義について、詳細な記載がない。医師により記入された診断書が複数ある場合、診断に係る経緯や検査履歴、主治医判断等を鑑みて、診断書を採用すべきである。
(2)がん診断確定日の認定は、B病院にて最も詳細な情報を得られるPET‐CT検査を実施して、初めて治療方針が確定した令和3年7月中旬とすべきである。A病院では治療方針党の決定には至っていない。
<保険会社の主張>
以下等の理由により、申立人の請求に応じることはできない。
(1)約款において、責任開始期までにがんと診断された場合には、契約を無効とする旨規定している。
(2)申立人は、責任開始期前の令和3年6月中旬に、A病院において約款に定める方法(病理組織学的所見により、医師によってなされること)によりがんと診断確定されている。したがって、診断確定日は、令和3年6月中旬となる。
<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、申立人ががんと診断された当時の状況等を確認するため、申立人代理人に対して事情聴取を行った。
2.裁定結果
上記手続きの結果、申立人の請求は認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。
以上です。
