2月14日の日本経済新聞朝刊に、4月から投入される変額保険についての記事がありました。
記事によると、
< 生命保険各社が運用成果に応じて保険金が変動する変額保険を相次いで投入する。日本生命保険は4月からアクサ生命保険の商品を自社の営業職員チャネルで販売する。チューリッヒ生命保険も新商品を出す。新しい少額投資非課税制度(NISA)を背景に資産形成ニーズを取り込む。>
とのことです。
【管理人の感想】
日本生命が取り扱いを開始するのは、アクサ生命の「ユニット・リンク」という変額保険です。この保険は、変額保険(有期型)で保険期間満了を迎えると満期保険金を受け取れます。
保険期間中の死亡・高度障害保険金は、特別勘定の運用成績次第で増減しますが、契約時に申し込んだ死亡・高度障害保険金(基本保険金)は最低保証されます。
例えば契約申し込み時の基本保険金額が300万円であれば、その金額が保証され、特別勘定の運用成績が悪くても支払われます。
また満期保険金や解約返戻金は特別勘定の運用成績次第で増減し、最低保証はありません。
はなさく生命が1月に投入した変額保険とチューリッヒ生命が4月に投入する予定の変額保険も変額保険(有期型)です。
どちらもインフレによる各種保険金の実質的価値の減少を抑えることが目的の保険商品です。
変額保険にはこの他にも、一生涯の死亡保障を確保するための「変額保険(終身型)」や年金形式でお金を受け取る「変額個人年金保険」などがあります。
変額保険が登場したのはバブル前夜の1986(昭和61)年でした。インフレによる保険金の実質的価値の減少を抑える目的で、外資系生保だけでなく大手生保なども取り扱いを開始しました。
1987(昭和62)年からのバブル景気に突入すると、不動産価格の急激な上昇で相続税対策に不安を感じていた個人をターゲットにした「融資一体型変額保険」が登場し、大手銀行と大手国内生保の一部が積極的に募集を行いました。
この保険は商品設計と募集管理体制の両方で問題を抱えたもので、バブル退治と称して実施された金融引き締め策で、急速な景気後退に陥った1991(平成3)年以降、一時払い保険料を貸し付けた銀行が貸し付けた保険料の全額返済を要求し始め、追い込まれた契約者が自ら命を絶つ事例が複数発生し、銀行と生命保険会社に非難が殺到し訴訟に発展しました。また、変額保険そのものにも悪い印象を植え付けることになりました。
2002年になると金融機関の窓口で一時払い変額個人年金保険の取り扱いが始まり、外資系生保が新契約を急速に伸ばし始めました。しかし、「最低保証部分に係る責任準備金の積み増し」が求められると保険財務への負担が重くのしかかり始め、サブプライムローンの焦げ付きによる金融危機(リーマンショック)がさらに負担を重く、特別勘定の運用成績も悪化しました。
その結果、複数の外資系生保(ハートフォード生命、スカンディア生命、クレディスイス生命など)が日本市場から撤退し一部の保険会社は変額個人年金保険の新契約を停止し、取り扱う保険商品を大幅に変更しました。
【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。
-日本経済新聞 2025年2月14日朝刊-
【生保、相次ぎ変額保険投入】
生命保険各社が運用成果に応じて保険金が変動する変額保険を相次いで投入する。日本生命保険は4月からアクサ生命保険の商品を自社の営業職員チャネルで販売する。チューリッヒ生命保険も新商品を出す。新しい少額投資非課税制度(NISA)を背景に資産形成ニーズを取り込む。
変額保険は、保険料の一部を株式や債券で運用する特別勘定に繰り入れ、運用成績に応じた保険金を支払う商品だ。被保険者が死亡や高度障害状態となった場合に支払われる基本保険金は、運用成績によらず最低額が保証される。
ただ運用成績が振るわない場合には、保険金額が払い込んだ保険料の合計額を下回る「元本割れ」のリスクがある。
日本生命はアクサ生命の「ユニット・リンク」を4月から販売する。日本生命の営業職員が変額保険を販売するのはおよそ23年ぶりという。運用方針や運用資産に応じて、外国株式型など12種類から保険料の運用先を選ぶことができる。運用実績に応じて保険金額が変動する。
日本生命は2015年にアクサ生命と提携し医療保険を販売してきた。変額保険を自社開発することも視野に入れてきたが、開発コストや時間を抑えるためにアクサ生命の商品を販売することにした。特約を付ければガンや脳卒中などの特定の病気にかかった場合に、保険料の払込が不要となる。
チューリッヒ生命も4月に新しい変額保険を発売する。同社が変額保険を取り扱うのはおよそ20年ぶりだ。国内外の株式や債券に投資する9つの投資信託から投資先を選ぶ。
はなさく生命保険は1月に初めて変額保険の取り扱いを始めた。約1ヵ月で販売件数が4000件を超え、想定の約3倍の販売実績となっている。はなさく生命の村岸祐二商品開発部長は「死亡リスクなどに加え老後の資産形成の備えになる点が評価された」と話す。
各社が変額保険の投入に動く背景には、新NISAの普及や資産運用立国を目指す政府の政策を背景とした資産形成ニーズの高まりがある。証券会社などは低コストで投資できるインデックス型の投資信託や運用商品をそろえており、日本生命の担当者は「生保としても資産形成需要に応える商品を拡充する必要が高まっている」と指摘する。
金利上昇や株高で運用環境が好転し始めている事も、新商品の投入を後押ししている。変額保険は運用成績によっては元本割れのリスクもあるため、金融市場が低調な局面では販売拡大に動きにくいという事情があった。
変額保険の投入には慎重な意見もある。市場の変動で保険金額が増減するため、契約者側にリスクを十分に説明する必要がある。ある中堅生保の関係者は「十分な金融リテラシーのない顧客にもリスクを説明しきれるのかという懸念はある」と話す。
変額保険を巡っては、生保にとっても苦い経験がある。各社は1990年代から2000年代にも変額保険を積極的に販売しており、ITバブルの崩壊などで相場が下落した際に契約者からの苦情が殺到した。十分な説明がなかったとして訴訟に発展するケースもあり、変額保険の販売を手控える動きが広がった。
日本生命は変額保険の販売時に、市場のリスクなどを説明する動画の視聴を必須としている。申込みの手続き後には販売担当者と別の職員が顧客に電話をかけ、重要事項の説明を受けたかどうかなどを確認する。
チューリッヒ生命では70歳以上の契約者には複数回の面談をするほか、はなさく生命も代理店向けに契約手続きを説明する資料を作成し顧客へのリスク周知を徹底する。
以上です。
