先進医療給付金の支払いを巡る裁定事案(支払事由非該当)。

生命保険協会が取りまとめた、令和6年7~9月の裁定概要集(PDF)に、先進医療給付金の支払いを巡る裁定事案がありました。

事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 約款上の支払事由に該当しないことを理由に、先進医療給付金等が支払われなかったことを不服として、給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和5年に配偶者が転移性肝がんと診断され、同年8月より重粒子線治療を受け合計10日間通院したため、平成25年10月に契約したがん保険(契約者・被保険者は配偶者、給付金受取人は自分)のがん先進医療特約およびがん通院特約にもとづき、先進医療給付金および通院給付金を請求したところ、給付金が支払われなかった。しかし、以下等の理由により、先進医療給付金(請求①)および通院給付金(請求②)を支払ってほしい。

(1)請求①について、医師から、粒子線治療は、治療が自由診療と先進医療に分かれ、被保険者が受ける治療は自由診療になると説明を受けたが、治療法はどちらも同じ粒子線治療であると聞いた。

(2)請求②について、被保険者が治療を受けた医療機関には入院施設がないが、厚生労働省指定の病院である。入院施設がないことを理由に通院給付金が支払われないことに納得ができない。

この事案は「裁定終了」となっています。

転移性肝癌(QST病院などの医療機関での疾患名は転移性肝腫瘍と表記されています)に対する先進医療としての重粒子線治療は、「少数転移性肝腫瘍(oligometastatic、3個以下)で肝臓以外の病変が制御されていること」が条件※となっています。

おそらく申立人の配偶者の転移性肝癌は、この条件に該当しなかったために自由診療となったものと考えられます。それでは支払事由に該当しないので、保険会社が先進医療給付金等を不支払としたのは当然の査定結果です。

※出典:QST病院(旧放射線医学総合研究所病院)サイト

【事案の内容】

以下、裁定事案の内容です(令和6年7~9月裁定概要集・P33~34より転載)。

[事案2023-312]先進医療給付金等支払請求
・令和6年7月8日 裁定終了

<事案の概要>
 約款上の支払事由に該当しないことを理由に、先進医療給付金等が支払われなかったことを不服として、給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和5年に配偶者が転移性肝がんと診断され、同年8月より重粒子線治療を受け合計10日間通院したため、平成25年10月に契約したがん保険(契約者・被保険者は配偶者、給付金受取人は自分)のがん先進医療特約およびがん通院特約にもとづき、先進医療給付金および通院給付金を請求したところ、給付金が支払われなかった。しかし、以下等の理由により、先進医療給付金(請求①)および通院給付金(請求②)を支払ってほしい。

(1)請求①について、医師から、粒子線治療は、治療が自由診療と先進医療に分かれ、被保険者が受ける治療は自由診療になると説明を受けたが、治療法はどちらも同じ粒子線治療であると聞いた。

(2)請求②について、被保険者が治療を受けた医療機関には入院施設がないが、厚生労働省指定の病院である。入院施設がないことを理由に通院給付金が支払われないことに納得ができない。

<保険会社の主張>
 以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)請求①について、がん先進医療特約では、公的医療保険制度における先進医療による療養であることを支払事由の1つとして規定している。診断書の内容、医療機関への電話確認により、被保険者は、先進医療ではなく、自由診療による粒子線治療を受けたことを確認している。したがって、被保険者が受けた治療は、公的医療保険制度における先進医療にはあたらず、支払対象外となる。

(2)請求②について、がん通院特約では、主契約に定める支払事由となる入院の入院日前、または退院日から所定の期間に行われた通院であることを支払事由の1つとして規定している。また、主契約では、病院または診療所における入院であることを支払事由の1つとして規定してる。申立人が通院した医療機関は患者が入院するための施設を有しておらず、診断書上も入院日ではなく通院日として明記されているため、主契約の入院給付金の支払事由を満たさず、支払対象外となる。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理のほか、和解を相当とする事情の有無を確認するため、申立人及び申立人子に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
 上記手続きの結果、申立人の請求は認められず、その他保険会社に指摘すべき特段の個別事情も見出せないことから、和解による解決の見込みがないと判断して、手続を終了した。

以上です。

↑アラカシで集団越冬中のムラサキシジミ(今月撮影)。

アフラック生命の第2四半期(上半期)業績。

11月22日、アフラック生命保険はHPにて、2024年度第2四半期(上半期)業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
11/22・ニュースリリース 2024年度第2四半期(上半期)報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約の減少止まらず

個人保険の保有契約件数は前年同期末比で減少していました。保有契約の大半を占めるがん保険、医療保険の保有契約件数ですが、どちらも前年同期末比で減少していました。

また、個人保険及び医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料も前年同期末比で減少していました。

う~ん…保有契約の減少が止まりませんね。

2.新契約も減少
個人保険の新契約件数は前年同期比99.5%と減少していました。2大看板商品のがん保険と医療保険の新契約件数ですが、がん保険は前年同期比93.8%、医療保険は前年同期比92.5%どちらも減少していました。

一方、個人保険の新契約年換算保険料は前年同期比で101.4%、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は前年同期比で100.7%とどちらも増加していました。

新契約の増加が続きませんね。医療保険は今夏に保障内容とブランドを刷新したばかりです。その効果が出たのかどうかは第3四半期の業績でわかることでしょう。

【主要業績の内容】
以下、アフラックの主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約件数 ( )内は前年度実績
・個人保険….2212万5000件 (2266万9000件)

・個人年金保険…33万2000件 (32万9000件)

・個人保険+個人年金保険…2245万7000件 (2299万8000件)

 うちがん保険…1416万8000件 (1453万8000件)

 うち医療保険…546万8000件 (559万1000件)

〇新契約
・個人保険…40万4000件 前年同期比99.5%

 うちがん保険…27万件 前年同期比93.8&

 うち医療保険…7万件 前年同期比92.5%

〇年換算保険料
1)保有契約 ( )内は前年度実績

・個人保険…1兆1984億円 (1兆2266億円)

・個人年金保険…1027億円 (964億円)

・個人保険+個人年金保険…1兆3011億円 (1兆3230億円)

 うち医療保障・生前給付保障等…9790億円 (9981億円)

2)新契約
・個人保険…284億円 前年同期比101.4%

・個人保険+個人年金保険…284億円 前年同期比101.4%

 うち医療保障・生前給付保障等…253億円 前年同期比100.7%

〇保険料等収入、経常利益、中間純利益
・保険料等収入…6598億円 前年同期比102.6%

・経常利益…2708億円 前年同期比122%

・中間純利益…1926億円 前年同期比122.3%

〇三利源 ( )内は前年度実績
・危険差益…870億円 (1038億円)

・費差損益…390億円 (441億円)

・利差損益…1046億円 (801億円)

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…2306億円 前年同期比101.1%

・ソルベンシー・マージン比率…1162.9% (1063.7%)

以上です。

↑裏庭のアラカシで翅を開いたムラサキシジミ♀(今月撮影)。

オリックス生命の第2四半期業績。

11月28日、オリックス生命保険はHPにて、2024年度第2四半期(上半期)業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
11/28・リリース 2024年度第2四半期(上半期)決算報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は減少続く

個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は前年同期末比でいずれも減少していました。

また、医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料も前年同期末比で減少していました。

数年前から保有契約の減少傾向が続いています。

2.新契約に明るい兆し
個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比で84.1%、96.1%、100.8%となっていました。件数・契約高は依然として減少が続いていましたが、年換算保険料は増加に転じていました。

料率改定を行った終身保険が契約を伸ばしたことが大きな要因のようです。

また、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比で65.2%と大きく落ち込んでいました。医療保険とがん保険の新契約が伸びなくなった状況が続いているようです。

〇主要業績の内容
以下、オリックス生命の主要業績の内容です(上記リリースより抜粋・転載)。

〇保有契約 ( )内は前年度実績
1)件数

・個人保険…477万3000件 (485万8000件)

・個人年金保険…5万件 (9万2000件)

2)契約高
・個人保険…13兆8300億円 (14兆1866億円)

・個人年金保険…2173億円 (2514億円)

・団体保険…8345億円 (8007億円)

〇新契約
1)件数

・個人保険…8万3000件 前年同期比84.1%

2)契約高
・個人保険…4071億円 前年同期比96.1%

〇年換算保険料
1)保有契約 ( )内は前年度実績

・個人保険…3408億円 (3409億円)

・個人年金保険…272億円 (401億円)

・個人保険+個人年金保険…3681億円 (3810億円)

 うち医療保障・生前給付保障等…2087億円 (2155億円)

2)新契約
・個人保険…119億円 前年同期比100.8%

・個人保険+個人年金保険…119億円 前年同期比100.8%

 うち医療保障・生前給付保障等…43億円 前年同期比65.2%

〇保険料等収入、保険金等支払金、当期純利益
・保険料等収入…2304億円 前年同期比103.9%

・保険金等支払金…1198億円 前年同期比98.4%

・当期純利益…96億円 前年同期比397.5%

〇基礎利益、ソルンベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…91億円 前年同期比72.8%

・ソルベンシー・マージン比率…1090.6% (984.5%)

以上です。

↑秋の味覚(庭先の腐熟柿)を堪能する2頭のキタテハ秋型の♂(11月撮影)。

ソニー生命の第2四半期業績。

11月14日、ソニー生命保険はHPにて、2024年度第2四半期業績を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
11/14・ニュースリリース 2024年度第2四半期(上半期)業績のご報告(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は堅調に増加

個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比で97.4%、103.4%、100.5%と件数こそ落ち込みましたが、契約高と年換算保険料は増加していました。

また、個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期末比で129%、136.4%、132%といずれも二桁の増加でした。

医療保障・生前給付保障等の保有契約年換算保険料は、前年同期末比で97%と減少していました。既に医療保険の自社商品の新契約引き受けを終了しているため、今後も減少していくことでしょう。

保有契約は今期も堅調に増加したようです。

2.新契約も増加
個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比で100.5%、108.5%、126.5%といずれも増加していました。

また。個人年金保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年同期比で117.8%、129%、119.3%といずれも二桁の増加でした。

医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年同期比で93.6%でした。

新契約も堅調だったことがうかがえます。

【主要業績の内容】
以下、ソニー生命の主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約
1)件数

・個人保険…747万6000件 前年同期末比97.4%

・個人年金保険…168万2000件 前年同期末比129%

・個人保険+個人年金保険…915万8000件 前年同期末比102%

2)契約高
・個人保険…57兆3916億円 前年同期末比103.4%

・個人年金保険…11兆4068億円 前年同期末比136.4%

・個人保険+個人年金保険…68兆7984億円 前年同期末比107.7%

・団体保険…1兆2381億円 前年同期末比91.5%

・団体年金保険…32億円 前年同期末比81.3%

〇新契約
1)件数

・個人保険…15万1000件 前年同期比100.5%

・個人年金保険…21万9000件 前年同期比117.8%

・個人保険+個人年金保険…37万件 前年同期比110.1%

2)契約高
・個人保険…3兆7047億円 前年同期比108.5%

・個人年金保険…1兆7052億円 前年同期比129%

・個人保険+個人年金保険…5兆4100億円 前年同期比114.2%

・団体保険…54億円 前年同期比218.1%

〇年換算保険料
1)保有契約

・個人保険…9252億円 前年同期末比100.5%

・個人年金保険…3173億円 前年同期末比132%

・個人保険+個人年金保険…1兆2425億円 前年同期末比107%

 うち医療保障・生前給付保障等…2095億円 前年同期末比97%

2)新契約
・個人保険…432億円 前年同期比126.5%

・個人年金保険…445億円 前年同期比119.3%

・個人保険+個人年金保険…877億円 前年同期比122.8%

 うち医療保障・生前給付保障等…42億円 前年同期比93.6%

〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、中間純利益
・保険料等収入…9442億円 前年同期比120.4%

・保険金等支払金…5342億円 前年同期比118.1%

・経常利益…102億円 前年同期比63.5%

・中間純利益…57億円 前年同期比57.3%

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度数値
・基礎利益…614億円 前年同期比72.6%

・ソルベンシー・マージン比率…2015.2% (1777.7%)

以上です。

↑晩秋の日差しを浴びるマユタテアカネ♂(11月撮影)。

日本生命、平準払終身保険などで予定利率引き上げへ。2025年1月2日の新契約からが対象。

11月21日、日本生命保険はHPにて、2025年1月2日以降の新契約を対象に、平準払終身保険などの予定利率を引き上げることを発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
11/21・ニュースリリース 保険料率等の改定について(PDF)

【管理人の感想】
予定利率が引き上げられるのは学資保険やこども保険、一時払を除く年金保険、養老保険、終身保険などの13種類です。現行の予定利率が0.25%と最も低く抑えられている平準払終身保険や長期定期保険などは、改定後の予定利率が0.40%に引き上げられます。

現在、標準責任準備金の計算基礎率のひとつである予定利率(標準利率)が0.25%に引き下げられている状態ですが、保険料の計算基礎率のひとつである予定利率を引き上げても、標準責任準備金を積み立てることが可能であると判断したのでしょう。

【公式コメントの内容】
以下、日本生命の公式コメントの内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

【保険料率等の改定について】
 日本生命保険相互会社(社長:清水博)は、2025年1月から、個人保険・個人年金保険の保険料率及び保険契約者に対する貸付の貸付利率(以下、「契約貸付利率」)を改定します。

 今回の保険料率の改定は、現在の運用環境、市中金利動向等の状況を踏まえ、契約日が2025年1月2日以降の個人保険・個人年金保険の一部商品について、約40年ぶりに予定利率の引き上げを実施します。

 これに伴い、年金保険や終身保険(一時払を除く)等の一部保険契約において従来よりも割安な保険料でご加入可能となります。

 加えて、予定利率の引き上げにあわせ、契約貸付利率の見直しを実施します。

以上です。

↑庭先の腐熟柿にやってきたキタテハ秋型♀の集団(11月撮影)。

日本生命が収NEW1(入院継続時収入サポート保険)の販売を停止へ-日経報道。

11月12日の日本経済新聞朝刊に、日本生命の保険商品に関する記事がありました。

記事によると、

< 日本生命保険は入院の長期化により、契約者が収入減に備えてはいる就業不能保険※の新規取り扱いを2025年1月2日に停止する。給付金を多く受け取れるように、入院期間を調整するといった不正が増えているためだ。>

※管理人補足:正しくは入院継続が14日以上に及んだことで生じる収入の減少に備える「入院継続収入サポート保険」であり、就業不能保険ではありません。また、この保険は主力商品である「みらいのカタチ」を構成する保険商品で、ほかの保険(例えば入院保障の保険)と組み合わせる専用商品です。

とのことです。

【管理人の感想】
11月17日時点で、日本生命は公式コメントを発表していません。そのため、記事の内容が正式に決定した事実かどうかは不明です。

記事の内容が事実であれば、支払い査定時にモラルリスク、あるいはそれを強く疑う事案(例えば、請求事由である入院の原因と入院継続日数を精査すると、入院継続が「医師に指示に基づくもの」なのか疑わしいがモラルリスクと断定するには至らないなど)が想定以上に確認されたことになります。

こうしたモラルリスクの混入及びその排除の難しさは、日本生命に限った話ではありませんし、今に始まったことでもありません。1970年代に損害保険商品の「就労不能補償保険」でも、モラルリスクが保険会社の想定を超えて発生し、各保険会社を悩ませました。

入院一時金の保険や特約では、新型コロナウイルス感染症による「みなし入院」が支払事由となったことで、告知義務違反やその疑いが強い事案が増えたため、そうした保障を取り扱っている保険会社は、給付金額の上限を相次いで引き下げるなどの対策を取りました。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-2024年11月12日 日本経済新聞朝刊-

【日生、就業不能保険の新規販売停止へ 不正増加受け】

 日本生命保険は入院の長期化により、契約者が収入減に備えてはいる就業不能保険の新規取り扱いを2025年1月2日に停止する。給付金を多く受け取れるように、入院期間を調整するといった不正が増えているためだ。

 販売を停止するのは21年7月から取り扱っている「収 NEW1」という就業不能保険。入院期間が14日以上になった場合、一時金を給付することで入院費用の負担を軽減できる点を訴求していた。

以上です。

↑庭先の腐熟柿にやってきたクロコノマチョウ秋型の♀(10月撮影)。