手術給付金等の支払いを巡る裁定事案(故意または重大な過失。和解成立)。

生命保険協会が取りまとめた、令和6年4~6月の裁定概要集(PDF)に、手術給付金等の支払いを巡る裁定事案がありました。

事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 故意または重大な過失を理由に、手術給付金等が支払われなかったことを不服として、手術給付金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和4年11月に橋梁から落下した事により、外傷性くも膜下出血、肺挫傷、右尺骨近位骨幹部解放骨折等を受傷し、令和5年2月まで入院して複数回手術を行ったため、平成21年9月に契約した医療保険にもとづき手術給付金を請求したところ、自分の故意または重大な過失を理由に給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金等を支払ってほしい。

(1)自分は、いつも使っている歩道ではなく、間違えて反対側の歩道ないし車道を歩行していたものであって、うっかり道を間違えることは、わずかな注意だけで防ぎきれるものではなく、重大な過失には相当しない。

(2)飲酒後かつ仕事の疲れ、眠気等もあった状態で、注意力が散漫になった結果、うっかり車道を歩いてしまったことは、自分の過失であるかもしれないが、重大な過失には該当しない。

(3)自分には、車道から反対側の車道に移動しようとしてガードレールを乗り越えたという認識はなく、あくまで、危険回避のために車道から歩道に移動しようとしてガードレールを乗り越えようとしたものであるから、この点からも重大な過失には相当しない。

(4)保険会社の主張は、調査会社の調査員が自分と面談した際の報告書の内容を基礎としているところ、同報告書には、自分が実際には話していない誤った内容が報告されており、問題である。

この事案は和解が成立しています。

申立人は橋梁から河川敷に転落してしまったようですが、よく助かったものです。

今回の事案で問題となったのは、調査員の報告書が不適切なものであって、それをもとに給付金の支払可否の決定がなされたことです。調査による報告書は支払可否に大きく影響するものなのですから、それを不適切なものするとは言語道断でしょう。

【事案の内容】

以下、裁定事案の内容です(令和6年4~6月裁定概要集P28~30より転載)。

[事案2023-291]手術給付金等支払請求
・令和6年6月30日 和解成立

<事案の概要>
 故意または重大な過失を理由に、手術給付金等が支払われなかったことを不服として、手術給付金等の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 令和4年11月に橋梁から落下した事により、外傷性くも膜下出血、肺挫傷、右尺骨近位骨幹部解放骨折等を受傷し、令和5年2月まで入院して複数回手術を行ったため、平成21年9月に契約した医療保険にもとづき手術給付金を請求したところ、自分の故意または重大な過失を理由に給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、手術給付金等を支払ってほしい。

(1)自分は、いつも使っている歩道ではなく、間違えて反対側の歩道ないし車道を歩行していたものであって、うっかり道を間違えることは、わずかな注意だけで防ぎきれるものではなく、重大な過失には相当しない。

(2)飲酒後かつ仕事の疲れ、眠気等もあった状態で、注意力が散漫になった結果、うっかり車道を歩いてしまったことは、自分の過失であるかもしれないが、重大な過失には該当しない。

(3)自分には、車道から反対側の車道に移動しようとしてガードレールを乗り越えたという認識はなく、あくまで、危険回避のために車道から歩道に移動しようとしてガードレールを乗り越えようとしたものであるから、この点からも重大な過失には相当しない。

(4)保険会社の主張は、調査会社の調査員が自分と面談した際の報告書の内容を基礎としているところ、同報告書には、自分が実際には話していない誤った内容が報告されており、問題である。

<保険会社の主張>
 以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)車道と車道の間にある隙間を仕切っていたガードレールを乗り越えて反対側の車道に移動することは危険であると認識できるし、隙間の幅も2~3mほどあり、隙間を見落とすことは考えにくいため、一般人が、わずかに注意すれば転落事故発生の危険があることは容易に予想・予見ができ、その結果、中央のガードレールを乗り越えることを注視して、危険を避けることは可能であった。

(2)よって、申立人は著しく注意を欠いた行動の結果により河川敷に転落したものであって、本事故は、申立人の「重大な過失」を原因として発生したと考えられるため、手術給付金等については免責事由が認められる。

(3)仮に、本事故の状況が申立人の主張のとおりだとしても、橋梁は肩側車道が3車線の広い道路であり、この車道を歩いて進んでいたことは事故に遭う危険の高い行為と考える。また、車道と歩道はガードレールで区別された構造となっており、転落地点まで車道を歩いていることに気付かなかったことは極めて考えづらい状況である。さらに、申立人が、ガードレールを乗り越えて歩道に戻ろうと考えたのだとしても、実際には、その先に歩道はなく隙間があったのだから、申立人はこのことに容易に気付くことができ、わずかな注意をすれば転落は回避できるものと考えるため、いずれにせよ、重大な過失が認められる。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、本事故の状況等を把握するため、申立人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
 上記手続きの結果、申立人の請求は認められないが、以下の理由により、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意を得られたので、手続を終了した。

(1)事故当時の状況や申立人の怪我の部位などについて、保険会社が委託した調査会社の調査員による申立人の聴取結果の報告が適切に行われていなかったことがうかがえるところ、保険会社が、そのような不適切な報告書に依拠した事実認定を行い、申立人に対して給付金の不支給を通知したことが、申立人に不信を抱かしめ、本件紛争の一因となった面があることは否めない。

以上です。

↑9月上旬に撮影したアキアカネ♂。

金融庁がFPパートナーに対し報告徴求命令を発出-日経報道。

9月6日の日本経済新聞朝刊に、訪問型の大手保険乗合募集代理店であるFPパートナーに対し、報告徴求命令を発出したとの記事がありました。

記事によると、

< 金融庁が6日、大手保険代理店のFPパートナーに保険業法に基づく報告徴求命令を出したことが分かった。同社に多額の広告費を支払った生命保険会社の保険商品を優先して顧客に勧めていたと指摘されている問題について、販売実態などの報告を求めたとみられる。>

とのことです。

【管理人の感想】

10月13日時点で、FPパートナーは今回の報道に関する公式コメントを出していません。また、金融庁も報告徴求命令を発出したというコメントを出していません。

したがって、報道が事実かどうかは不明です。

なお、FPパートナーと生命保険各社の広告費用に関しては、6月18日配信の東洋経済オンラインにおいて、

<「マネードクター」の名称で保険代理店事業を展開するFPパートナーと、保険販売(募集)を委託している生命保険各社との取引を巡って、金融庁が実態調査に乗り出していることが分かった。

 調査の対象となっているのはFPパートナーの代理申請会社(幹事会社)となっている東京海上日動あんしん生命のほか、アフラック生命保険会社、SOMPOひまわり生命保険、メディケア生命保険、はなさく生命保険など。

 金融庁が生保各社に報告を求めている項目は、①FPパートナーへの広告料の支払い状況と同広告料が適正と判断した根拠、②営業社員(募集人)候補の紹介数、③リーズ(見込み客)情報の提供数、④出向者の状況、⑤そのほかの本業支援の状況、と大きく5つある。

 特に①の広告料については、相場や実態に見合わない不適正な料金を支払っていないか、アフラックやひまわり生命に対して「詳細に報告するよう求めている」(ひまわり生命関係者)という。

 金融庁は、調査によってFPパートナーへの過剰な便宜供与や実質的な利益供与の疑いが強まった場合は、生保各社やFPパートナーへの立ち入り検査に踏み切ることも視野に入れている模様だ。>

という報道がありました。さらに、この件は生命保険協会が会員各社に調査票を送ることにもなりそうです。9月7日の日経電子版に

< 生命保険協会は加盟社の生命保険各社に対し、保険代理店に対する便宜供与の実態を調べるよう要請する。代理店が生命保険会社から広告陽の名目で多額の金銭を受け取り、顧客のニーズに合っていない保険商品を勧めていた疑いが浮上しているためだ。実態の把握を通じて、商慣行の健全化につなげたい考えだ。

 10月上旬を期限とし、近く加盟社に調査票を送る。金融庁にも回答の内容を報告する。

 生保各社に回答を求める質問はおよそ20項目に及ぶ。「業務委託費や広告費、協賛金などの名目で役務の対価としての実態がない金銭を受給しているか」「自社の保険商品だけを取り扱うことを条件に(代理店へ支払う)手数料を加算していないか」などだ。生保協には約40社が加盟している。

 生保協が調査に乗り出すのは、便宜供与と疑われかねない事例が出てきているためだ。「マネードクター」を運営する大手代理店のFPパートナーが、保険会社から市場の実態と離れた多額の広告費を受け取っていたことが明らかになっている。各社の広告費の有無やその水準が、FPパートナー側が顧客に勧める商品に影響を及ぼしていた可能性がある。保険会社が広告費などの名目で便宜を供与していたとすれば、顧客の意向に沿った提案をゆがめる恐れが強まる。>

との記事がありました。仮にそうした報道が事実で、広告費の多寡が推奨商品の選定を左右していたとなれば、金融庁から行政処分が下されるかもしれません。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-2024年9月6日 日本経済新聞朝刊-

【金融庁、FPパートナーに報告命令】

 金融庁が6日、大手保険代理店のFPパートナーに保険業法に基づく報告徴求命令を出したことが分かった。同社に多額の広告費を支払った生命保険会社の保険商品を優先して顧客に勧めていたと指摘されている問題について、販売実態などの報告を求めたとみられる。

 同社はファイナンシャルプランナーなどの資格を持つ社員が家計の相談に乗る「マネードクター」を運営する。社員が職場や自宅に赴く訪問型の代理店として業界最大手で、東証プライム市場に上場している。

 金融庁はFPパートナーが生保から多額の広告費を受け取り、広告費の多寡が推奨商品を左右したのではないかと問題視している。保険業法で代理店は複数の保険会社の商品を比べて説明する「比較推奨」のための情報提供が義務づけられている。

 金融庁と生命保険協会は生保各社に対し、代理店への便宜供与の実態を調べるよう近く要請する方針だ。FPパートナー以外でも代理店が生保から広告費の名目で多額の金銭を受け取り、顧客のニーズに合っていない保険商品を勧めていた疑いが浮上している。

以上です。

↑よそ様のキバナコスモスにやってきたナミアゲハ夏型の♂(8月撮影)。