7月17日の日本経済新聞朝刊に、一部の大手生損保乗合募集代理店における推奨商品選定について、生命保険会社からの広告費の多寡が推奨商品の選定を左右したのではないか?との記事がありました。
記事によると、
< 生命保険会社による保険代理店向けの広告出稿について金融庁が実態調査に動き始めた。一部の大手代理店が生保から多額の広告費を受け取っており、広告費の多寡が商品推奨を左右したとの懸念がある。アフラック生命保険などは出稿を取りやめた。顧客本位とは言い難い販売実態が明らかになれば、生保と代理店のもたれ合いにメスが入る可能性がある。
大手代理店のFPパートナーとの取引がある生保を調査対象にする。FPパートナーはファイナンシャルプランナーなどの資格を持つ社員が家計の相談に乗る「マネードクター」を運営する。社員が職場や自宅に赴く訪問型の代理店として業界最大手で、全国の拠点数は約150ヵ所。東証プライムに上場している。>
とのことです。
【管理人の感想】
今回の報道について、金融庁とマネードクターの公式HPを確認したのですが、どちらも報道が事実かどうかを裏付ける発表やコメントを出していませんでした(7月22日時点)。
全国展開している保険ショップなど規模の大きな特定代理店は、代理店手数料の多寡で推奨商品の選定が左右されているのではないか?という疑念が生じたことで、一定期間ごとに報告書を提出することが義務付けられる等、募集経緯の透明性向上などが求められました。
また、保険会社はそうした疑念が生じたこともあって、ボーナスコミッションを廃止するなど代理店手数料の体系を変更しました。
仮に今回の報道が事実であるならなんとも情けない話です。
【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。
-日本経済新聞 2024年7月17日朝刊-
【生保の一部大手代理店向け広告、金融庁が調査 商品推奨の左右を懸念】
生命保険会社による保険代理店向けの広告出稿について金融庁が実態調査に動き始めた。一部の大手代理店が生保から多額の広告費を受け取っており、広告費の多寡が商品推奨を左右したとの懸念がある。アフラック生命保険などは出稿を取りやめた。顧客本位とは言い難い販売実態が明らかになれば、生保と代理店のもたれ合いにメスが入る可能性がある。
大手代理店のFPパートナーとの取引がある生保を調査対象にする。FPパートナーはファイナンシャルプランナーなどの資格を持つ社員が家計の相談に乗る「マネードクター」を運営する。社員が職場や自宅に赴く訪問型の代理店として業界最大手で、全国の拠点数は約150ヵ所。東証プライムに上場している。
アフラックは7月に入り、FPパートナーに対して広告出稿をやめる意向を伝えた。アフラックはFPパートナーに対し、2023年度に9600万円の広告費を支払っていた。
数千万円の広告費を負担していたとみられる住友生命保険グループのメディケア生命保険や、東京海上日動あんしん生命保険も広告の出稿を中止する方針だ。SOMPOひまわり生命保険は6月に契約を終え、延長しなかったという。
広告はFPパートナーの店舗にある電子掲示板やホームページに掲載する。通常取引の範囲を超えた過度の広告費の支払いは代理店への利益供与ともみなされかねない。
複数の関係者によると、FPパートナーは特定の保険商品を販売すると営業担当者の評価を割り増しにするキャンペーンを実施していた。多額の広告費を支払う複数の保険会社の商品が対象になっていたという。
割増評価する保険商品を優先的に取り扱う動機が働きやすくなり、公平な販売をゆがめかねない、との指摘がある。FPパートナーは、一部の保険会社や保険商品を営業上の理由などで恣意的に推奨している事実はない、としている。
金融庁は2016年の改正保険業法で代理店に対し、年齢や家族構成などをもとに顧客に合った商品を提案するよう義務付けた。一つの商品だけを勧めず、複数の商品を比べて説明する「比較推奨」も求めてきた。
金融庁はFPパートナーと取引のある生保に対し、不適正な広告費を支払っていないか聞き取り調査を実施していた。過度な広告費の支払いなどが比較推奨に反する保険販売につながっているとの懸念があり、金融庁はこのほど各社に追加のアンケートを送付し実態把握に動いている。
かねて保険業界では、過剰な販売促進策や代理店への利益供与が不適切な販売実態をもたらしているとの批判が少なくなかった。広告出稿を巡る懸念も「FPパートナーに限った問題ではない」との見方があり、金融庁は聞き取りの結果によっては調査範囲を業界全体に広げる方針だ。
生保が直接雇用する営業職員を通じた保険加入は減り、代理店は有力な販売チャネルになってきた。生命保険文化センターによると、代理店を経由した保険加入は21年度に全体の約15%を占めた。自前の営業職員を持たないは生保は代理店に販売を依存し、「過度な利益供与を生みやすい」との見方がある。
代理店との距離感は保険業界の長年にわたる課題でもある。自動車保険金の不正請求を繰り返していた旧ビッグモーターは整備工場を金、事故車の紹介数に応じて自動車損害賠償責任(自賠責)保険の契約を損害保険会社に割り振っていた。販売力のある代理店に対する保険会社の監督・指導が機能しなかった典型例だ。
かつて生保では表彰や研修の名目で、代理店の営業担当者を旅行に案内するような慣行さえあった。こうした露骨な便宜供与こそ減ってきたが、顧客本位をゆがめかねない行為は後を絶たない。業界の自浄能力が問われている。
以上です。
