大手生保の営業職員数がここ10年の間で最少にー日経報道。

7月5日の日本経済新聞朝刊に、大手生命保険会社の営業職員数の変化に関する記事がありました。

記事によりますと、

< 大手生命保険会社の営業職員数が減少している。2023年度末時点での大手4社の営業職員数は約15万人と、直近ピークの20年度末から1割減り、この約10年間で最も少なくなった。日本生命保険は5万人を割り込んだ。新規の採用難や転職者の増加が背景にある。今後も減少傾向は続くとみられ、各社は人工知能(AI)を活用するなどして人手不足に備える。>

とのことです。

【管理人の感想】
かつては大量採用大量脱落が当たり前とさえ言われてきた生保の営業職員ですが、管理人が記憶している限りでは、生保10社が業務改善命令を受けた、保険金や各種給付金の支払いミス(支払不足、支払漏れ、支払額過剰)を機に、採用人数を絞り採用後の教育をそれまで以上に高度化して、契約継続率向上を重視する評価制度に移行するなど「量から質へ」と徐々に転換して、早期の離職率改善を実現してきました。

しかし、ここ数年の人材確保の課題はそうしたこととはまた別の問題のようです。

今回の記事を読む限り、大手生保各社は一定の水準を確保するための採用人数のラインを下回る状況となっているようです。他業種との人材確保競争が激しさを増していることもあって、そう簡単に解消しないでしょうね。

【記事の内容】
以下、日経の記事の内容です。

-日本経済新聞 2024年7月5日朝刊-

【生保営業職員、10年で最少】

 大手生命保険会社の営業職員数が減少している。2023年度末時点での大手4社の営業職員数は約15万人と、直近ピークの20年度末から1割減り、この約10年間で最も少なくなった。日本生命保険は5万人を割り込んだ。新規の採用難や転職者の増加が背景にある。今後も減少傾向は続くとみられ、各社は人工知能(AI)を活用するなどして人手不足に備える。

 日本生命、第一生命保険、明治安田生命保険、住友生命保険の営業職員数を集計した。23年度末時点の営業職員数は15万3427人と、データを遡ることのできる11年度末以降で最少だった。ピーク時の20年度末では17万人以上が在籍していた。

 日本生命の23年度末の営業職員数は約4万7000人と、20年度末比で14%減った。5万人を割るのは11年度以降で初めてだ。第一生命はオフィス長を含めた生涯設計デザイナー数が2割減の約3万7000人、住友生命は1割減の3万2000人だった。

 新規の採用数も過去10年以上に渡って減少傾向が続く。15年度以降は年3万人を下回り、23年度はおよそ2万人に縮小した。日本生命は3年前まで1万人前後を採っていたが、足下では7000人を下回るようになった。

 背景には人材の獲得競争の激化がある。新型コロナウイルス禍後は飲食業などの求人が増え、生保の営業職員の応募者が少なくなった。より良い条件を求めて転職する人もいる。大手生保の幹部は「数年前と比べると新規採用が難しくなった」と話す。

 全国の使者に所属して自宅や職場を訪問販売する営業職員は、銀行窓口やインターネット、保険ショップで契約する人が増えた今でも生保の主力の販売チャネルだ。生命保険文化センターによると、営業職員経由の保険商品の販売は全体の5割超を占める。

 各社は営業職員の定着率を高めようと、待遇改善に力を入れてきた。日本生命は24年度に営業職員の賃金を平均7%程度引き上げる。7%の賃上げは2年連続になる。他社も7%程度の賃上げを実施する方針だ。

 人材の獲得競争が激化する中、他産業でも賃上げの動きが広がる。人手不足は金融業界だけにとどまらず、今後も採用難は続く公算が大きい。人海戦術による営業に限界が見えるなか、各社が力を入れるのがAIやデジタル技術の活用だ。

 第一生命は生成AIが営業職員を支援する「デジタルバディ」を開発を進め、26年度までに全国での導入を目指す。顧客の生活や資産の状況に合わせた提案を営業職員に推奨するといった機能を付与する。AIが自動回答するチャットツールの開発にも取り組み、対面以外にデジタルでの顧客接点を広げる。

 日本生命は24年度にAIが営業職員を補助するシステムを全国で導入した。公式LINEなどを通じて収集した顧客情報やアンケートへの回答状況、営業職員との通話時間などをAIが分析し、顧客の特性を可視化する。分析結果に応じて最適な契約内容や営業方針を職員に示す。住友生命もAIによる提案支援システムの構築に取り組み、24年度下期の投入を予定する。

 AIやデジタル技術の活用は、営業職員の雇用に直結するテーマでもある。ある大手生保の首脳は「デジタル技術などが進展すれば、営業職員を現状の規模で維持する必要はなくなる」と話す。大量の営業職員を抱え、販売目標を課しながら契約を獲得する手法は転換期を迎えつつある。

以上です。

↑ハナダイコンにやってきたクマバチ♀(4月撮影)。

先進医療給付金の支払いを巡る裁定事案(告知義務違反による契約解除)。

生命保険協会が取りまとめた、令和6年1~3月の裁定概要集(PDF)に先進医療給付金の支払いを巡る裁定事案がありました。

裁定概要集によると、事案の概要と申立人の主張は以下の通りです。

<事案の概要>
 告知義務違反を理由に契約が解除され、先進医療給付金が支払われなかったことを不服として、解除の無効と先進医療給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 肝細胞がんに対する重粒子線治療を受けたことから、令和3年6月に契約した医療保険にもとづき先進医療給付金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、解除を無効として先進医療給付金を支払ってほしい。

(1)告知義務違反となるようであれば「保険には加入しなくていい」と募集人に言って、本契約の契約手続きをした。

(2)自分はB型肝炎に罹患しており、平成27年に肝細胞がんが再発し、平成28年に重粒子線による治療を行っているが、これ以降の治療や検査の経緯を募集人に話しており、告知している。

この事案は裁定不調で手続きが終わっています。

「保険会社の主張」を読むと、申立人は医療保険の申込時にB型慢性肝炎に関する告知をしています。この時点でなぜ医療保険の契約が成立したのかがわかりません。

慢性B型肝炎は、医療保険に限らず生命保険の契約が非常に難しい疾患のひとつです。ある生命保険会社の引き受け査定の目安では、全期間で引受謝絶となっています。

【事案の内容】

以下、裁定事案の内容です(令和6年1~3月裁定概要集・P47~48より転載)。

[事案2023-130]先進医療給付金支払請求
・令和6年2月2日 裁定不調

<事案の概要>
 告知義務違反を理由に契約が解除され、先進医療給付金が支払われなかったことを不服として、解除の無効と先進医療給付金の支払いを求めて申立てのあったもの。

<申立人の主張>
 肝細胞がんに対する重粒子線治療を受けたことから、令和3年6月に契約した医療保険にもとづき先進医療給付金を請求したところ、告知義務違反を理由に契約が解除され、給付金が支払われなかった。しかし、以下の理由により、解除を無効として先進医療給付金を支払ってほしい。

(1)告知義務違反となるようであれば「保険には加入しなくていい」と募集人に言って、本契約の契約手続きをした。

(2)自分はB型肝炎に罹患しており、平成27年に肝細胞がんが再発し、平成28年に重粒子線による治療を行っているが、これ以降の治療や検査の経緯を募集人に話しており、告知している。

<保険会社の主張>
 以下等の理由により、申立人の請求に応じることはできない。

(1)申立人は、B型慢性肝炎に関する告知をしているが、肝がん治療後に定期的にCTやMRIなどで肝細胞がん再発の有無を外来で確認しており、この肝細胞がんに関する事実を告知していない。

(2)募集人は、契約締結の際、申立人から、平成28年の重粒子線の治療後は、がんの再発もなく、通院もしていないと聞いており、肝細胞がん治療後の治療や検査の経緯については申立人から聞いていない。

<裁定の概要>
1.裁定手続
 裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、治療時の状況等を確認するため、申立人および募集人に対して事情聴取を行った。

2.裁定結果
 上記手続の結果、先進医療給付金の支払いは認められないが、以下の理由により、本件は和解による解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、申立人から和解案を受諾するとの回答を得られなかったため、手続を終了した。

(1)募集人は、申立人から、B型肝炎に罹患しており、7、8年前には肝細胞がんが再発して先進医療を受けたことの説明をされたことは認めており、7、8年前にがんに罹患したということであれば、5年以内にがんのフォローにて通院検査している可能性は高く、募集人も、通常であればがんの手術後や治療後に何年かは診察などをすると思ってはいたなどと陳述している。

(2)本契約のタブレットによる告知方法においては、手書きでの記入とは異なり、病状に付随する事情を申立人のみの操作によって容易に追記することができないことからすれば、本契約の告知方法に不慣れな契約者が肝細胞がん治療後の通院・検査の記載を失念するということも全く理解できないわけではない。

(3)本件では、正確な告知書作成経緯が不明ではあるとしても、申立人が重篤な病気に罹患していることを知っている募集人としては、少なくとも、相当慎重に告知書作成手続を行うことが望ましかったが、募集人の事情聴取の結果によってもそれをうかがうことはできなかった。

以上です。

↑吸水行動中のナミアゲハ春型の♂(4月撮影)。

オリックス生命の2023年度決算。

5月30日、オリックス生命保険はHPにて、2023年度決算を発表*しました。

*詳しくはこちらをどうぞ。
5/30・ニュースリリース 2023年度決算(PDF)

【管理人の感想】
1.保有契約は減少

個人保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度末比98.5%、99.9%、101.3%と件数と契約高が減少していました。

個人年金保険の保有契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度末比55.7%、86.8%、68.6%といずれも減少が続いていました。これは、同社が既に個人年金保険の新契約を停止しているほか、日本国内での事業から完全に撤退した、ハートフォード生命保険の既契約を引き継いで管理しているのみなので、今後も減少が継続するものと思われます。

また、医療保障・生前給付保障等の年換算保険料は、前年度末比99.6%とこちらも減少していました。

2.新契約件数が落ち込む
個人保険の新契約件数・契約高・年換算保険料は、前年度比72.4%、112.2%、95.2%と特に件数の落ち込みが目立ちました。ドル建終身保険及び円建終身保険の料率改定が行われて、支払保険料の負担が改定前に比べて軽減したことや、解約返戻率が上昇したことで契約高を押し上げたようです。

また、医療保障・生前給付保障等の新契約年換算保険料は、前年度比78.8%と二桁の落ち込みでした。医療保険とがん保険の新契約が落ち込んでいることが窺えます。

【主要業績の内容】
以下、オリックス生命の主要業績の内容です(上記ニュースリリースより抜粋・転載)。

〇保有契約
1)件数

・個人保険…481万9000件 前年度末比98.5%

・個人年金保険…5万2000件 前年度末比55.7%

2)契約高
・個人保険…14兆984億円 前年同期比99.9%

・個人年金保険…2337億円 前年度末比86.8%

・団体保険…8200億円 前年度末比102.7%

〇新契約
1)件数

・個人保険…20万件 前年度比72.4%

2)契約高
・個人保険…8960億円 前年度比112.2%

〇年換算保険料
1)保有契約

・個人保険…3423億円 前年度末比101.3%

・個人年金保険…281億円 前年度末比68.6%

・個人保険+個人年金保険…3704億円 前年度末比97.8%

 うち医療保障・生前給付保障等…2126億円 前年度末比99.6%

2)新契約
・個人保険…252億円 前年度比95.2%

・個人保険+個人年金保険…252億円 前年度比95.2%%

 うち医療保障・生前給付保障等…121億円 前年度比78.8%

〇保険料等収入、保険金等支払金、経常利益、当期純利益 ( )内は前年度実績。▲はマイナス
・保険料等収入…4620億円 前年度比101.9%

・保険金等支払金…2466億円 前年度比85.8%

・経常利益…▲31億円 (▲94億円)

・当期純利益…▲31億円 (▲89億円)

〇基礎利益、ソルベンシー・マージン比率 ( )内は前年度実績および数値。▲はマイナス
・基礎利益…205億円 (▲69億円)

・ソルベンシー・マージン比率…987.3% (1004.9%)

以上です。

↑天狗蝶の日向ぼっこ(4月撮影)。